Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける   作:お薬二錠

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Ave Mujica 1stアルバム、MyGO!!!!! 聿日箋秋同時購入特典の色紙がとにかく最高でした!本当に良き!家宝にします!

※追記
UA10000到達しました! 多くの方に読んでいただきとても嬉しいです!
今後もよろしくお願いします。


第二十一話 ダキシメテ

千明希が病院へ向かっていた頃、睦の死をモーティスから聞かされた私は、自分がしでかしたことを後悔することしか出来なかった。

 

 

 

「……ご、ごめんなさい……わたくしの……せいで……むつみ、が……ごめん……なさい……」

 

「ありゃりゃ簡単に壊れちゃった。それだけ睦ちゃんを大事に思ってたってこと? 私に言わせれば薄っぺらくて大して価値の無い友情だけどね」

 

モーティスの言葉に何も答えることができない。ただひたすらに、自分の大切な幼馴染のことを思い、謝罪の言葉を続けることしか出来なかった。

 

「……一つ訂正するけど死んでいなくなったわけじゃないから。死んだように眠ってるだけ」

 

「そ、それじゃ! 睦はどうすれば起きてくれますの!?」

 

モーティスの言葉に私は小さな希望を見つけ、縋るよう彼女のスカートを強く握りしめる。しかしそれを良しとしないモーティスが私の手を振り払った。

 

「そういうのが気に食わない。大事に思ってたのなら何で睦ちゃんをバンドに誘ったの?いつかは仮面を外すつもりだったんでしょ?睦ちゃんが周りから好奇な目で見られることを何よりも嫌うこと、自称大切な幼馴染を名乗ってる祥子ちゃんなら分かるよね?ねぇ、何で!?教えてよ!?」

 

「そ…それは……」

 

「結局祥子ちゃんも睦ちゃんの周りに群がる大人達とおんなじ。彼女の立ち位置を利用しただけにすぎない」

 

「わたくしは……ただ、睦と……」

 

また一緒にバンドを組みたかった。でもそれだけではない。モーティスの言う通り彼女を利用し、Ave Mujicaの知名度をあげようとしたのも事実だ。だから言葉が出てこなかった。

 

「睦ちゃんを利用した。傷ついてる睦ちゃんを酷く罵った。睦ちゃんは大好きな祥子ちゃんに傷つけられ、深い眠りにおちてしまった……だから私は祥子ちゃんが嫌い」

 

「あ……」

 

「ってわけで睦ちゃんはしばらく起きないよ。私はギター弾けないし、それでもいいって言うのならAve Mujicaは続けてあげる。その方が千明希君の側にもいれるしね」

 

空に浮かぶ月を雨雲が覆い隠し、地に降り注ぐ光が消え闇に包まれる。

 

「ねぇ祥子ちゃん?睦ちゃんに戻ってきてほしい?」

 

「戻ってきて……ほしい……」

 

「ふーん。でも睦ちゃんは祥子ちゃんに二度と会いたくないかも。睦ちゃんを傷つけたし、睦ちゃんが大好きな千明希君も傷つけた。そんな祥子ちゃんを睦ちゃんが許してくれるわけないじゃん。睦ちゃん、一生戻ってこないかもね」

 

取り返しのつかないことをしてしまった。今更理解してももう遅い。睦は眠りについたまま起きることなく、千明希も自分のせいで壊れてしまった。

 

(睦も……千明希も……私のせいで……)

 

「…雨降りそうだし先に戻るね。バイバイ、祥子ちゃん」

 

どんどん遠くに行ってしまう睦。でもあれは私が知らない睦で……小さい頃から長い時間を共に過ごしてきた睦ではない。でもそうやって手を伸ばさなかったから、睦を救うことが出来なかった。睦はどんな時も私のそばにいてくれたのに……

 

「…ま、まって……むつみ……」

 

遠くへ行ってしまった睦に私の言葉は届かない。何も掴めなかった右手が空を切る。その手で左腕を押さえ、その場でうずくまった。雨が降るなか傘を刺した初華が来るまで、一人でずっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

控え室に戻り、私は濡れた衣装から私服に着替えた。控え室にモーティスおらず、千明希の姿も見当たらなかったが他のメンバーに訳を聞く余力すら残っていなかった。

 

「……雨、明日には止むらしいよ」

 

「で? ムーコと何話してきたの?」

 

祐天寺さんが彼女のことを睦と呼ぶ。私は自分の手を強く握りしめながら、か細い声で彼女の間違いを訂正した。

 

「……あれは、睦ではありません……」

 

彼女は若葉睦とは全くの別人であること。

昔から睦の中に存在していた別の人格だということ。

今までのギターを弾いていた睦は、自分のせいで傷つけてしまい、彼女の中で深い眠りについていることを話した。

 

初めは皆困惑していたが、ここ数日間の周囲に対する睦の振る舞い方や、人目を気にしなくなったことなどから疑いは確信へと変わっていった。

 

「事情は分かりました。現状、若葉さんのギターがないということも踏まえた上で今後どうするか決めませんか?リハも出来ませんでしたし、代わりのギターを用意するならいくつか当てがあるので早急に声をかけますが」

 

即席のギタリストなんかに睦の演奏を完璧にコピーできるとは思わない。それはつまり、私が思い描くAve Mujicaの世界が崩れるということ。それだけはどうしても避けたかった。

 

「……ムーコだったら別にギターが無くてもいいんじゃないの?演奏のレベルが多少落ちても、ムーコの演技があればお客さんは喜ぶじゃん」

 

「だ、だけどそれは祥子ちゃんが望むムジカの世界じゃ」

 

私が答えるよりも先に初華に言わせてしまった。初華の意見に祐天寺さんは反論し、八幡さんはそんな二人を黙ってみているだけだった。

 

(こんなとき、千明希がいてくれれば……)

 

「ち、ちあきは……どこに?」

 

「千明希君なら東京の病院」

 

私の言葉に答えたのは初華でも、祐天寺さんでも、八幡さんでもなく、部屋に入ってきたモーティスだった。彼女の冷たい目が私の姿を捉える。その目に恐怖し、思わず後ずさってしまった。

 

「病院? どういうことですかモーティスさん」

 

冷静に彼女の存在を受け入れた八幡さんが問いかける。

 

「あれ?祥子ちゃん、私のことみんなに話したんだ〜。ま、どうでもいいけど。みなみちゃんから連絡があったの。千明希君のお父さんが意識を取り戻したから気をつけなさいって……ったく、こんな時だけ親の顔すんのやめてよね」

 

「……うそ」

 

「父親!? だってアイツ、自分に家族はいないって!」

 

私もモーティスの言葉が信じられなかった。千明希の家族については、今は遠いところにいて一緒に暮らせないと、幼い頃に両親からそう聞いていた。

驚いた反応を見せる初華や祐天寺さんも、彼の生い立ちを少し知っているようだった。

 

「……また、私だけですか……何も知らなかったのわ……」

 

「別に自分のことなんて他人に話すことでもないでしょ?面白くなかったり、知られたくないことだってあるんだから」

 

モーティスの言う通り。私はAve Mujicaのメンバーにすら話せていないことがある。彼女達の人生を預かり、導いていく立場にも関わらず偽りの面で過ごしている。CRYCHICの時から何も変わってない。何も成長していない。周りに助けを求めることができなくて、一人で頑張って、全てダメになってしまった。でも今回は本当にダメだ。大好きな母を失ったとき、いつもそばにいてくれた幼馴染を失った。もう、私が縋ることができるのは彼しかいない……

 

「ちあき……ちあきは、明日……帰ってきますの?」

 

「はぁ? 祥子ちゃんさぁ、千明希君のことも何一つ知らないんだね」

 

「え……?」

 

睦を無碍にした私に怒りを向けた時と同じ、怒りに満ちた口調で彼女は言った。

 

「千明希君のお父さんが意識取り戻したってことは、場合によっては二度と会えないってことだよ」

 

「……二度……会えない……ど…どうして!どうしてそんなこと言いきれますの!?睦だけでなく……千明希までいなくなったら……わたくしは……わたくしは!お願い!お願いモーティス!わたくしなんでもします。だから!睦に、千明希に、千明希に会わせてぇ!」

 

「祥ちゃん!」

 

「……気持ちわるっ」

 

 

 

初華に抱きしめられるわたくしを、モーティスの冷たい眼差しが見下す。その日はどうすることも、何も考えることもできなくて、明日の朝、千明希が普段通りに来てくれる小さな希望の光を信じ夜が明けるのを待った。

 

様々な感情が入り乱れ一睡もできなかった私の手を、初華は何も言わず一晩中優しく包み込んでくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

私達の前に千明希は現れず。八幡さんが送ったいくつかの連絡にも返信は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もうやめましょう。裏切られたんですよ!」

 

「裏切ったなんて、千明希君はそんなことしないよ!」

 

「私はもう!バンドでこんな思いしたくないんです!信じてたんです。信じてたのに!それなのに!」

 

「アイツの事情は分からないけど、家族に何かあったんじゃアタシ達にできることなんて待つくらいしか」

 

「連絡くらい返せるじゃないですか!今日が大事なライブだってことを千明希さんも理解してるはずです!でも何も返ってこない。それが答えなんですよ!そもそも若葉さんの件だって何も解決していない」

 

「ウミコ……ムジカが無くなったら困るって言ってたじゃん」

 

「この現状を見てもまだそれが言えますか!?私はもうこんな思いしたくないんです……」

 

「……祥子ちゃん。このままじゃ大事な大事なAve Mujica壊れちゃうよ?どうすんの?」

 

「私は……睦と千明希に戻ってきて」

 

「それは後!今は、ライブに来てくれたお客さんをどうするか考えないと!」

 

「……ですが、睦も……千明希も…いないと……」

 

「そぎゃんこつ!……流石に自分勝手すぎるよサキコ……ごめん、やっぱり続けられん。うちも辞めるわ」

 

「メンバーが抜けたらAve Mujicaは解散なんだよね初華ちゃん?」

 

「ま、待って!みんな一旦落ち着いて」

 

「でも初華ちゃんはさ、祥子ちゃんと一緒にいれればAve Mujicaじゃなくてもいいでしょ?」

 

「睦ちゃん何を!?」

 

「私は睦ちゃんじゃない。私はモーティスだから。ねぇ、みんなこう言ってるし終わりにしよう祥子ちゃん」

 

「モー…ティス…?」

 

「Ave Mujicaが足枷なら切り離しちゃえばいいよ。CRYCHICもそうだったでしょ。続ければ辛い思いするけど、やめればそこまで。これ以上辛い思いをしなくてすむよ?」

 

彼女の言葉がとても魅力的に感じる。その誘いに逃げ道を見つけ、身を委ねてしまいそうになる。それでも微かに残る責任を感じ、わたくしは他のメンバーの方を見た。

 

 

 

 

 

失望、失意、野心。それぞれの感情を抱いてる彼女達とは、誰一人目が合わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

輝かしい大切な思い出。そんな大切なものを忘れたくて多くのものを利用し、犠牲にし、Ave Mujicaを作った。同じ過ちは繰り返さない。弱い自分を捨て、強い自分を魅せる。そう思っていたのに残ったのは大切なものを全て失った惨めで弱い自分だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月は沈み、彼女達に仮初の命を与えることはない

守護者を失った人形達はその姿を消し

マスカレードは終幕を迎えた




キャラ紹介

豊川祥子…壊れてしまった。彼女を支えるもの、守るものはもういない

三角初華…彼女を救ったものは地に落ちた。彼女の姿は地に落ちた救世主には映らない

祐天寺にゃむ…気づけば大切なものになっていた。しかし無力な自分にはどうすることもできなかった

八幡海鈴…信じていた。しかし自分だけが彼女達と世界を共有できていなかった

モーティス…若葉睦は死んだ。自由と身体を手に入れた人形は人生を謳歌し始めた

今回も読んでいただきありがとうございます
次回も楽しみにしていただければ幸いです
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