龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
逃走を続ける項羽の前に、漢将
項羽と
と、ここで項羽は、槍を左の
だが
項羽は、再び槍に持ち替えて、
が、そのとき。
漢将の
漢の大将たちは、
そこに、英布、
いくら項羽が強くとも、たった100騎の兵では、漢軍の大軍に勝てるわけがない。
さすがの項羽も勝つことを
その逃走の
どうにか漢軍のいない所まで逃げ切った時には、
*
項羽は、東へ、ただ東へ、無心に馬を進め続けた。
そうこうするうちに、空もだんだん暗くなってきた。
道は細く、山は多く、樹木や草も
そのとき、28人の兵のうちの1人が言った。
「覇王様。
もう何日も走り続け、さぞお疲れでしょう。
臣らも、覇王様に従って
馬にも、水も草も与えておりません。
このあたりは山奥で、草木が
漢軍とて、すぐには追ってこられないでしょう。
覇王様、このあたりの民家に入って、今夜は休息なさいませ。
夜が明けたら、また道を
もし夜中に走っていて、
さすがの項羽も疲れ果てていたと見えて、素直に、うなずいた。
「そうだな……」
そこから、足場に気を付けながら、ゆるゆる進んでいくと……
林の中に、かすかに
光を頼りに林の中へ分け入っていくと、そこに、1つの古い屋敷があった。
項羽が進んで屋敷の門前まで来ると、屋敷の脇のほうから、サラサラと水の流れる音が聞こえてきた。
「ちょうど良かった。馬に水を飲ませよう」
水音のする方へ行くと、水の清らかな
項羽たちは、ひとまず馬に水を飲ませた。
ここで項羽は、
「おい。あそこにある岩で、この刀を
だが、呼ばれた兵は、
しかたなく、項羽は馬を下りて、みずから宝刀を
すると、どうしたことだろう。
倒れた岩の下から、水が湧き出てきて、たちまち大きな
この屋敷は、名前を
そのそばには、項羽が馬に水を飲ませた『項王飲馬泉』、刀を
*
さて、項羽は、馬に水を飲ませ終えると、また屋敷の門前に戻ってきた。
門の中に入り、
そこで、
やっと、何人かの老人が
項羽の部下の兵卒が、建物に入って老人たちに
「この屋敷は、どうしてこんなに人が少ないんだ?」
老人の1人が答える。
「以前は、この屋敷に20人も人がおりました。
しかし最近、漢と
私らは、近くの村の者です。
この屋敷が荒れ果ててしまうと悲しいので、私らのような年老いた役立たずを置いて、屋敷を守らせておるのですよ。
ところで、あなたがたは、一体どなたで?
こんな
兵卒は言った。
「あちらは
漢軍に追われ、夜中に道に迷って、ここへいらっしゃったのだ。
どうか、屋敷の中に
それから、もし食べ物があれば、わけていただけると助かる」
老人は、急に建物の外へ走り出て、項羽の前で地に拝伏した。
「この
項羽は、老人に優しく笑いかけた。
「いや、かまわん、かまわん。
むしろ世話になる。
汝ら、米があったら
俺が江東に落ち延びることができたら、1
老人たちの1人は、普段から書を読む知識人であった。
その老人は、項羽の前に進み出て、言った。
「覇王様は、
すなわち、我らは
覇王様に
どうしてお返しなどを求めましょうか」
そして老人たちは、米1
項羽は限りなく喜び、28人の兵士たちと食べ物を分け合って、その夜は屋敷の中に
(つづく)
■次回予告■
国も、軍も、妻も、将も、ひとつひとつ失って、残るは愛馬と28人の兵士のみ。項羽は苦しみの中で走り続け、戦い続けた。暴虐の
いついつまでも続くと思えた遥かな旅路。極みは果たして、
次回「龍虎戦記」第七十三回
『覇道の果てるとき』
●注釈
本編には『