処刑人と白銀の英雄は世界最強 作:改革結集の会
ユエの加入により、「白銀の剣」は6人編成となった。ハジメ、アリナ、ジェイド、ルルリ、ロウ、そしてユエ。ディンリードのメッセージを受け、彼らはオルクス大迷宮の最深部、「解放者」オスカー・オルクスの隠れ家を目指す決意を固めた。神代魔法を手に入れ、地上へ戻り、エヒトルジュエを打倒する。それが彼らの新たな目的だった。
ハジメは皆を見回した。
「僕たちにはそれぞれ帰りたい場所がある。ユエもアリナも一緒に、必ず地上に戻ろうね。」
アリナが力強く頷いた。
「ハジメの言う通りよ。私たちの平穏を取り戻すためにも、ここで終わるわけにはいかない。」
ジェイドは剣を握り直した。
「リリアーナが待ってる。俺が皆を導く。」
ルルリが明るく応じた。
「そうなのです!」
ロウも勢いよく言った。
「おう、やるしかねぇ!」
ユエは小さな声で呟いた。
「…ジェイド、ハジメ…皆、ありがとう。」
一行は休息を取り、装備を整えた。ハジメは錬成で簡易的な防具をユエに作り、彼女の華奢な体を守る準備をした。ユエは不思議そうにそれを見つめた。
「…これ、私の?」
ハジメは笑った。
「うん、ユエも仲間だからね。少しでも安全に戦えるように。」
ユエの感謝の気持ちがあふれ、彼女の紅い瞳が一瞬輝いた。彼女はジェイドの背中を見つめ、彼への想いを胸にそっと抱きしめた。しかし、彼は気づかず盾の点検に没頭していた。アリナはユエの視線に気づき、微笑んだ。
出発前、ハジメは作業に没頭することにした。新しい武器の開発だ。アリナはユエを抱っこしながら興味津々でその様子を覗き込んだ。ほとんど密着しながら。ハジメは気にしてはいけないと自分に言い聞かせた。
ユエが尋ねた。
「…これ、なに?」
ハジメの錬成により、少しずつ出来上がっていく何かのパーツが目の前にあった。一メートルを軽く超える長さの筒状の棒や、十二センチはある赤い弾丸、その他細かな部品が散らばっている。それは、ハジメがドンナーの威力不足を補うために開発した新たな切り札となる兵器だった。
ハジメは説明した。
「これはね…対物ライフル:レールガンバージョンだよ。要するに、僕の銃は見せたでしょ? あれの強化版だよ。弾丸も特製だよ。」
ハジメが錬成したパーツを組み合わせると、全長一・五メートルほどのライフル銃になる。銃の威力を上げる方法を考えたハジメは、炸薬量や電磁加速が限界に達したドンナーでは大幅な威力上昇が望めないと結論し、新たな銃を作ることにしたのだ。当然、威力を上げるには口径を大きくし、加速領域を長くする必要があった。
そこで生まれたのが対物ライフルだ。装弾数は一発で、持ち運びは大変だが、理屈上の威力は絶大である。ドンナーで最大出力なら通常の対物ライフルの十倍近い破壊力を持つこの銃は、普通の人間が撃てば反動で半身を粉砕される化け物だった。
この新たな対物ライフル――シュラーゲンは、理屈上、最大威力でドンナーのさらに十倍の威力が出るはずだ。素材はサソリモドキの外殻から採れたシュタル鉱石だった。ハジメがその硬さの秘密を探ろうと調べたところ、「鉱物系鑑定」でその特性が明らかになった。
【シュタル鉱石】
魔力との親和性が高く、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な鉱石。
サソリモドキの硬さは、このシュタル鉱石に膨大な魔力を込めた結果だったらしい。ハジメは「鉱石なら加工できるのでは?」と試しに錬成してみたところ、あっさり成功した。あの苦労を思い返し、彼は思わず崩れ落ちたが、いい素材が手に入ったと割り切った。
シュラーゲンの銃身は、このシュタル鉱石で作られ、より頑丈に仕上がった。弾丸にもこだわり、タウル鉱石をシュタル鉱石でコーティングしたフルメタルジャケット風のものだ。燃焼粉も最適な割合で圧縮し、薬莢に詰めた。一発できれば、錬成技能[+複製錬成]により、同じものを量産するのは容易だった。
ハジメはユエにツラツラと語りつつ、シュラーゲンを完成させた。中々に凶悪なフォルムで迫力があった。彼は自己満足に浸りながら作業を終えた。
ユエとアリナは目を輝かせた。
「…すごい。」
「さすがハジメね。」
ハジメは笑顔で応じた。
「ありがとう、ユエ、アリナ。あと、ジェイドさん、ルルリさん、ロウさんも材料を集めてくれてありうがとう。」
「「「お安い御用だ(です)!そのかわり完成したら使わせてくれよな(ほしいのです)!」」」
一段落したハジメは腹が減ってきた。6人で最後の食事を取ることにした。ハジメはサイクロプスやサソリモドキの肉を焼く準備を始めたが、ユエには別の食事が待っていた。
ジェイドがユエに声をかけた。
「ユエ、食事の時間だ。俺の血を飲んでくれ。」
ユエは一瞬驚いたようにジェイドを見上げた。頬が微かに赤らんだ。
「…ジェイド、いいの?」
ジェイドは優しく微笑んだ。
「もちろんだ。仲間だからな。」
ユエは小さく頷いた。彼女はジェイドの首筋にそっと口を近づけた。鋭い牙がジェイドの肌に触れ、静かに血を吸い始めた。ジェイドは痛みをこらえつつ、ユエの頭を優しく撫でた。
「…ユエ、ゆっくり飲んでいいからな。」
ユエはジェイドの血を吸いながら、彼の顔をじっと見つめた。その瞳には感謝以上の感情が宿っていた。彼女はジェイドに惚れている。その想いが、視線に込められていた。
ジェイドはリリアーナという恋人がいるため、ユエの気持ちに気づいていない。ハジメは作業の手を止め、その様子をチラリと見た。アリナも気づき、小さく微笑んだ。ルルリとロウは食事を準備しながら、時折ユエの方を気にしていた。
ユエが血を吸い終えた。彼女は唇を離し、頬を染めた。
「…うん、ありがとう、ジェイド。」
ジェイドは笑った。
「気にすんな。」
彼は食事の準備を再開した。ユエはジェイドの背中を見つめた。胸の内で、彼への想いを抱きしめた。
ハジメが皆に声をかけた。
「みんな、ご飯だよ…って、ユエはもう済ませたか。ジェイドの血で満足した?」
ユエは頷いた。
「…うん、大丈夫。」
ハジメは納得した。
「なるほど、吸血鬼は血があれば十分なんだね。」
ユエはジェイドをチラリと見た。
「…ジェイド、美味。」
ジェイドが苦笑した。
「お前なぁ、俺の血が美味いってどういう意味だよ。」
ユエは真剣に答えた。
「…深い味。」
ユエ曰く、何種類もの野菜や肉をじっくりコトコト煮込んだスープのような濃厚で深い味わいらしい。
そういえば、ジェイドが最初に吸血されたとき、やけに恍惚としていた様子であった。飢餓感に苦しんでいる時に極上の料理を食べたようなものなのだろうから無理もない。
ただ、舌舐りしながら妖艶な空気を醸し出すのはやめて欲しいと思うジェイド。こういう時、ユエがジェイドより年上であることを実感してしまうのだが、幼い容姿と相まって、なんとも背徳的な感じがしてしまい落ち着かない事この上ないのだ。
ユエの独特な解釈にハジメとジェイドが笑った。そして、アリナも悪ノリした。
「ハジメ~、私にも血を吸わせてよ~。」
ハジメは笑いながら困惑した。
「でもアリナは吸血鬼じゃないじゃん。だめだよ、アリナ。」
「むぅ~、ハジメのけち~」
アリナとハジメの熟年夫婦を思わせる漫才に、ルルリ、ロウもつられて笑い、ほっこりとした空間の中、6人は食事をして旅の準備を整えた。
そして準備が整い、6人は五十層の拠点を出発した。目指すは迷宮の最深部だった。しかし、その道のりが簡単ではないことを、彼らはすぐに思い知ることになる。
十階層ほど進んだところで、6人は新たな階層に足を踏み入れた。そこは広大な樹海が広がる場所だった。10メートルを超える巨木が鬱蒼と茂り、湿った空気が肺にまとわりつくように漂っている。以前の熱帯林とは異なり、暑さは控えめだったが、どこか不気味な静けさが辺りを包んでいた。
「この階層、なんか気持ち悪いね」
ハジメが小さく呟いた。 アリナが目を細め、周囲を見回しながら応じた。
「そうね。魔力の流れが不自然よ」
ジェイドが一歩前に出て、剣と盾を手に持った。
「皆、気を抜くな。何か出てきても俺が盾になる」
ルルリは静かに回復魔法の準備を始め、ロウは掌に火魔法の魔力を集め始めた。ユエは言葉を発せず、ジェイドの隣に寄り添うように立ち、彼の気配を感じながら歩みを進めた。
突然、地響きが響き渡った。「ズズンッ!」という重い音が樹海にこだまし、全員が一斉に身構えた。木々の間から姿を現したのは、巨大な爬虫類型の魔物だった。ティラノサウルスに似た姿をしているが、頭には向日葵のような大きな花が揺れている。その奇抜でシュールな見た目に、ロウが思わず声を上げた。
「何だよその花!笑えねぇ冗談か!?」
ティラノが咆哮を上げ、鋭い牙を剥き出しにして突進してきた。ジェイドが素早く反応し、盾を構えて前に出た。
「皆、散開!」
ハジメは腰から「ドンナー」を抜き放ち、アリナは巨大な「巨神の破槌」を両手で握った。しかし、その前にユエが静かに手を掲げた。
「…〝緋槍〟」
彼女の呟きと共に、炎の槍が渦を巻いて飛び出し、ティラノの口内に突き刺さった。一瞬にして貫通し、肉を焼き溶かしたその攻撃は、巨体を横に倒れさせるほどの威力だった。頭の向日葵がポトリと地面に落ち、樹海に静寂が戻った。
ルルリが目を丸くして呟いた。
「……強いのです」
ロウが興奮した声で叫んだ。
「すげぇな、ユエ!一撃かよ!」
ジェイドは苦笑いを浮かべ、ユエに目を向けた。
「見事だ、ユエ。でも俺にも少し出番を残してくれ」
ユエは無表情のまま、淡々と答えた。
「…ジェイド、パートナーだから」
彼女はジェイドに熱い視線を向けた。
ティラノを倒した後、6人は次の階段を探して樹海を進んだ。しかし、ハジメの「気配感知」が新たな異変を捉えた。彼は急に立ち止まり、仲間たちに警告を発した。
「皆、魔物だ!十体くらい、こっちに向かってくる!」
木々の隙間から現れたのは、ラプトル型の魔物だった。体長は2メートル強で、頭にはチューリップのような花が揺れている。殺気を放ちながらも、その花がひらひらと動く姿はどこか奇妙で不気味だった。
ロウが呆れたように火魔法を放ちながら叫んだ。
「また花かよ!」
炎がラプトルを包み込み、2体が黒焦げになって倒れた。ジェイドが盾を構えて突進を防ぎ、アリナが「巨神の破槌」を振り下ろして1体を粉砕した。ハジメは「空力」を使って跳躍し、ラプトルの頭上の花を「ドンナー」で正確に撃ち抜いた。花が散ると、ラプトルは痙攣しながら地面に倒れ、やがて起き上がって自らの足で花を踏み潰し始めた。「キュルルル~!」と奇妙な鳴き声を上げ、満足そうに天を仰ぐ姿に、アリナが困惑した声を上げた。
「何!?こいつ、花が嫌いなの?」
ユエが静かに呟いた。
「…操られてる」
ハジメがその言葉に反応し、推測を口にした。
「そうか、花が本体からの命令を受けてるのかも」
その瞬間、残りのラプトルが一斉に襲いかかってきた。ジェイドが盾を構えて防ぎ、仲間に指示を出した。
「ハジメ、アリナさん、後ろから頼む!」
ハジメは「ドンナー」で次々と頭を撃ち抜き、アリナが槌で残りを仕留めた。ルルリが「不死の祝福者」を唱えて全員の体力を維持し、6人の息の合った連携でラプトルを瞬く間に殲滅した。
戦闘が終わり、ハジメが呟いた。
「この花、何かおかしいね」
ユエが鋭い視線を樹海の奥へと向けた。
「…本体が近くにいる」
ジェイドが力強く頷き、仲間たちに指示を出した。
「ならそいつを倒すしかないな。皆、準備しろ」
一行はさらに警戒を強め、次の行動に備えた。
さらに進むと、樹々が絡み合った空中回廊のような場所にたどり着いた。ハジメが周囲を見渡し、提案した。
「ここなら有利に戦える」
彼は「空力」を使って枝の上に飛び移った。アリナとジェイドもそれに続き、ルルリとロウは地上で魔法による援護態勢を取った。ユエは風魔法で軽やかに枝に着地し、ハジメの隣に立った。
眼下には、ラプトルとティラノが次々と現れていた。頭には色とりどりの花が咲き乱れ、その異様な光景にロウが笑い声を上げた。
「お花畑かよ!」
だが、ハジメの表情は硬かった。彼は「気配感知」を頼りに状況を把握し、緊迫した声で警告した。
「気配感知がヤバい。30…いや、50体以上だ。全方位から来てる!」
ジェイドが剣を握り直し、決意を込めて言った。
「逃げ道はないな。殲滅するしかない」
アリナが槌を構え、ハジメに力強く宣言した。
「ハジメ、私たちが守るわ」
ラプトルが樹を登り始め、ティラノが体当たりで樹を揺らしてきた。ハジメは「焼夷手榴弾」を投げ、爆発で数体を焼き払った。「ドンナー」の連射で次々と頭を撃ち抜き、ユエが「〝緋槍〟」で援護した。ロウの火魔法が樹下を焼き尽くし、ルルリが回復魔法で仲間を支えた。ジェイドは盾でラプトルの爪を防ぎ、アリナが槌で叩き潰した。しかし、魔物の数は減るどころか増え続けていた。
ハジメが焦りを隠せない声で叫んだ。
「この数、異常だよ!」
ユエが冷静に状況を分析した。
「…本体が操ってる。花が鍵」
ジェイドが素早く決断を下し、提案した。
「なら本体を見つけ出すしかない。ハジメ、ユエ、俺と一緒に行くぞ!」
ハジメ、ジェイド、ユエの3人が樹海の奥へ向かうことを決め、アリナ、ルルリ、ロウは残って魔物を食い止める役割を担った。
ハジメ、ジェイド、ユエは樹海を駆け抜けた。ジェイドは「縮地」で加速し、ユエをおんぶして素早く移動した。ユエが小さく呟いた。
「…ジェイド、軽い」
ジェイドが笑いながら答えた。
「ユエが小さいからな」
ジェイドが先頭に立ち、盾を構えて襲い来るラプトルを弾き飛ばした。ユエはジェイドの背中から「〝凍獄〟」を放ち、後方の魔物を凍結させて追撃を防いだ。
やがて、迷宮の壁に縦に割れた洞窟が現れた。ハジメが叫んだ。
「あそこだ!」
魔物の動きが激しくなり、行く手を阻もうとした。ジェイドが盾を手に突進した。
「俺が道を開く!」
ハジメが「ドンナー」で援護し、ユエの魔法が追撃を防いだ。3人は息を合わせて洞窟へと飛び込んだ。
洞窟は狭く、ティラノが入る余地はなく、ラプトルも一体ずつしか進めなかった。ハジメが「錬成」を使って入口を塞ぎ、息をついた。
「これで少しは安全だね」
ユエが静かに言った。
「…お疲れ」
彼女はジェイドの背から降り、足元を固めた。ジェイドが鋭い声で警告した。
「ここがビンゴだな。油断するなよ」
3人は気を引き締め、洞窟の奥へと進んだ。
広間にたどり着いた瞬間、全方位から緑色の球が飛んできた。ハジメが「錬成」で即座に石壁を作り、ジェイドが盾で攻撃を防いだ。ユエは風魔法で緑の球を迎撃し、低い声で呟いた。
「…本体が近い」
奥の暗がりから姿を現したのは、植物と女が融合した魔物、エセアルラウネだった。醜悪な顔に無数のツルがうねり、ニタニタと不気味に笑っている。
ジェイドが剣を構え、叫んだ。
「こいつが本体か!」
エセアルラウネが緑の球をユエに放ち、彼女の頭に赤い薔薇が咲いた。ハジメが慌てて叫んだ。
「ユエ!」
ユエは苦悶の表情を浮かべながら風の刃を放った。
「…ハジメ、逃げて」
ハジメは「金剛」で身を守った。そしてジェイドはエセアルラウネに向かって怒鳴った。
「ユエを離せ!」
エセアルラウネはユエを盾にし、ハジメに胞子を放ったが、彼の「毒耐性」で効果はなかった。ジェイドが前に出て叫んだ。
「俺が引きつける!」
彼は盾でエセアルラウネのツルを防ぎ、ハジメに時間を稼いだ。ハジメはユエの頭の花を狙ったが、彼女が自ら頭に手を当てる動きを見て、撃つ手が止まった。
ユエが弱々しく叫んだ。
「ハジメ…私を…撃って」
ハジメは一瞬ためらい、ジェイドが力強く叫んだ。
「ハジメ、俺とユエを信じろ!」
ジェイドが盾でエセアルラウネを押し込み、ハジメが「ドンナー」でユエの頭の薔薇を撃ち抜いた。薔薇が散り、ユエが解放された。ジェイドが剣を振り上げ、ツルを切り裂いてエセアルラウネの頭を貫いた。緑の液体が飛び散り、魔物は地面に倒れ込んだ。
ユエが膝をつき、息を整えながら呟いた。
「…ハジメ、ジェイド…ありがとう」
ジェイドが笑顔を見せた。
「ユエ、無事で良かった」
3人はアリナ、ルルリ、ロウと合流し、魔物の襲撃が完全に止んだことを確認した。広間の奥には階段が続いており、ハジメが静かに呟いた。
「ここが最深部への道だね」
6人は再び結束を固め、神代魔法を求めて前へと進んだ。新生「白銀の剣」の試練は、まだ始まったばかりだった。
セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?
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更新優先でお願いします。
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セリフと地の文分けるの優先で。