ぺとりこーる 作:サカサマ
世界は残酷なほどに不条理と不合理と理不尽に溢れている。
それは、どんな人物へも等しく訪れる。しかし、その大きさは様々だ。訪れたとしても、それに対応できるかは人による。そして、これから語られる人物は、それに押しつぶされてしまった。
その人はエーテルに包まれた空間ホロウ、崩壊した街の中で今まさにその理不尽により命を落としてしまうそのときであった。
その人は複製体6号と呼ばれていた。
彼女を含むシルバー小隊という同じ素体を元にしたクローン兵士十数人で構成された小隊の一人である。
現在、製作者の都合により、成功率の極めて低い作戦へ投入された結果、小隊は壊滅した。軍部は死亡した兵士を作戦区域内ホロウの内部に破棄することに決定。
彼女は破棄された。そも彼女がその決定を知ることはないが。
ひび割れた瓦礫に弱々しく横たわる。銀色の髪は赤黒い血や煤けた汚れに穢され、腹部に空いた穴からは命のガソリンが止めどなく溢れる。肩からは侵食の影響でカラフルかつ黒々とした結晶が生えていた。
彼女の腹に穴を開けた存在は暴れ殺戮を行いながらホロウを進んでいった。そして一人を除いた小隊全員を全滅させた。確認こそしてはいないが、残り一人に討伐されるのだ。そう考え至ったからか、安堵の息を吐く。
間違いなく、彼女は死ぬのだろう。エーテル侵食から異化による人間性の喪失か、失血による生命維持機能の停止か。
失血による気絶ができたのなら幾分か幸せなのだろうが、自害すら厭わない兵士として育てられた彼女の精神がそれを拒む。刻一刻と流れ出る血液を随分と見えにくくなった目で見つめていた。
あたりを見渡す。同じような顔をした少女たちが無惨に死を荒らされ事切れていた。彼女の行く末が鮮明に想像できる。
目から涙が溢れた。自死すらも恐れない兵士だろうと、着実に這い寄る絶対の死は恐ろしいのだろう。冷静なようにみえた無表情がどんどんと青を超えて白く絶望が染められて、呼吸が浅くなっていく。声にならない声が出て歯が震える。
——いやだ。いやだいやだいやだ隊長っいやだたすけて、いやだ、いやだ、いやいやっ、やだ。あ
人は、逃れることのできない死が迫ると、空っぽになる。死という途方もなく大きな理不尽と終わり、恐怖を受け入れるために。伽藍にいたり伽藍堂。迎える死の恐怖により空になることを選んだ身体は、魂すらも除いてしまう。
除いてしまった。
魂を除かれて空っぽになった体はただの脈打つ肉になり、肉は魂を包む殻になる。
そこへ、どこからか魂が迷い込んだ。空洞になった身体は、それを埋めるように受け入れる。魂とその空間にある幾らかのエーテルを巻き込んで一緒くたに混ぜ込み、取り込む。
そうして、幸運にも取り込まれたエーテルにより侵食反応が進行、失血部位を結晶が塞いだ。目下、目先の死から免れたのである。いまだ、異化の危険性はあるが。
かくして、それは再び歩き出す。
世界は奇跡と偶然、少しの幸福により回っている。
少なくとも、私はそう信じている。
というよりもそう信じていたい。どんなに辛くてキツい状況でも心持ちだけは明るい気持ちで前を向きたいから。だからそう信じている。
目が覚めると、青々とした空とそれを背景に伸びる歪な結晶が目に入った。見たことがない景色で少しの間動くこともなく、それを見ていた。
いつまでも惚けるわけにもいかないと、体を起こす。起こした身体は、自分のものではなかった。それどころか、異様と言える身体だった。
首から下から生えているこれは自分の体だろう。しかし驚愕から息が荒くなる。呼吸の感覚が慣れ親しんだ体と違うことが嫌に認識できた。
仮に、自分の体とした時。その体には至る所に先ほど見ていた黒く濃淡を持った輪郭が虹色に揺れる結晶が生えていた。特に腹部はそれが大きく生えていて、根本は大量に血を流したような血痕が見てとれた。黒々と乾いたそれは、結晶と区別がつかないほどに思える。
恐る恐る自分の腹に触る。肌に触れれば感触はあった。なおさら自分の体ではないことがわかる。件の結晶は、自分の体から生えているのに何も感じなかった。
意味がわからない。なんだこれは。
自分の体ではないと理性が叫ぶ。しかし感性は己の体だといい、恐怖を抱いた。
心細く、立ち上がり周りを見渡す。
そうして、固まった。
「は、いや。え?」
周囲には同じような顔をした死体 ——自分と同じような結晶に包まれている—— が転がっている。
呼吸が落ち着かない。
焦点が合わない。
無理矢理立ち上がり、辺りを見渡す。災害にあったような瓦礫の山と崩れたビル群。その中に倒れている8人の同じ顔の女。血飛沫が壁や地面に撒き散らされた様子が瓦礫にはあり、ただの災害ではないことが伺えた。まるでパニックホラーの映画セットのようだった。
「…意味っわかんない」
後ろずさる。背中に何かが当たった。
「ッ!」
背後にあったのは、寝転がりながら見た空に背を伸ばす黒々とした結晶。まるでガラスのように綺麗な表面はこの数分で随分と知った顔を映し出した。
死体と同じ顔だ。
「ッうわぁああああああああああ!!!」
逃げる場所なんて知らない。どこへ行く宛てもなく走る。錯乱した頭はとにかくあそこには居たくないと叫んだから、ただ走る。
走る。走る。止まった。
戻ってきた。
「だからっ、意味わかんないって!」
戻ってきてしまった。
ここから離れるために、真っ直ぐ走ったはずだ。真っ直ぐ。道が続く限り真っ直ぐと。多少逸れたとしても、こうして同じ場所に戻ってくるなんてありえない。
これはホロウで起こる空間の連結によるものであるが、それを知るすべはない。
逃げ場がないように思えて、膝から崩れる。
いろんな感情がごちゃごちゃと頭を流れる。色々な記憶が想起され、誰かの記憶が流れ混んでくる。まるで映像だけれど、しかし感情だけは自分のもののように感じる。
知らない記憶も思い出され混乱は加速する。
頭が痛い。痛い。誰の記憶だ。
非現実や人の死体、体の異常がストレスとなり頭を圧迫していく。原因不明の痛みが体を包む。ボロボロの体全体が痛いのに、腹は何にも感じなかった。
何かが切れた。
荒くなっていた呼吸が落ち着いていく。そのまま惨状に目を向けるが、そこまでの負担はなかった。
冷静になって、再び見る。遺体の多くは顔こそ同じだったが、個性があるように思えた。不思議と懐かしい気持ちも。
そうして、不思議な気持ちに従うことにした。
彼女たちの近くに落ちている武器をそれぞれ、彼女たちの近くに突き立ててやる。穴を掘って埋めるまではしないが、これが今の自分にできる最大の弔いだと思ったから。すべて終えてから、自分のものであろう武器を一振りを持つ。
先ほど混乱の元凶たる結晶の前に立つ。姿見として利用することにした。見ると、短く切り揃えられた銀色の髪、血や汚れ、結晶により随分と破けた彼女たちと同じ白色の服。よく見ると6号と書かれている。コードネームか何かだろうか。…結晶は腹部が一番大きく、次点に左肩。あとは、少し山を作る程度の結晶が色々なところに点々と。なぜか見ると不安になる。
これは、いわゆる転生というやつだろうか。
随分と余裕のできた思考が、普段の自分を呼び戻すようだった。
そうだ。自分はもっと脳天気な人間だ。
「…出発するか」
どこに行くべきかなんて知らないが、またここに戻るようならそれも悪くないだろう。彼女たちの近くはそこまで悪い気はしなかったから。離れることは寂しいけれども。
真っ直ぐ進むと、先ほどとは違う道に出た。なかなか入り組んだ工場地帯のようなところで、私は高台に出たようなので下を見渡す。
自分から生えているような結晶の塊が、人の形を作り何かを追い回していた。その何かは、その人形の半分ほどの背丈で寸胴、というのだろうか。灰色のドラム缶のようなやつだった。
普段の自分なら見逃しそうな相手だが、今はなぜか倒せるという確信めいた自信が湧いてくる。
しかたないなぁと頭を掻いて、しかし夢に見たシチュエーションにも思えて。
ヒーロー着地だ。
高台の柵を目掛けて走り、そのまま飛び降りる。思ったよりも身体は高く飛び、まるで狙ったように彼らの間に落ちた。そのまま勝手に体が三点着地をする。この体…
着地ポーズはかんぺき〜。
「新たなエーテリアスかっ!?」
後ろでなんか言ってるが知らん。私はいま夢を叶えている真っ最中なんだ。
格好つけて、拾った武器を抜いた。
振り回したこともないというのに、正しい振り方がわかるようだった。ただ、勝てるという確信が背中を押した。そのまま駆け出し、斬り込む。防がれるものだと思っていたが、反応すらできないようだった。
あれ私強くね!? もしかして、「俺TUEEEE‼︎」ってやつか! おいおい、めちゃテンション上がるなぁ!!!
高揚してきた気分のまま二撃三撃と叩き込む。四撃目ぇ! と行く前に、緑の結晶体は倒れてサラサラと光の粉になっていった。完全に消えていくのを見届けた。
「……あなた、無事?」
背を向けたまま訪ねて、振り返る。
灰色のドラム缶もどきはオシャレにもオレンジのスカーフ、白色のうさみみのようなものをつけていた。そして電光掲示板が目のような表示を起こす。その目はこちらを見ると白黒して困惑した様子だった。
ふふ、そんなに強いのかね私は。
「…助けてくれてありがとう。君は…?」
寸胴のくせに、優しいようで低い声だ。
不意に6号と書かれた服を思い出す。自分の覚えている名前なんかよりも、これが正しい気がした。ならきっとそうなのだろう。
「……6号。そう呼んで」
そう名乗るのが正解な気がした。
要らねーかも知らん補足をば。
本作主人公さん魂の取り込みに結構な時間がかかってるんでその間にツイッギーさんは回収されてます。エーテル侵食で主人公さんもあかんやんけ!っていう方。魂の取り込みとエーテル取り込みが同時に行われて多分大丈夫になったんでしょう。身体に害はないはず。
あと時間軸的にはアンビーがニコに拾われているころです。その頃同じホロウにパエトーンいたん? って。これ二次創作だから(天下無双)
ほんへ
てか11号可愛すぎん? もう推しですよ。あれ見るまえから推しだったりしたんですけど、もうやばいです。プロキシてめぇって短い間に何度なったことか。あいつ鈍感すぎん? いやわざとそらしてんのか?
11号を支えるものが、軍での立場と隊長への恨み、そしてプロキシへの依存…。これほんとに大丈夫? 怖いよお前メンタルケア受けてこいよ。でも好き。名前覚えてないのはわざとだと思わせてからの記憶できないはちょっときつかった。でも最後の何度だって思い出させてやるの下はすごくいい。かっこいい。惚れました。
てか運営さんは曇らせが好きなの? 晴れない曇らせはただの鬱って知ってる? でも好きです(突然の告白) 晴らすのはユーザーの役目なんだよなぁ!!!(豹変) というわけでみんな11号を推して晴らす小説を書こう。
え? 私ですか? これどちらかというと展開を思いついたから書き始めてまして……というか今回のストーリーが発表される前から下書きとして書いてたんですわ! なのでストーリー見てから感涙してから投稿するか迷ったのです。まあいいよね。二次創作なんて適当で。せっかく書いたから出させて? ハイ出します。
晴らす方向に持っていきたいですけど、わたくしそういう才能というか、どうやって晴れるのか全くわからんのですわ。だってわからんのですもの。はい。なので適当に主人公さんが暴れる話になるんじゃないでしょうか。なんだこの自己満小説。
あと不定期更新です(重要)
あと私は主人公アキラです(超重要)
あと11号の操作むずすぎ
変更点
一人称の変更。
ツイッギーさんは何号だと思いますか? 6号の姉か妹か決まるだけですのでテキトーにお選びください。
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1〜5号
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7〜10号