龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
陣内で
「私と
なぜ、そのように大げさな礼を行うのです?」
「
もし失礼があれば、
そう恐れて、このように礼をいたしたのです」
「ははは……!
私が
やむをえなかった。こうするしかなかったのです。
漢帝は、
こういう人物とは、ともに富貴を
だから私は
まあ、それはよいでしょう。
「私は、漢帝から『
すぐに兵を収めて漢に帰服なさるなら、陛下は
すべて読み終わり、
「これは
そこで
「漢帝は、大軍を
まだ私と一度も戦っていないのに、
これは
「いやいや、そうではありません。
皇帝陛下も、はじめは貴公と交戦し、勝負を決めようと考えておいででした。
しかし、群臣と協議した結果、考えを改めなさったのです。
『軍を
国を
そういう
陛下は、そうおっしゃって、
もし貴公に帰服する意思が無いのであれば、私は別に強要しません。
すぐに帰って、貴公の言葉をそのまま皇帝陛下にお伝えするまでです」
「この
韓信は、
その功労は、私が
韓信は、それだけの大功を成しとげたうえ、一点の異心さえ抱いてはいなかった。
それほどの韓信ですら、皇帝陛下は、
たとえ私が帰服したとしても、漢帝は反逆の罪を許しはしまい。
私は、この
「いや、そうは
と食い下がった。
そこから
結局、
なぜなら、
たっぷりと時間をかけて話し合ったところで、
「よし。このくらい時間を稼げば、計略も上手くいっているだろう」
そこで
陣外に出たところで従者と合流し、首尾を聞いてみると、従者は、してやったりという顔で、ほくそ笑んだ。
「ご指示どおり、100
みんな限りなく喜んでいましたよ」
「よし。よくやった」
そして急ぎ帰還し、劉邦に
*
次の日。
劉邦は
それに対応して
広い平地で両軍は出会い、互いに距離を空けて布陣した。
ここで先に動いたのは
「陛下も、だんだん
どうして聖なるお体を苦しめてまで、矢や石の飛び
劉邦も、大声で叫び返した。
「俺は、汝に悪くしたことは一度もないぞ!
それなのに、どうして
「陛下は、功臣を
これは
それゆえ、臣は
この言葉が、劉邦の
劉邦は激怒して、背後の軍勢のほうへ振り返った。
「おい! あの逆賊を
「俺だ!」
「自分も!」
そろって飛び出てきたのは、
漢軍きっての豪傑2人である。
2対1で刃を交え、戦い合うこと20合あまり。
ここで漢軍から王陵・周昌も槍を引っさげ駆けつけて、四方から
しかし、項羽との激闘を乗り越えてきた漢軍主力が相手では、さすがに
南には、
「
と、彼らをアテにしていたのだ。
が、これは全くの見込み違いであった。
そのため
態勢を立て直すこともできぬまま、ひたすら敗走する
劉邦は、その様子を見て、
「よし! 追撃だ!」
と、大軍を動かした。
劉邦
(つづく)
●注釈
本編では『
『孫子曰く、凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之れに次ぐ。軍を全うするを上と為し、軍を破るは之れに次ぐ……(中略)……この故に百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり』
軍事力を用いる時には、敵国や敵軍を傷つけずに降伏させるのが最上であり、戦って敵を破ることはその次の価値しかない。だから、『百回戦って百回勝つ』ことは最も良い戦略とは言えない。戦わずに相手の兵を屈服させることこそ最善の戦略なのだ……と、おおむねそのような意味になる。
孫子は有名な兵法家だが、その軍事思想の根底には、徹底したコストパフォーマンス重視の姿勢があった。たとえ目先の戦闘に勝利しても、それで得られる利益が支払ったコストに見合わなければ意味がない。だから戦争前の綿密な調査と準備が欠かせないし、戦わずに済むならそれに越したことはない。どうしても戦わねばならないなら短期間で終わらせること……そうした孫子の思想の一端が垣間見える一節だ。