朧月   作:アサシン・零

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第2話「開戦」

北 哀鴨は黙って聞く。慶 若純が指名する。

 

「まずは秦 李準」様、お力をお借りください。」

 

「北 哀鴨様、慶 若純様、謹んでお受けいたします。」

 

「秦 李準」様を将軍として浄邱の戦争の際には出陣していきます。」

 

「軍師中郎として秦様には悠 覇雄様についてもらいます。」

 

慶 若純は口髭を触りながら次の将軍を指名する。

 

「次に湯 永騎様、前へ。貴殿の軍師は河 仁純がついてもらいます。」

 

「よろしく。永騎様。」

 

「ふむ。河 仁純、おまえはいい奴だ。人柄で分かる。確か武官で軍師だとか。」

 

「はい。」

 

「しっかり頼むよ。」

 

慶 若純は次の将軍を指名する。

 

「曹 純双様前へ。貴殿の軍師は金 淡武がついてもらいます。」

 

「黄 慧克様は李 神魏様が、壬 威虹様は扇 焔鳳様が、それぞれついてもらいましょう。」

 

慶 若純は北 哀鴨の方に向いて向き直り中華風の礼をする。

 

「北 哀鴨様、以上で人選を終わらせていただきます。」

 

「うむ。今回は高句麗領の浄邱城を攻める故にどうしても攻城戦になる。私がおまえたちの総大将だ。だからおまえたちの命を俺に預けて欲しい。逆におまえたちからは俺に力を貸してくれ!!」

 

覇気が乗った声で北 哀鴨は兵達に言い放つ。

 

「皆!!百済軍の一員として戦うのだ!!高句麗を痛い目に遭わせてやれ!!ただし俺の命令は全員生き残れだ。」

 

「おーーーー!!」

 

士気が上がり、武官たちの鼓舞する声が西楼城に木霊した。

 

それぞれ青色の鎧をした兵士達が城門をくぐり抜け出陣する。

 


 

百済西楼軍が出陣してから数時間後、高句麗:浄邱城

 

西楼と浄邱は近い。浄邱の西におよそではあるが14里(だいたい54.982 キロメートル)近くに西楼がある。ここも百済と高句麗の戦争の際の最前線となっていた。

 

浄邱城・政庁

 

「伝令!!申し上げます!!百済の西楼軍がこちらに向けて出陣したと間者から報告がありました。」

 

太守である朴 弘応は聞く。

 

「何!?、兵数は?」

 

「それが.............」

 

伝令は渋る。

 

「何、火急だ。申し上げよ。」

 

朴 弘応は言い出す。

 

「.................1万3020です。」

 

「微妙だがかなりの大軍だな。おまえは警鐘を鳴らせ、兵士達を男達から招集しろ。緊急事態だ。子供や女性は逃がすのだ.................。」

 

 

カンカンカン!!

兵士達が警鐘を鳴らす。

 

李 夏瑞は寝ていたが警鐘の音を聞き起きる。

「あれ?兄さん。御父様は?」

 

父の李 瑞純は家にはいませんでした。母上は携帯食料を持っています。兄上は火種になりそうな物や皿などを用意し、私に一言。

 

「父上は高句麗であるこの城を守るため出陣したぞ。俺も行くから、夏瑞は母上と一緒に逃げてくれ。これを持て。」

 

「今回は鷲鷹城を目指して逃げろ。」

 

私も母上も慌てて家を捨てて逃げました。私は察していました。百済軍が攻めてきたのです。

 

しかし、百済軍の策略によって間者がいたのか油がまかれていた浄邱はたちまち燃やされ、あまり逃げ場がありませんでした。

 

「おまえ、俺は百済の湯 永騎。おまえのその首貰った!!」

 

私はもうダメかと思いましたがふっと目を開けるとそこには父の李 瑞純だ。

 

「おまえたち何している?早く行きなさい。」

 

「湯 永騎と言ったか?生憎、こいつは私の娘なんでね。」

 

「おまえは高句麗の名将。李 瑞純!!確か荒起城での戦いは劣勢だったみたいだが。」

 

どうやら湯 永騎という武将は父を挑発したいらしいが父はそんな頭に血が上るような人ではない。

 

「ふむ。永騎よ。一騎討ちを申し込む。良いだろう。李 瑞純よ。かかってこい!!」

 

父の武器は大剣。一方で湯 永騎という武将は戟が武器らしい。私は一瞬二人の一騎討ちを見惚れいた。母は戦死したらしい。

 

やがて父が負け、湯 永騎が勝利した。

 

私はハッと我に返ったが母上は既に百済軍の兵士達に殺され死去。湯 永騎はその瞬間、父をその戟で殺した。湯 永騎の戟にはかなりの返り血があった。それと同時に父の首は胴体と切り離された状態であった。

 

「御父様.............?」

 

湯 永騎は言う。

 

「そなた名前は?」

 

私は泣きながら言う。

 

「李 瑞純の娘である李 夏瑞と申します。私を捕縛したいなら抵抗は致しません。」

 

「いや、貴殿は見逃してやる。父と母のことはすまん。これも戦争だからな。」

 

私は泣き止むと湯 永騎に目を向けて言う。

 

「御父様と御母様の遺体を葬ります。なので御父様と御母様の遺体だけでも渡してはくれませんか。」

 

「良いだろう。我々は政庁を落とす。河 仁純よ。」

 

「はい。何事ですか?」

 

「敵ながら彼は立派な戦士だった。葬ってもらいたい思いは彼女と同じだ。彼女の手伝いをしてくれ。」

 

百済の兵士達は動揺したが湯 永騎が手を挙げると兵士は黙った。浄邱の城壁外にある丘で父上と母上は眠ってもらった。

 

兄上の様子も心配だが、兄上はおそらく高句麗に勝ち目が無いと思って逃げただろう。

 

浄邱の戦いは死者239名。負傷者165名。高句麗にとって大損害を与えた。

 

私は父上の言う織 水羽二千人将の元を訪ねるため、まずは丹辺城を目指すことにした。結局、父上と母上は死んだため、私は父の持っていた翡翠の勾玉を御守りとして持つことにした。

 

この百済軍の攻勢によって高句麗側はまたもや後手に回ったのだった。

 


浄邱が落とされて約6日後、高句麗の王都平壌城・王の間にて

 

「伝令です。失礼いたします。申し上げます。9日前に荒起城攻略隊が壊滅し、6日前に浄邱城が陥落したとのことです。」

 

安臧王様、このままでは高句麗軍は壊滅的です。体制を建て直し、訓練してはいかがでしょうか。

 

「うむ。私の見立てでは新兵が多すぎる。百済と新羅両方は無理だろうが講和という名の交渉を考えておいてくれ。2つの勢力を相手にするには分が悪いからな。」

 

「分かりました。信殿にお任せしていいですか?」

 

「おう。任せてください。陛下も気になることがあったら軍務省へ来てください。私の執務室がありますので。」

 

安臧王は一瞬、目を瞑り考え事をしていたが、一言言う。

 

「では信 興瑞。私からの命令だ。交渉を考えよ。そして無駄な戦争は避け富国強兵に務めよ。」

 

信 興瑞はこう言う。

 

「宰相の高 阿岐様も同じ考えですか?」

 

「そうだな。無駄な血が流れすぎた。戦争は止めだが農業に

商業信殿はどっちが良いと思う?」

 

「そうですな。農業を先に行って商業を行うと良いと思います。その後は地方の村々には農業を重視して。城塞都市は商業を重視した方がいいでしょう。」

 

「安臧王様もその方針でいいですかな?」

 

安臧王は言う。

 

「構わない。しかし二度言うが無駄な争いは避けよ。それが絶対条件だ。」

 

渋々、二人は答える。

 

「分かりました。陛下のお望みのままに。」

 

 

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