処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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幕間4:リベンジを果たした者たち

ベヒモスの咆哮が広間に響き渡る中、光輝が真っ先に動いた。彼は聖剣を高く掲げ、詠唱を始めた。

 

「万翔羽ばたき 天へと至れ 〝天翔閃〟!」

 

曲線状の光の斬撃がベヒモスに轟音を響かせながら直撃した。以前は、〝天翔閃〟の上位技〝神威〟を以てしてもカスリ傷さえ付けることができなかったが、今回は違った。ベヒモスの胸にはくっきりと斜めの剣線が走り、赤黒い血が滴り落ちた。

 

「グゥルガァアア!?」

 

ベヒモスが悲鳴を上げ、地面を削りながら後退した。光輝は不敵な笑みを浮かべ、仲間たちに指示を出した。

 

「いける! 俺達は確実に強くなってる! 永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から! 後衛は魔法準備! 上級を頼む!」

 

メルド団長直々の指揮官訓練の賜物で、光輝の指示は的確だった。

 

「ほぅ、迷いなくいい指示をする。聞いたな? 総員、光輝の指揮で行くぞ!」

 

メルド団長が叫び、騎士団員を引き連れてベヒモスの右サイドに回り込むべく走り出した。それを機に一斉に動き出し、ベヒモスを包囲した。

 

 

リリアーナは初めての強敵に圧倒されそうになりながらも、剣を握りしめた。彼女の心にはジェイドへの想いと、仲間を救うという使命が燃えていた。

 

「私だって戦えます!ジェイド様、そして皆のためにも!」

 

彼女はメルド団長の教えを思い出し、ベヒモスの動きを観察した。巨体が振り下ろす一撃が地面を砕き、その衝撃でリリアーナはバランスを崩しそうになった。しかし、香織の回復魔法が彼女を支え、「リリィ、頑張って!」と声をかけた。

 

「ありがとう、香織!」

 

リリアーナは深呼吸し、ベヒモスの隙を狙った。彼女の剣がベヒモスの脚を切りつけ、わずかだが傷を負わせた。その瞬間、ベヒモスが怒りの咆哮を上げ、リリアーナに向かって爪を振り下ろした。

 

「危ない!」

 

メルド団長が素早く割り込み、剣で爪を受け止めた。衝撃で地面が割れ、メルド団長の腕が震えたが、彼はリリアーナを守り切った。

 

「王女殿下、無茶は禁物です!」

「すみません、メルド団長。でも、私も戦います!」

 

リリアーナの瞳には、決して引かない意志が宿っていた。メルド団長は一瞬驚いたが、すぐに頷いた。

 

「わかりました。共に戦いましょう。」

 

 

前衛組がベヒモスの突進を防ぐ中、龍太郎と永山がスクラムを組むようにベヒモスに組み付いた。

 

「「猛り地を割る力をここに!〝剛力〟!」」

 

二人の魔法が発動し、ベヒモスの突進を食い止めた。ベヒモスは苛立ちを隠せず、地を踏み鳴らした。

 

その隙を逃さず、雫が抜刀術でベヒモスの角を狙った。

 

「全てを切り裂く至上の一閃〝絶断〟!」

 

剣が角に食い込むが、切断には至らない。メルド団長がすかさず援護し、雫の剣を押し込むように一撃を加えた。遂に、ベヒモスの角が半ばから断ち切られた。

 

「ガァアアアア!?」

 

ベヒモスが大暴れし、四人を吹き飛ばす。香織が即座に光の防御魔法を発動し、彼らを優しく包み込んだ。

 

「優しき光は全てを抱く〝光輪〟!」

 

続けて、回復魔法を唱える。

 

「天恵よ 遍く子らに癒しを〝回天〟」

 

四人は光に包まれ、一瞬で回復した。

 

 

光輝は突きの構えを取り、ベヒモスに突進した。聖剣を傷口に差し込み、魔法を発動させた。

 

「〝光爆〟!」

 

聖剣から膨大な魔力が流れ込み、ベヒモス内部で大爆発を起こした。ベヒモスは悲鳴を上げ、傷口から大量の血を流しながら反撃に出た。鋭い爪が光輝を襲うが、聖鎧がそれを弾いた。しかし、衝撃で光輝は吹き飛ばされ、激しく咳き込んだ。

 

「天恵よ 彼の者に今一度力を〝焦天〟」

 

香織の回復魔法が光輝を包み、一瞬で全快させた。

 

 

ベヒモスは角が折れても赤熱化を始め、跳躍による衝撃波で前衛組を吹き飛ばした。雫が警告を発する。

 

「あれが来るわよ!」

 

ベヒモスは予想外の跳躍距離で後衛組に襲いかかった。鈴が詠唱を中断し、前に出た。

 

「ここは聖域なりて 神敵を通さず〝聖絶〟!!」

 

光のドームがベヒモスの攻撃を受け止めたが、詠唱省略のため本来の力は発揮できず、障壁にヒビが入り始めた。鈴は必死に魔力を注ぎ込むが、限界が近づいていた。

 

「天恵よ 神秘をここに〝譲天〟」

 

香織の援護で鈴の魔力が回復し、〝聖絶〟が修復された。ベヒモスの攻撃が弱まり、遂に地に落ちた。

 

 

前衛組が再びベヒモスを包囲し、ヒット&アウェイで翻弄した。後衛の詠唱が完了し、恵里が合図を出した。

 

「下がって!」

 

光輝達が一斉に距離を取り、後衛の魔法が発動した。

 

「「「「「〝炎天〟」」」」」

 

五人の術者による上級魔法がベヒモスを襲い、超高温の炎がその巨体を焼き尽くした。ベヒモスの断末魔が響き渡り、やがて静寂が訪れた。

 

 

「勝ったのか?」

「勝ったんだ……」

 

仲間たちが呆然と呟く中、光輝が聖剣を掲げて叫んだ。

 

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

 

歓声が沸き上がり、皆が勝利を喜んだ。リリアーナは剣を収め、ジェイドのことを思い浮かべた。

 

「ジェイド様、もっと先へ行けば、あなたに会えるかもしれない…」

 

 

そんな中、未だにボーとベヒモスのいた場所を眺めている香織に雫が声を掛けた。

 

「香織? どうしたの?」

「えっ、ああ、雫ちゃん。……ううん、何でもないの。ただ、ここまで来たんだなってちょっと思っただけ」

 

苦笑いしながら雫に答える香織。かつての悪夢を倒すことができるくらい強くなったことに対し感慨に浸っていた。

 

「そうね。私達は確実に強くなってるわ」

「うん……雫ちゃん、もっと先へ行けば南雲くんも……」

「それを確かめに行くんでしょ?そのために頑張っているんじゃない」

「えへへ、そうだね。(アリナはいらないけど)」

 

先へ進める。それはハジメの安否を確かめる具体的な可能性があることを示している。答えが出てしまう恐怖に、つい弱気がでたのだろう。アリナを奈落に突き落としたくせにである。香織の面の皮の厚さは一級品なのかもしれない。雫は香織の恐怖心を察して、グッと力を込めて香織の手を握った。

 

その力強さに香織も弱気を払ったのか、笑みを見せる。

 

 

そんな二人の所へ光輝達も集まってきた。

 

「二人共、無事か? 香織、最高の治癒魔法だったよ。香織がいれば何も怖くないな!」

 

爽やかな笑みを浮かべながら香織と雫を労う光輝。

 

「ええ、大丈夫よ。光輝は……まぁ、大丈夫よね」

「うん、平気だよ、光輝くん。皆の役に立ててよかったよ」

 

同じく微笑をもって返す二人。しかし、次ぐ光輝の言葉に少し心に影が差した。

 

「これで、南雲やジェイドさんも浮かばれるな。自分を突き落とした魔物を自分が守ったクラスメイトが討伐したんだから。それにアリナだって喜ぶはずだ。待ってろよ!アリナ!俺が救い出して見せるからな!」

「「「……」」」

(「なんで光輝君の中ではハジメ君が死んだことになってて、アリナが生きていることになっているのかな?それにハジメ君は檜山によって奈落に落とされたのに…」)

(「もう駄目よこのご都合主義勇者は…。クラスメイトの誰かが落としたという現実を見れてない時点で…。八重樫流は身内を見捨てないから最後まで面倒を見るけど…。」)

(「南雲さん、アリナさんは生きているはずです。いえ、たとえあの2人が死んでいても、ジェイド様は生きている気がします。それにこの間感じました。ジェイド様に新たなパートナーが来たことを。まぁ、私が正妻なのは確定しているので気にしないのですが。」)

 

光輝は感慨にふけった表情で雫と香織の表情には気がついていない。どうやら、光輝の中でハジメやアリナ達を奈落に落としたのはベヒモスのみ・・ということになっているらしい。

 

確かに間違いではない。直接の原因はベヒモスの固有魔法による衝撃で橋が崩落したことだ。しかし、より正確には、撤退中のハジメやアリナ達に魔法が撃ち込まれてしまったことだ。

 

今では、暗黙の了解としてその時の話はしないようになっているが、事実は変わらない。だが、光輝はその事実を忘れてしまったのか意識していないのか、はたまたアリナがいなくなったショックから根本的に立ち直れず無視しようとしているのか、ベヒモスさえ倒せばハジメは浮かばれると思っているようだ。

 

基本、人の善意を無条件で信じる光輝にとって、過失というものはいつまでも責めるものではないのだろう。まして、故意に為されたなどとは夢にも思わないだろう。

 

もっとも、大好きなアリナを「奪った」ハジメが奈落に落ちて自業自得とまで潜在的には思っているところはあるが、本人はそれにすら気づいていない。

 

しかし、香織は気にしないようにしていても忘れることはできない。大好きなハジメがいなくなったことは彼女にとっては耐え難い苦しみであった。だからこそ、なかったことにしているどころか、忌々しいアリナだけの生存を信じている光輝の言葉にショックを受けてしまった。

 

(「光輝君…、アリナなんかに固執するのではなく、○○ちゃんと付き合えばいいのに…。あそこまで光輝君のことを思ってくれる子なんていないよ。」)

 

雫が溜息を吐く。ハジメが死んでてアリナが生きているという何を食ったらそのような解釈になるんだというレベルのご都合主義解釈に、思わず文句を言いたくなったが、光輝に悪気がないのはいつものことだ。むしろ精一杯、ハジメのことも香織のこともアリナのことも思っての発言である。ある意味、だからこそタチが悪いのだが。それに、周りには喜びに沸くクラスメイトがいる。このタイミングで、あの時の話をするほど雫は空気が読めない女ではなかった。もっとも、この発言をアリナが聞いたら、とんでもないことになっていたのは確実であろう。

 

 

若干、微妙な空気が漂う中、クラス一の元気っ子が飛び込んできた。

 

「カッオリ~ン!」

 

そんな奇怪な呼び声とともに鈴が香織にヒシッと抱きついた。

 

「ふわっ!?」

「えへへ、カオリン超愛してるよ~! カオリンが援護してくれなかったらペッシャンコになってるところだよ~」

「も、もう、鈴ちゃんったら。ってどこ触ってるの!」

「げへへ、ここがええのんか? ここがええんやっへぶぅ!?」

 

鈴の言葉に照れていると、鈴が調子に乗り変態オヤジの如く香織の体をまさぐった。それに雫が手刀で対応。些か激しいツッコミが鈴の脳天に炸裂した。

 

「いい加減にしなさい。誰が鈴のものなのよ……香織は私のよ?」

「雫ちゃん!?」

「ふっ、そうはさせないよ~、カオリンとピーでピーなことするのは鈴なんだよ!」

「鈴ちゃん!? 一体何する気なの!?」

 

 

雫と鈴の香織を挟んでのジャレ合いに、香織が忙しそうにツッコミを入れた。いつしか微妙な空気は払拭されていた。

 

 

これより先は完全に未知の領域。光輝達は過去の悪夢を振り払い先へと進むのだった。それぞれの思いを乗せて。

 

 

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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