ちはっと★ホロポケ   作:たかしクランベリー   

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9話・こんこよ博士のありがたいプレゼント

 

――『AIこより図鑑』。

 

昨今の携帯端末では、

その名称を呼ぶだけで

内蔵された検索AIが起動し、

ユーザーの求める検索事項を調査……

更には言語化して応答する。

 

博士の説明曰く。

これはその機能を基として

独自に製作した自立式AIだそうだ。

音声元を自分の声にしたのは、

売名行為が目当てらしい。

 

なんとも抜かりない博士だ。

 

その他に知らされてる事といえば、

名前通り従来のポケモン図鑑システムが

組み込まれている話だけだ。

詳しく例を挙げるのなら……

マップ機能、遭遇ポケモンの登録機能、

ポケモンの生息分布チェック機能等だ。

 

「さぁさぁ皆の諸君、図鑑の説明は

大方済んだけど……

何か気になる点はあるかい?」

 

「特にはないが、そろそろくれても

いいんじゃあねェか。

――〝STパス〟をさ。」

 

「スペシャルトレーナーパス……ねぇ。

それならさ、君たちの手元にあるじゃん。

まさか例年みたく

パスカードの現物が配当されると

思ってたの?」

 

「勿論だぜ。な? 

千速、かなた先輩。」

 

奇しくもニコたんと同じ考えだ。

かなた先輩と同時にちはも

コクりと頷いた。

 

「まぁ、治安が良けりゃあさ、

こよもアナログで発行したかったよ。

でもさ、ここ最近ホロサントス地方の

治安がよろしくないんだよねー。」

 

ポチッ。

 

博衣博士が何かのリモコンを押し、

黒板に被さるようにして

モニターが降りてくる。

 

映し出されていたのは、

近年の闇を示す棒グラフだった。

 

「見てごらん。

これが近年で頻発したSTパスの

紛失、盗難、転売等の

トラブル件数……

シャレにならないでしょ?」

 

「そうですね……。」

 

突きつけられた恐ろしいリアルに

戦慄し、ちはも大人しく同意の声を

漏らす他なかった。

 

「特に問題なのは……『転売』だね。

盗難といった要因を招くのも、

この歪んだ市場の存在が大いにあると

僕は考えてるよ。

あとニコちゃん言ってたよね。

なぜ他の地方や、例年の配当に倣って

スマホロトムを提供しないんだって。」

 

「……ああ。」

 

「良い例が丁度ある。

みんなメヌカリは登録してるかい?」

「メヌカリ……??」

 

※メヌカリ・・・誰もが所有物を

任意の値打ちで通販市場に出せる

フリーマーケットツール。

リアルに存在する

某フリーマーケットツールとは一切無関係。

 

「まぁ、しのごの言わずにさ……

『スマホロトム』で検索かけてごらん。」

 

何が良い例なのかは分からないが、

百聞は一見に如かず。

 

早速検索を

かけてオークション場に目を通す。

即座にその異常性を目撃し、

またもやちはたちは椅子から転げ落ちた。

 

「「「どわーw」」」

 

「その〝どわーw〟ってやつ

何回やんのさ君たち!?

ここの椅子壊したら弁償だからね!」

 

「「「――すいませぇん!!」」」

 

謝りながらも、一斉に

椅子を立て直し着席する。

目を通し、改めて博衣博士の言っていた

歪な市場の意味をマジマジと理解する。

 

出品されていたのは、

一般的な電化製品ショップで

販売されている定価を遥かに上回る

値段のスマホロトムたちだった。

 

倍以上の価格帯がさも当然のように

並んでいる恐ろしい光景。

利益のためであれば、

人間はここまで黒くなれるのか……。

 

業が深いだよ。

 

「反省したならヨシ!

じゃあ話を戻すね。

見ての通り

この歪んだ市場は

ちょっとやそっとの対策を

講じたとて、必ず防げるモノじゃあない。

転売屋はルールの穴をつき、

何が何でも富を得ようとする。」

 

「………………。」

 

「最近では企業もそれを知ってか、

プレミア品の完全受注生産という形が

取られつつある……。」

「でもそれじゃあ、プレミア品という

文言の意味が……」

 

「心苦しいよね千速ちゃん。

でも仕方がないんだ。世の中が

そうさせてしまったんだからね。」

「「「…………。」」」

 

「多様性という概念が広く根を張って

深く人々の思想に歪曲し絡まった結果。

勘違いした迷惑配信者、転売屋、

過激派ユニコーン、過激派ヴィーガン、

過激派LGBTQ人間、ツ●フェミ達は

誤ちを『自己・正義・自由』など

という大義に無意識下で

変換し信じ込み……

大胆に主張・行動を行う。

それらを発端として

常識人が被った痛みに目を向けずにね。」

「「「…………。」」」

 

「彼らにとってそれは〝善〟なんだ。

そしてそれ以外は問答無用で〝悪〟。

まさしく偏執の権化、馬の耳に念仏ッ!

ならば、どう対処するか……

―――僕は閃いたんだッ!!」

 

思想強すぎだろ

このマッドサイエンティスト。 

転売屋以外の闇にまで

言及するとは思わなんだ。

 

実験徹夜明けの講義だから

ハイになってるのか?

 

「閃いた……と、言いますと?」

 

「物理的に転売出来ないように

すれば良い――つまりは

デジタルで生み出せば良いッ!」

 

成る程、だから

『AIこより図鑑』ってワケか。

だがそうなると

また別の懸念点が生まれる。

 

ちはが口を出すより早く、

ニコたんがそれを指摘した。

 

「でも奴らルールの穴を付くんだろ。

データファイルを偽って

取引しはじめたらどうすんのさ?

ハックされる可能性だって

無きにしも非ずだろ。」

 

「そこも勿論織り込み済みだよ。

AIこよりちゃんは君たちの

冒険パートナーであると同時に

〝監視者〟でもある。

もしそのような動きを検知したら、

端末や関連アカウント全てをジャック……

諸君は2週間の間、強制的に

デジタルデトックスの世界へ誘われる。」

 

なんて合理的なプログラミングだ。

そこまで先を

見据えての開発だったのか。

 

「デジタル中心の世界に依存した

僕ら現代人にとって

ソレは何よりもキツい拷問だね……。

心身がネットの荒波に追い詰められて

ない限りは…………。」

 

「ああ、毒にも薬にもなり得る。

インターネット、改めて

怖ェ場所って実感するな。

で? STパスはいつくれるんだ?」

 

「もー、せっかちだなぁニコちゃんは。

手元にあるって返答したのに……

まだ疑っているのかい?」

 

「おいおいまさか……

この気味悪いAIがSTパスとでも

言うつもりか? 冗談は

そのケモ耳くらいにしとけよ博士。

HAHAHAHA★…………」

 

「――そうだよ。

ついでに言っとくけど、

僕は本当に獣人だからね。」

 

「「「どわーw」」」

 

なんで自分が虎とか言ってる

ニコたんまで一緒にどわーwしてんだよ。

そこは嘘でも仲間じゃん!

とか言っとけば良いところなのに。

 

「同じリアクションしかとれない

呪いにでもかかってるの君たち……

ま、いいや。

他に質問はあるかな?」

 

「大丈夫です……!」

 

ちはに追随するように

かなた先輩とニコたんも頷いた。

その様子を見るやいなや、

博士も満足そうに笑みを浮かべた。

 

「よーしっ、

じゃあ次のステップへ行こー!」

「「「???」」」

 

続いて連れてかれたのは、

別の研究室。

 

入って早々目に入ったのは、

半球状の凹みが30個ほどある

どデカいテーブルだった。

 

内23個の凹みはモンスターボールで

埋まっていた。

 

「これは一体……」

 

ちはが唖然としていると、

博士が答えてくれた。

 

「合格おめでとうの意を込めて、

こよなりに用意した

特別プレゼントだよー♪」

 

「プレゼントにしちゃあ、

モノが多すぎやしねぇか。」

「ニコちゃんの言う通りだよ。

僕らに何を仕掛ける気なんだ?」

 

「ふっふっふ……

ただプレゼントするだけじゃ

面白味にかけるでしょ。

だからさ、ガチャ式で激レアポケモン

GETするやり方にしたの〜★」

 

「あのー、大当たり枠以外が 

同じポケモンだったりしますか?」

 

「うん。大当たり枠以外は

全部同じポケモンだよ。

テールナーっていってね……

杖から炎を吹き出す面白い子なの。」

 

「テールナーか、イイじゃねぇの。

丁度ほのおポケモンを

欲してトコだぜ。」

 

おー。ニコたんは気合い満タンか。

 

「良かったね。20/23はテールナーだから

高確率で出会えるよ♪

すぐ分かるよう、モンスターボールの

下に赤い付箋貼っといたから

頑張ってね!」

 

「「「待て待て待てぇ!!」」」

「ん、どうしたのさ。みんな。」

 

「どうもこうもないだろ!?

ほぼテールナーの

八百長ガチャじゃないか!!

僕らをおちょくってるのかッ!」

 

「いやいやぁ、あの険しい試験を

乗り越えた君たちだ。

一目見ておきたいんだよね、

その『業運』をさ。

約12・9%で特別なポケモンに

出逢えるんだし……

そこまでキツい確率でもないでしょ。」

 

「そ、そこまで言われんたんなら

しょうがねぇなぁ……

よし、いっちょやってやるか。

一番乗りで行かせてもらうぜ!」

 

ニコたんチョロすぎだろ。

即やらかしそうだぞ。

 

「威勢がいいね。じゃあお望み通り

ニコちゃんからどーぞー♪」

 

ニコたんは自信満々に腕を回し

ながらガチャコーナーに歩み寄る。

目をかっ開き、

ある一点のボールに狙いをつけ掴んだ。

 

ガシッ。

 

「行くぜ。運命のドロー……」

 

ボールを手に取り底を観察する。

白い半球の底には、

赤い付箋が貼られていた。

 

「テールナーか。予想通りだぜ。」

 

「さぁドンドン行こうか。

次、天使ちゃん。」

「フッ、僕の天運を発揮する時が来たか。」

 

何で2人とも自信に満ち溢れてんだよ。

マジでどっから

その自信が湧いてくるんだ。

 

「あ、テールナーだ。」

「かなた先輩もかーーいっ!」

 

「くっ、残るは千速ちゃんのみか。

……後は頼みましたよ。」

 

「プレッシャーかけないで

くれますかかなた先輩っ!?

ちはそんなに引き強じゃないだよ!!」

 

「ふーん。じゃあ、

アレを使うしかねぇな。」

 

ニコたんが提案を投げかけた。

 

「アレ……?」

「一時期流行ったじゃねぇか。

『まじないナンジャモ』。」

「ああ、アレか。」

 

パルデア地方で活動する

超人気ストリーマー、ナンジャモ。

彼女は撮れ高のスペシャリストで、

動画映えする業運も度々披露している。

 

その強い運にあやかろうとする

人々が、ここぞという時に

彼女の名前を連呼して

強い引きを実現した事例が

SNSで話題となった。

 

大分スピってて成功するか

怪しい手段であるが、

もうああだこうだ言ってられる

状況でもなかった。

 

猫の手も借りたい心境に至ってた

ちはは、その手段に

不本意ながらも手を染めた。

 

「分かった。やってみるだよニコたん。

かなた先輩も応援頼むだよ。」

「おう。」

 

「ナンジャモナンジャモナンジャモ……」

 

バッ。

 

迷わず、勘の赴くままに

モンスターボールをサッと拾い上げる。

ボールの底には、

赤い付箋が付いていた。

 

「――テールナーじゃねぇかぁァア!!」

「「――!!」」

 

珍しく嘆くちはに驚きつつ、

2人はアイコンタクトを交わしてきた。

やはり、鬱憤が溜まってるのは

自分だけじゃないらしい。

 

目には目を、歯には歯を。

イカサマにはイカサマを………だ。

単なるカモと侮るなかれ。

そっちがその気なら、

ありったけの報復を浴びせてやろう。

 

「かなた先輩、いっちょ

よろしくお願いします。」

「ああ、拳の準備は万端だ。」

 

かなた先輩が遂に怒りの拳を構えた。

 

シュイン……バリバリバリ!!

 

その拳と片腕は鋼色に変色し艶を帯びる。

それだけじゃなく、

なんか赤黒い稲妻まで

バチバチと発散させ始めた。

 

「ちょちょちょ待って天使ちゃん!?

なんで腕が鋼色になってんの!

てか拳あたりから溢れ出てる

赤黒い稲妻みたいなの何っ!?

人間ってそんな事できるのぉおお!!」

 

科学者である博士さえも

理解の追いつかない意味不明な

事象に目を飛び出している。

 

……うん、

博士の気持ちも正直分かる。

てゆーか、

ちはも力の出所が全くわからん。

 

かなた先輩には

出会ってから驚かされてばかりだ。

 

「博士、制裁のお時間です。

しっかり歯ァ食いしばって下さいよ。」

「えぇええええ!?!?」

 

 

 

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