黒狼少女のDUOプレイ記 作:ユキ
「なるほど、このクエストを受けるとスキルを貰える…と。
『光の種』と、『クリフォト抑止力』…どちらも聞いたことがないスキルだね。
あ、固有スキルと同じ扱いなんだ。」
スキルなんかも合計レベル1200までだから、固有スキルと同じ扱いにしてくれるのは助かるかも。
…って、思ったけど、説明を見る限りどうやら対幻想体限定らしいね。
まぁ、仕方ないか。
あ、『光の種』は普通にいつでも使えるんだ。
『光の種』は、1分間ステータスが1.2倍される。
1分経つと、10分間全ステータス大幅ダウン。
クールタイム:1時間
…デメリットと比べて、上昇幅が微妙?
まぁ、純粋に悪くないかな。
短期決戦専用だね。
『クリフォト抑止力』は、幻想体の強さを5分の1に減らしてくれるらしい。
…それが必要な程強いやつが多いのに、このクエストが一人用なのは、どうなの?
…あ、掲示板見てみたけど、私がこのクエストを受けたからか、各地の至る所に今まで確認されていなかったモンスターが現れたって書いてる。
『調べる』コマンドで見てみたら『捨てられた殺人者』って名前だったり、『オールアラウンドヘルパー』って名前だったり、名前がわかる前に瞬殺されたなんてことも…
とりあえず、沢山居るらしいね。
まだこのクエスト受けてそんなに経ってないのに…流石プレイヤー。
人数だけは凄い。
どうやら急に現れた事からフィールドボス的な風に思われてるみたい。
えっと…クエスト開始と同時に貰った、幻想体のことについて書いてる本によると、危険度は下から、ZAYIN、TETH、HE、WAW、ALEPHの順に危険になっていくらしい。
名前も確認されている、捨てられた殺人鬼は下から二番目のTETHに分類され、オールアラウンドヘルパーは真ん中のHEに分類されるらしい。
…すごい強さでパーティーが全滅した、って掲示板には書いてる…
恐ろしい。
捨てられた殺人鬼は結構いい所まで行って負けたって書いてあるけど。
だから『光の種』と『クリフォト抑止力』があるんだろうね。
それと、倒したらどうやらこのクエストを受けている者だけ、つまり私だけ、その幻想体の装備、EGOを装備できるらしい。
それぞれに属性があるらしく、敵によって使い分けないといけないらしいね。
色んな武器を使える前提なのはどうかと思うけど…
まぁ、私は基本的には使えるからいいや。
「…とりあえず、『泉霧郷ネーブル』に行こう。
その近くに『捨てられた殺人者』が居るって掲示板に書いてるし。
最初は弱いやつから倒すのが普通のはずだし。」
どうやって行くんだろうか。
道なんて私は分からない。
「なんだ嬢ちゃん、ネーブルに行きたいのか?」
話しかけられて、そっちを見ると、なんというか、冴えないおじさんという言葉がすごく似合うおじさんが居た。
「そうだけど、ナンパならお断り。」
「な、なんぱ!?
ナンパなんかじゃ…
そもそも俺は既婚者だ。
偶然、『泉霧郷ネーブル』って単語が聞こえたから聞いただけだ。」
「ネーブルへの道程、わかるの?」
「あぁ、なんてったって、このゲームで二番目にネーブルへ到達したのは俺だからな!」
なるほど、ただのナンパかと思ったけど、違うらしい。
それに、道が分からず困っていたところなので、正直道案内してくれるかもしれないという事に期待してしまう。
「で、わざわざそれで話しかけてきたってことは、案内してくれるの?」
「その前に、何のためにネーブルに行きたいんだ?
それを聞かないことにはなんとも言えないな。」
「それは、どうして?」
「俺はあそこの風景が好きなんだよ。
だから変なやつを呼んで荒らされるのはあまり嬉しくないんだ。
もちろん、もう少ししたらあそこまで到達するプレイヤーは多くなるだろうが、それはそれだ。」
なるほど。
それなら納得出来る。
私も、自分だけが知ってる綺麗な風景とかは誰にも見せたくないし。
理由さえ教えれば連れてってくれるのは優しいね。
「ん、理由は、『捨てられた殺人者』を討伐するため。
というのが一番の理由だけど、まおー様を遠目でもいいから見てみたいって言うのもある。」
「あぁ…クリム達は人気だからな。
お前さんもクリムが好きなのか?」
「ん、好き。」
「はは、そうか。
んー、と、クリムを見たいって言うのと、『捨てられた殺人者』の討伐って言ってたか。
『捨てられた殺人者』ってーと、最近出現したフィールドボスの事か?
どうして討伐したいんだ?
ドロップアイテムが無いから特に倒す意味もないと思うが。」
「ひとつ訂正。
『捨てられた殺人者』は、フィールドボスじゃない。
私のうけたクエストを進めるために、討伐しないといけない。」
「は!?
あの強さでボスじゃないのか…
クリム達が倒してたが、かなり苦戦していたぞ?
嬢ちゃんが勝てるのか?」
「ん、私の持ってるスキルでかなり弱体化させられるから、問題ない。
というか、嬢ちゃんじゃなくて、リル。」
ずっと嬢ちゃん嬢ちゃんと呼ばれるのは、はらたつ。
これでも大人なのに。
「お?
あぁ、すまん。
俺はリュウノスケだ。」
「そう。
それでリュウノスケ、私を連れてってくれる?」
「おう、まかせとけ!
と、言いたいところだが、一つ頼みを聞いてくれたらいいぞ」
…たのみ。
内容によるけど、とりあえず聞いてみる。
「内容次第。
なに?」
「俺の入ってるギルドなんだが、前衛が不足しててな、リルのPvP見させてもらったんだが、かなり強いだろ?
だからギルドに入ってくれないか?」
ギルドに…
うん、これは残念だけど、自力で行くことになりそうだね。
「ごめん。
それならいい。
頑張って自力で行く。」
そう言って踵を返して反対方向に歩き出すが…
リュウノスケから出た言葉で足が止まる。
「リルの言う『まおー様』がギルドマスターをしている『ルアシェイア』っていうギルドなんだが、駄目か…
残念だ。
それじゃあ、また機会があれば会おう。」
「まって。」
そのままどこかへ行こうとするリュウノスケを、つい呼び止める。
そして振り向いた彼は、「釣れた」と言わんばかりの表情をしていて、最初からこの流れになるのを予想していたようだ。
「なんだ?」
「…試しで、少し入らせてもらうことは、可能?
もしかしたら私とギルドのメンバーの相性が悪かったりするかもしれない。」
「あぁ、いいぞ。
まぁ、とは言っても、俺にはギルド勧誘の権利は無いからクリムと話してもらうことになるがな。」
「その権利もないのに私を誘ったの?
まおー様に断られるとか考えないわけ?」
「そのまおー様が前衛不足について悩んでたから、いいプレイヤーを見つけたら勧誘する、と言ったら二つ返事でオーケーを貰ったから誘ったんだよ。
あぁ、そういえば今のギルドメンバー、オレ以外の五人全員レア種族だが、大丈夫か?」
私もレア種族なのに?と思ったが、見た目では狼の獣人種に見えるか。
「大丈夫。
私もレア種族だから。」
「は!?
普通の獣人種じゃないのか!?」
「黒狼族。」
「黒狼…?」
「分かりやすく言うと、フェンリルの事。
だから、人間じゃなくて分類としては魔族のうちの一つ。」
「はー、銀狐族なんてのも居るから他にも獣人種系列のレア種族はいると思ってたが、まさかフェンリルとはな…」
「とりあえず、『ネーブル』に連れていってくれる? 」
「あ、あぁ、分かった。
とりあえず、用意なんかもあるだろうから明日の今日と同じ時間にここ集合でどうだ?」
「わかった。
じゃあ、それで。」
「じゃあ、また明日な。」
「ん。」
「っし!
これで『北の氷河』から雇う人数が一人減ってポイントが節約できる…!」
それだけ言って別れると、後ろの方からなにか聞こえてきたが、聞かなかったことにしておこう。
「よし、それで、行く用意は出来てるか?」
「もちろん。」
「あぁ、ちなみになんだが、かなり遠いし、俺は戦闘能力ほぼ皆無だからな、護衛は頼むぞ」
「…了解。」
一応昨日一日の間にそれなりにステータスは育成できたから、それなりに戦えるとは思うが、『
さらに言うと、その間にある沢山のエリアのモンスターも少し怖いところ。
リュウノスケからどれだけの数のエリアを超えるかは聞いたが、相当な距離があるみたいだしね。
かなり頑張って育成したけど、それでも一日で上がるスキルレベルの量なんてたかが知れてるしね。
「じゃあ、行くか」
「ん、守る。」
「頼むぞ」
それでリュウノスケを守りながら進んでるが、ひとつ思うことは…
「案外、弱い?」
「いや、そんなことはないからな!?
リルのステータス的には圧倒的に格上のはずなんだが…
クリティカルを毎度毎度出してるとあんま関係ねぇな…」
「ん、逆に言うと、クリティカルを出さないと火力不足。」
「まぁ、そこは仕方ないんじゃないか?
まだ初めてそんなに経ってないだろうし、装備も、な?」
「…また装備をしたてないと。」
「はは、そうだな。
さてと、ついたぞ。
ようこそ、『泉霧郷ネーブル』へ!
歓迎しよう」
「………きれい…!」
子供みたいに目を輝かせながらそんな事を言ってしまい、少し恥ずかしくなる。
年甲斐もなくはしゃぐのは恥ずかしいな。
なんか生暖かい目でみられてる。
「んん!
とりあえず、行こう。」
「あぁ、ギルドに案内する。
クリムには既にチャットで伝えてるから、待っててくれてるぞ」
「…!?!?
心の準備が出来てない…!」
「はっはっは!
歳相応の反応だな!」
「私、大人…!!」
「はっ!?
いやいやいや、どこからどう見ても、良くて中学生だろ!?」
「バカにしてる…?
私、これでも大人だから…!!
きちんと成人もしてる!」
「…主ら、何をギルドの前で漫才してるのじゃ?」
リュウノスケと言い合っていたら、すぐ側にある建物から人が出てきた。
「「漫才じゃない!」」
「くはは!
息ぴったりじゃないか。
のう、リュウノスケ?」
「はぁ、あんまりからかうのはやめてくれ、クリム。」
「…あ、まおー様だったんだ。」
まおー様!?
「それで、お主がリュウノスケが勧誘したっていうプレイヤーかのう?
我はクリムじゃ!
よろしく頼む。」
「…まおー様、ちっこくて可愛い。
私はリル、よろしく、まおー様。」
「か、かわ…!?
って、ぃやかましいわ!!
ちっこいとか言うな!
お主のがちょっと小さいじゃろが!」
可愛いと言われて照れてるの可愛い。
でもちっこいと言われるのは心外。
「これでも高校時代よりは伸びた。」
「高校…!?
リル、お前何歳なんだ…?」
「…女性に年齢を問うのは、デリカシーがないよ、リュウノスケ。」
「おっと、それはそうだな、すまん」
「ん、許す。」
苦笑しながら謝るリュウノスケを許し、クリムと向かい合う。
まぁ、歳なんて知られてもなんとも思わないけど。
「…主、我よりちっちゃいのに、我より大人なのマジ?」
「ん、マジ。」
「お、おう、そうか…そうかぁ…」
「…なにか?」
「!?
い、いや、なんでもない、うむ、なんでもないとも。」
「それで、リュウノスケに、ここまで送って貰う代わりに、ギルドに入って、と言われた。
ギルドに馴染めるか分からないから、一度お試しで入りたい、大丈夫?」
「あぁ、構わんぞ。
強さに関しては心配しておらん。
リュウノスケがかなり強く推薦してきたからのう。」
「…そう。
まおー様と戦ってみたいけど、まだステータスも武器も足りてないから、今度にする。」
「…さてはお主、戦闘狂の気があるな?」
戦闘狂なんて失敬な。
ただ戦うのが好きなだけ。
…これを戦闘狂というのか。
「とりあえず、ギルド『ルアシェイア』へようこそ、リル。
我らは主を歓迎してやろうぞ!」
「…ありがと。
それはそれとして、こんなちっこい子がのじゃのじゃ言ってると、可愛いし面白いね。」
「ぃやかましいわ!!?」