Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける   作:お薬二錠

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書いたはいいけど嫌になって一度消しました。でもやっぱり形にしたくてまた書き始めました。読んでワクワクしたり、ゾワゾワしたり、心を動かすことが出来たら私は満足です。




MyGO!!!!!編 迷子を支えるタスケビト
第一話 ハジマルヨ


『あなたどこからきましたの?』

ーきかないで、おねがいだから

 

『きっとあなたのごりょうしんもしんぱいしていますわ』

ーもどさないで、もうあそこにかえりたくない

 

『だいじょうぶ! わたくしにおまかせですわ!』

ーはなさないで…ここに、いさせて

 

『    』

ーあけないで…それだけは、ほんとうにだめだから…

 

 

 

 

 

チアキ

 

 

 

 

 

ハッと目を開け、勢いよく上半身を起こす。

気づけば激しく息切れをしており、額からは冷や汗が流れていた。

 

「…首もベトベト。気持ち悪いから風呂入ろ」

 

家を出るまでにはまだ時間がある。まとわりつく汗と、昔から見る悪夢を綺麗さっぱり洗い流すために、俺は長めに湯船に浸かることにした。

 

 

 

 

双海 千明希(ふたみ ちあき)

それが俺の名前。一人暮らしをしていて年は16。

最近共学になった花咲川学園に通っている高校一年生だ。

 

「おはよ、千明希」

 

「千明希、昨日はマジでサンキューな!」

 

「いやいや、貢献できてよかったよ。またなんかあったら呼んでくれ」

 

下駄箱で同級生と言葉を交わし教室へ向かう。

クラスメイトとの交友関係は良好で、楽しい学園生活を送っている。

 

「なぁ千明希、マジでうちの部活入る気ない?」

 

「前も断っただろ? 一つに絞ることはできないって」

 

「ちぇー。先輩に頼まれたんだけどなー。あの強力な1年を何としてもうちの部活に引き込めって」

 

「こいつを欲しがる部活なんて山のようにあるって。ってか一通り部活の助っ人ってやったんだよな?」

 

「ああ、昨日のバスケ部。その前は、剣道、あと茶道もやった!」

 

「「茶道!?」」

 

「そんなに驚くことかよ」

 

自分で言うのもなんだが、勉強に運動と俺は昔から何でも出来る方だった。いや、出来るようにしたと言った方が正しいかもしれない。そんなこんなで入学してからしばらくして、助っ人として活躍した俺を見て他の部活動からも助っ人をお願いされるようになったのだ。

 

 

 

「てかさ! 茶道部、剣道部といえばイヴちゃん先輩いるじゃん!」

 

「パスパレの活動もしてるし、なかなかハイスペックだよな」

 

「当たり前だろ! イヴちゃん先輩はハイスペックで、努力家で、そ、そして…」

 

「「そして?」」

 

「か、か、かわいい!」

 

「…悪い千明希。そう言えばこいつ熱狂的なパスパレファンだったわ」

 

「お前! イヴちゃん先輩の隣に座ったのか!? あんな可愛いイヴちゃん先輩と部活終わりになんかいい雰囲気にならなかったのか!?」

 

「な、なってない。なってないからゆするのやめろ」

 

血走った目のクラスメイトに俺の声が届くことはなく、この場をどうやって抜け出すか考えていると思わぬ助け舟がやってきた。

 

「ねぇ、教室の前で邪魔なんだけど。どいてくれる?」

 

「椎名さん!? す、すみません」

 

冷たい目で俺たちを見流し、

クラスメイトの椎名 立希(しいな たき)は自分の席へ歩いて行った。

 

「どうしよう。俺、朝から椎名さんに声かけられちった」

 

「いや、かなり冷たい目で見られてたぞ」

 

「ああ、まるでゴミを見下すかのような目だった」

 

「いいんだゴミを見下すような目でも。てか、朝から椎名さんに声をかけられた今日を俺は幸福だと思う」

 

「「えぇ…」」

 

クラスメイトの嬉しそうな表情に対し、俺たちの顔は引き攣っていた。

朝のHRを告げる予鈴がなり、俺たちはそれぞれの席に着く。担任が入ってきて出席を取り、朝の連絡事項を簡潔に話し始めた。

 

ふと、窓の外に目を向けると今にも雨が降りそうな曇り空。天気悪いな〜と思いながら、あくびをして眠気に耐えつつ担任の話を右から左へ聞き流した。

 

 

 

 

 

時刻はお昼を過ぎ、俺たちは全校集会が行われている体育館に集まっていた。花咲川学園は最近共学になったこともあり、女子生徒の比率が圧倒的に多い。今朝のクラスメイトみたいに、それが目的で入学する奴もいるが、俺がここに入学した理由は消去法だ。

 

何てことを考えながら始まるまでの時間を潰していると、後ろに並んでいた椎名に声をかけられた。

 

「ねぇ、何であんたここにいんの?」

 

「え? とうとう存在を否定されるレベルまで落ちたの俺?」

 

席が前後ということもあり、椎名とは多少交流がある。入学当初は鋭い眼光で睨まれるばかりだったが、最近普通に会話が出来るようになってきた。

 

「椎名とは仲良くやれてると思ってたんだけど」

 

「はぁ? 別に仲悪いなんて言ってないでしょ」

 

「椎名!」

 

「ち、ちがっ! ほんっとうざいコイツ。そうじゃなくて登壇する生徒は別の列に並ぶって朝先生が言ってたじゃん」

 

「???」

 

そんな話をしているうちに全校集会が始まり、校長先生が近日行われた部活動の表彰を行なっていた。

 

「双海君? 双海千明希君はいるかな?」

 

「は、はい! ここにいます!」

 

咄嗟に手を挙げ急いでクラスの列から抜け出す。

去り際に椎名からバカだという声が聞こえたが、反論する暇もなかった。全校生から注目を浴び恥ずかしい思いをしながら壇上に上がる。

 

「すみません。普通にクラスの列に並んでました」

 

「構わんよ。バスケ部の部長から今回の優勝は彼の活躍があってこそ。表彰状を受け取るのは彼しかいませんと言われてね」

 

「正式に所属してるわけではないんですから、俺が受け取る権利なんてないと思うんですけどね」

 

「そんなことはないさ。皆の好意、しっかり受け取るべきだと私は思うよ。君の活躍にこれからも期待している」

 

「…ありがとうございます」

 

賞状を受け取り、校長先生に向かって礼をする。

 

「双海‼︎」

 

降壇しようとしたところで、バスケ部の部長が大きな声で俺の名前を呼んだ。

 

「俺たちバスケ部はいつでもお前を歓迎する! 一緒に目指そう高みを! 一緒に青春の汗を流そう! お前がいれば俺たちは全国に行ける!」

 

「あ、すみません。全国大会出場がかかった試合は別の予定が入ってるので参加出来ません。あと、部活も入る気ないのでごめんなさい!」

 

いつの間にかユニフォームに着替えていた部長は、

俺の言葉を聞いてしおしおとその場に座り込んでしまった。

 

「独占は許さないぞバスケ部!」

 

「双海! サッカー部も頼りにしてるぞ!」

 

「茶道部も忘れないでね!」

 

「お前達全校集会中だぞ! 大人しくしろ!」

 

先生がこの場を収めようと悪戦苦闘する中、俺はそそくさと壇上を後にした。

 

 

 

 

 

「あー、恥ずかしかった」

 

体育館近くの自販機で喉を潤すと、背後からガコンと缶が落ちた音が聞こえた。

 

「相変わらずすごい人気ですね」

 

「別に、やりたいことやってるだけだよ。複数の団体でヘルプ掛け持ちしてるのは海鈴も同じだろ?」

 

声をかけてきたのは外に跳ねた黒髪が特徴の

八幡 海鈴(やはた うみり)。椎名と同じく俺のクラスメイトで、複数のバンドでサポートをやっているベーシストだ。

 

「ちゃんと稼働しているのは10バンドくらいです。大したことではありませんよ。それより花咲川の助っ人部長にお願いしたく、前払いをと思ったのですが」

 

そう言う八幡は、俺が今飲んでいるのと同じ缶コーヒーを手にしていた。

 

「被ってしまいましたね。申し訳ないので、前払いは後日にします」

 

「くれるんだろ? それちょーだい」

 

「良いのですか?」

 

「別にいいって。いくらあってもいいもんなんだからこういうのは」

 

「好きなんですね。コーヒー」

 

「うーん。昔すごい美味いコーヒー飲んだんだけど、それが忘れられなくて探してるとこ」

 

「そうですか。では缶コーヒーではなく、喫茶店を巡ってみたらどうです?」

 

「おすすめとかある?」

 

「近辺だとこの辺りが」

 

八幡に端末を見せてもらい、行ってみたいカフェを探す。洋風、レトロ、和風など、彼女のおすすめは多種多様だった。

 

「遅い! 次の授業そろそろ始まるけどサボる気?」

 

そんな話をしていると、普段の倍は鋭い目つきをしている椎名が腕を組んで立っていた。

 

「もうそんな時間? 呼びにきてくれてサンキュー椎名」

 

「ありがとうございます椎名さん」

 

「礼はいいから。いや…やっぱ良くない」

 

「椎名?」

 

椎名は考える素振りを見せながら、俺に視線を向けたり外したりしている。

 

「おーい椎名?」

 

「今までの借りまとめて返して」

 

「え? なに急に」

 

「話が全く見えませんが」

 

椎名は何か意を決したのか、俺を方を向いて口を開く。しかしすんでのところで、再びそっぽを向いてしまった。

 

「椎名、話がないなら教室に」

 

「待て! 双海に頼みがある」

 

「頼み? でも八幡は?」

 

「私の頼みは急ぎではないので構いません。ですが椎名さんの方は切羽詰まっているようなので、先にそちらを聞いてあげてください」

 

「おっけ。分かった」

 

話を聞いたところ、椎名のバイト先で欠員が出たとのこと。元々椎名本人もシフトが入っていたのだが、急な予定で代役を頼んだらしい。しかしその代役が体調不良でバイトに来ることが出来なくなったらしく

 

「私の担当基本キッチンだからそんな難しい事はないと思う。先輩にもちゃんと慣れてない代役が行くって伝えておくし、そもそも今日の今日で悪いんだけど」

 

「いいよ」

 

「やっぱ急になんて難し…は?いいの?」

 

「今日はこの後予定ないし、全然問題なし! てかもっとラフに言えよな。どんな話されるかドキドキしたよ」

 

「こういうの、慣れてないから」

 

「不器用ですね」

 

「うっさい」

 

こうして椎名の代わりとして、バイトに向かうことになったのだが……この選択は間違っていたかもしれない。

 

 

 

 

 

『先にRINGに着いた。待ってる』

 

少女は幼馴染からのメッセージに目を通し、目の前のライブハウスを見上げる。

 

「……ここで燈の新しいバンドが」

 

忘れたい過去を思い出してしまい、少女はその明るさを拒むように俯く。

 

「……けりをつけなくてはなりませんわね」

 

 

 

何一つ問題のない俺の人生。

でもそれは、少しずつ、少しずつ狂い始めていたことを俺は知る由もなかった。




簡単にキャラ紹介

クラスメイトA…バスケ部所属。女子生徒が多いから花咲川に入学した。パスパレのイヴちゃん推し

クラスメイトB…クラスメイトAとは対照的に物静かな性格。顔が良いので密かにモテる。双子の妹がいるらしい

それでは次回も、楽しみに待っていただければ幸いです
ありがとうございました
      
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