龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
項羽は、叔父項伯の言葉に従って、
だが、それで収まらないのが軍師
「
「おう、分かった。分かったよ、先生。
でも、今夜の夜襲は敵に察知されたから中止なのだろう? どうやって劉邦を殺せばいい?」
「3つの方法がある」
「第一の計。
劉邦が来たら君みずから出迎えて、劉邦が
これが最も理想的な展開、
第二の計。
最初の計で殺せなかった場合、私が
これが悪くない策、すなわち
そして第三の計。劉邦に深酒を
これは最悪の場合の手、
これらの計に従えば、必ず劉邦を殺せましょう」
項羽は、うなずいた。
「その3つの計、どれも良さそうだな。
どれを選ぶにしても、とりあえずさっさと劉邦を呼んでしまおう」
かくして項羽は、大将たちに宴会の準備を命じ、自身は劉邦へ
*
項羽からの使者は、急いで
届けられた
『
私と貴公は、
あとは、
そこで、この戦勝を祝して宴会を開きたいと思う。
文官たちの
もちろん貴公も功労者だから、ぜひ参加してくれ。他の諸侯に率先して、早くこちらへ来ていただきたい。不宣』
読み終えた劉邦は、大慌てで大将たちを集めて叫んだ。
「項羽が俺を招いて
この宴会ぜったいヤベえよ!
「項羽の勢力は強大ですから、敵対するのは得策ではありません。しかし宴会に参加するのも危険です。
ここは
そうしてひとまず身を守り、時間をかけて軍馬を整え、いつか関中を奪回する計略を練るのがよいと思われます」
「同意ですな。項羽との交渉には、この私が行こう」
だがここで、
「いや、お待ちを」
と反対する者がいた。
軍師張良である。
「それは良策ではありません。
もし宴会への参加を拒否したら、それを口実に項羽が何を仕掛けてくるか分かりませんよ。
昔、
また、
天下の人々は、彼らを賢人と見なしている。私などは才の足らない男だが、この偉人たちに
この私が、我が君とともに
劉邦は言った。
「分かった……ぜんぶ張良先生に任せます」
かくして、覚悟を決めた劉邦は、項羽あてに
『明日、早い時間に宴会に参ります』と……
*
劉邦からの使者は、その日のうちに
劉邦は、明日やってくる。
それを聞いた
「明日の宴会は絶好の機会です。こんな理想的な状況は、もう二度と来ないかもしれぬ。くれぐれも、三ヶ条の計を忘れてはなりませぬぞ」
「分かった。先生の思うようにやってくれ」
と、項羽は
そこから
そうこうするうち、あっという間に夜が明けて、翌日早朝。
付き従う護衛は張良、
劉邦の胸は、不安で、いっぱいであった。
道中、馬上で張良にこぼす。
「今日の宴会、やっぱり怖いよ。たぶん殺されるよ……張良先生、一体どうするつもりなんです?」
張良は言う。
「ご安心ください。ちゃんと策は考えてあります。
私が昨夜お伝えしたことを覚えておられますね? 項羽から質問されたら、私が教えたとおりにお答えなさいませ。それで乗り切れます」
「ホントかよぉ」
涙目の劉邦を先頭に、一行は
すると、前方から項羽の軍勢が現れた。
兵の手にした刀や槍が
軍勢の先頭に立っていた大将は、項羽軍きっての
「ようこそお越しを。
英布は馬を降り、あくまで丁重に礼をして、劉邦一行を案内していった。
宴会場へと進みながら、劉邦は、あたりの様子を見回した。
おびただしく立て並べられた武具。あちこちで、しきりに鳴る
張りつめた殺気を敏感に
「おいおいおい……こりゃ、まるっきり戦場じゃないか! どう見ても酒宴の会って感じじゃねえよ! ヤだよお! 入りたくない!」
張良が耳打ちした。
「ここから先へ進めば勝機がある。しかし逃げれば敗北です。
敵は、君が
まあ、ここで少しお待ちください。ご不安なら、私が中の様子を見てきましょう」
(つづく)
●注釈
(1)
呉国の
元々は
後年、孫武とともに呉の軍勢を率いて祖国
これが「死者に鞭打つ」の由来である。
また、この行いを批判されたときに反論として述べた「日暮れて道遠し(私の人生は残り少ないから、手段を選んでいられないのだ)」の言葉も、故事成語となっている。
ところが、後に
国の柱であった
(2)
当時、
おそらく
これが「完璧(
その翌年、