宇宙を放浪するスローライフを目指します 〜巨大な宇宙戦艦とアンドロイドを添えて〜 作:八雲ネム
軍人のオリーヴさんの誘いを受けた日から数日間、かなり悩んだが結局は彼女の誘いを受ける事にした。
何しろ、俺達が居る銀河系の約半分が未開の領域で俺が購入した惑星は未開の領域に接している最前線、と言っても過言ではない場所に位置しているので開発が進めば巨大な中継拠点として、未開の領域へ進出する為の足掛かりになるからだ。
その為、新規の中継拠点は注目度が高くなるので様々な利権が動いて中継拠点である宇宙港だけではなく、大量の資源が眠っている惑星の所有権を獲得する輩が大量に出てくるだろう。
現に、一見すればこちらに利益がある様な謳い文句で交渉に応じて欲しい内容のメールがわんさか、来ているのだが内容の裏側としてはこちらの足元を見ている様な感じを受けたので、それならオリーヴさんとの交渉を成立させた方が良いなと思ったからだ。
交渉の内容としては、惑星とそれに付随するあらゆる物に対する所有権は俺が持ち、オリーヴさん側からは開発する為の資金や技術を提供する一方で彼女が必要とするものは優先的に提供する、と言うものになった。
内容的に、こちらにかなり譲歩した形になるのではないかと聞いてみるとオリーヴさんからこれでもまだ不安だ、との話を聞いたので詳細に関しては追って詰めると言う事になった。
その話を聞いて、“人ってどれだけ、悪辣になれるんだ”と思っってミネルバに聞いてみると、人の欲望に限界はないとの回答が返ってきたので惑星に辿り着いても用心しておこう、と思いながら傭兵ギルドの依頼をこなしていった。
何しろ、ある程度の距離を移動したと言っても距離にすれば1割程度の距離しか移動できておらず、RPGとかで例えるなら主人公が生まれ育った町や村を出て最初の大きい街に到着したレベルの距離だ。
その為、まだまだ先が長いなぁと思いながら初めて宇宙を出た頃から振り返ってみると、生まれ故郷にいた頃と比べて濃密な時間を過ごした事に気が付いた。
宇宙に出た途端、瞬殺とは言っても宙賊に襲われたので後ろ盾が欲しくて傭兵ギルドに所属したら惑星の調査依頼を受ける事になり、輸送依頼の依頼をこなしていると先輩の傭兵にやっかみを受け、何とか対処すると今度は軍人から誘いを受けたりと少しうんざりしてきた。
惑星に辿り着くまで、ずっとこんな調子なのかなと面倒臭さに肩を落としながら思いながら依頼をこなしていると案外、そうでもない事に気が付いた。
必要な時以外、こちらから無意味なリスクは受けない様に立ち回っていた事も大きいのだろうが、依頼で立ち寄る惑星やコロニー以外は世間一般では観光地として人気な惑星なども含めてスルーしていたからだ。
折角なんだから、立ち寄れば良いと言う意見もあったのだが最短ルートで1年以上も掛かる距離なのに、多数の依頼によって寄り道をし過ぎて1ヶ月程の遅れが生じているのでそう言った所で時間を潰す気分ではなかった。
これで、何人かの女性を囲う事していれば立ち寄ったであろうがやっかみをふっかけてきた女性とはあれ以来、会っていないのでどうなったかは知らない。定期的にお金を振り込んでいるので生きているとは思うがね。
他にも、小綺麗な若い女子が家を追い出されたかして治安の悪い場所に1人で居たのを、何人かのチンピラに連れて行かれる現場に遭遇したものの下手に救って、こちらの手に余る様な厄介事に巻き噛まれる事を懸念して手が出せなかった。
薄情者や甲斐性なし、と言う事も考えたが困っている人を救うと言うのは一時的にとは言え、そいつの人生を背負う事になるので今の俺には荷が重すぎて到底、手が出せなかった。
その為、少しモヤモヤした気持ちを抱えた状態だったのでミネルバに聞いてみた。
「正直ニ言ッテ妥当ナ判断ダッタト思イマス」
「だからと言ってそう簡単に割り切れるかよ」
「勘違イシテホシクナイノデスガ、今ノ貴方ハ偶然ニモオ爺様ノ遺産ガ入ッテキタ事デココマデ来レタダケノオ方デス」
「偶然!? 偶然か」
そうだな。確かに、ミネルバが言う様にたまたま祖父さんがくたばった事で手に入れた遺産を売った事で大金を得る事に成功し、ミネルバを建造してここまで来れたのだ。
言ってしまえば、何のスキルを持っていない前期中等教育*1を卒業した10代半ばの若造でしかないので、やれる事と言えばミネルバを使って恒星間航行や探索をする程度でしかない。
「それでも救いたかったよ」
「デシタラ生キ抜ク術ヲ身ニ付ケクダサイ。コノ過酷ナ宇宙デ人ヲ助ケテ生キ抜ク為ニモ」
「そうだな」
結局の所、今の俺は夢見がちなクソガキだって事か。
確かに、スローライフを送りたいと言う夢を持っているがそれを実現する為の力はミネルバに依存しているし、組織としての後ろ盾も傭兵ギルドに所属している事とオリーヴさんとの契約の2つしか無い。
後ろ盾は、その時の情勢などにもよるので何とも言えないが力に関してはミネルバ以外の宇宙船を多数、建造するのに加えて白兵戦用のロボットなども取り揃えたいなと思う様になった。
その為、惑星に辿り着くまでに必要な物の洗い出しと必要な設計を行うのだった。
☆☆☆☆☆
「つ、遂に到着した!」
「はい。私達の覇道はここから始まりますね」
「覇道とはちょっと違うかもしれないけど、確かに始まるね」
生まれ故郷を出発してから約1年と2ヶ月、と言う時間を掛けて漸く購入した惑星を眼下に捉える所まで到着した。
ここに来るまで、調査依頼以外の依頼は全て任務完了しているので気兼ねなく開発と調査できるので、自立進化によって出発当初はコテコテの機械音声だったミネルバのAIは落ち着いた成人女性の声で答えてくれたのでその為の準備をした。
「何が必要になるかな?」
「まずは偵察機を飛ばしましょう。この惑星を覆う大気の成分を始め、原生生物の脅威がどれほどなのかを確認しないと始まりませんから」
「それもそうだね」
ミネルバしか宇宙船がない上、ここに来る前の最後の寄港地で必要な物資を買い漁った物の船体をそう何度も修理できる量を乗せる事ができなかった為、失ってもそこまで痛手ではない無人の偵察機を作って射出する事にした。
次の投稿から第1章になります。