虚音イフの独白   作:サンサソー

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こちら、2025年5月12日投稿のお話でございます。


奴笑

 あたくし、それはもう永く生きているものでして。

 この化け物と旅の道連れなどを買って出てくれるものはないかと考えた次第で御座います。

 

 時は平安。都は人がおるものですから、妖の類も集います。それはもうわんさかと。

 ですからあたくしと共に旅に出ようとしてくれる怪異もあるのでは、と。京の町を観光でもしながら探してみようと思ったので御座います。

 

 されどあたくしもこの見てくれで御座いますから、武者や僧侶、道士たちがやはり向かってくるのです。

 刀や退魔の札などを片手に、それこそ鬼の形相で襲いかかってくるもので御座いますから、あたくしは恐ろしゅうて恐ろしゅうて逃げ回ったので御座います。はは。

 

 風にそよぐ葉に変じ、そこらに落ちている小石となり、あの方々の視線をどうにか潜り抜けようと頑張ったのです。

 しかしそこは歴戦の神秘殺し。易く逃げ切れることは滅多にありませんでした。

 

 目当ての妖怪を見つけようにも、大半は神秘殺しどもに対するため大江山の鬼や大蜘蛛といった強者の傘下にありましてな。どれも忙しいようで、このような老骨との旅の供などは捕まらぬのです。

 

 さらにはあちこちを嗅ぎ回る怪しい化け物がいると、怪異にも追われる身となってしまいましてな。どちらも狙ってくるものですからゆっくり団子も喰わせてくれないのです。

 

 はて。あたくしのようなただの化け物を追うのではなく、互いに睨み合っておればよいものを。何を躍起になることがあるのやら、あたくしにはとんとわからぬので御座います。

 

 されど多数に追いかけられるというのも存外に心地よいものでして。斥候の管狐を取り込んでみたり。鬼と力比べをしてみたり。人を化かしてちょちょいと金銭をちょろまかしてみたり。ああ、夜闇に紛れて高らかに吼えてみることもありました。

 

 ここは妖が如く悪さをしては、怪異も人間も困らせてみた次第で御座います。いや、これが楽しくて。ついつい恐ろしい継ぎ接ぎな化け物となって、町を駆け回るような馬鹿もやらかしました。

 

 これが、童心に返って遊ぶというものでしょうか。年甲斐もなくはしゃいでしまいました。

 

 無論、そうやって暴れていれば討ち取ろうと相手も躍起になるもの。ついには捕まって刀をこう、頭にやられてしまったので御座います。

 

 ええ。あたくしの頭はすぴぃかで御座いますから、穴の空いた頭を抱えて泣く泣く逃げてやりました。唖然とするあの方々のお顔は大変面白いもので御座いました。

 

 そんなこんなで京の町を掻き回しては引っ掻き回し、悠々と旅路についたので御座います。当初の目的は達成できず一人で続けることにはなりましたが、今となってはそれが良かったので御座いましょうな。

 

 あたくしは、これこのように身体が根無し草で御座いますから。姿は変わる。寝床も変わる。あれよあれよと変わる変わる。

 

 道連れとなってしまう方には大層ご迷惑をおかけすることになる。それを思い知ることもあったのですが、今宵はまだその話はなしで行きましょう。

 

 話のすとっくが無くなれば、先月のように空いてしまうやもしれませんからね。いや、失敬。

 

 はい?今はやんちゃが収まったのかと?

 

 んふ。

 

 さて、どうで御座いましょうなあ。

 イフ、わかんない。

 




がるる。
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