Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける 作:お薬二錠
ありがたいことに愛音、立希、燈はゲットすることができました。
でも推しの祥子のストーリーが見れるそよと、バンドストーリーがエグいと噂の楽奈がまだなんです!
Ave Mujica用に溜めていたスターも全て溶かしました。
課金するしかないか……
お母さんに頼まれた。今日の夜は雨が降る予報なのにお父さんは傘を持って行くのを忘れたらしい。用事があって行けないお母さんの代わりに、私は二本の傘を持って夜道を歩いていた。
歩きながら、最近テレビで見た人気ガールズバンド解散ニュースのことを思い出していた。
解散したのは祥ちゃんが作った新しいバンド。私が知らない祥ちゃんの叫びを歌うバンド。ツアーの途中だったのに、何の前触れもなく終わってしまった。
学校には来ているから体調が悪いとかじゃなくて良かったと思ってる。
『CRYCHCIを…辞めさせていただきますわ』
CRYCHCIを辞めた祥ちゃん。どうして祥ちゃんがそういう選択をしたのかは、今でも分からない。
『大切だから。次は手離したくない』
千明希君は?祥ちゃんの新しいバンドが無くなった今も、千明希君は祥ちゃんの側にいるんだろうか?
相手の気持ちを読み取ることが苦手だ。自分の思いを伝えることも上手くできない。そんな私でも祥ちゃんのために、何かできることはないだろうか……。
そう考えていると、限界を超えた空から雨が降ってくる。お父さんが困ってるかもしれない。そう思った私は進む足を早める。その時、目の前を、何度も手を伸ばしては、掴むことができなかった少女が走り過ぎていく。
この雨の中、傘をささずに。
少しだけ見えた横顔は、目に涙を溜めていて、ちょっとした衝撃で砕け散ってしまう、そんな表情で…
大粒の雨が降り注ぎ、私の身体を濡らす。
ーこれは罰だ
濡れた身体を夜風が襲い、凍える寒さが突き刺さる。
ーこれは罰だ
無我夢中でがむしゃらに走り、肺が酸素を求め動きを早めるのが辛い。
ーこれは罰だ
……足りない。どれだけ罰を受けようと許されない。豊川の力で無かったことにされた罪を、今になって法で裁くことなんて出来るのだろうか?子ども一人の意見で、全てを捨てる願いなんて叶うのだろうか?
いてはいけない、生きていてはいけない、多くのものを不幸にし、それを知らずにのうのうと生きてきた自分が憎い。私の身に起きた出来事なんて、なんと些細なものか。無力で、無価値で、ちっぽけで、今更知ってところでもう遅い……取り返しのつかないところまで落ちてしまった。
もういっそ、このまま、楽に……
「祥ちゃん!」
その声と同時に何かに突き飛ばされ、私は地面に叩きつけられる。顔を上げれば、涙で顔をぐしゃぐしゃにした燈がそこにいた。
「とも…り…?」
「…はぁ……はぁ……し…しんじゃ………だめ……」
あの日とは立ち位置が逆。違うのは、あの日は私の勘違いだったということ。今回は私が本気だったということ。私を止めた燈に、何も知らない無責任な燈に、わたくしは怒りを覚えた。
「何のつもり?」
「祥ちゃ……んが……川に、飛び込みそう……だったから……」
「そうですわよ。知ってるのに、どうして止めましたの」
「そ、そんなの!止めるに決まってる!」
「別にどうでもいいではありませんか。燈には関係ないことですわ」
「どうして?……どうしてそんなこと言うの?」
「……私が決めたことですわ。何も知らないあなたには関係ない」
「関係なくない!祥ちゃんは大切な友達だから!困ってるのに、ほっとけない!」
「困ってる?私が?冗談はやめてくださる?迷いなんてない、私はもう」
「祥ちゃん!!」
刹那、燈が勢いよく私を抱きしめる。少し痛いくらい力強く。
「……なんなんですの」
「私!祥ちゃんの全部を知ってるわけじゃない!だけど!今の祥ちゃんがすごく辛そうで!すごく悲しそうだってことは分かるから!」
「…………いたいですわ」
「だからギュッてする!言葉じゃ上手く伝えられないから!私自身で祥ちゃんに伝える!」
「……燈……いたい……」
「大丈夫だよって、一人じゃないよって、祥ちゃんの味方だよって!私は、私達はずっと祥ちゃんの味方だから!」
「……燈」
「立希ちゃんも、そよちゃんも、愛音ちゃんも、楽奈ちゃんも同じ!」
冷えきった心が、燈の温かさで熱を帯びていく。初めて燈が書いた歌詞を見たとき、その真っ直ぐな言葉に胸を打たれた。私では描くことない、偽りの無い真っ直ぐな世界。それは優しく聞き手の心に溶けていき、優しく包み込んでくれる温かさを持っていた。
堕ちた私にも、前と変わらない温かさで接してくれる燈の存在が嬉しくて、今にも泣き出し、全てを吐き出してしまいそうだったのを必死に堪えていた。
「千明希君だって同じ!」
燈が彼の名前を口にしたとたん、崩壊ギリギリを保っていた私の仮面は跡形もなく崩れ去り、感情の波が一気に押し寄せた。
「ちがう……ちがいますの、燈……千明希は……私の…味方でした……彼を裏切ったのは……私……私の……せいで……千明希は……ずっと…辛い……思いを……」
「祥ちゃん?」
「私が、千明希の幸せを奪ってしまったんです!私のせいで、千明希のお母様は命を落とした!私のせいで、千明希はお父様から暴力を振るわれた!それなのに、それなのに!千明希は私と一緒生活をすることになってしまった!恨むべき相手、お母様の仇である私と!私が何も知らなかったばっかりに!千明希をずっと不幸にしてしまった!」
涙と共に、後悔の言葉が溢れては止まらない。
私だけが幸せだった。仮初の幸せとも知らずに。千明希には長い時間無理をさせてしまっていた。
「もうどうすればいいか分からないの……大切な人を全て壊してしまった。大切な思い出を忘れたい、そんな身勝手な理由で始めたバンドも終わらせてしまった。人生を預かるなんて大それたことを言っておきながら、私は何も出来なかった。どうすればよかったのかも、これからどうすればいいのかも分からない……」
頭と心がぐちゃぐちゃだ。進むべき道もない。周りは真っ暗で何も見えない。身動きできず、その場でうずくまることしかできない惨めなわたくし。
「……私も同じだった。バンドがバラバラになって…こんな思いするならやらなきゃよかったって……私も、どうすればいいか分からなかった……だけど!」
そう言って燈は抱きしめていた身体を離し、私の目を真っ直ぐと見つめる。
「私にも出来ることがあるって教えてくれた人達がいた!迷ってる私を導いてくれた人達がいた……だから今度は、私の番!」
「……燈?」
「迷ってもいい。我儘でもいい。祥ちゃんが進むために、私も一緒に進むから。教えてほしい。祥ちゃんが今、どうしたいか。祥ちゃんが本当にしたいことを教えて」
すぐに言葉は出てきた。でも、私はそれを急いで奥へ押し込む。求めてはいけない。望んではいけない。咎人である私に、それは許され
「大丈夫」
「……燈?」
「私達が一緒だから……CRYCHCIは形を無くしたけど、心は消えない、運命共同体だから」
あぁ、なんて心強いんだろう。何も言わずにCRYCHCIを辞めたわたくしを。燈はまだ、運命共同体と言ってくれる。小さな身体。小動物のような可愛らしい外見。それに似つかわしくない心の強さを持っているのが高松燈だ。
「……千明希に…謝りたいですわ……そして、もう一度あの笑顔で……私の名前を…呼んでほしい……」
思い返せば千明希とはたくさんの思い出がある。嫌な思い出、辛い思い出ももちろんある。でも、千明希との思い出の大半は二人が笑顔を浮かべる幸せな思い出だ。
「分かった!私達も頑張る!」
そう言って燈は携帯を取り出し、何やら操作を始めた。
「……くしゅん!」
「急がないと!行こう祥ちゃん!」
「燈!?どちらへ!?」
燈に手を引かれ雨降る夜道を二人で走る。
行き先は分からない。この先何が起こるか分からない。それでも、私の手から伝わる燈の温かさが大丈夫と声をかけてくれているようで、どんな困難があっても今なら立ち向かうことができると、そう思えた。
キャラ紹介
高松燈…進むべきを道を見失ったとき、手を差し伸べてくれた人がいたから自分も同じことができた。ほっぺを両手で優しく挟むのは、何だかいけないことをしてるような気がして出来なかった。
今回も読んでいただきありがとうございます
次回も楽しみにしていただければ幸いです