Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける   作:お薬二錠

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アプリバンドリが、やばい発表をしてましたわ。
次回の MyGO!!!!!のイベント、まーたAve Mujicaがいるじゃないですか〜
しかも限定?お金無くなってしまいますわ〜泣


第二十九話 ツグナイハ

これからご覧にいれますのは、秘密を抱えた、私の話

わがままで、見栄っ張り

それなのに一人では何もできない哀れで臆病な私の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きなお母様の死。拭いきれない悲しみに、心から顔を上げることが出来なかった私は、月ノ森の先輩方で結成されたバンド Morfonicaと出会った。止まっていた心が揺れ動いた。私の世界に、再び光が差し込んだような気がした。音楽はよく聴く方だった。世界で活躍するアーティスト、多くの観客の前で披露する演奏家など、クオリティの高い音を浴びてきた私は、普通の人よりも贅沢な耳を持つようになっていた。しかし私はプロでも何でもない、自分とあまり年の離れていない彼女達が奏でる音に、その輝いている姿に、心を奪われた。

 

 

 

私もあの輝きを掴みたい。あんな風に、光の中に身を置きたい。そう思った私はすぐに行動に移した。

 

 

 

ギターを得意とする幼馴染に声をかけた。

 

同じ学年で吹奏楽に所属する、安定感のある音を奏でるベースに相応しい少女を見つけた。

 

知り合いを伝って、楽器が得意な姉がいるドラマーにたどり着いた。

 

不器用ながらも、自分の世界を持ち、心惹かれる歌詞を紡ぐ少女と運命的な出会いをした。

 

 

こうして私はCRYCHICを創り上げた。

毎日が楽しかった。毎日が眩しいくらいに輝いていた。あの日見た光景と同じ、光の中に私は存在していた。

 

 

 

ある時、そよに聞かれた。どうしてバンドを組もうと思ったのかと……

 

 

 

 

 

 

ーお母様に変わる、心の拠り所が欲しかったー

 

 

そんな子どもじみた本音は心の奥底にしまい、正解でもハズレでもないありがちな答えをしてしまった。

 

CRYCHICを結成した本当の理由。

それが、私が皆についた、始めての嘘。

 

私は、運命共同体である彼女達の前で本当の自分を見せることができず、この時から偽りの仮面をつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当のことを言えぬまま、CRYCHICとして過ごす時間が増える中、ライブハウスでの演奏が決まった。初めてのライブ。私達は一層一丸となって練習に励んだ。

 

お父様にも声をかけた。私達の初めてのライブを見てほしいと。お母様が亡くなってから、お父様は毎日忙しそうだった。それでも私を悲しませないと一緒に過ごす時間を作ってくれた。ライブにも必ず向かうと言ってくれた。

 

 

 

だけど、お父様はライブ当日、姿を見せなかった。

もう一緒に暮らせない。祥子は幸せになってくれ。

 

そう言葉を残して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父様は詐欺にあった。その責任をとって豊川家の人間であることを辞めた。大好きなお父様を一人にすることなんて出来なかった私は、少しの荷物と、お母様の肩身の人形を持って長年住んだ屋敷を飛び出した。

 

今までの住まいとはかけ離れた、今にも崩れそうな佇まいのアパート。かつて住んでいた玄関よりも狭い部屋の中、お父様は飲み干されたビール瓶と共に部屋に転がっていた。

 

お父様は無事だった。でも、昔のお父様はもういなかった。

 

生活のために新聞配達をして、少しでも生計の足しにした。それだけでは足りなくて他のバイトも探したけれども、中学生、訳ありといった理由で雇ってくれるところが無く、私は月ノ森を辞めた。

 

 

 

 

『…本当に辞めちゃうの?』

 

睦だけには話していた。お父様が詐欺にあったこと。豊川家を追放されたこと。私が今、あの屋敷に住んでいないこと。

 

『睦はご存知?月ノ森の学費って、ものすごく高いんですのよ』

 

家を飛び出した以上、お祖父様を頼るわけにはいかなかった。

 

『CRYCHICは…どうするの?』

 

みんなの顔が脳裏をよぎった。多くを捨てた。家も、今までの生活も……だけど、だけどCRYCHICだけは……

 

『なんとか時間をつくります……だからまだ、誰にも言わないで』

 

『…分かった。祥、千明希が帰ってきてる』

 

『千明希が!……そう、ですの……時間を見て、また連絡しますわ』

 

素直に喜べなかった。かつて千明希と共に過ごしていた豊川祥子はもういない。今の私が、どんな顔で彼に会えばいいのか分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『CRYCHICを…辞めさせていただきますわ』

 

 

 

結局、CRYCHICを続けることも出来なかった。

お父様が酒に溺れ、警察に補導された。見ていられなかった。他のことに時間を使う暇なんてなくて、今のお父様から離れるわけには行かなくて……私は皆に理由も言わず、突き放すようなことを言ってCRYCHICを辞めた。

 

本当は辞めたくなんてなかった。これからも皆と一緒に演奏したかった。ずっと一緒にいたかった。CRYCHICが過ごした日々はどれも決して忘れることなんてできない大切な思い出だ。あんな酷いことを言いたくなんてなかった。全部悪いのは私なのに、皆は何も悪くないのに……ごめんなさい、私が弱いから、ごめんなさい。

 

 

 

涙を流しながら私は傘もささずに雨の中を歩く。

面倒ごとを避けてか周りの人は私をいないものとして扱っているようだった。そんな素通りする人々の中に見知った顔を見かけた。

ずっと、ずっと会いたかった大切な人。

 

『ーッ!千明希!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を伸ばすが、そこに千明希はいない。

 

『……千明希』

 

当然、彼の名前を呼んでも返事は返ってこない。

その事実に私はむしろ安心した。こんな自分を見せたくなかった。弱くて、泣き虫で、惨めな自分を見られたくなかった。大切な人が離れて行くのは耐えられない。そう思った私は、ある決断をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千明希…久しぶりですわね」

 

『お嬢!よかった〜、ずっと連絡取れないから心配してて』

 

「千明希、大事な話があるから聞いてくれる?」

 

『どうしたんですお嬢?そんな改まって』

 

「真剣な話ですわ」

 

『は、はい』

 

「千明希…これからの人生はあなた自身のために生きて。あなたは自由ですわ」

 

『…えっと、それってどういうこと?』

 

「私のことは忘れて、あなたはあなたの人生を生きてください。私に縛られる必要はありませんわ」

 

『ちょっと待ってくださいよ……いきなり意味わからないこと言わないでくださいよ。お嬢どこにいるんです?ちゃんと会って話してくださいよ』

 

「……私はもう!あなたの主人ではないの!必要ない!あなたなんかいらない!」

 

『……何だよそれ……訳わかんねぇよ!何で急にそんなこと、ちゃんと説明してくれよお嬢!』

 

「……お願いだから……私のまえから、いなくなって……今までありがとう…どうか、お幸せに」

 

『待て!話はまだ』

 

私はそこで無理矢理通話を終えた。これ以上、千明希の声を聴いていたら、つけていた仮面が剥がれ、抑えていた涙が溢れ出しそうだったから。

 

「……ごめんなさい。私が弱いから……ごめんなさい」

 

この日、私は大切なものを全て手離した。大切な場所も、大切な友人も全て失った。今までの豊川祥子は、跡形も無く消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくしてAve Mujicaを結成した。

表向きは名を売り、豊川グループの広告塔としての役目を果たすため。そして、お父様のため。

 

でも本当は、私がいない春日影を目の当たりにし、CRYCHICに変わるナニカが欲しかっただけ。過去の輝かしい思い出を、別の何かで塗り潰して、忘れたかった。結局私はAve MujicaもCRYCHICと同じく、わがままで、自己中心的な理由で周りを利用して創り上げたにすぎない。そんな理由で結成されたバンドが上手くいくわけも無く、多くの人生を振り回し、大切な幼馴染も壊し、Ave Mujicaは無くなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが私の秘密。私が犯した罪。

 

「……っ」

 

「祥ちゃん?」

 

心配そうな顔で燈が私の顔を覗き込む。

 

「……ごめんなさい。大丈夫ですわ、燈」

 

 

 

ごめんなさい。やっぱり私は弱くて、臆病なまま。私が犯したもう一つの罪を、私は話す勇気が無くて声を出すことが出来なかった。もう一つの罪に対して、彼女達なら分かってくれる。理解してくれると思っている自分も存在する。それでも、最悪の未来をどうしても考えてしまうのだ。一つの家族を壊したにもかかわらず、のうのうと生きている自分が彼女達に拒絶される最悪の未来を。

 

彼女達の前でも仮面をつける自分が、醜くて、滑稽で気持ち悪い。けれどもそれが私。自分はそういう人間であることを理解した上で、私は、私のまま生きて行く。全てを受け止め、Ave Mujicaをもう一度取り戻すために。




キャラ紹介

豊川祥子…やっぱり仮面を取ることは出来なかった。それでも彼女は一人じゃないことを知って、前よりほんの少し強くなれた。ずっと仮面をつけたままかもしれない、本当の自分を見せることはないのかもしれない。そんな見栄っ張りで、醜い部分も自分。自分を少しだけ受け入れることが出来た彼女は、不器用なりにも少しずつ進んでいく。大切な友人達に支えられながら

改めて読んでいただきありがとうございます
次回も楽しみにしていただければ幸いです
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