Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける 作:お薬二錠
MyGO!!!!!と共に新曲のオンパレード。しかも神曲!
耳は幸せでしたが、しばらくAve Mujicaが見れないのはすごく寂しい……
今までのバンドリとは大きく違うAve Mujica。気になる部分はまだまだありますが、彼女達の物語があのような形で素晴らしい終幕を迎えられたこと嬉しく思います。
「最近出番が少ない」
「何言ってんだお前」
愚痴をこぼすのは千明希のクラスメイト。紙パックの牛乳を口にしながら不貞腐れていた。そんな彼を悪態で宥めるのは同じく千明希のクラスメイト。二人の視線の先には、インテリタスという正体を隠しツアーに向けスケジュールの話し合いを海鈴としている千明希の姿があった。
「最近八幡さんと仲良いよな〜千明希」
「楽器の話してるの聞こえたけど」
「楽器ねぇ……」
そう言いながら彼は窓から身を乗り出し空を見上げていた。何を思っているかは分からないが、少し寂しそうにしているのは見て分かった。
「羨ましいな。熱中できる何かがあるって」
「お前はないの?」
「あるわけないだろ。どこにでもいる普通の高校生じゃん俺達。普通に卒業して、そこそこの会社に就職して、普通に結婚……して……出来るかな?俺結婚出来るかなぁ?自分で口にしてすげー不安になってきた」
「俺が知るわけないだろ。今、気になるやつとかいるの?」
「いるよ!イヴちゃん先輩でしょ、奥沢先輩に北沢先輩。弦巻先輩は……お金持ちすぎるからちょっと難しそうだけど可愛い!それに三角さんや八幡さん。でもやっぱり椎名さんのあの冷たい目で睨まれ痛い痛い痛い!!こめかみに指食い込んでるから!!!」
「お前少し黙れマジで」
彼の気色悪い発言はすでに教室中に行き届いており、クラスの女子ほとんどがこちらを軽蔑な眼差しで見つめている。
「ほんと最悪」
「いやーごめんごめん」
「……ライブのチケット貰ったけどいく?」
「え、唐突。何で?」
「身内に音楽関係で働いてるやつがいて、そいつから貰った。非日常な体験すればいい刺激になるんじゃない」
「お〜ま〜え〜。ありがとう!本当にありがとう!」
彼は周りの目を気にすることなく、勢いよく抱きついてきた。
「だからやめろって気持ち悪い」
「好きだぞ!俺お前のこと好きだぞ!もちろん男友達として好きだぞ!」
「あ〜はいはい、ありがと〜」
「
いつの間にか昼休み終了を告げるチャイムが鳴っており、次の授業の準備をした千明希が二人の元へ歩み寄ってきた。
「いや何にもないけど、いい友達を持ったなって思っただけだよ!」
「何だそれ」
「ほら!二人とも早く行くぞ!」
「なんか今日いつもより元気じゃないあいつ?」
「あぁ、元気で鬱陶しい。千明希は?」
「何が?」
「元気かって話」
「うん、元気だけど」
「……そっ」
「いや、聞いたんならもっと興味持てよ」
自分には何もないと思っていたが、目には見えない暖かい輝きを確かに感じ、少年は嬉しそうに廊下を走っていった。
あの日からずっと離れない。消えない。
前回のライブで見せたムーコの失敗。ギターを間違えて固まってただけと言っていたけど、アタシはあの光景を見て鳥肌がたった。あれは演技だ。あの時のアタシにはムーコが糸の切れた操り人形に見えた。
「……意味わかんない」
そうこうしているうちにムーコの家に着く。お手伝いさんに挨拶をして、みなみちゃんから許可をもらったスタジオへ向かう。階段を降りるとギターを抱え込むムーコがいた。
「お・は・よ〜」
「ん……」
相変わらずムーコの反応は薄い。表情もあまり変わらないから何考えてるか分からない。だけど…
(使えるものはガンガン使わなきゃね)
「ねぇムーコ?SNS繋がろうよ〜」
「……やってない」
「ホントに〜?裏垢も?」
「うん……」
さっきからムーコと目が合わない。まぁ自分が仮面を外したせいで、ムーコは注目を浴び精神的に疲弊していた。罪悪感がないのかと聞かれれば多少はある。でも、あの場での行動をアタシは間違いとは思っていない。あのおかげでAve Mujicaの注目は増し、アタシの想像通り人気も上昇している。
「そんな怯えないでよムーコ。アタシ、仲良くなりたいだけなんだ〜。とりあえず動画でも撮りながら〜」
「……できない。祥が怒る」
また祥子。何なんだろうこの二人は。ただの幼馴染にしては……いや、二人じゃないもう一人いる。アイツも……
「じゃあいっそムジカやめて二人で」
「辞めない」
ムーコにしては珍しく、ハッキリと強い口調でそう答えた。普段は見せない彼女の強気な態度にムッとして、アタシは強く問い返した。
「…なんで?」
「……祥が壊れそうだから。ムジカが壊れたら、祥が壊れる。祥が壊れたら……千明希も」
「何それ。サキコとアイツのためにムジカやってんの?そんなのただの足枷じゃん」
「……にゃむには分からない」
「そりゃアタシには分からないわ。アタシ、マルチタレントになりたいんだよね。そのためなら何だってやるしチャンスがあれば食らいつく。ムジカもそのためにやってる。サキコのため、アイツのためにっていうけど、今のムーコ見てると思うんだよね。自分の首、自分で絞めて…このままじゃ先に壊れるのはムーコだよ?」
「……にゃむ、何で嫌なことばかり言うの」
「アタシはアンタの才能を」
「好き勝手おっしゃって睦を誑かすおつもり?」
タイミングがいいんだか、悪いんだか。
スタジオに入ってきたサキコは鋭い目つきでアタシの横を通り過ぎる。
「ちゃあんと聞こえたでしょ?アタシとムーコの話」
「…………」
サキコに反応はなかったが、おそらく聞こえていただろう。Ave Mujicaはファンの期待に応えて更に上に行く。そのためにサキコのやり方が適切とはいえない。
(上がり続けてやる。何を利用してでも)
「お揃いですか?三角さんはsumimiの仕事。双海さんは日直で遅くなると言っていました」
「ウミコ〜、その二人以外はみんな揃ってるよ」
「それでは始めましょう。内容は次回のテレビ番組出演についてで、先方から要望が来ています」
ツアー二日目。
私達の演奏は大成功。ゲスト達からも多くの拍手をもらった。しかしその拍手の中には、悲しみの声や、残念がる声がちらほらあった。
「期待に応えなくてどうすんの!!今が大事な時なのにホントにこれでいいと思ってんの?」
「思ってますわ。何度言えば分かりますの?」
ホンッとにサキコとは意見が合わない。そもそも自分の世界観に固着しすぎてゲストを全く見ていない。テレビ番組の先方同様、事務所からも次のライブでツアー初日にムーコがやったパフォーマンスを再現してほしいと要望が来ていた。にも関わらず演奏を疎かに出来ないとサキコが断ってパフォーマンスをやらなかった。
「ちゃんと客席見た?ゲスト達がっかりしてた。雨の中来てくれたのに、楽しみにしてたもの見せてあげられなかったんだよ?」
「二人とも、こんなところで……」
「演奏を捨てるだなんて、バンドである事を捨てろと?」
「別にバンドじゃなくてもいいでしょ。バンドの体しなきゃいけない理由ってなに?」
「それは……」
「それに当のムーコは何も言ってない。テレビ出た時あんなこと言ってたし、ムジカ辞めても構わないってことじゃないの?そもそもサキコがいるからムーコは」
サキコの考えはムーコの才能を殺してる。しっかり武器として使えば、ムジカの力になることは間違い無いのに。そう思うとだんだん腹が立ってくる。すると、先ほどまでおどおどしてたウイコが、意を決した顔つきでアタシの前に出る。
「ムジカは解散させない」
「はぁ?何でそうなるわけ?解散なんて言ってないんだけど」
「メンバーがやめるってそういうことだよ。応援してくれてるゲストの気持ちも裏切ることになる」
「それをさっき裏切って言ってるの。大体大事そうに言ってるけど、ウイコ忙しくて全然練習きてないよね?それって無責任じゃない?」
「責任というなら祐天寺さんこそもっと練習すべきですわ!千明希に教わっているのに、あの程度のレベルでは困ります」
「祐天寺さんが練習不足だと思ったことないですよ。豊川さんこそメンバーを見ていないのでは?」
「余計なこと言わないで。とにかくアタシは納得できない」
「納得する必要なんかありませんわ。Ave Mujicaは演奏とその世界観で観客を魅了する。パフォーマンスで誤魔化して、演奏を蔑ろになんていたしません」
「……ええころかげんに……いたっ!」
「いたっ!」
「少し黙れお前ら。周り見ろ」
アタシとサキコにデコピンをした双海は怒気を含んだ声でそう言った。ライブ後で夜遅いとはいえ、駅のホームにはアタシ達以外の利用者の姿もあった。
「話し合いはまた後日!とりあえず今日は疲れたろうから早く帰って寝ろ!」
渋々、その場は双海の言う通りにすることにした。
サキコにもデコピンをしったってことは、アタシの意見も間違いではないと思ってるってことでいいのかな。
ムーコはギターを抱えて何も言わないし。正直不安になった。このままAve Mujicaを続けていいのかどうか。
何も言えなかった。駅のホームでの祥とにゃむのやり取りがCRYCHICと重なって。あの時と同じ。また繰り返す。また、私のせいで……
(祥……)
東京に着いた後、私は自分が帰る道とは違う道を進む祥の後を追った。助けてほしかった。今の私じゃまた祥の大事なものを壊しちゃう。自分ではどうすればいいか分からなかったから、祥に助けてほしかった。
「初華、先に帰ってくださる?」
「う…うん……」
初華の姿が見えなくなったのを確認して、祥は口を開く。
「どこまで付いてくる気ですの?どうして嫌だと言わないんですの?パフォーマンスよりもギターを弾きたいのでしょう?」
本当はそうだ。パフォーマンスなんてやりたくない。でも今のムジカでギターを弾いていたくない。
「私が喋ると…ダメに、なるから……」
「甘えないでっ!!」
初めてだった。祥にそんな顔で怒鳴られたのは。
(祥、どうして…私、祥のために…)
「そんなこと言ってる場合?このままではムジカがムジカでは無くなってしまいますのよ?」
(そんなことさせない。次こそはちゃんと!)
「昔はもっと喋ってた、笑っていたのに!どうしていつも全部わたくしに言わせますの!?どうして味方になってくれないの!?私にはもうムジカしか……もうこの世界しか残ってないのに!」
「……何それ」
気づけば思った言葉を口にしていた。
「祥のためにムジカに入った。祥が壊れないように。今度こそは、祥の大切なもの壊さないようにって。だけど取材も撮影も嫌い。仮面が外れたせいで注目されるのも嫌!パフォーマンスもしたくない!今のムジカでギターなんか弾きたくない!ムジカしかないって何? 私は?……千明希は? 私が欲しいもの身近にあるのに、それまで無かったことにしないでよ!!!」
何も返ってこない。普段出さない大声を出したから息が切れる。少しずつ雨も降ってきた。祥はまだ何も言い返さない。気になって彼女の顔を見ると……
「ーッ!」
祥はその場から走り去ってしまった。
一瞬だけ見えたその顔は、とても怯えているようだった。
「また、私が、壊した……祥に、あんな酷いこと……いって」
雨が強くなる。私はその場を動こうとはしなかった。何もかもどうでも良くなってしまった。昔から浴びてきた周りからの好奇な目も。周りからの期待も。上手く歌わせることが出来ないギターも。大切だった幼馴染も。
「……むっちゃん」
一つの傘が差し出されると共に、頭上から男の子の声がした。
「……千明希」
あった。私だけのもの。誰にも渡したくない、独り占めしたいもの。
私は背伸びをし戸惑う彼の唇に自分の唇を重ねる。
驚いてはいるが傘を持っているせいで、突き放そうとはしない。そんな所も、千明希の優しさと都合よく解釈して、私はもう手離さないと彼の背に回した両腕に力を込める。
しばらくして唇を離し、困惑している彼に向かって、私達は満面の笑みを浮かべた。
「「大好き」」
キャラ紹介
白矢…千明希のクラスメイト。女の子が大好きな方。特にこれといって熱中できるものがなく、それが若干コンプレックスとなっている。怒ると怖い姉がいる。
黒鉄…千明希のクラスメイト。物静かで顔が良く女性からモテる方。白矢のストッパー。最近双子の妹からライブのチケットをもらった。好きなタイプの女性は妹。
今回も読んでいただきありがとうございました
また次回も、楽しみにしていただけたら幸いです
※モーティスは睦ちゃんの中にいました。えぇ、誰が何と言おうといましたとも