龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
翌日。
しかし、劉邦が朝廷にいない。
「漢王様は、ここ数日、朝廷に出ていらっしゃらないのです」
との答え。
そこで、内官を通じて、
「申し上げたいことがございます。朝廷へお越しください」
と劉邦に伝えたのだが……
劉邦の返答は、こうであった。
「俺、最近むしょうに東へ帰りたくて……でも、どうすることもできなくて。
その悩みのせいで、つい、朝廷に行くのを忘れてたんだ。明日の早朝には顔を出すから、話はそのとき聞くよ」
というわけで、さらに翌日。
劉邦は、言葉通りに朝廷に現れた。
そのなかで、劉邦がポロリと、こう
「最近、なんだかやたらに故郷へ帰りたくてさあ……でも、いい考えが浮かばないんだよ」
「それなら簡単です。
劉邦が口をとがらせる。
「んなこたァ分かってるよぉ。
でも、いい人いる?」
「漢王様、もはやその人材を探す必要はありませんぞ。
ただ韓信を用いればよいのです。彼ならば、必ず
劉邦は、目を丸くした。
「韓信ーっ?
あいつは、貧乏で自分ひとり食っていくことさえできなかった男だぞ。大元帥になって項羽と互角に戦えるわけないじゃないか」
そこで、
どれほど算術に通じていて、わずかばかりの
そしてここで、古米を出して新米と取り替えるという、韓信の提案を
劉邦は、困り顔で頭を
「まあ、古米の件は、いい考えだと思うよ。やってくれ。
それに計算が得意なのも分かった。
でも、そんなのは一つ才能を持ってるってだけだろ? そんなに驚くようなことか?」
「才能の一片を見れば、残りの部分を
韓信は、まことに大元帥の才能を持っております。どうか彼を
劉邦は、
「分かったって……
*
韓信は、
そこで韓信が最初にしたのは、これまでの
新しく収められた量はいくらか。これまで保管されていた量はいくらか。そして実際に倉庫にある量はいくらか。
帳簿に記録されていた数量を実態と照らし合わせ、
実は今まで、この役所には1つの悪習があった。
新しい
早い話が
こうして
余った
この腐敗ぶりを見て、民衆の多くは
そこで韓信は、着任
これまで長年に渡り不正を働いていた者たちを、徹底的に調査して解任したのである。
そして、不正をする必要がない程度に裕福で
食糧の購入・放出は公平公正に行い、食糧を納めるときにも
わずか半月の間に、人民は韓信を
人々は、先を争って食糧の納付に
人々は、口々にこう言った。
「こんなに賢明なお方が上に立ってくれたおかげで、俺らは、あっというまに食糧の納付を済ませられるようになった。
それから1ヶ月の間に、倉庫は充実し、役所内の取り締まりも厳格になった。
*
ある日のこと。
人々は、大勢でそろって
「今まで、私らは
食糧を納入するときには半年も待たされましたし、食糧を支給してもらうときは何日たっても結局支給してもらえなかった。
ところが、韓
どうかお願いです。韓
二年でも三年でも、あのお方がこの役職にいてくださることが、私らにとってはこれ以上ない最高の
「そうかそうか。
しかし、韓
人々は、なおも
「そこをなんとか! どうにかしては、いただけんものでしょうか?」
「君たちの言いたいことは分かった。よく相談して、これからのことを決めるとしよう。悪いようにはしないから、今日のところは帰りなさい」
人々は
1人になって、
「やはりな。あの韓信を人並みの役職などに付けたから、簡単すぎて
大きな仕事も良し、小さな仕事も良し。まったく、なんでもこなしてしまう男だな。
よし。このままにはしておけん。
この私が力を尽くして彼を
(つづく)