処刑人と白銀の英雄は世界最強 作:改革結集の会
ステータスプレートの事件から数時間後、ハイリヒ王宮の豪奢な部屋に静寂が満ちていた。ハジメとアリナは同じ部屋で眠りに落ち、クラスメイト達もそれぞれの部屋で異世界での初日を振り返っていた。しかし、ジェイド・スクレイドは眠れなかった。
彼は部屋の窓辺に立ち、王都の夜景をぼんやりと眺めていた。銀髪が月光に映え、鋭い瞳が遠くを見つめている。アリナの言葉が頭を離れない。「ハジメは私の彼氏だよ」――その一言が、ジェイドの胸に鈍い痛みを残していた。
前世のイフールで、アリナはギルドの受付嬢であり、ジェイドにとって特別な存在だった。彼女の強さ、真面目さ、残業嫌いの姿勢、そして根底にある優しさが彼の心を掴んでいた。ジェイドは彼女を支えようと何度も手を差し伸べたが、アリナはいつも「うるさい」と断っていたが、構わないと寂しそうな顔をしていた。その距離感が、ジェイドには愛おしくもあり、届かないもどかしさでもあった。だが、トータスで再会した彼女は、南雲ハジメという少年に全てを捧げていた。
「アリナさん、ハジメなら確かにいい奴だ。優しくて……僕なんかよりずっと彼女を支えられるかもしれない。それでも、やっぱり少し寂しいな」
彼の呟きが部屋に溶け込む中、扉が小さくノックされた。ジェイドが振り返ると、金髪碧眼の美少女がドアの隙間から顔を覗かせていた。ハイリヒ王国の王女、リリアーナ・S・B・ハイリヒだ。
「ジェイド様、夜分に失礼します。お話ししたいことがあって……お邪魔じゃなければ、少しお時間をいただけますか?」
リリアーナの声は控えめで、どこか不安げだった。ジェイドは一瞬驚いたが、すぐに穏やかな笑顔を浮かべて頷いた。
「もちろん、リリアーナさん。お入りください。僕も少し考え事をしていて、眠れなかったところです」
リリアーナは軽く礼を言い、部屋に入ると扉を静かに閉めた。彼女はドレッシーな夜着に身を包み、手には小さなランタンを持っていた。その光が部屋に柔らかな影を落とし、二人の間に落ち着いた雰囲気を醸し出した。リリアーナはジェイドの向かいの椅子に座り、ランタンをテーブルに置くと、少し緊張した様子で口を開いた。
「実は……今日のステータスプレート授与を、こっそり見ていたんです。その時に、ジェイド様が何か悩んでるように見えて……それで、声をかけたくなったんですけど、私の方にも相談したいことがあって」
「リリアーナさんがそんなことするなんて意外ですね。僕が悩んでるように見えたのは……まあ、当たってますけど。相談って、何かあったんですか?」
ジェイドが穏やかに尋ねると、リリアーナは目を伏せ、少し考え込むように言葉を選んだ。
「ステータス授与で、南雲様のステータスが低いって分かった時、クラスの皆が彼を笑って、いじめてたじゃないですか。鍛冶師だから役立たずだって。でも、私、思うんです。人族が危機に瀕してる時に、エヒト様が救世主として召喚した人達の中に、なぜ他人をいじめるような人がいるのかって」
ジェイドの瞳が少し鋭くなり、リリアーナの言葉に耳を傾けた。彼女は続ける。
「イシュタル様は、エヒト様の意志で皆さんが召喚されたって言ってました。でも、鍛冶師を役立たず扱いするような人達が、人族を救う救世主として選ばれるなんて……何かおかしい気がするんです。私、ずっと聖教教会の教えを信じてきたけど、今日、南雲様が笑われるのを見て、エヒト様に疑念を抱いてしまって。それを誰かに話したくて……ジェイド様なら、ちゃんと聞いてくれるかなって」
リリアーナの声には、王女としての責任感と、信仰に対する揺らぎが混じっていた。ジェイドは彼女の言葉に深く共感しつつ、アリナとハジメのことを思い出した。彼は苦笑いを浮かべ、リリアーナに語りかけた。
「リリアーナさんの気持ち、よく分かります。僕は別世界からやってきたのでトータスについてはあまり詳しくは知らないのですが、一つの神が絶対という感じがしてなんとなく違和感を感じたのですよね。しかも、人類の存亡の危機なのに、弱いものイジメでしかクラスがまとまらない戦闘の素人達を連れてきたあたり、この世界の神が問題の本質的な解決をそもそもしたくないのではないかと勘ぐってしまいますね。リリアーナさんがエヒトに疑念を抱くのも無理もないですよ。それに僕の話をしますが、僕も今日、アリナさんがハジメと付き合ってるって知って、頭が混乱してたんです。アリナさんとは前世で仲間で、僕、彼女に特別な想いを寄せてた時期があって。でも、彼女はいつも自分で立つ人で、僕の手を必要としなかった。それが分かってたから、気持ちを伝えることもできなくて……。でも今日、ハジメの優しさを見て、彼ならアリナさんを幸せにできるって納得したんです。少し寂しいけど、彼女の笑顔を見たら、それでいいやって」
ジェイドの告白に、リリアーナは目を丸くした後、優しく微笑んだ。
「そうだったんですね。ジェイド様、自分の気持ちを抑えて仲間を応援できるなんて、すごいと思います。私、聖教教会の教えに疑問を持つなんて、王女として失格かもしれないと思ってしまうのですが、なかなか気持ちが割り切れないのです…。でも、南雲様が笑いものにされてるのを見て、エヒト様の選択が本当に正しいのか、分からなくなっちゃって……」
「失格だなんて、そんなことないですよ。むしろ、疑問を持つのは正しいことだと思います。僕もイシュタルの態度やエヒトの意志ってやつに、違和感を感じてた。アリナさんも戦争に反対してたし、ハジメが鍛冶師でも、彼には彼の強さがある。それを見抜けない連中が救世主ってのも、確かに変ですよね。リリアーナさんが感じた不安、僕も同じですよ。」
ジェイドの言葉に、リリアーナの表情が少し明るくなった。彼女はランタンの灯りをじっと見つめながら、呟くように言った。
「ジェイド様と話してると、頭の中が整理されるみたいです。私、ずっと王宮の中で、聖教教会の言うことを信じるしかなかった。でも、ジェイド様がアリナ様達のために交渉したという話を聞いて、頼もしい人だなと思い、誰かに気持ちを話したいって思ったんです。こんな気持ち、初めてで……安心するんです」
その言葉に、ジェイドの胸に温かいものが広がった。アリナへの想いを手放すのは簡単ではなかったが、リリアーナの素直さと優しさがその痛みを少しずつ癒していく気がした。彼は微笑み、リリアーナに言った。
「僕もです。リリアーナさんと話してると、アリナさんへの気持ちを整理できた気がする。ハジメなら彼女を守れるし、僕には僕の道がある。エヒトに疑念を持つリリアーナさんの気持ちも、すごく共感できる。お互い自分の気持ちにどう折り合いをつけるのかで悩んでますから。僕達、似てるのかもしれませんね」
「似てる……ですか?」
リリアーナが目を上げると、ジェイドの穏やかな笑顔がそこにあった。彼女の碧眼が月光に映え、ジェイドを見つめる。二人はしばらく見つめ合い、言葉よりも深い何かで心が通じ合うのを感じた。ジェイドは、リリアーナの不安を受け止める優しさに惹かれ、リリアーナはジェイドの静かな強さに心を寄せ始めていた。
「リリアーナさん、またこうやって話せますか? 仲間以外で、こんなに自然に話せる人って初めてで……少し気持ちが軽くなりました」
ジェイドの言葉に、リリアーナは頬を軽く染め、嬉しそうに頷いた。
「はい、私もです。ジェイド様と話すと、勇気が出るんです。明日の訓練が終わったら、またお会いしましょうか?」
「約束ですよ」
ジェイドが優しく笑うと、リリアーナも笑顔で応えた。その瞬間、二人の間に微かな恋の芽が生まれた。アリナへの傷心を癒すように、リリアーナの存在がジェイドの心に新しい光を投じ、リリアーナもまた、エヒトへの疑念を抱く不安をジェイドの優しさに預けた。
ランタンの灯りが揺れる中、二人はお互いの瞳を見つめ合い、静かな夜が新たな始まりを告げていた。
それ以降、ジェイドは夜な夜なリリアーナ姫と会うようになっていった。アリナへの想いを手放す過程で、ジェイドはリリアーナの聡明さと純粋さに惹かれ、心の傷が癒されていくのを感じた。一方、リリアーナはジェイドの穏やかな強さに支えられ、王国の重圧の中で初めて信頼できる相手を見つけた。二人の信頼は、やがて恋心へと変わっていった。アリナ、ルルリ、ロウはそのことを薄々感づいており、陰で応援することとした。
感想、評価のほどよろしくお願いします。ジェイドは今後重要キャラクターになっていくでしょう。あと、アンケートの結果、ミレディちゃんはジェイドハーレムには入りません。投票ありがとうございました。
今の悩みですが、園部優花の扱いです。優花は原作ではオルクスでハジメに助けられるので、少しずつハジメを馬鹿にするクラスの雰囲気に疑念を抱くキャラにしたいなと思ってるところもありますが、あくまでクラスメイトアンチなので難しいところなんですよね。活動報告も見てくださるとありがたいです。
活動報告はここ
↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=324212&uid=235465
セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?
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更新優先でお願いします。
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セリフと地の文分けるの優先で。