処刑人と白銀の英雄は世界最強 作:改革結集の会
ハジメが自分の最弱ぶりと役立たず扱いを突きつけられた日から二週間が経った。
現在、ハジメは訓練の休憩時間を利用して王立図書館でアリナと一緒に調べ物をしている。ハジメの手には〝北大陸魔物大図鑑〟、アリナの手には〝トータス戦史録〟が握られていた。二人はトータスの世界を理解し、戦いに備えるため、訓練の合間に図書館に通っていた。
ハジメは、ハイリヒ王国の筆頭錬成師ウォルペン・スタークから錬成師としての英才教育を受けていた。厳格だが情熱的なウォルペンは、「錬成は戦場でも活きる。素材を見極め、頭を使え」と教え、ハジメに鉱物の特性を見抜く技術を叩き込んだ。その結果、ハジメは「鉱物系鑑定」という派生技能を獲得し、魔物の素材や地形を活用する可能性が広がっていた。
また、アリナに守られるだけではダメだと感じたハジメは、ジェイド、ロウ、ルルリとの戦闘特別訓練にも参加していた。ジェイドの剣術、ロウの攻撃魔法、ルルリの回復魔法を学びながら、少しでも戦力になろうと努力を重ねていた。
しかし、二週間の成果はまだ乏しかった。ハジメは図鑑を眺めながら、「はぁ~」と溜息を吐いて机に本を放り投げた。ドスンッという音が響き、通りかかった司書が物凄い形相で睨む。ビクッとなったハジメが謝ると、アリナが「ハジメ、静かにね」と苦笑いした。司書に無言の圧力をかけられつつ、ハジメは再び溜息をついた。
「アリナ、僕、頑張ってるけど……やっぱり戦闘じゃ役に立てないのかな」
アリナは戦史録から目を上げ、真剣に答えた。
「そんなことないよ。ハジメは錬成で私を守ってくれるし、訓練で強くなってる。私には分かるよ、ハジメの努力が」
励まされつつ、ハジメはステータスプレートを取り出し、頬杖をつきながら眺めた。
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:2
天職:錬成師
筋力:12
体力:12
耐性:12
敏捷:12
魔力:12
魔耐:12
技能:錬成・鉱物系鑑定・言語理解
これが二週間みっちり訓練した成果だ。「成長遅すぎだろ!」と内心ツッコミを入れた。一方、光輝は、
天之河光輝 17歳 男 レベル:10
天職:勇者
筋力:200
体力:200
耐性:200
敏捷:200
魔力:200
魔耐:200
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
ハジメの五倍の成長率である。
アリナ・クローバー 17歳 女 レベル:5
天職:受付嬢
筋力:210
体力:200
耐性:190
敏捷:200
魔力:190
魔耐:190
技能:巨神の破鎚・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
アリナも成長率はなかなかのものであり、ますますハジメはショックを受け、アリナは必死に慰めていた。
ハジメには魔法適性がないことも判明していた。トータスの魔法は魔力を魔法陣に注ぎ込む仕組みで、適性があれば式を省略できるが、ハジメは全属性に適性がなく、火球一つに直径二メートルの魔法陣が必要だった。だが、「鉱物鑑定」により、素材の特性を見極め、錬成で戦術を補う道が開けつつあった。
訓練施設に戻ると、生徒達が談笑したり自主練をしていた。ハジメとアリナが早めに着き、アリナが「ハジメ、私トイレにいくね」と言ってトイレに行っていなくなった瞬間、後ろから衝撃を受け、ハジメがたたらを踏んだ。剣を持っていたため転倒は免れたが、背後にいたのは檜山大介率いる小悪党四人組だった。
「よぉ、南雲。お前が剣持っても意味ないだろ。マジ無能なんだし」と檜山がニヤつく。
「そうそれな〜!無能が剣を持つの見てて滑稽だから、俺らで稽古つけてやろうぜ!」
「大介、良樹、無能にもここまで気をかけるなんてほんと優しいな〜!」
「訓練に参加できないような無能はやっぱり俺たちが鍛え上げないとな!女を侍らせて調子乗ってる無能には天罰を与えないとな!」
檜山が「女に守られてばかりのお前に稽古をつけてやるから感謝しろよ、キモヲタ君w」とハジメを突き飛ばし、中野が「火球」を放つ。ハジメは転がって避けつつ、錬成で地面に小さな壁を作り、身を守った。ウォルペンの教えが活きた瞬間だった。
「何!?」と檜山が驚きつつも、悔しそうに歯を食いしばった。「お前、ちょっと錬成使えたくらいで調子に乗ってんじゃねぇよ!」と叫び、今度は斎藤が「風球」を放ち、近藤が剣でハジメの背中を叩いて出血させた。檜山自身も拳を振り上げ、「アリナに守られてるだけの雑魚が!」と怒りを露わにした。屈辱と恐怖が入り混じった檜山の表情は、彼らがハジメをただの笑いものではなく、憎しみの対象として見ていることを示していた。
ハジメは背中をたたかれて出血した痛みに耐えながら内心で葛藤した。「またアリナに頼るのか? こんな時こそ自分で何とかしないと……でも、どうすれば……」彼は地面に手を付き、必死に「鉱物系鑑定」で周囲の土質を分析し、次の錬成の準備を始めた。しかし、檜山の拳は突然止まった
「何!?」と檜山が驚く中、トイレから戻ってきたアリナが殺気を込めてやってきた。
「檜山、斎藤、近藤、中野?私の大事なハジメに何してたのかな?ハジメを無能とバカにしてたけどさ、笑うお前の方が無能だよ」
アリナが冷たく言うと、檜山が顔を歪めた。
「お前なぁ、南雲みたいな役立たずをかばって何になるんだよ?お前にはもっとふさわしい男がいるだろ?なんで南雲なんかと付き合ってるんだ?」
「は?もう一度言うけど、ハジメは私の彼氏で、私を守ってくれた唯一の強い人なんだ。お前なんかにハジメの何が分かる?異世界転移で神から力をもらっただけで強くなったと思い込んでるアンタらのほうが滑稽だよ。というか、お前ら、ハジメに手を出したり無能とバカにしたら許さないと私言ったよね?しかもハジメの背中に傷を負わせてさ。言われたことを守れない、このクソ小悪党どもが!あんたらのせいで私のストレスが増え続けるんだよ!!死ねぇぇぇぇ!」
アリナが巨神の破鎚を構え檜山を攻撃した。檜山、中野、斎藤、近藤はいくら異世界で強くなっていたとしてもアリナの巨神の破鎚にはかなわない。檜山は「うわっ!」と悲鳴を上げて吹き飛び、中野は「やべぇ、アリナマジで怖ぇ……」と呻きながら地面を這った。斎藤と近藤も怯えた目で後退し、「こいつ、無敵じゃねぇか……」と震え声で呟いた。小悪党4人組はアリナによってぼこぼこにされ、完全に打ちのめされた。
「な、なんだよこの化け物は…」
檜山は震えながら呟いた。
「自分達が強くなったら反比例して私が弱くなるとでも思ってたの?つくづく救いようのない馬鹿よね、アンタらは。神からもらった力で威張り散らかしてるうちは所詮三下の道化よ。」
アリナは檜山達を睨みつけて冷たく吐き捨てた。
その時、大きな声が響いた。
「何があったの!?」
そこには香織、光輝、雫、龍太郎、そしてジェイド、ルルリ、ロウが立っていた。訓練施設の片隅で、アリナが巨神の破鎚を手に檜山達を叩きのめした現場を目撃した一行は、それぞれ異なる表情を浮かべていた。
アリナがルルリに向かっていった。
「ルルリ、ハジメを治して。」
「癒しの光をここに――〝治癒〟」
こうしてハジメの背中の傷は消えていき、ハジメはルルリに感謝した。
「ありがとう、ルルリ」
「治ってよかったのです!」
ルルリは目を輝かせた。
そんな中、香織が声を上げ、驚愕と怒りを込めてアリナに詰め寄った。
「あぁ、ハジメくんを治せなかった…!ハジメくんを治すのはこのちんちくりんヒーラーではなく私なのに!それに、クローバーさん、巨神の破鎚なんて使って……! 乱暴な女は優しいハジメ君にとって有害だから、早く離れてよ! ハジメ君にはもっと穏やかで優しい人が必要なの!」
香織の言葉に、アリナの目が鋭く光った。彼女は巨神の破鎚を地面に突き立て、ハジメの側に立つと、冷たく反論した。
「香織、お前こそハジメに近づくな。そもそもハジメは檜山たちから攻撃されていたから私が守っただけよ。彼氏を守るなんて当たり前のことじゃない?で、私の彼氏を奪おうとするストーカーが何だって?檜山たちのいじめや天之河の説教に、我が身可愛さで何も言わなかった無責任な女が私に偉そうに説教とか聞いてあきれるよ」
ハジメが「う、うん、アリナ……ありがとう」と気まずそうに頷くと、香織が「ハジメ君!?なんであの女を…」とショックを受けた表情で叫んだ。その隙に、光輝が前に出て、真剣な顔で二人に説教を始めた。
「アリナ、南雲、二人とも落ち着け。確かに檜山達のやり方は間違ってるけど、アリナ、君がそんな乱暴な力で解決するのはどうかと思う。しかも香織を泣かせるのも人としてよくないことだと思う。南雲だって、もっと努力して自分で立ち上がるべきだ。弱さを言い訳にして、アリナに頼りすぎてるんじゃないか? 俺なら、どんな状況でも仲間を守るために鍛錬を続ける。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」
光輝の言葉に、ハジメは苦笑いを浮かべつつ内心で考えた。「確かに僕は弱い。でも、アリナに頼るだけじゃダメだ。さっきの錬成だって、もう少し早くできてれば……。僕も戦えるようにならないと、アリナやみんなに迷惑をかけるだけだ」彼の瞳に決意の光が宿り始めていた。
アリナは「ハジメは真面目に鍛錬に取り組んでるよ! お前が余計な口出すな!この偽善自己中野郎!それに檜山達が彼氏を殴ってきたから私は正当防衛したまでだよ」と反発したが、光輝は真剣な表情を崩さなかった。その時、雫が溜息をつきながら仲裁に入った。
「光輝、ちょっと黙ってて。クローバーさん、香織も落ち着いて。確かに檜山達が悪いけど、ハジメ君が怪我してるみたいだし、まずは状況を整理しようよ」
龍太郎が「くっだらねぇ。こんなことで騒ぐ暇あったら鍛えろっての」と呟きつつ、檜山達が倒れている場所を一瞥した。ジェイドが冷静に近づき、「アリナさん、やりすぎじゃない?」と苦笑いを浮かべた。
ロウが「まぁ、アリナがやったんなら仕方ねぇか。こいつら、いい薬になっただろ」と笑いながら檜山達を見下ろした。檜山は這いながら「覚えてろよ、アリナ……次はお前を……」と呻いたが、アリナの冷たい視線に気圧され、近藤、中野、斎藤と共に逃げ出した。
香織がまだ納得いかない様子で、「でも、クローバーさんみたいな乱暴な人がハジメ君のそばにいるなんて……」と呟くと、アリナがキッと睨みつけた。
「ハジメは私が守る。香織、お前がハジメに何をしようと、私がいる限り絶対に渡さないよ」
「クローバーさん、それって……!」と香織が言いかけたところで、ハジメが慌てて間に入った。
「二人とも、やめてくれよ。僕はアリナと一緒に頑張りたいだけなんだ。白崎さんにも心配かけてごめんって思ってるけど、僕にはアリナが必要なんだ。でも……僕も強くなりたい。アリナに頼るだけじゃなくて、自分で戦えるようになりたいんだ」
ハジメの言葉に、香織は唇を噛み、目を潤ませながら黙り込んだ。光輝が「南雲、そういう気持ちは分かるけどサボってばかりのお前がその気持ちを持ったところでアリナに失礼だろ……」とさらに説教を続けようとしたが、雫が「もういいでしょ、光輝。南雲君の気持ちは分かったんだから」と制した。
ジェイドが「ハジメ、アリナさん、二人なら大丈夫だよ。僕達も応援してるから」と穏やかに笑い、ロウが「まぁ、こいつらにはいい教訓だな」と檜山達を指差した。ルルリが「ハジメさんとアリナさん、素敵なのです!」と目を輝かせた。
訓練終了後、メルド団長が全員を引き止め、野太い声で告げた。
「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、王都外での魔物との実戦とは一線を画すと思ってくれ! 気合入れろ! 今日はゆっくり休めよ! 解散!」
生徒達がざわつく中、ハジメはアリナ、ジェイド、ロウ、ルルリと顔を見合わせた。
「大迷宮か……ハジメ、私が守るよ」とアリナが言うと、ハジメは首を振った。
「僕も戦うよ。鉱物鑑定で何か役に立てるかもしれないし、アリナやみんなに頼りっきりじゃ嫌だからさ。さっきの檜山達とのことも……次は自分で何とかしてみせる」
ジェイドが「その意気だよ、ハジメ」と笑い、ロウが「無理すんなよ」と肩を叩き、ルルリが「一緒に頑張るのです!」と目を輝かせた。アリナが「ハジメ、私だけでいいよね?」と少し嫉妬気味に確認すると、ハジメが「うん、ありがとう」と笑った。
ハジメは天を仰ぎながら呟いた。「前途多難だけど、仲間がいるなら頑張れるかな。アリナ?」
「ええ、早く戦争を終わらせて一緒に地球に帰りましょう。ハジメ?」
感想、評価のほどよろしくお願いします。
香織、光輝に対してのアリナの向き合い方は今後の物語の鍵です。
ちなみに、ルルリは香織の上位互換です。
あと、白河上皇さんの誤字報告ありがとうございます。お手を煩わせてしまい申し訳ございません。
セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?
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更新優先でお願いします。
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セリフと地の文分けるの優先で。