処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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就職活動などでバタバタしており休載していました。今日から不定期ですが少しずつ投稿進めていきます。


3-7

濃い霧が立ち込めるハルツィナ樹海の中を、ハジメ一行は虎の亜人の先導で進んでいた。魔力駆動の車両を降りてから既に一時間ほど、徒歩でフェアベルゲンへと向かう一行の周囲には、亜人たちが警戒の眼差しを向けながら固めていた。ハジメとユエ、ハウリア族、そして長老アルフレリックを中心に、緊張感が漂う中での移動だった。

 

しばらく歩くと、突然霧が晴れた場所に出た。そこには一本の真っ直ぐな道が伸びており、道の端には青い光を放つ拳大の結晶が地面に半分埋められていた。まるで霧のトンネルのようなその道は、結晶を境界線にして霧の侵入を防いでいるようだった。

 

ハジメがその青い結晶に目を留めていると、アルフレリックが穏やかに説明を始めた。

 

「あれはフェアドレン水晶だ。周囲には霧や魔物が寄り付かない。フェアベルゲンも近辺の集落も、この水晶で囲まれている。魔物は比較的寄り付かないが、完全ではないよ」

 

ハジメは頷き、柔らかな口調で答えた。

 

「なるほど。ずっと霧の中で暮らすのは大変でしょうから、街の中だけでも晴れているのは助かります。」

 

ユエも小さく頷き、霧の鬱陶しさから解放されることにほっとした表情を見せた。ハジメの温厚な物言いに、ハウリア族の者たちも少し緊張が解けたようだった。

 

やがて、眼前に巨大な門が現れた。太い樹が絡み合って自然のアーチを形成し、その中心に木製の両開きの扉が鎮座していた。高さは30メートル以上もあり、亜人の「国」にふさわしい威容を誇っていた。ギルが門番に合図を送ると、重々しい音を立てて門が開き、一行は中へと進んだ。

 

門をくぐると、そこはまるで別世界だった。直径数十メートルの巨大な樹が乱立し、その幹には住居が刻まれ、ランプの明かりが窓から漏れていた。極太の枝が絡み合い、空中回廊を形成し、滑車を使ったエレベーターや木製の水路が設置されていた。樹の高さは20階建てほどもあり、自然と調和した美しい街並みが広がっていた。

 

ハジメとユエは思わず立ち止まり、その光景に見とれてしまった。アルフレリックが咳払いをして二人の注意を引くと、得意げに微笑んだ。

 

「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 

ハジメは素直に感想を口にした。

 

「はい、こんな綺麗な街は初めてですよ。空気も澄んでいて、自然と調和した素晴らしい街ですね。」

 

ユエも静かに同意を示した。

 

「…綺麗」

 

亜人たちは故郷を褒められて誇らしげにケモミミや尻尾を揺らし、ハウリア族も少しだけ笑顔を見せた。

 

 

一行はフェアベルゲンの住人から好奇や敵意の入り混じった視線を浴びながら、アルフレリックが用意した場所へと案内された。そこは巨大な樹の内部をくり抜いた広間で、ハジメとユエはアルフレリックと向かい合って座った。ハジメは自分が異世界からの旅人であること、七大迷宮を攻略して神代魔法を手に入れ故郷に帰るつもりであること、そして解放者やオルクスの指輪について説明した。

 

アルフレリックは内心で迷っていた。掟を守ることはフェアベルゲンの伝統だが、長老衆の反発を抑えるのは容易ではない。それでも、彼はオルクスの指輪が放つ微かな魔力に、運命的な何かを感じていた。そして、アルフレリックはフェアベルゲンの掟を語った。

 

「七大迷宮の紋章を持つ者が現れた場合、それがどのような者であれ敵対せず、望む場所に連れて行く。それが我々に伝わる口伝だ。君がその資格者であることは、オルクスの指輪が証明している」

 

ハジメは穏やかに頷いた。

 

「僕が資格者なら、ここに滞在させてもらえるってことですね。ありがとうございます、助かります」

 

アルフレリックは微かに微笑み、ハジメたちの滞在を正式に認めた。

 

 

その時、階下から騒がしい声が聞こえてきた。ハジメとアルフレリックが急いで降りると、大柄な熊の亜人ジンを中心に、他の長老たちがハウリア族を睨みつけていた。シアとカムは頬を腫らし、すでに殴られた後だった。ジンは怒りを抑えきれず、拳を震わせながらアルフレリックに詰め寄った。

 

「アルフレリック、貴様、どういうつもりだ! なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど、長老会議で処分を下すぞ!」

 

ハジメとユエが階段から降りてくると、長老衆は一斉に鋭い視線を向けた。アルフレリックは冷静に答えた。

 

「口伝に従ったまでだ。お前たちも長老なら、事情を理解できるはずだ」

「口伝だと? そんな眉唾物を信じるのか! 人間族を招き入れるなど、前代未聞だ!」

「それが掟だ。長老の座にある者が掟を軽視してどうする」

「ならば、この人間が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

「そうだ」

 

ジンは信じられないという表情でハジメを睨み、突然襲いかかった。熊人族の豪腕が振り下ろされ、衝撃音が広間に響いた。しかし、その拳はハジメに届く前に阻まれた。

 

「私の大事なハジメに手を出すな!いくらアンタらを魔法が使えないとバカにした人族だからといって見境なく攻撃して、今度は使える者を敵視するの!? アンタらの勝手な正義なんて、聞いてて虫唾が走るわ! さっさとハジメを認めなさいよ!」

 

アリナが「巨神の破槌」を手に素早く前に出て、ジンの攻撃を弾き返した。続けて彼女は破槌を振り上げ、ジンの腹に強烈な一撃を叩き込んだ。

 

ズドンッ!

 

破槌がジンの腹に命中した瞬間、衝撃波が広間の木製の床を震わせ、壁に刻まれた装飾がカタカタと揺れた。長老たちの顔から血の気が引き、近くにいた亜人たちが思わず後ずさった。熊人族の頑強な体躯をもってしても、アリナの一撃は致命的だった。ジンは内臓を損傷し、骨が砕ける音が響き、重傷を負って動けなくなった。

 

アリナは怒りに燃え、他の長老たちにも襲いかかろうとしたが、ハジメが慌てて彼女を止めた。

 

「アリナ、落ち着いて! 僕のためにそんなに怒らなくても大丈夫だよ」

 

ジェイドとルルリも駆け寄り、アリナを抑えた。

 

「アリナ、やりすぎだ。ここで争いを大きくするのは得策じゃない」

「そうなのです。もう十分なのです。」

 

アリナは渋々破槌を下ろし、ハジメに寄り添った。長老衆はジンの倒れる姿に凍りつき、広間は一瞬にして静寂に包まれた。

 

 

緊張が走る中、ジェイドが前に出て、落ち着いた声で話し始めた。

 

「俺たちは争いを望んでいないです。ハウリア族は俺たちの仲間であり、案内人です。フェアベルゲンを敵に回すつもりはないです。ただ、彼らを守りたいだけです。フェアベルゲンに敵意はないんです。」

 

ジェイドの誠実な言葉に、アルフレリックは頷いた。

 

「ならば提案だ。ハウリア族を南雲ハジメの身内と見なし、処刑を追放に変更する。これで事態を収拾させよう」

 

他の長老たちは渋々ながら同意を示した。ジンの重傷を見て、ハジメ一行の実力を認めざるを得なかったのだ。シアは安堵の表情を浮かべ、衝動的にジェイドに抱き着いた。

 

「ジェイドさん、ありがとうございます!」

 

ユエはそれを見て眉をひそめ、不機嫌そうに呟いた。

 

「…厚皮ウサギ」

 

アリナ、ルルリ、ロウは呆れた表情を浮かべたが、ジェイドは苦笑いを浮かべながらシアを優しく引き離した。

 

「まあまあ、2人とも落ち着けって。」

「ジェイド、アンタって相当女たらしね。」

 

 

一行はフェアベルゲンを後にし、大樹を目指して旅立った。門を出たところで、ジェイドが仲間たちに声をかけた。

 

「ここからが本当の試練だ。みんな、準備はいいな?」

 

ハジメは義手を握り締め、穏やかに微笑んだ。

 

「うん、僕も準備はできてるよ」

 

ユエは風魔法を手に準備し、シアはジェイドに笑顔を向けた。

 

「ジェイドさんがいるから、私、大丈夫です!」

 

一行の笑い声が霧の中に響き、新たな冒険への決意が固まった。フェアベルゲンでの緊張と和解を経て、彼らは次なる試練へと歩みを進めたのだった。




感想、評価のほどよろしくお願いします!頑張って完結させます!!

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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