ハナコとピエロ   作:浦々浦和

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なんか幻覚が続いた


ある日のピエロとテントと講義

「神秘とは何か知りたい子集まれ〜〜」

 

「……」

 

「あは!コールドチルド寒冷地!!思わずコートが欲しくなってしまう視線をどうもありがとうマドモアゼル!!」

 

 私はそんな小さな子供ではありません。

 というか寂れたサーカスに使われていそうなテントに連れ込むとかって狙っているんですか?

 

「さぁてさて、神秘とはなんぞやという話を致しましょう。先ず、神秘と呼称される特異な力はこのキヴォトスでのみ確認されている代物……という訳ではないのですよぉ。ワタクシの様に外から訪れた者でも存在が確認出来る程度には存在しています。で す が!!」

 

 講義をする先生……キヴォトスではBDを用いての自習が主流ですけど、トリニティに管理されていた図書の中に私の様な子供に知識を授ける大人を先生と呼ぶと書かれていたのを足を大きく上げて態とらしく音を立てて歩くピエロを見て思い出す。

 先生が居れば私も何か変わったんでしょうかね……

 

「その多くは不活性……或いはスヤスヤネムネムと死に絶え哀れにも残骸と成り果てたものばかりでワタクシの様な研究者達は号泣!!お涙頂戴ちょちょぎれの残念!!無念!!の失意の底に沈むしかなかったんですよぉ」

 

 タンっ!と一際大きな音が鳴り、反射的に彼の方を見ればニコニコと綺麗な作り笑いを浮かべた無機質な真紅の瞳と視線が合う。

 どうやら色々と考えずに今は自分の講義をしっかりと聞いて欲しい様ですね……私は具体的にどうやって神秘を封じるのかだけが気になるだけなのに。

 

「それでも残滓があれば研究を重ねるのが研究者という者!!まぁ?ワタクシは見ての通りピエロなんかをしちゃったりもしていたんですがねぇ?しかして勤勉な同胞達が残滓からキヴォトスの存在を証明し、ワタクシはこうしてこの場に立てているから結果オーライ勝ち組最高!!って訳で」

 

「……」

 

 一日にも満たない付き合いですけど、この人お喋りなせいで話の脱線が凄い……!!

 私は別に貴方が勤勉かどうか遊び人かどうかなんて興味は──

 

「んふっ!いけませんねぇマドモアゼル。余裕は人生を豊かにするスパイスですよ。急いては事を仕損じる、なんて諺もあるくらいですから」

 

「ッッ!!」

 

「此処の内が読まれてびっくりしました?恐怖しました?うふふ!!可笑しいものですね!!滑稽ですね!!マドモアゼル。ワタクシでなくとも貴女を知る者、心理に優れた者、真に心優しき者であればパパッと見抜けてしまう程に分かりやすい顔をしておりましたもの」

 

 胸を指差すところか上のあたりを円を描く様に触れながら、ケラケラと笑うピエロ。

 何が楽しいのかさっぱり分かりませんが、ジッと目を細め彼の指から自分の胸を守る様に隠す。

 

「……セクハラですよ?」

 

「身持ちが硬いですねぇ。ですがですが、淑女であるのならその方が宜しいでしょう。尤もワタクシの様にハジけてしまった方が色々と楽ですけどね!」

 

「少なくともピエロの化粧は嫌です」

 

「あはぁ……事実!!順当!!当たり前の結論ですな!!……さて、場も温まったところで本題へと。ワタクシが知りたいのは神秘の根源、何故このキヴォトスでのみ存在しているのか、何故ワタクシの世界ではとうに忘れ去られ価値なき物となってしまったのかなのですよぉ」

 

 珍しく──そんな事が言えるほど関わっていないけれど──ふざけた表情ではなく、真剣さが感じられる表情で語るピエロを見てふざけた化粧をしているけど研究者として真面目なんだと思えました。

 

「……それを知る事で貴方は何を成し得たいのですか?」

 

「同胞達は皆、大きな事を考えている様ですがワタクシは単に知りたいだけですよマドモアゼル。その先の事は知ってから考えます。ワタクシ、真面目!ですから取らぬ皮算用はしない主義なのデス」

 

 嘘臭い気配はしましたが、此処でそれを指摘したところでこの人を騙る事が得意なピエロが素直に答えるとは思いませんし、煙に撒かれるかよく分からないテンションで流されるかの二択でしょう。

 それに……彼の手を取って此処にいる以上、私がキヴォトスの事を気に掛けるというのは御門違いも良い所です……だって、逃げ出したのだから。

 

「その夢と私の神秘を封じる事が繋がるとは思えませんが」

 

「神秘の根源を知れば何故、神秘が不活性化したのか知る事が出来ましょうや。さすれば、あとは応用閃きのお時間です。マドモアゼルの神秘に干渉し、これを不活性化させればマドモアゼルの輝かしい未来に影を落とす神秘はスヤァァ……とお眠りにつくんですねぇ!」

 

 不活性化した神秘をよく知るからこそという訳ですね。

 しかし、その方法で私の神秘が不活性化したとしてその時の私は私と呼べるのでしょうか?──いや、そもそもその状態の私は生きていると言えるのでしょうか。

 

「──ご安心ください。オトモダチを失う様な事はしませんよ。ハナコさんの安全が脅かされる結果が出れば、ワタクシは最大限の努力を用いてこれを回避すると此処にお約束致しましょう。それが遅々として進まなかったワタクシの研究が進むかもしれない事への対価です」

 

 まただ、酷く軽薄な声なのにそこに込められた言葉は優しくて──それがまるで砂糖が紅茶に溶ける時の様に私が抱くピエロへの警戒心をゆっくりと溶かし思考を絡め取っていく。

 

「おや、少しばかり情報を詰め込みすぎて疲れてしまいましたかな?明日からの実験に差し支えがあっては堪りません……休息をマドモアゼル。眠れなければこのピエロ!!子守唄を全力で歌唱させていただく所存ですよぉ!!」

 

「……五月蝿そうなので大丈夫です」

 

「辛辣!!激痛!!ショック!!悲しいですねぇ涙が出てしまいそうです……あっ!もう出てましたね!!ってこれはそういうメイク!!」

 

「はいはい。おやすみなさいピエロ」

 

「雑の極み!!はぁい、おやすみハナコさん」

 

 外にハナコさん用のテントを用意してありますのでと、この場を去っていく私の背中に言葉をかける彼の方を向かずに手を振りながらテントを出る。

 見上げた夜空の星はとても綺麗で美しいのに、後ろのテントに居る存在のせいか楽しむより早く寝て休みたいという欲望が上回ってしまいました……ちょっと勿体無い事をしたかな。




感想でピエロのCV子安説が出て、それを見た瞬間もう脳内でピエロが喋る度にCV子安で聞こえてきて大変煩いです(失礼)絶対、幻覚強まったのこのせいだって
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