宇宙を放浪するスローライフを目指します 〜巨大な宇宙戦艦とアンドロイドを添えて〜 作:八雲ネム
『どぉして制御が効かないのぉ〜〜〜!!』
「ありゃ、制御不能の暴走特急になってるなぁ」
「コノ進行方向デハ98.45%ノ確率デ回避不能デス」
「では重要区間に当たらない様に回避行動を取れ」
「了解」
宇宙船と言うのは、基本的に下手に事故を起こさない様に安全装置が何重にも掛けられていて意図的に外さない限り、よっぽどの事がない限りは暴走しないのだがSC25・ホワイトスワン、と言う宇宙船はある条件になると暴走状態に陥る欠陥品である。
それは、高機動をする為にジェネレーターを高出力にした状態で発熱量が高い光学系の兵器を乱射した際、リミッターが過負荷に耐え切れずに暴走状態になってコックピットからの操作を碌に受け付けなくなってしまう。
その為、依頼内容の詳細を聞いた惑星から出港してからイチャモンを付けて付き纏っていた白鳥の様に流線型で、大型の後部スラスターを持つホワイトスワンの船長であるエレナは無線越しにそう叫びながらミネルバとの衝突コースに入った。
『きゃー!? 避けて避けてぇぇぇ!』
「耐衝撃防御を展開して」
「了解、耐衝撃防御ヲ展開シマス」
その内、飽きて他の傭兵に行くだろうと思って放置していたのだが次の寄港地であるコロニーまで付いてくるとは思っていたなかった為、傭兵ギルドで彼女から模擬戦の申し込みを依頼して俺が受理した後で行なったのだが、暴走する宇宙船を見る事になるとは思ってもいなかった。
幸い、彼女のホワイトスワンは全長500メートルで全幅が90メートルと言う細長い形状をしていた為、全長や全幅に余裕があるミネルバの重要区間以外に当たれば問題はない。
そして、回避行動を取ったミネルバの翼の様に出っ張っている部分に衝突するのと同時にある程度の揺れが宇宙船全体を駆け巡った事で、今回の模擬戦が終了した。
☆☆☆☆☆
「 ったく! 今回のでどれだけの仕事量が増えたと思ってるんだ!」
「すみません」
「いや、オメェは良いんだ。傭兵になって日が浅いし。ただ、エレナの方は傭兵になって何年になる!?」
「………5年です」
「しかもシルバーランクになって1年は経過してるだろ!? そんな奴がブロンズとは言え、半年も経ってねぇ
「………すみません」
結果的に、事の顛末を知った傭兵ギルドの担当者が相当なお冠で別室にてかなりの威圧と口調でエレナを責めてきたので、やらかした訳ではないのに俺まで謝ってしまうぐらいには凄まじいオーラを放っていた。
まぁ、こう言った事故が起こる可能性を予想出来た事から下手に拗れるのが嫌なので、傭兵ギルドと言う第三者を挟んで模擬戦をやったから担当者に激詰される状況で済まされているが、第三者を挟まなかったら絶対に法廷で争う羽目になっていたと思われるので、今いるコロニーがある星系に何年も拘束される事を考えただけでも恐ろしい。
一応、宇宙船の保険ってのもあるのだが保険料を受け取る為に模擬戦に至る経緯を立証する段階から始まる事を考えたら、第三者を挟んだ判断が間違っていないのは確かだな。
その為、傭兵ギルドで保険などの法律に詳しい人に来てもらって各種手続きのやり方を教えてもらい、必要な書類に署名すると今回の騒動は収束に収まったのでやるべき事は終わった、と思ってその場を去ろうとするとエレナに呼び止められた。
「あの………ごめんなさい」
「修理費用を全額、そちらが負担して2度と顔を見せなければそれで良いから」
流石にムキになり過ぎたと思ったのか、普通に謝ってきたので謝罪は受け入れたがそれ以外は受け付けない、と言わんばかりにそう言ってから立ち去った。
物語の主人公であれば、許したかもしれないが俺にとって
資金面では10億クレジット*1に近い金額があるし、ギルドの依頼が完了した事による収入もあるので金額面では問題ないのだが、元を辿れば彼女からのやっかみを回避する為に仕方なく模擬戦をする羽目になった挙句、事故って宇宙船に損傷を与えられたのだ。
これで心情を悪くしない人がいたら是非、会って話を聞いてみたいねと思いながら修理を受けているミネルバの元に向かうと、既に修理は完了していて今すぐにでも出港できる状態だった。
「よー、調子はどうだ?」
「システム、オールグリーン。イツデモ出発デキマス」
「了解。荷物の搬入待ちだから搬入できたらすぐに出発しような?」
「畏マリマシタ」
宇宙に進出する遥か前、人類が1つの惑星に縛られていた頃であればブロック工法とは言っても限定的だったし、建造や解体は人力でやっていたと聞いたが進出が本格化して色んな惑星に行ける様になってから作業の無人化が完了した様だ。
正確には、建造する際は船体をいくつかの輪切りにした状態で配置してそれぞれの位置からブロック工法で組み立てていき、輪切りとなったそれぞれの船体の建造が完了すると輪切りの断面図をくっ付けて空気漏れがない様に密着させて完成となる。
以前、TV番組で建造する工程を撮影していたのだがその時のイメージが果物を輪切りしていく光景の逆再生みたいな事が発生していたので、科学の力ってすげーと当時は純粋に思ってしまった。
当然ながら、ミネルバも同じ様な工程で建造されたので損傷した翼部分を船体部分から取り外して新しく造った物と入れ替えた為、エルマとの示談が済む数日の間に船体の総点検と共に終わっていたのだった。
幸い、ギルドの依頼で荷物を積み込んでいる船体中央からやや後方にある貨物室は免震構造によって船体の振動をある程度、吸収してくれる上に今回の振動は大きかったもののそこまで激しくなかった為、荷崩れ等は発生しなかった。
船体の大きさに感謝しつつ、暇だからどうしようかなぁと思いながらこのコロニーに何があるかを確認していると、宇宙船の設計図を扱う企業があるとの事で調べてみた。
すると、宇宙船を建造する企業が公開している設計図から自作の設計図まで幅広く取り扱っている、との事だったので惑星を開発している間に自分だけの艦隊を作ってみたいと言う欲求が膨れ上がった為、その企業とコンタクトを取って各種設計図と自作できるシステムを1億クレジット*2で購入した。
流石に、軍隊で採用されている最新の宇宙戦艦やエンジンなどの技術とかは購入できなかったものの、その企業に登録されている各種宇宙船の他に航宙機*3や船に載せる事ができる人型ロボットまで網羅しているので1億クレジットでも安いぐらいだ。
嬉しさの余り、模擬戦での嫌な記憶が吹っ飛んだので荷物の積み込みが終わるまでの間に自分が建造したい宇宙船の青写真を設計していった。