Ave Mujica そのタスケビトは仮面をつける   作:お薬二錠

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漫画版、千早愛音の豊川グループが可愛すぎた。
アニメよりも緩さがあって、可愛さ増し増しだったのでまだ見ていない方は一度見てみてください。


ティータイム 私は豊川祥子を知らない

私にとって豊川祥子は大切な友達で、大切なバンドメンバーの元バンドメンバー。それ以外はよく知らない。

 

同じ学校に通ってはいるけどクラスは別で、誰かと一緒にいるところをほとんど見たことがない。教室の隅で一人で本を読んでるし、仲の良い友達とかいないのだろうか。

 

 

 

いろんなことがあって、本当にいろんなことがあってMyGO‼︎‼︎!がまた五人で歩き出せるようになったある日、ともりんが歌詞を書いているノートを持って教室を出て行った。

私が呼び止めても、聞こえていないのか進む足は止まることなくて。気になってついていくと、校舎の端にある音楽室にたどり着いた。

 

中からはピアノの音が聴こえる。

何の曲かは分からなかったけど、その演奏はすごく上手で音色も聞き入ってしまうほど綺麗だった。そんな中、ともりんは止まることなく部屋へ入っていく。ピアノを奏でる彼女に歩み寄り、歌詞が書かれたノートを差し出して名前を呼んだ時、音は行く当ての無い感情が爆発したかのように、部屋の中で大きく鳴り響いて止んだ。

 

 

 

ーお幸せにー

 

 

 

静寂に包まれた部屋の中で、彼女の声だけが聞こえた。音楽室を出ようとした時、一瞬目があったけどすぐに視線は逸らされスタスタと立ち去ってしまった。

 

ともりんは思いやりを持って行動している。そんなともりんの行動を蔑ろにする彼女が、どうしても好きになれなかった。

 

 

 

 

 

 

そう、きっと好きになれない理由はそれだけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、私は念願のライブチケット。

Ave Mujicaのライブチケットを手に入れることができた。

突如として現れた、仮面で素顔を隠す五人組のバンド。略歴、メンバーの素性は一切不明のままメジャーデビューを果たした、今話題沸騰中のガールズバンドだ。手に入れたチケットは二人分。ちょうど予定の空いていたそよりんを誘ってライブに行ったが、そこで事件は起きた。

メンバーの一人が仮面を外し、他のメンバーの素顔も次から次へと明らかになっていく。客席がざわつく中、ステージから目を離すことなく彼女の名前を呼ぶそよりんの声が聞こえた。問題なのはそのメンバーだった。舞台に立っていたメンバーの中には若葉睦と豊川祥子がいた。

どこにいてもまとわりついてくる、呪いのようだと思った。

 

 

二人とも私が知らないCRYCHCIのメンバーとして、ともりん達と同じ時を過ごしていた。

みんなにとって輝かしくて、かけがえのないCRYCHCI。今はみんなMyGO!!!!!として一緒に進んでいるけど、三人の過去からCRYCHCIの思い出が決して消えることがないのは、嫌でも理解してる。

 

 

 

そよりんが私達を利用してでも復活させようとした。

 

CRYCHCIの崩壊があったから、ともりんは新しくバンドを始めることに抵抗があった。

 

 

 

 

私は知らない。三人にとってCRYCHCIがどれほど大切なものだったのかを

 

知りたくなかった。CRYCHCIの思い出を持つ三人と私の間に、どう足掻いても埋まることのない深い溝があって、自分がそれに、嫌悪感を抱いていることを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ave Mujicaの騒動があってからも、私達は今まで通りバンドをやっていた。練習して、りっきーに注意されて、らーなちゃんからギターを教わって、ライブして、嬉しがる私をそよりんがあしらって、学校ではともりんと一緒にお昼を食べたりして……みんな今まで通りだった。私だけが、表に出せない歪んだモヤモヤを抱えながらずっと過ごしてきた。

 

 

 

『愛音、最近調子悪いけどちゃんと寝てる?』

 

『……今日は静かだね愛音ちゃん』

 

『あ、愛音ちゃん!今朝見つけた石、綺麗だからあげる!』

 

『愛音?怖い?』

 

 

 

 

上手く隠せていると思ってたのは私だけで、みんなしっかり私を見ていてくれていることがとても嬉しかった。

 

『私は大丈夫だよ!』

 

それでも、怖くて、聞きたいことも聞けない。

私は、素顔を嘘で隠して、偽りの笑顔で振る舞い続けた。

 

(こんなの私じゃない…)

 

 

嘘を吐き続ける自分も嫌。

結果が分かりきっているから、本音で聞けない自分も嫌。

八方塞がりを続けるより、いっそいなくなってしまえば楽なんじゃないかと思っていたある日の夜。

ともりんからMyGO!!!!!のグループラインにメッセージが届いた。

 

 

 

 

 

 

『祥ちゃんが死んじゃう! いまからそよちゃんの家に行っても大丈夫? みんな来てほしい』

 

 

外は大雨だけど、私は考える間もなく身体が動いていた。バンドメンバーが助けを求めているなら、迷う理由なんてない。それが自分のモヤモヤを、さらに大きくするきっかけになるかもしれなくても、大切な友達を助けない理由にはならないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そよりんの家に着いた時、インターホンを押すと聞こえてきたのはりっきーの声だった。玄関の鍵は開いているらしい。不用心だなと思いつつ、家主であるそよりんはどうしたのかと疑問を抱きながらエレベーターに乗り、そよりんの家の玄関を開け状況を理解した私は一目散に彼女の元に駆け寄った。

 

「そよりん!」

 

彼女の呼吸は浅く、とても速くなっていた。顔も普段の綺麗な白を通り越して蒼白になっている。

 

「愛音!私が来たときは何ともなかったんだけど、徐々に呼吸が速くなっていって」

 

「落ち着いてりっきー。そよりん、大丈夫だよ。吐く時間長めにゆっくり呼吸して」

 

「……っ、は…はぁ……あ……あのん…ちゃん……」

 

「大丈夫、大丈夫だからね、そよりん」

 

「…ありがと……ごめんね…巻き込んで……」

 

「ううん、気にしないで……それに、ともりんに頼まれたら動かないわけにはいかないって」

 

「…ありがとう……愛音…ちゃん」

 

少しずつ落ち着きを取り戻し、そよりんの呼吸は安定していった。原因はともりんからのメッセージだ。

あの子の身に何が起こったか分からないが、そよりんにとってパニックの引き金を弾くには十分すぎる文章だと思う。

 

「りっきー、ともりんから他に何か聞いてる?」

 

「いや、私も燈がグループに送ったメッセージしか見てないから」

 

「そっか……」

 

「こっち向かってるってことは、祥子も無事…ってことだと思うんだけど」

 

「とりあえずともりんを待つしかないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の中の悪意が囁く

 

 

 

 

 

「いっそいなくなってくれればいいのにね」

 

やめて

 

「そしたらみんなMyGO!!!!!だけ見てくれる」

 

そんなの、ちっとも嬉しくない

 

「みんなの中心にいたいでしょ?」

 

みんなが悲しむ顔なんか見たくない

 

「今、みんなの中心にいるのは豊川祥子」

 

……そんなの、分かってる

 

「あの子の前でも、いつも通り笑顔でいられる?」

 

…分かんないよ…分かんないけど!そうした方が、いい……きっとみんなもそれを望んでる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、玄関のインターフォンが鳴った。

オートロックに来客が来た合図だ。

 

「祥ちゃん!」

 

そよりんは慌てて玄関を飛び出して行った。

いいな。あんなに心配してもらえて。

私だって、私だって……

 

 

 

 

「愛音」

 

「うぇっ! な、なに?」

 

「ありがとう。愛音が来てくれて助かった」

 

真っ直ぐな眼で私の姿を捉えたまま、りっきーはそう言った。欲しかった言葉を思いがけない人物から貰えたことに動揺して、上手く言葉が出てこない。

 

「あ、うん…」

 

「無理にとは言わないけど、祥子とも仲良くしてほしい。色々思うことはあるだろうけど、悪い奴じゃないから」

 

「うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は豊川祥子を知らない

 

どうしてみんながここまで執着するのか。

明らかに拒絶しているのに、それでも手を伸ばし続けるのか。

 

「豊川祥子ちゃんか……」

 

誰にも聞こえないよう、私に負の感情を植え付けた少女の名前を口にする。

こんな感情を抱いてしまう自分に嫌悪感を抱きながら、私は彼女の前でも笑顔でいられるのだろうか……




キャラ紹介

千早愛音
マイムジの光。彼女がいなければMyGO!!!!!もAve Mujicaも存在しなかったかもしれない。まるで救世主のような存在。でも彼女はまだまだまだ女子高生。
嫉妬も妬みも表に出さないだけで、心の中にしっかり存在していたかもしれない。


読んでいただきありがとうございます
次回も楽しみにしていただければ幸いです
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