Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける 作:お薬二錠
お疲れ様でした!
作者は両日仕事!配信も見ておりません!ライブが発表されたときはMyGO!!!!!熱、Ave Mujica熱、ともにそこまで高くありませんでした!
当時の私をぶん殴ってやりたい!後悔するからライブに行け!ライブに応募しろ!って!
秋にBlu-ray販売するそうなので買います
違和感を抱いたのは特集されているテレビ番組を見たとき。
『ムジカの曲知らなくて〜』
『えっ、ええ〜?…そんなことないでしょ〜?』
番組の司会者とトークで場を盛り上げる彼女の笑顔は、私の大切な思い出の中にあるものと全くの別物だった。彼女の顔で見せる、その綺麗な笑顔を見て私はぞっとした。
初めて会った時の彼女は表情があまり変わらない子で、何を考えているのか分からなくて正直苦手だった。だけどCRYCHICで一緒にバンドをして、一緒に音楽を奏でるうちに、彼女のことが少しだけ分かったような気がした。相変わらず表情はあまり変わらないままだったけど、笑うときは口元を隠したり、嬉しいことがあれば優しく微笑んだり、祥ちゃんといるときは笑顔の時が多かったり、そんな睦ちゃんが私は好きだった。
だから確かめたかった。あの日から心に残る違和感。
今の若葉睦が何者なのか。
「懐かしいねここ。CRYCHICのメンバー顔合わせもここでやったよね」
あの時と同じカフェにやってきた私達は、それぞれ飲み物を頼み向かい合わせに座った。
「それで?私に何か聞きたいことあるんだよね?」
どう話を切り出せばいいか分からなかった。私が確かめたいのは、目の前にいる睦ちゃんが本物かどうかということ。でも、その姿は私がよく知る睦ちゃんだし、彼女に双子がいるといった話は聞いたことがない。ここであなたは本物の睦ちゃん?なんてストレートにおかしなことが聞けるのは燈ちゃんくらいだと思う。
私は少し考えて睦ちゃんに聞いた。
「……どうしてAve Mujica解散しちゃったの?」
「どうしてって……うーん、なんて言ったらいいかな……周りが言ってるとおりバンドメンバーの不仲で解散しちゃったの」
「そんなわけ!」
立ち上がり大声を出したとこで、他のお客さんがいることを思い出す。少し恥ずかしくなって、私はゆっくりと椅子に座り直した。
「メンバーの意見の食い違いでの解散なんてよくあることでしょ?そんな驚くことじゃないよ」
「……祥ちゃんとは連絡取ってるの?」
「ううん、祥子ちゃんとも喧嘩したし、Ave Mujicaが解散してからは連絡取ってないよ」
意外だった。私が見てきた二人は互いに信頼しあっていて、幼馴染の枠を超える強い何かで結ばれていた。いつも仲が良くて、二人が喧嘩したなんて信じられなかった。
「酷いんだよ祥子ちゃん。いつも自分のことばかりでわがままで、むつ……私が疲れて嫌な思いしても、わたくしはわたくしがって……そんなんだから嫌になっちゃった」
大切な幼馴染である睦ちゃんよりも自分のことを優先する祥ちゃん。昔の祥ちゃんじゃ考えられないことだけど、今と昔の彼女には明確な違いがあった。それはAve Mujicaの存在。
「睦ちゃんは知ってる?どうして祥ちゃんがAve Mujicaをつくったのか」
すると睦ちゃんは、待ってましたと言わんばかりの笑顔を浮かべた。何か裏のある嫌な笑顔を。
「知ってるよ。でもただじゃ教えられないな〜」
「……何が望み?」
睦ちゃんとは思えない一面に私は苛立ちを覚え、彼女を睨みつける。
「私と春日影やって、そよちゃん」
そよちゃんとのお茶を終えた私は、元々予定してクラスメイトとのカラオケに来ていた。だけど、クラスメイトとの楽しい時間になるはずだったのに、そよちゃんのせいで気分は最悪だ。
そよちゃんがCRYCHICに執着してるのは、睦ちゃんの中から見ていたから知っていた。解散した後も彼女はCRYCHICを取り戻すために動いていたし、今回の餌にも確実に食いつくと思っていた。それなのに彼女は私の誘いを拒んだ。
『……春日影はCRYCHICのだよ。五人でなきゃ演奏できない』
『祥子ちゃんともちゃんと仲直りするよ。燈ちゃんと、立希ちゃんも呼んでさ、昔みたいに一緒にやろう?』
『……私は』
『CRYCHIC、そよちゃん大好きでしょ? 知ってるよ。私も同じ気持ちだから』
『私は睦ちゃんと同じ気持ちじゃない』
『は?どういうこと?』
『CRYCHICはもうないの。昔みたいになんてできない』
『なんで!?あんなにCRYCHICやりたがってたじゃん!なんで今更できないとかいうわけ!?』
『……睦ちゃんは何で春日影やりたいの?』
『何でって……それは……』
『……答えがないんだね。それと私、MyGOだから』
『まい…ご…?』
『そう。MyGOだからCRYCHICはできない。それに今の睦ちゃんと春日影やりたいとは思わないよ。……それじゃ話は終わりだから。またね、睦ちゃん』
『ちょっと!どうして祥子ちゃんがAve Mujicaを始めたのか知りたいんでしょ?』
『もういいの、知りたかったことはもう分かったから』
『何が?いったい何が分かったっていうの?』
『逆に聞くけどあなたに分かるの?……睦ちゃんじゃないあなたに』
『……え?』
『話は終わり。バイバイ、睦ちゃん』
本当に気にいらない。帰り際に見せたあの目。見下してるようで気に食わない。春日影をやりたい理由?そんなの決まってる。この世界にある睦ちゃんの存在を全部私で上書きする。Ave Mujicaの若葉睦は私だ。祥子ちゃんの中の若葉睦も私が壊した。周りの子達も私が若葉睦本人だと疑わない。だから後はCRYCHICの若葉睦。それなのに、それだけなのに……あいつは!
「はい!次睦ちゃんの番だよ」
「あ、ありがとう」
いけない。今はこっちに集中しなきゃ。息を整え歌う曲を探していると、隣に座るクラスメイトが真剣な眼差しで話しかけてきた。
「ねぇ、睦ちゃんお願いがあるんだけど」
「お願い?」
「Ave Mujicaの曲歌って!」
「わ、わたしも!睦ちゃんが歌うムジカの曲聴きたい!」
よりによってAve Mujicaの曲を歌えって……睦ちゃんがムジカの曲を歌ってるのは見たことがないんだけど。睦ちゃんはいつもギターを弾いているだけだったし……
(とりあえず睦ちゃんっぽく、おとなしい人形みたいな感じで……)
頭の中で睦ちゃんがムジカの曲を歌う姿を想像する。
『睦ちゃんじゃないあなたに』
頭の中でついさっき言われたそよちゃんの言葉が浮かび上がる。
(違う!私は若葉睦。誰よりも上手く彼女を演じて、私の存在をこの世界に……あれ?でも…私は、モーティス……)
考えても考えても頭の中で睦ちゃんの姿が固まらない。
(何で?睦ちゃんのイメージが出来ない。早くしないと、みんな睦ちゃんが歌うのを楽しみに……)
「睦ちゃん?」
曲が始まっても歌うことの出来ない私を、クラスメイトが心配する。
「睦ちゃん大丈夫?」
(違う。私は睦ちゃんじゃない。私は睦ちゃんとは違う。私は、私にはモーティスって名前が)
「どこか具合でも悪いの睦ちゃん?」
その瞬間、モーティスの存在を否定されたような気がして怒りが湧いてきた。
「睦ちゃんって呼ばないで!私は睦ちゃんじゃない!私は……私は!」
驚いて固まっているクラスメイトを見てハッとする。
みんなが求めるのはAve Mujicaの曲を歌う睦ちゃん。モーティスじゃない。私は睦ちゃんじゃない。でもモーティスは必要とされてない。ファンも、仕事関係の人も、クラスメイトも、求めているのは睦ちゃんで、モーティスじゃない。睦ちゃんになれない私は、この世界に必要ない?
私は自分のカバンを手に取り、急いで部屋から飛び出した。睦ちゃんと呼ぶ声がするが、私は返事をしない。
「私は睦ちゃんじゃない!私はモーティスだ!」
この世界に認められたい。私の存在を。
知ってほしい。私のことを。
でも私を私と知るのはごく一部。その大半はAve Mujicaのメンバーだ。あのまま一緒にバンドを続けていれば認めてくれただろうか?いや、きっと認めてくれない。彼女達も求めていたのは睦ちゃんのギターだ。
「何で…何で私じゃダメなの?ギターを弾けないから?演技ならできるよ?お話もできるよ?みんなの仲を取り持つことだって……あ」
出来なかった。Ave Mujicaは私が壊した。Ave Mujicaを作った祥子ちゃんも、私達を見てくれた千明希君も私が壊した。
「どうしよう……どうすればいいの……わかんない、わかんないよ……教えて、睦ちゃん」
返事はない。若葉睦は……私が壊したから
三角初華がsumimiの仕事終え、家に着いたのはもう少しで日付が変わる時間帯だった。どこに行ってもAve Mujicaの話。初華としてはもちろん避けたい話題であり、共に活動しているまなに申し訳ない気持ちになる。
そんな負の感情を持ち込まぬよう、初華は玄関の前で気持ちを切り替えドアを開けた。
「祥ちゃんただいま。プリン買ってきたから一緒に食べよう?」
あの日から一緒に過ごしている豊川祥子。
大切な幼馴染二人を失った彼女に、初華は寄り添い続けた。その眼差しが自分に向けられることはないと理解しながら、健気に、献身的に、自身の醜い本心を隠しながら寄り添ってきた。意気消沈する彼女に寄り添え続けられることに、幸せを感じている自分を気持ち悪いと思いながら、確かに初華は幸せの中にいた。
いつもなら顔を見せてくれるのに、今日は反応がない。部屋の電気も真っ暗で、彼女のスペースであるロフトにも人の気配はない。
「祥ちゃん?」
辺りを見渡し、机の上に一枚の紙が置かれてるのが目に入る。
「祥…ちゃん…」
ダメだった。どうすることもできなかった。自分では彼女の支えになることができなかった。見てもらえなかった。今までの幸せは全てなくなってしまった。
ー今までありがとうー
淡々と書かれた文字はとても丁寧で、どこか弱々しさを感じさせる祥子の文字だった。
「……祥ちゃん……どこにも…いかないで」
その手紙を抱きしめるよう、優しく胸に押し当てる三角初華。相手の気持ちも知らずに、幸せを感じていたその姿はまるでクラウンのようだと思った。悲しみの底に堕ちた彼女だが、ここはまだ終着点ではない……
糸の切れた人形達が狂いだす。
そんな人形達を導いていた彼女も、今ではすっかりお仲間の内の一体だ。
「……ただいま、お父様」
「お、おかえり…祥子」
娘の活躍、一連の報道は酒に溺れてからも見逃すことはなかった。とても辛い思いをしてきたはずだ。できることなら父親として慰め、抱きしめてやりたいと思っていた。しかし、実際に今の祥子の姿を見て、自分では彼女に何もしてやれないことを悟る。
美しかった髪はボサボサに、目の下の隈も色濃く、少し痩せこけていた娘の姿は、病に伏せる妻の姿と重なった。
「お父様……お願いがありますの……」
「お願い……?」
「千明希の過去を……教えて……私が犯した罪を……教えてください……」
人形は望
自らが犯した咎の真相を
キャラ紹介
モーティス()…モーティスとして存在を認められたい。でも世界が求めているのは睦ちゃん。それじゃ睦ちゃんになれないモーティスなんて…いらない?
豊川祥子…心の支えを失った彼女が望むのは、最愛の人の過去と自分が犯した罪
今回も読んでいただきありがとうございました
次回も楽しみにしていただければ幸いです