龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
項羽の圧倒的な強さによって、劉邦を守る漢軍は
劉邦は慌てて逃げ出し、項羽が
だが、そうして5里ほども追走したとき……
漢軍は突然、サッ、と左右2手に分かれ、それぞれ別の道へと走り始めた。
この様子を見て、顔色を変えた
項羽の下で数え切れぬほどの戦いを生き抜いてきた
季布は、項羽に馬を寄せて叫んだ。
「覇王様ッ! お待ちください!
劉邦は、
おそらく、これは我々を
ひとまず、この場所に留まって、様子を
項羽は、季布の言葉を聞いて、馬を止めた。
「確かに妙だ。何かあるのかもしれん……」
そのとき。
項羽たちの前方へ、漢軍の中から、1騎の大将が走り出てきた。
なんとそれは、つい先日、
「おお、覇王様!
臣は、
その陛下が今、韓信の計略に
こうなったら、
覇王様の
これが先日うけた
項羽は、
「ふざけるな
よくも俺を計略にハメてくれたな!
貴様を1万個に斬り砕き、
そのお前が、わざわざ俺の前に出て、また
項羽は衝動的に、
そのまま、項羽は
が。
項羽が、
「あれっ? どこへ行った?」
と、再び馬を止めた……
そのとき。
突如、項羽の前後左右の林から、漢の軍勢が飛び出してきた。
伏兵である。またしても項羽は危険地帯に誘いこまれたのである。
しまった! と思う間もなく、漢軍が
当然、誰も彼もが疲れ、息を切らしている。
そこを元気一杯の漢軍に襲われたのだから、たまらない。
それを漢軍は
「くそっ……またやられたか」
と、さすがの項羽も後悔しはじめた。
周囲からは、漢軍の鉄砲の炸裂する音が、絶えず聞こえてくる。
こうなったら、急いで退却するしかない……
ところが、項羽が全軍に後退を指示しかけたそのとき、さらなる敵が姿を現した。
大元帥韓信の軍勢が、四方八方から項羽を包み、攻め寄せてきたのだ。
「いかん! なんとしても覇王様を救うんだ!」
と、左右の漢兵を斬り伏せながら駆け出した。
季布も
どうにか包囲の一辺を斬り破り、脱出路を確保した。
……が。
項羽が脱出路から包囲の外に出ようとすると、
勇猛な項羽も、もう、さすがに戦意を失っていた。
このまま戦っても被害が大きくなるだけ……とにかく今は逃げるしかない。
項羽は、
項羽の後を追って、韓信の大軍が風を
その数は、さながら蜂の群れ。
その勢いは、山が崩れ海が沸き立つかのよう。
項羽の軍は、韓信の追撃を浴びて、ますます
その兵は激減し、今や、わずか4、5千騎を残すのみ。
項羽には、もう、後ろを振り返る余裕さえない。
項羽が、ひたすら馬を走らせていると……
前方に、別の大軍が見えてきた。
また漢の伏兵か? と思いきや、違う。
あれは
漢軍は、
こうして項羽は、
*
項羽が、やっとの思いで本陣に戻ってきたときには、もう
本陣を守っていた
そのそばには、心配して出迎えに来た
項羽は、
項羽は、
「漢軍は、ものすごい勢いだ。
おそらく俺も、ここに長く留まっては、いられないだろう。
今夜のうちに
そこで再び軍馬を整え直し、あらためて方策を考えてみる」
横から
「しかし覇王様……
まだ真実かどうかは分からないのですが、恐ろしい
韓信が
もしこれが本当なら、たとえ
今、ここに2万の兵が残っております。
あちこちに逃げた兵も、かき集めれば5万にはなるでしょう。
これらの兵を合流させ、今夜、
そこで勢力を
そうすれば、また元通りの力を取り戻すこともできます」
項羽は、眉をひそめた。
「まさか!
そんな簡単に落とされるわけがない。
お前が聞いた
だが、今後は危なくなるかもしれんな。
ひとまず
そこで体勢を立て直すんだ」
この話を他の大将たちにも伝えると、大将たちは、
「覇王様のお考えは、大いに良いと思います」
と、口をそろえて賛成した。
項羽は、すぐさま全軍に
*
あと半日もあれば
この
そのときだった。
突如、どこからともなく鉄砲の音が聞こえてきた。
「
と驚いて四方を見渡すと……
南の道に、漢軍らしき大軍が、
しかも。
東の山に目を向ければ、そちらでも数万の赤旗が風に
項羽は大いに驚き、左右の部下に向かって言った。
「なんで、こんなところに、こんな数の漢兵がいるんだ!?
ひょっとして、天下の諸侯が、みんな俺の敵となって、ここに集まって来てるんじゃないか!?」
「覇王様! 南は漢軍に
そして東……あちらは
東に、あれだけ漢の赤旗が立っているということは、おそらく
こうなれば、ここまで覇王様に着き従ってきた江東の
江東の
こんな危険地帯に
早く臣の言葉に従っていただかなければ、手遅れになってしまいます! どうか後悔せず済むようになさってくださいませ!」
さらに、
「
陛下! 早くこれに従いなさいませ!」
(つづく)
●注釈
項羽が『
また、項羽の叔父の
そのためか、項羽は