処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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もう一人のBSS(WSS)が発動します。今回も香織アンチがあるので注意!


1-6

【オルクス大迷宮】

それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。

 

にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 

魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えており、この魔石は魔法陣を作成する際の原料となる。魔法陣はただ描くだけでも発動するが、魔石を粉末にし、刻み込むなり染料として使うなりした場合と比較すると、その効果は三分の一程度にまで減退する。

 

要するに魔石を使う方が魔力の通りがよく効率的ということだ。その他にも、日常生活用の魔法具などには魔石が原動力として使われる。魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品なのである。

 

ちなみに、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。

 

ハジメ達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まることになった。

 

久しぶりに普通の部屋を見た気がするハジメは、アリナと二人で割り当てられた部屋に入ると、ベッドにダイブして「ふぅ~」と気を緩めた。

 

アリナがハジメの背中に飛び乗ると、ハジメが「うわっ、アリナ重いよ!」と笑いながら抗議し、アリナが「失礼な! ハジメだって私の膝枕で寝るのが好きなくせに」と頬を膨らませて返す。

 

二人はベッドの上でじゃれ合い、ハジメがアリナを抱き寄せて「アリナがそばにいてくれると安心するよ」と呟くと、アリナが「私もだよ、ハジメ」と甘えるようにキスを交わした。部屋には二人の笑い声と愛情が満ち溢れていた。

 

 

一方、ジェイドの部屋では異なる雰囲気が漂っていた。彼は宿屋までついてきたリリアーナと二人きりで、窓辺に寄り添って月明かりを眺めていた。

 

リリアーナは訓練遠征に宿屋まで同行する許可を父親である国王から得ており、「ジェイド様が心配で」と恥ずかしそうにジェイドに打ち明けた。国王には「神の使徒達にしっかりと寄り添いたい」と言い訳していたらしい。

 

ジェイドは彼女の純粋さに心を打たれ、「リリアーナがいてくれると、僕も勇気が出るよ」と微笑んだ。二人はこれまでの夜の語らいで心を通わせており、ジェイドは意を決して彼女の手を取った。

 

「リリアーナ、僕、君が好きだよ。アリナさんへの想いを整理できたのは君のおかげだし、君と一緒にいると心が落ち着く。僕の恋人になってくれないかな?」

 

リリアーナは驚きで目を丸くしたが、すぐに頬を染めて頷いた。

 

「私も……ジェイド様が好きです。こんな気持ち、初めてで……はい、恋人にしてください」

 

と答えた。ジェイドがリリアーナを抱きしめると、彼女は「絶対に、帰ってきてくださいね?」と不安げに呟き、ジェイドが「約束するよ」と優しく返した。二人は月明かりの下で初めてのキスを交わし、恋人としての絆を深めた。

 

 

同じ頃、香織は自室で眠りに落ち、不穏な夢を見ていた。夢の中で、ハジメがアリナ、ジェイド、ルルリ、ロウと一緒に迷宮の奥へ進み、香織が「ハジメ君!」と叫んでも気づかず、走っても追いつけず、最後に五人全員が闇に飲み込まれて消えてしまう。香織は汗だくで飛び起き、「ハジメ君……」と呟きながら涙を拭った。

 

彼女がハジメを好きになったのは、中学二年の時、不良に囲まれたハジメが小さな男の子とおばあさんのために土下座した姿を見た時だった。その時、アリナが現れ、「ハジメに手を出すな!」と叫びながら「巨神の破鎚」で不良達を吹き飛ばし、ハジメを守った。あの時のハジメの優しさと、アリナの強さが香織の心に深く刻まれていた。

 

 

さて、ハジメたちの部屋に話を戻すが、ハジメはアリナと夜戦を繰り広げた後に抱きつかれていた。アリナは今日の檜山達の一件でストレスはマックスだった。そのため、行為はいつも以上に激しかった。メルド団長からは、今回は二十階層までの挑戦で、「ハジメのような最弱キャラがいても十分カバーできる」と直々に教えられていた。ハジメは「面倒掛けて申し訳ありません」と内心で謝りつつも、「置いて行ってくれてもいいのに……」とは空気を読んで言えなかった。

 

しばらく借りてきた迷宮低層の魔物図鑑を読んでいたハジメだが、アリナが「ハジメ、疲れてるなら少し寝なよ」と膝枕を差し出すと、ハジメは甘えて眠りについた。しかし、その時、扉をノックする音が響いた。トータスでは深夜にあたる時間に、怪しげな訪問者。ハジメは「檜山達か!?」と緊張したが、アリナが「私がいるから大丈夫だよ」と安心させる中、声が聞こえた。

 

「南雲くん、起きてる? 白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

「なんですと?」と一瞬硬直するハジメ。アリナが「香織? この時間に何!?」と怪訝そうに呟きつつ、ハジメが慌てて扉に向かう。鍵を開けると、純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。

 

「……なんでやねん」

「えっ?」

 

衝撃的な光景に思わずツッコミを入れるハジメ。香織はキョトンとしていた。アリナがベッドから立ち上がり、「ハジメをどうする気?」と警戒しながら近づくと、ハジメが慌てて取り繕った。

 

「あ~いや、なんでもないよ。えっと、どうしたのかな? 何か連絡事項でも?」

「ううん。その、少し南雲くんと話したくて……やっぱり迷惑だったかな?」

「……どうぞ」

 

香織の上目遣いに気圧され、ハジメは扉を開けて招き入れた。アリナが「ちょっと待て」と睨むが、ハジメが「少しだけなら」と宥めると、香織は嬉しそうに部屋に入り、窓際のテーブルセットに座った。

ハジメは無意識にお茶の準備をしつつ、アリナが「私が淹れるよ」と紅茶モドキを用意。香織に差し出すと、「ありがとう」と笑顔で受け取った。月明かりが香織とアリナを照らしているのは画になるが、アリナと付き合ってるのにしつこく構ってくる香織のことを、ハジメは不思議に感じていた。

香織が話を切り出すと、表情が一変して思いつめたものになった。

 

「明日の迷宮だけど……南雲くんには町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから! お願い!」

 

身を乗り出して懇願する香織に、ハジメは困惑し、アリナが「何!? ハジメを置いていく気?」と怒りを露わにした。

 

「えっと……確かに僕は足手まといだとは思うけど、ここまで来て待つのは認められないんじゃ……」

「違うの! 足手まといだとかじゃないの!」

香織は慌てて弁明し、深呼吸して落ち着くと静かに話し始めた。

「さっき眠ったら、夢を見たの。南雲くんがクローバーさん、ジェイドさん、ルルリちゃん、ロウさんと一緒に迷宮に入って、私が声をかけても気づかなくて、走っても追いつけなくて……最後にはみんな消えてしまうの……」

 

その言葉に、アリナが「夢ごときでハジメを置いていくなんてありえない」と冷たく返すが、ハジメは香織の泣きそうな顔を見て考え込んだ。

 

(「消える……か。確かに不吉な夢だ。でも、置いていかれるのは嫌だ。アリナやみんなと一緒にいたいし、僕だって役に立ちたい」)

「夢は夢だよ、白崎さん。メルド団長や騎士団員、天之河君みたいな強い奴もいる。それにアリナも強い。僕が弱いからそんな夢を見たんじゃないかな?」

「それでも不安なの……中学の時、不良に土下座してた南雲くんを思い出したからかも。あの時、クローバーさんが巨神の破鎚で不良を吹き飛ばして守ってたけど、私は何もできなくて……南雲くんがまた無茶するんじゃないかって。」

 

香織の告白に、ハジメは「あの時のことか」と苦笑いし、アリナが「あー、はいはい、あの時ね。ハジメは私が守るから大丈夫だよ」と香織を牽制した。ハジメは香織を安心させようと、真っ直ぐに目を合わせて言った。

 

「大丈夫、僕にはアリナがいるから。白崎さんはあまり気に病まないでほしいな。」

 

ハジメとしては香織に負担をかけたくなかったが故の思いやりであったが、それが香織の機嫌を損ねてしまった。

 

「どうして、クローバーさんのことばかり言うのかな?かな?南雲くんのいいところは暴力を用いて解決することに頼らない凄く強くて優しいところなのに。クローバーさんや光輝くんとは違って。あんな女と付き合ってたら南雲くんが汚れてしまうよ。それに私はあの時何もできなかったから……南雲くんの優しさをこんな暴力女に奪われるなんて耐えられないよ!」

 

香織は光を失った瞳でハジメに向かって言った。背後には般若が見え、ハジメは一瞬たじろいだが、すぐに反論した。

 

「アリナは僕が幼い頃からの大切な人なんだ。僕がいじめられていたときでも身を挺して守ってくれて、力を人のために使える優しい人なんだ。だから白崎さん、アリナを侮辱するようなこと二度と言わないでほしいな。本当は白崎さんの気持ちも分かる。でも、アリナが僕には一番なんだってことを分かってほしい……」

 

本音はもっと香織への文句を言いたかったが、香織もハジメのことを心配はしてくれるので、ハジメはなんとか抑えた。

 

「ウソ、ウソだよね…?ハジメくん…」

 

香織はショックを受けた表情で繰り返しうわ言をつぶやいた。

 

「だけど、もしどうしても白崎さんが僕を守りたいと言うならそれは止めないよ。でも僕の一番はアリナだから。」

 

ハジメは香織に向かってキッパリと告げた。香織はしぶしぶ部屋を出た。泣きそうになりながら。

 

香織が出ていったあとハジメは大きなため息をついた。

 

「はぁ、なんで僕あんな厄介な人に好かれちゃったんだろ…。しつこく構う割には僕がいじめられていても僕を守ろうとしないしさ。僕にはアリナだけでいいのに。」

 

アリナもため息をついて、つい本音をぶちまけた。

 

「本当にあいつは厄介だよね。いつもハジメのことストーキングしてくるしさ。あいつ、私のことを暴力女と言ってきたけどさ、私も好きで暴力振るってるわけじゃないんだよ!私はハジメとの平穏が欲しいの!昔、ハジメをいじめた奴らをボコボコにした時だって、私だって怖かったんだよ。でもハジメを守るためなら何だってする!」

 

ハジメも激しく頷いた。

 

「アリナは平和な生活が好きだもんね。だからそのためにはその障害となるものを巨神の破槌でつぶしてるだけにすぎないのは僕が一番知ってるし。にしても本当に白崎さんって思い込みの激しいところと言い、天之河くんによく似てるよね。」

 

ハジメの指摘に思わずアリナも笑ってしまった。

 

「ほんとね!ある意味香織もご都合主義で動いてるよね。ハジメはあんなやつなんかと付き合ったりしないよね?」

「もちろん!僕はアリナ一筋だから!」

「嬉しい!ハジメ大好き!ねぇ、もう一回シちゃおっか?私、あの女に腹が立ったからさ。」

 

そして二人は再びベッドで下着姿でいちゃついて夜のまぐわいを繰り広げながら眠りについた。

 

深夜、香織の背中とハジメの部屋からの甘い声が聞こえてくるのを無言で見つめる者がいた。その者の手は嫉妬に震え、表情が憎悪に歪んでいたことを誰も知らない。




感想、評価のほどよろしくお願いします。

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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