ちはっと★ホロポケ   作:たかしクランベリー   

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11話・奇妙な列車と新たな町へ!

 

輪堂千速、虎金妃笑虎、天音かなた

の一行はSTパスの権限を利用。

 

1バッチ目のジムリーダーが

待ち構える町……

ちゃまタウンを目指し、

専用の特急列車『マーチャトレイン』

へと乗り込んでいた。

 

 

乗り込んで

かれこれ1時間くらいだろうか。

ダイヤグラムでは40分程度で

ちゃまタウンに到着すると

書かれていたが…………

 

スマホで見ても明らかに

20分ほどの遅れが出ている。

 

悪天候や強風でもない。

電車のダイヤが乱れると言った

車掌アナウンスも来てない。

…………どう考えても不自然だ。

 

何より気になるのは、

車窓から覗ける景色が

ずっとトンネルの〝内側〟である事だ。

 

タイマーを付けて寝落ちしてしまった

ちは自身も悪いが、

いつからこのトンネル内に

電車が侵入したか正確に覚えていない。

 

普段から周りにニワトリ頭だの

何だの難癖を付ける輩がいるが、

今回ばかりは確かなる記憶だと

確信している。

 

「あのさぁ〜↑あ↓

みんな聞いて欲しいんだけど……」

 

「zzz……」

「ん、どうしたのさ千速ちゃん?」

 

首を背面に逸らして寝てる

ニコたんの横で

かなた先輩が返事をする。

 

その両手には、

どこから持ってきたか分からない

50kgと書かれた

ダンベルが握られていた。

 

「電車の時間、

めっちゃ長くないですか。」

「あー、それ僕も思った。

おい起きろ〜、ニコちゃーん。」

 

ユサユサ……。

 

肩を揺らしニコたんが起きる。

やけに眠たそうに欠伸しながらも

周囲を見渡し、向き直る。

 

「ふぁ〜あ、ねむねむ……んお?

どうしたんですかかなた先輩、

神妙な顔なんかして。

ニコたんの顔に

葉っぱでも付いてます?」

 

「んな訳ねーだろォ!」

「ニコたん、この電車なんか〝変〟……

だと思わない?」

 

「何言ってんだよ千速、

フツーに寝心地良い電車じゃあねェか。

何もコレといった異変はないぞ。」

 

ダメだ。ちはと同じく爆睡こいてた

奴が勘付く筈もないか。

 

「で、もし変だとしても

今確証は無いんでしょ。

具体的にはどう解決する気だよ

千速ちゃん。」

 

「そりゃあ、強行突破しかないだよ。

このまま車両を転々と進んで

最前車両に居る車掌に会いにいく。

これが1番手っ取り早い。」

 

「へっ、名案だぜ千速!

ニコも今そう考えてた所だぜ!」

 

「うん。実に良い提案だ。

でもね。お姉ちゃんたちが

迷い込んだのは

タダの電車とはワケが違う。」

 

「「「―――!!!」」」

 

突然現れた人の気配に

目を向けると、怪しげな

風貌をした少年が立っていた。

 

パンクでポップな服装とは

正反対に、彼の顔は

無機質な白一色のお面で

覆われていて……とても不気味だ。

しかし、

コレと言った悪意も感じない。

 

「おっと、自己紹介が遅れたね。

僕はガラル地方でジムリーダーを

務めてる『オニオン』っていうんだ。」

 

ガシッ。

 

獲物を捕らえた虎のような

顔つきで、間髪入れずニコたんが

彼の肩に腕をまわす。

 

何かを知ってる人物を逃さぬ様、

先手を打ったのだろう。

やるときゃやるじゃないか。

 

良いぞニコたん。

彼が知り得る

この奇妙な電車の攻略法を

洗いざらい聞き出す。

……今こそ絶好のチャンスだ。

 

「ねえねぇ坊や。どこ住み?

あーしはニコって言うんだけどさ。

飴ちゃんあげるから、今度2人で

カラオケとかボーリングとか

遊びに行こうや。絶対楽しいぜ!」

 

「お、お姉ちゃ……ち、近い……」

「まぁ気にすんなって!

あーしら、聞きてェ事が山ほどあ――」

 

「――不純な動機じゃねぇかぁアア!」

 

ドゴォォオオン!!

 

一瞬でも

有能だと信じたちはが馬鹿だった。

 

これ以上の悪事は見過ごせず、

ちはは最高速でニコたんに

ドロップキックを喰らわせた。

 

見事に吹っ飛んだが、

そこまで読まれてたらしい。

常に殴られる想定で動いてるのか、

咄嗟に全身を捻り回し

華麗な受け身を取っていた。

 

手が床に接触し

靴が1メートルほど摩擦する。

仄かに残った摩擦跡は、

未だくっきりとしている。

 

「ハァ……ハァ……結構

やるようになったじゃねェか千速ぁ。

かなた先輩から

こっそり格闘技でも教わったのか?」

「ニコたんの方こそ

綺麗な受け身じゃん。

教わったのはお互い様だね。」

 

「フッ、もっと僕を褒めてもいいぞ。

可愛い後輩たちよ。」

「「褒めてねーよッ!!」」

 

「ねぇお姉さんたち。

ここでわちゃわちゃ戯れてる

場合じゃないでしょ。」

 

「「「――!!!」」」

 

オニオン君の発言でハッと我に帰る。

 

「旅の本質を見失っちゃあお終いだ。

ちゃまタウンに行きたいのなら、

早いとこ

最前車両に行ったほうがいい。」

 

「な、なんでちは達の目的地を

知ってるだよ。」

 

何も説明してないのに、

彼は見透かした様に忠告する。

ただただ、言葉に出来ない緊張感が

その場に広がった。

 

「僕はある日の事故を境に、

霊能力に目覚めた。

だから常人には見えないモノが

色々見えるんだ。

例えば……『オーラ』とかね。」

 

「オーラ……」

 

復唱みたく呟いたその時だった。

オニオン君はイキナリちはの

腰辺りを指差す。

 

「特にトゲトゲ帽子のお姉さん。

あなたの右腰辺りから、

太古の強烈な生命オーラを感じる……!

きっとこの数奇な運命も、

そのオーラが導いたモノかもしれない。」

 

「何だ千速、変なオーパーツでも

拾ってきたのか?」

「んなワケないじゃん!

全く身に覚えがないだよ!?」

 

「身に覚えがない……か。

まぁ何はともあれ。

普通の人間がこの電車に

迷い込む事は滅多にない。

そして。先述したボクの推測も、

必ずしも正解とは限らない。」

 

「「「…………。」」」

 

「改めてお姉さん達に問う。

本当にこの電車から

抜け出したいの?」

 

「も、勿論だよ! ね、みんな?」

「お、おう! 当然だぜ千速ァ。」

「僕もだよ!」

 

「じゃあやる事は一つだ。

ただ前進するだけじゃ

この電車の最前車両へは

辿り着けない。

今いる車両の特徴を暗記してくれ。」

 

「は? 何言ってんだよ。

進んだら普通に辿り着くだろ?」

 

ニコたんの問いに対しオニオン君は

首を横に振った。

 

「この電車は〝怪異〟そのものだ。

人間の思い通りになんか動かない。」

「……そうかよ。

じゃあどう進めばいいんだ。」

 

「丁度それを説明しようと思ってたよ。

いいかい。今いる車両と異なる特徴……

つまり『異変』を

見つけたら後ろの車両に引き返すんだ。

異変がなければ

そのまま進めばいい。」

 

「もしも、異変のある車両を

無視して前の車両に

進んだ場合はどうなるだよ?」

 

「最後尾の車両に引き戻される。

原理は謎だけど、

そういう怪異なんだ。」

 

「ちなみに僕たちは今、

何番目の車両に居るんだ?」

「…………見て。」

 

かなた先輩の問いに、

オニオン君は一点を

指差して伝える。

 

前車両と繋がるドア。

その上のデジタルモニターに

しっかりと示されていた。

 

――『8番車両』と。

 

「ふーん。つまりは1番車両を

目指しゃあ良いんだなッ! 

あんがとよ坊や!

このお礼はいずれたっぷり

してやっから、期待しとけよー!」

 

「……ん。」

 

彼はこくりと頷いた。

 

つーかニコたんのヤツめ、

まだ諦めてないのか。

 

ホント懲りない虎だ。

虎穴の中に1週間くらい

押し込んだろうかな。

 

「待って。オニオン君は僕らに

ついて来なくていいのか?」

「大丈夫、僕はいつでも出れるから……

8番目の車両で

のんびり読書でもしとくよ。」

 

「そっか。ならいいや。

よーしおみゃーら、徹底的に

車両を暗記して進むぞ。いいなッ!」

「「――はい!!」」

 

手分けして車両の暗記に取り掛かる。

 

まずは間取り。

各駅停車ではなく新幹線と同じ内装だ。

両脇に2席ずつある

ブルーシートの背凭れ椅子。

 

構造は前フロアに16席、後部フロアに16席。

成る程……特に

これといった特徴はないな。

 

よし、次に

オニオン君以外の乗客から覚えよう。

 

前フロア右ラインの窓側4列目に、

PCを起動し真顔で

デスクワークするOLが1人。

 

後部フロア左ライン4列目内側に

目の光った大柄な男が1人。

 

後は……誰もいないな。

取り敢えず報告しよう。

 

「ニコたん、かなた先輩。

今いる車両の特徴は大体覚えただよ。

そっちは?」

「ああ、僕も覚えた。

上の荷物置きの方もね。」

 

「あっ、そこの部分

ちは見落としてました。

助かりますかなた先輩。」

「ニコたんも準備ばっちしだぜ。

さっさと行こうや。」

 

「よしっ、そうと決まりゃ前進だ。

行くぞおみゃーらぁ!

僕に続けェ!!」

「「おーー!!」」

 

ガラガラガラ……。

 

気合いは入れたものの、

あっさりとちは達はドアを潜り

7番車両へと侵入できた。

 

いや、こっからが

本番というべきだろう。

 

「乗客確認担当ちはや、

いっきまーす!」

 

「いい威勢だ!

僕は荷物置きの方を見る。

ニコちゃんは床や窓の確認を頼む!」

「おう! 任されたぜ!」

 

オッケー。

乗客のコレと言った変化はない。

ニコたんを手伝いつつ

かなた先輩と合流しよう。

 

「どうニコたん?

床や窓の材質とか変わった?」

「特に変わってねーな。

千速、乗客の方はどうだよ?」

 

「んー、何もなかった。

そんじゃ、

かなた先輩に報告と行くか。」

「だな。」

 

報告のため前の扉に目を向けると、

かなた先輩の後ろ姿があった。

 

ドアとも距離が近いし、

おそらくちは達の報告待ちだろう。

余計に待たせちゃ悪い。

早いとこ報告しよう。

 

「かなた先ぱーーい、

こっちは確認終わりました!」

 

「おぉ、そうか。

よくやったおみゃーら。

ちょうど僕も確認が終わった所だ。」

 

合流しようと数歩進んだ瞬間、

かなた先輩が振り返り

顔を見合わせる。

 

その顔はいつもより、

どこか幸せそうだ。

一体なにが

彼女の胸をそこまで

躍らせているのだろ……胸。ん? 胸?

 

ちはは疲れてるのだろうか。

見間違い……じゃないよな。

 

ニコたんが居てよかった。

ちは1人の見間違いである可能性を

潰せそうだ。

 

とりま肘でニコたんを突く。

 

ツンツン……。

 

「んお、何だ千速。

こんな時に愛の告白か。

ちょ、やめろって(照)。

あーしらだけの秘密だって言ったろ?

耳元に口なんか近づけてよォ……」

 

耳元に口を

近づけたのには理由がある。

それは、ニコたんの戯言とは

全くもって関係ない。

 

コソコソ伝えた方が

良いと判断したからだ。

 

「ねぇニコたん。かなた先輩の

〝胸〟って

あんなに大きかったっけ?」

「はっ、急に何を言うかと思えば

そんなくだらねェ……――ッ!!」

 

このリアクション。

どうやら自分の

見間違いでは無さそうだ。

 

ニコたんもコソコソ声で返す。

 

「おい、まさか直接言うつもりか?

考え直せ、シバかれっぞ……。」

 

ニコたんはあの日のアッパーが

トラウマになってるのか、

身震いしながらちはに忠告する。

 

だが、今後車両を進む度……

同じ異変が来ないとも限らない。

予め異変として認識させた方が

後々のメリットとして大きい。

 

メリットとデメリットの天秤で

測った時、

ちはは迷いなく一時の痛みを選ぶ。

 

「言うだよ。進むにはそれしかない。」

「ニ、ニコたんは知らんからな。

じ……自分でダメージを背負えよ。」

「うん。分かってる。」

 

「おみゃーらさ、急に

コソコソ喋ってどうしたんだ。

異変でもあったか?」

 

「ええ。見つかりました。

…………かなた先輩、

今から〝異変〟を伝えます。

絶対に怒らないでくださいね。」

 

「何だ。見つけたなら

早く言ってくれよ。

で、異変ってのは何だ?」

 

「そう。その異変は―――」

 

 

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