龍虎戦記 項羽vs劉邦【翻案・通俗漢楚軍談】 作:外清内ダク
そして、劉邦に、こう
「明日、東方へ向けて出発いたします」
突然の発表に、漢軍の将兵たちは、とまどった。
「明日出発だって?
今、
まだ道も完成してないのに、韓信大元帥は、どこから
当然の疑問である。
これを劉邦に
「確かに変だな」
と首をかしげ、
「なあ
まだ
*
その夜、
「韓信大元帥。明日、
しかし、漢王様は『一体どこの道から進むつもりなのか』と疑問に思っておられる。
どのような計画になっているのです?」
韓信は、薄く
「
なぜ今になって、そんなことを問いなさるのです」
「いや、確かに別の道があるとは聞きましたが、どこにその道があるのか、詳しいことはいまだに知らぬのです。
そこへきて、大元帥が
一体どういうつもりなのかと、私自身も疑問に思っていたのですよ」
韓信は会心の笑みを浮かべた。
「
こうして
行程は5日。1年間は襲って来ないはずの漢軍が、たったの5日でいきなり散関に姿を現せば、
そうなれば、もう散関は手に入ったようなものです。
ただし、計画が外部に
時刻は深夜に達していたが、劉邦はまだ
*
次の日。
劉邦は、全軍に出陣を命じた。
韓信が手塩にかけて調練してきた軍勢、その数は……
劉邦がもともと連れてきた20万。
その後に加わった15万。
そして韓信みずから近隣の郡県で募集・選抜した10万。
総勢45万にも
この大軍を、韓信は4隊に分けて編成した。
先陣たる第1隊を率いるのは、漢軍の先鋒、
つい先日まで
韓信は、
「この先の道は、かなりの難所だ。
山に出会えば道を作り、川に出会えば橋をかけ、あとに続く味方の進路を切りひらけ。
ただし、怪しい物音や動きを見ても、軽率に攻撃してはならない。まず後ろの軍に報告し、軍令を待ってから攻めよ」
続く第2隊の指揮官は、
その配下には、猛将10人と精兵2千騎を
「貴公らの役目は、先鋒
先鋒が戦って勝ったときは、すばやく兵を駆って敵に攻めかかり追撃せよ。
逆にもし先鋒が負けたなら、急いで前進して先鋒を救出するのだ。
手にあまるほどの重大な事態が起きたら、後方の主力部隊に報告して対策を待て。
しかし、決して退却してはならない。お前たちが壁となって敵を防ぎ止めよ」
第3隊は、韓信みずから
猛将40人。兵も40の部隊に分割し、前後左右に
そして第4隊は、漢王劉邦の
大小の百官を引き連れ、
以上の配置が全て完了すると、韓信は、第1隊から順に、東へと進軍を開始させた。
劉邦は、
一糸乱れず進んでいく、強壮な軍馬。
その威容は、次のようなものだった。
部隊には陰陽の区別があり、陣形には前後があり、大将には紀律があり、兵士には整然とした隊伍がある。
旗印は赤帝の真紅。
軍を先導する旗振り役は、5方向に配置する。
全軍を制御する者は王。
威儀と号令は全て
人には、それぞれ才能があるから、その能力を
疲弊した人馬は、その度合いが増すに従って軍から取りのぞく。
体格の大きな者は弓や
体格の小さな者は
力の強壮な者は軍旗を振り、
力の小弱な者は
遠くを見る視力が無い者は号令を耳で聞き、
聞くことができない者は風火を目で見る。
体が
体が
毎日よく食い体力のある者は
毎日200里を走れる者は敵の機密を探る。
文官
博士
三軍は虎の如く。
士の多きことは雲の如し。
この
「これほどの軍馬なら、
劉邦がはしゃいでいると、そこへ韓信が現れた。
「漢王様。
臣は、漢王様より2日先行して進みます。
漢王様は、後陣の軍勢を
臣が先に散関を攻め取り、漢王様をお迎えいたしましょう」
と、自信満々に言い残して、韓信は進発した。
漢中の人々は、身分の高い者も低い者も、みんな道に立って大軍が通過していくのを見物した。
「昔から、軍勢が動いたことは何度もあるが、これほど
と、人々は口をそろえて
(つづく)