龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
項羽は全軍の先頭に立って、漢の陣営に攻め込んでいった。
項羽が大きな目を怒らせ、
漢の兵士たちは、項羽のすさまじい迫力に恐れおののき、近づこうとさえしなかった。
こうして項羽がこじあけた道を、後から
そのまま5里(2km)ほど逃げていったところ……
周囲の山の
太鼓と
その先頭に2人の大将が進み出てくる。
「我らは漢の
覇王よ!
これを項羽は、
「断る!」
と
ところがこれが、もう勝負にもならなかった。
ほんの2、3合ほど槍を合わせただけで、
「ダメだ、まったく
項羽は、
そこへ、また鉄砲の声が鳴り響き、漢の伏兵が四方から飛び出してきて、項羽らを引き包む。
ここで
この包囲をどうにかこうにか突破して、さらに6里ほど進んだ時。
今度は正面で
漢の
一体、こんなことを何度くりかえすのか……
包囲を抜けたら、また包囲。漢軍は、無限の兵力を持つかに思えるほど、何度も何度も襲いかかってくる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
項羽の息は荒い。
ここまで振るい続けた槍も、すっかり刃が欠けてしまった。
だが、
「う……うぉおおおッ!」
項羽は、
項羽は
漢将
残る漢将
「あっ!
と、口で言うのは簡単だが、目の前にいるのは覇王項羽である。
それでも
項羽は、
これで、かなりの距離を稼げたはずだ。いよいよ
ところが、ホッと息をつく間もないうちに、またしても漢の伏兵が現れた。
今度は
漢軍が放った矢の数は、視界を埋め尽くさんばかり。
避けることも防ぐことも、できるはずがない。
それでも項羽は止まらなかった。
項羽が馬を走らせ、神出鬼没の
項羽たちは敵を突破し、囲みの外に出た。
さすがに無敵の覇王項羽、その武勇は
雨のように降り注いできた大量の矢が、周囲の地面には粉を
だが……
項羽に付き従う大将たちは、そうもいかない。
まだ死んではいないが、おそらく、これ以上は戦えまい。
いよいよ絶体絶命か……
と思われた、そのとき。
山の北の大きな道の方から、ひとかたまりの軍勢が近づいてきた。
また敵か!?
と警戒しながら目を
あれは、敵ではない。
夜中にはぐれてしまった季布と
項羽は、季布・
こうして項羽は、やっとの思いで死地を
*
結局……
漢軍は、項羽を追い回すこと
結果は、韓信の完全勝利であった。
韓信は、項羽が本陣まで逃げ切ったのを知ると、1人、静かに自省した。
「これほど
信じがたいまでの強さ……さすがだな、覇王項羽。
次に戦う時は、もう一手、何か考えねばならんな……」
劉邦や韓信もまた、本陣に帰還してきた。
劉邦は、すぐさま韓信を会議に呼んだ。
韓信は、衣服を整え、急いで劉邦の前に現れた。
劉邦は立ち上がり、韓信に
「大元帥の策略のおかげで、俺は、こんなすごい大勝利を得ることができた!
これからは、項羽が漢軍の接近を聞けば、戦いもせずにビビってしまうだろうぜ!」
韓信は、
「漢王様のご威光のおかげで、
……が。
項羽を
この勢いに乗ってさらに攻撃し、項羽が
劉邦は、頼もしげに、うなずいた。
「うん。
大元帥。うまく計略を用いて、はやく
天下の人民が
「は!」
韓信は、背筋を正して全軍の整頓にとりかかった。
そして、遠からず
(つづく)
■次回予告■
広武山での大敗北で、一転窮地に陥った覇王項羽。この状況を打開せんと、人質を利用して漢王劉邦に脅しをかける。
放蕩息子の自覚があるからますます慕わしいのが親というもの。陣中に据えられた巨大鉄鍋。今にも茹で上がらんとする父、太公。劉邦、汝が選び取るものは、君主の利か、人の子の情か。
次回「龍虎戦記」第六十五回
『一杯ちょうだい、親父の煮物』