堂島菜々子とやらはこのテレビの中の世界を知り尽くしているようだった。
スマホから流れてくる、なんたらだクマ~、という変な語尾の付いた男の助言を堂島さんは躊躇いもなく従い、走る、走る、走る。
やがてウチの学校の体育館のような建物が見えてきて、堂島さんはそこで足を止めた。
「・・・時里君。準備は良い?」
暗に戦闘があるかのような雰囲気にある程度を察しながら頷くと、堂島さんが体育館の扉を開けた。
「あら。灰かぶりのお姫様の元に、王子様の方から来るなんてね」
体育館の中央。何も置かれていない空間で『すみれ』1人が倒れ伏していた。そしてすみれの側には半透明の水色と金色を混ぜ合わせた色をした巨人が立っていた。
「ふふふ。『すみれのために』ここまで来るなんて、バカな王子様。あんなグズは捨てて別の女を探せば良いのに」
すみれの側にいる巨人ということは、アイツがすみれのペルソナなのだろうか。それにしては少し『すみれ』に対して敵対的な気もするが・・・。
「気をつけて。アイツは『芳澤すみれ』であって『芳澤すみれ』ではない、いわば影の存在。攻撃して弱らせないと『芳澤すみれ』本体を食べて更に強くなるバケモノだよ」
やはり何かを知っている堂島さんには色々と聞きたいことがあるが、そういうのは全部後回しにして俺は叫んだ。
「こい、『イザナギノオオカミ・賊神』!!!!」
頭にある帽子を投げ上げると、帽子が光となって崩れ、そして赤黒い巨人へと変貌した。
「やっぱり・・・・・・凄まじいプレッシャー・・・」
「『幾万の真言を信じて』!!!」
今出せる最大火力の技を叫ぶ。すると背後にいた巨人は例のポーズをとった。
そして。
鴨志田の城を破壊し尽くした必殺の嵐が巻き起こった。
体育館の壁や天井が吹き飛び、地面はエグれ、すみれのシャドウは全身を斬り刻まれる。
一応堂島さんとすみれには当てていないハズだが、技の副次的な突風で吹き飛んでしまっていた。
「すみれ!!!!」
堂島さんは後回しにして、取り敢えず吹っ飛んだすみれを追いかけて抱きかかえると、すみれは目が虚ろながらも、ニコッと笑った。
「あ、・・・・・・せんぱい」
「おう。大丈夫か?」
「ここ、は?・・・・・・」
「知らね。多分テレビの中としか言いようがない世界」
「???」
「いや俺も知らないんだって」
「知らないのに来てくれたんですか?」
「まぁ、そりゃあな。大事な後輩だし」
「・・・・・・ふふ。なんですか、それ」
「他に言い方が無いんだから仕方が・・・ってか元気になったなら離れて良いか?もう元気だよな?」
「元気じゃありませーん」
「・・・・・・・・・ねぇ。もう終わった?
あんまりこの世界に長居すると私が怒られるんだけど」
2人だけの空間を作って話し込んでいると、堂島さんが目を三角にして割って入ってきた。
・・・・・・・・正直今のすみれ猫ちゃんは大変可愛らしかったから何十分でも眺めていたかったのだが、そうもいかないらしい。
「すみれ。歩けるか?」
「・・・・はい」
すみれの腕を引っ張って立たせると、上手く立てなかったのかフラッと俺に倒れかかった。慌てて受け止めると、すみれは顔を真っ赤にして謝ってきた。
「あ、その、ごめんなさい」
「あ、うん。こっちもごめん」
気まずくなったので取りあえずお姫様抱っこしてあげると、すみれは更に顔を赤くした。
「このバカップルは・・・・・・・・」