便利屋節約ご飯   作:ひよりん

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第1話

「お腹、空いたわね…」

「うん…」

「まあ、ね」

「あ、ああああアル様!すぐに何か用意します!!」

「ハルカちゃ〜ん…そんなに慌てなくても、なんとかなるから大丈夫だよ…」

「ムツキが元気ないわね…本格的に…」

「弱ってるね…」

3人分のため息と、あわわと慌てる声が事務所に響く

もう2日も何も食べていない、これでは元気も出ないのは仕方ないけど…

「で、どうする?何食べる?」

「意外と元気ね…」

「そりゃあもう、2日食べないのなんて慣れちゃったし!」

「う……で、でも大丈夫!もうすぐこの前の依頼の報酬が入るから!それでパーッと食べに…」

(ピロン♪)

「振込が来たわ!」

携帯を手に取り、口座を確認…

(ピロン♪ピロン♪ピロン♪ピロン♪)

しようとした途端、大量の通知が鳴る

「…引き落としも来たみたいだね」

「家賃、まだ払ってなかったっけ?」

「あと光熱費に水道代とか」

カヨコとムツキの言う通り、引き落としは続き…口座に残ったのは報酬の1割にも満たない額

でも、コレだけあれば十分贅沢ができる…!

「で、でもこのくらい残ったし、コレなら今日は…!」

「待って、今月他に依頼が入らなかった場合今日使えるのは?」

「え? ええと…」

「わーお、みるみる減ってく〜」

「1食…400円ほど、でしょうか…?」

「だね、4人分でこれだけか…」

「…そ、そんな…今日だけ!今日だけ美味しい物でも食べて、英気を…!」

「…それをすると、明日から1食100円でなんとかする生活になるよ」

チラリとムツキをみるとニコニコと楽しそうにコチラを見ている

一ヶ月も依頼が入らないなんてことはないだろうけど…

「うう…!」

「あ、アル様…やっぱり私、内臓を…!」

「売らなくて良いから!」

(…こんなの全然アウトローじゃないけど…)

「部下を飢えさせるような社長なんて、全然ハードボイルドじゃないわ…なんとかしてみせるから!!」

「だって?」

「…まあ、大丈夫でしょ」

「ハルカ!ムツキ!ついてきなさい!カヨコは電話番よろしく!」

「は、はい!アル様!!」

 

 

「で、どうするの?」

「待って、今計算してるから…ええと、お米は1キロでどのくらい持つのかしら…」

「4人だと…5日とか?それがどうかした?」

スマホのチラシアプリを眺める

「ええと…え、えぇっ!? 卵ってこんなに高いの…!?」

「あ、アル様、もしかして…」

「アルちゃんが作るの?」

「そ、そうよ!!何か悪い!?」

「いいえ!で、でも良いんでしょうか…私なんかがアル様の手料理を…」

(えっと、お米が…調味料はアレとそれはあるけど…何を買えば…!)

「…何を、しているの?」

「え?」

ハルカでも、ムツキでもない声に振り返る

「…あなた達、スーパーに来ることあるのね」

「……ぇ…?」

「あちゃー…」

「あ、ああああ、アル様…!」

「な、なんで、なんでここにいるのよぉぉーーっ!!」

慌てて距離を取る

そう、声の主は…風紀委員長、空崎ヒナ

「…そんなに警戒しなくてもいいわ、今日は私もオフだから」

「オフ?だからゲヘナからこーんなに、離れたスーパーまで買い物?」

「…そうね、はあ……」

ヒナは大袈裟にため息をつき、一言「騒ぎは起こさないで」と言って離れていったけど…

(な、なんでこんなに離れたところにいるのよ…!冗談でしょ…?もう、帰ろうかしら…)

「アルちゃ〜ん、ご飯どうするの?」

「うっ……わかってるから!」

お勤め品の野菜や魚を見て回る、これをどう調理したら食べられるのか、必死に携帯と睨めっこしながら…

(…食べられるのかしら…)

手を伸ばした魚のパックがひょいと取られる

「あっ…」

「あ、アル様の取ろうとした魚を…!許さない…!」

「え、あ、ごめん…? あれ、便利屋?」

「…ここってそんなにゲヘナから近かったっけ?」

「…給食部の…確か、愛清フウカ…よね?なんでここに…」

「食材の買い付けに来たんだけど…」

「こんなところまで!?」

「新規開拓というか…安く美味しい食材を探していろんなところ見てるの」

「ねえねえ、アルちゃん?もう大人しくゲヘナで給食食べない?」

「できるわけないでしょ!そんな事…!」

「ねえ、その…自炊しようとしてるの?」

「…まあ…」

「余裕無い?」

「ぜーんぜんっ」

「ちょっとムツキ!」

「……なら」

 

「良かったねー、アルちゃん、給食部の仕入れルートから安めに食材分けてもらえて」

「…うう…はぁ…」

「アル様…だ、大丈夫ですか…?」

(プライドを捨てたのもそうだけど…フウカと話してたらヒナが出てきたのもあって、すごく疲れた…)

とりあえず保存の効く野菜と大量のお米、必要最低限の調味料におつとめ品の魚…

「戻ったわよ!カヨコ!」

「おかえり、上手くいったみたいだね」

「え、えと、まあ…」

「で?アルちゃん何作るのー?」

「…ま、まあ、待ってなさい!」

「は、はい!!」

 

(よし、やるわよ!)

まずはお米を研ぎ洗い、炊飯器の目盛り通りにセット…そしてご飯を炊ける状態で少し置いておく

次は魚…半身に切られたもので、下処理もほとんど必要ない…ただ、古くなっているから食べると臭うかもしれない

(これを…)

皮を包丁でかいてウロコがないことを確認し、皮にバッテンの切り込みを入れる

そしてザルにおいて沸かしたお湯をかける

(…これで良いのよね…? そのあとは…)

水を張った鍋に生姜と一緒に入れて中火で沸くまで煮る

顆粒だしを加えてアクを取りながら火を通し、醤油、味醂、味噌を加えて弱火で煮込む

「あとは…」

ほうれん草を沸騰したお湯に入れて、1分茹でる、そのあとザルにだして、冷水で冷やし、良く絞ってから一口台に切る

そのあとはめんつゆに浸しておく

「ご飯を炊いて…これが煮詰まれば……」

「意外と美味しそうな匂い…」

「…意外と家庭的」

「あ、アル様…」

ご飯は炊けた、ほうれん草もめんつゆを充分吸っているし、煮汁の味も良く煮詰まって、丁度いいくらい…

「よし、完成!」

 

「鯖の味噌煮に、ほうれん草のお浸しか」

「あははっ!超家庭的じゃん!」

「う、うるさいっ!これでも頑張ったの!!」

「ぁ…ありがとうございます!ありがたくいただきます!!」

「そうだね…じゃ、食べようか」

「「「「いただきます!!」」」」

「あーむっ…うん!意外といい感じ?」

「うん、美味しい」

「そ、そう?良かった…」

「ああ…こんなに幸せでいいんでしょうか…!?…わ、私…」

「ハルカ、もう少し静かに食べて」

「は、はい…」

鯖味噌を箸で切り分けて口に運ぶ

良く味が染みていて、これだけでご飯がどんどん進む…

鯖の身はしっかりしてるのに、お腹周りの身をつまんでみると…ふわふわで、とろりと口の中でほぐれるようで…

「美味しい…!」

「このおひたしも良いね」

「えー…?…うーん…確かに美味しいけど、薄くない?」

濃い味の鯖味噌と対照的に控えめのおひたし…

(ちょっと薄すぎたかしら…言われてみれば水っぽいような…)

「さ、鯖味噌が濃いので…口直しには丁度良いと思います…!」

「は…ハルカ、無理に褒めなくていいから…」

「いえ、その…ものすごく!美味しい…です……」

「まあ、美味しいと思うよ、私は好きかな」

「そう…なら良かったわ」

「えー…あ、アルちゃんおかわり!」

「私も良い?」

「良いわよ!どんどん食べなさい!」

わいわいと話しながら食べていると、あっという間に鯖味噌もおひたしも無くなって…

「…もう無いか…」

「あ、待って、これを…」

ムツキが煮汁をご飯にかけ、それを頬張る 

「ん〜!美味しい!」

「……わ、私も…おかわりしても良いでしょうか…!」

「まあ、今日くらいもう少し食べても良いか…社長、おかわり」

「え、あ、ま、待ってなさい!」

(…ふふっ)

 

「はー、美味しかったー!」

「この調子なら意外となんとかなるかもね」

「さて、お腹も膨れたし次の依頼に向けて準備よ!」

「……その依頼を待ってるんだけどね」

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