ちはっと★ホロポケ   作:たかしクランベリー   

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〈前書き〉
どうも、たかしクランベリーです。
なんか分かりませんが、
今回も長尺になってしまいました。

たまには味変も面白いと思ったので、
ニコたん視点の回でいきます。
それでは本編いきましょう。



13話・ガキが、、舐めてると潰すぞ

 

〜SIDE『虎金妃笑虎』〜

 

担当医が告げた輪堂・千速の

全治期間は2週間。

もう治癒してると思いきや、

マジの2週間だった。

 

つまりは、複雑骨折の延長入院から

1週間経過した今。

更なる1週間の苦痛を

ニコたんは

味わわなくてはならない。

 

毎日面会は許されてるものの、

たかが30分程度。

……足りない。もっと千速成分を

摂取せねば、力の解放をし過ぎて

虎になってしまう。

 

普段通り千速観察日記を

取るだけじゃあ満足できない身体に

なっちまったんだ。

 

――そうだ。

こういう時は、ここ1週間の

千速の変遷を日記越しに

振り返って気を紛らわそう。

 

5月29日。

複雑骨折で身動きが取れず、

天井を見つめては、惰眠を繰り返す。

(本人談)

 

翌日。

骨折箇所の固定も落ち着き、

多少は動けるようになる。

テレビでレースを見てた。

 

翌日。

エアトロンボーンと

エアギターを始めるまでに

回復の兆候が見え始めた。

取り敢えず、ニコたんお手製の

カットリンゴを祝いとしてあげた。

 

翌日。

イマジナリー兄貴と

イマジナリー沙花叉という女性を

勝手に生み出し3人(1人)で

楽しく談笑し始めた。

 

6月2日、3日も似たような

観察内容が記述されてる……。

何をされてる方なの?

 

(ん、待てよ。)

 

よくよく考えたらこれ、

退屈過ぎて着実に壊れてってないか。

 

うむ。ここまで来たら

興味本位で完全に壊れた

千速も見てみたいが……

カップルとして

大事な何かを失う気がする。

 

しゃあない。

ここは、ハニーであるニコたんが

一肌脱いでやるか。

 

いうて1人で考え込んでも、

良いアイデアなんか

湧く気がしない。

頼りになる先輩がいることだし、

一声かけてみよう。

 

スマホを手に取り、

先輩へ電話を繋いだ。

 

「もしもしかなた先ぱーい。」

『お、ニコちゃんじゃん。

どうしたのさ急に。』

 

「ちょっとさ、最近の千速が

壊れ始めてる気がして

心配なんだよ。一緒に

どうすればいいかっていうのを

集まって考えましょうや。」

 

『へー、ニコちゃんにしては

結構真面目な相談じゃないか。

そもそも僕の巴投げが

原因みたいなものだし……

千速ちゃんのためになるなら、

是非とも協力させてくれ。』

「助かりますかなた先輩!」

 

 

 

ってな経緯があって。

ニコたんとかなた先輩は

近場のカフェで合流するに至った。

 

「ほんと来てくれて助かります

かなた先輩……」

「いいっていいって。

電話でも話したろ?

あの入院は僕にも責任があるって。」

 

「そ、そうですね。」

 

「で。何か良い案は浮かんだ?」

 

「それが……何も。

ニコたん達抜きで、

退屈を凌げるような刺激や面白い

〝何か〟を提供できればいいと

思ってるんですけど……。」

 

「まぁ、携帯ゲーム機とかが

無難じゃないか。」

「うーん。複雑骨折してんのに

コントローラー

カチャカチャさせんのも

なんか違うと思うんだよなー、」

 

「「うーーん…………」」

 

早々に秘密会議が行き詰まる。

 

三人寄れば文殊の知恵、

という諺もある程だ。

やはり、2人で何か閃くというのは

難しい話だったか。

 

「ほら、僕たち頭が

上手く働いてないんじゃないか?

それこそ糖分を補給すれば

何か思いつくと思うよ。」

 

「で、ですよねー。

何も注文入れてないし、

そろそろ2つや3つくらい

入れときますか。」

 

「僕はいちごラッテで。」

「じゃあニコたんは

キャラメルラッテと

パンケーキにしよっかな。

勿論ケーキは分けますよ。」

 

「よし、決まりだな。

すいませーん!」

 

かなた先輩が挙手して店員を呼ぶ。

注文はすんなりと通り、

5分も待たずして卓上に

パンケーキとジュースが出揃う。

 

糖分パワーを信じながらも、

未だ心配が若干勝っている。

……念には念をだ。

 

虎視眈々と虎らしく。

周囲から聞き耳立てて

何か着想となる肥料を掴もう。

 

「ちょっ、ひなたちゃん。

口にラッテの泡ついてんじゃーんw」

「はぁ!? 

風呂キャン民のルカよりかは

綺麗だしっ……!」

 

ふむ。仲の良さそうな

二人組だな。

さて、もうちょっと店内を

物色するとしよう。

 

「はぁっ? ゆうさくって何?

あてぃしのニックネーム

全っ然可愛くないんだけど!?」

「まぁまぁ、その内見つかりますよ。

あなたにお似合いのニックネーム。」

 

何だ。メイドみたいな子が

マネージャーっぽいスーツの女性と

揉めてる……のか?

んー、なんとか

宥めてるって感じだな。

 

まだまだ進もう。

 

「えー、緊急で動画

回してるんですけど……

一体何が緊急かと言うかと言うと、

皆さんでぇ嫌いダークライexを

完全にメタる神デックが

出来たと言う訳でですね。

いっちょ試合の方で

ぶちかましてこうと思います。

――ちぃろんっ♪」

 

キャップ帽した筋骨隆々の男が

何かを長々と語ってるが

これも何らの掴みに

発展しそうな気配は無い。

 

(そろそろ流石にお手上げか……)

 

半ば諦観しつつ、次の席を

通り過ぎたその時だった。

スルーした一席から、

何かビビッとした感触を覚えた。

 

ニコたんの足を一瞬でも止めた

その気迫……一体何者なんだ。

 

ただ一つ確実なのは。

……野生の勘が言っている。

ソレを逃すべきではないと。

 

会話や物音一つない

その席へ踵を返し歩み寄る。

鎮座していたのは、

見覚えのある人だった。

 

狂言幕をデザインに

落とし込んだようなゴスロリ服。

グレー色のメッシュが所々混じった

綺麗な黒髪ロング。

 

寧ろ、このインパクトある風貌を

見紛う方が無理ってヤツだ。

 

「……JFT、先生っ。」

 

ボソッと口にしたことで

気づかれたようだ。

JFT先生がこちらに目を向けてきた。

 

「あー、そのオレンジのグラサン。

もしかして君は……」

 

おいおいおいおいっ。

こりゃあ千載一遇の大チャンスって

ヤツじゃないか。

 

棚からぼた餅、渡りに船とは

よく言ったモンだ。

 

(へっ、ダメ元で

彷徨ってみるのも悪くねェな。)

 

特別講師に抜擢される程の逸材だ。

 

とくと利用させて貰うぜ。

先生が培い蓄えてきた知識、経験……

そこから導き出される最善策をなァ。

 

「ええ。あの時は色々と

騒ぎ立ててすいませんね。

それと、つまらないモノですが……」

 

颯爽と正面席に座り込み、

間髪入れず

キッズ喜ばせ用に買い込んでいた

抹茶ミルク味の飴を一粒差し出す。

 

「いいとよいいとよ。

そこまで畏まらなくても……

あの即興劇には、私自身も

助けられたっちゃん。」

 

「それじゃあ、今度はニコたんを

助けるつもりで

相談に乗ってくれませんか。」

「…………成る程ね。

つまりこの飴玉は、

謝罪の意と相談料を兼ねた

土産ってコトですな。」

 

先生は小さく笑った。

 

「苦手ですか、抹茶?」

「違う違う、見かけに寄らず

律儀な子だなぁって思うただけばい。

特に深い意味はないっちゃん。」

 

「じゃあ――」

「交渉成立ですな。

で、相談というのは?」

 

「もしもの話です。

全身が思うように動かない。

もしくは動かしにくい病状で

長期入院した時、退屈を長い間

誤魔化してくれるような……

そんな便利アイテムって

あったりします?」

 

「やけに具体的な相談ですなー。」

「茶化さずに教えてください。

一刻を争う事態なんです……!」

 

「それならもう、此処にありますよ。」

「え、何の話ですか。

まさか千速に一生飴玉舐めてろとか

言うんですかっ!?」

 

(あっ、マズイ……

思わず口走ってしまった……)

 

「ほほう、愛する友人の為。

わたくしとのコンタクトを計った

という訳ですかぁ……」

「御託はいいんだよッ!

さっさと

ニコたんに明かしなさいッ!!」

 

自分でも分からない。

頭に熱が回って、言語化できない

気恥ずかしさが込み上げてきて

一杯一杯だった。

 

甲高い声で怒鳴り立てる

つもりなんて全く無かったのに……

 

周りの客も

コソコソ騒めき出したし、

次騒いだら店を追い出されそうだ。

一旦冷静になろう。

 

「すいません。先生。

いきなり頭ん中ぐちゃぐちゃに

なって、それで……」

「いいとよいいとよ。

配慮を欠いたわたくしの責任も

大いにあるっちゃん。」

 

なんて優しいんだ。

でも、チャンスを

棒に振るつもりはない。

 

「しつこい様ですけど、

教えていただけませんか。」

 

恐る恐る聞き直すと、

JFT先生は置いてあった一冊の本を

手に取りこれ見よがしに

フリフリとした。

 

こんだけ分かりやすい

解答をされたら、ニコたんでも

流石に当てられる。

 

「……『本』ですか?」

 

「如何にも。本には

著者の体験や研究が活字を通して

綿密に、時には情動的に記されている。

そしてソレはある種の『刺激』や

『追体験』にもなり得るばい。」

 

「漫画や電子書籍でもいいんですか?」

「んー、一概には言えんけんが……

出来れば本やラノベの方を

推奨するばい。」

 

「と、言いますと。」

「要望通り。長い時間を

楽しく費やせるモノが必要ならば、

読了に大した時間が掛からない

漫画は候補から外れる。」

 

「電子書籍は?」

「電子書籍は

長時間光を見る都合上……

眼球の負担を考えたらこれも

あまりお勧めできませんな。

それに表示端末のバッテリーも食う。」

 

「言われてみれば

確かにそうですね。

――ありがとうございます

JFT先生っ! 

早速実行に移しまするっ!」

 

シュンッ!

 

「あ、待ってまだ話したい事が……」

 

虎の俊敏さをフルに発揮し、

待たせ過ぎたかなた先輩の所に戻る。

案の定、暇させた結果……

彼女はお昼寝状態になっていた。

 

起こすか。

 

ユサユサユサ…………

 

肩を揺さぶると、かなた先輩が

気怠げに両の手を

上に伸ばし目覚める。

 

果報は寝て待てと言うが、

いくらなんでもぐっすりし過ぎた。

ニコたんも悪いちゃ悪いから

責め立てたりはしないけども。

 

「おわわぁ〜、

あ。おはおニコちゃん。」

「なんか待たせてすんません。」

 

「良いよ良いよ。

何かニコちゃんなりに

取り組んでたんでしょ?

なんとなーくだけど、僕には分かるよ。」

 

寝起きな所為で

呂律がふんわりしているが、

ニコたんの事を信じて

待ってくれてたようだ。

 

正直、拳骨の1発や2発覚悟してた。

……ホント、

分かってくれる先輩で良かった。

 

「ああ。今千速に与えるべき

刺激を、とある人の相談を介して

見つける事が出来た。」

「それは一体……」

 

「――『本』だ。」

 

かなて先輩はパーの手に

グーの片手をポンと乗せ賛同した。

 

「それだよニコちゃん!

名案じゃあないかっ!!」

「兎にも角にも善は急げです。

行きましょう、かなた先輩。」

「おうよッ!」

 

――ちゃまタウン・とある書店。

 

ちゃまタウンを

練り歩くこと20分程。

如何にも書店がありそうな

商店街アーチを潜り

約15メートル進む。

 

ファミリー層や若者が

多くすれ違うような

活気ある商店街通りで、

ようやく目的となる店舗へ

足を踏み入れた。

 

これといって

抜きん出た特徴がある訳でもない。

 

広さも内装も、皆んなが頭の中に

イメージするザ・書店といった感じで

どこか親近感が湧くフツーの店だ。

 

「いらっしゃいませー。」

 

店員の挨拶に軽く会釈を返し、

二手に分かれ本漁りに注力する。

 

移動途中で買う本数と限度額は

予め相談しておいた。

多くて5冊。

予算の都合もあるが、

それ以上は収納等考えても

下世話という結論に落ち着いた。

 

当然、千速の観察日記を通して

彼女の好みの系統はリサーチ済み。

……『悪役令嬢モノ』というのが

好みらしい。 

 

輪堂兄貴からのタレコミだ。

信憑性は極めて高い。

一時期ラノベ界を席巻した

強ジャンル……

きっと多くの人々を沼に引き込む

パワーがあるのだろう。

千速がハマっても何ら不思議じゃない。

 

よし、じゃあ雑に

今年度ベストセラーを

選んどきゃ問題ないな。

 

(いや……待てよ。)

 

好きなジャンルの

ベストセラーならば、

既に読破してる可能性もあるじゃんか。

 

考えなしに5冊ともそれに固めるのは

悪手なのでは……?

念には念をだ。

2冊だけ、風変わりで

面白そうなのを仕込もう。

 

かなた先輩の推奨本が

偏った場合のケアにもなる。

やっておいて損はないはずだ。

 

「――!!」

 

なんだアレは。

 

#書庫らでん・推薦図書コーナー

……だと。

あんな大々的に配置・宣伝を

行うなんて。

一体どれほど面白れェ本なんだ。

 

決まりだ。あそこの2冊を

変わり種として採用しよう。

 

「――!!!」

 

ベストセラー悪役令嬢ものラノベを

3冊、書庫らでん推薦図書2冊。

これらを買い物カゴに詰め

かなた先輩と合流しようと

動き出したその時だった。

 

姉弟だろうか?

小さな子供2人が一冊しかない

乗り物図鑑part5を引っ張りあってる

光景が目に入る。

 

「これは僕の小遣いで

買う本なのー!」

「何いってんのよ!?

姉のわたしに譲るのがフツー

でしょっ……ほらっ、早くっ。」

 

「「「…………。」」」

 

周りの人々は見て見ぬフリして

割り込めずにいる。

それも仕方がない話だ。

 

昨今は小さい子供に大人が単独で

近づくだけでも

やれ不審者だの何だの

言い出す輩が現れる。

免罪が免罪で済まない恐怖に

足が竦むのは当然の心理と言えよう。

 

だがそれは――人間での枠組みの話だ。

〝虎〟であるニコたんには

何ら関係ない。

 

「よォ、ボーヤたち。

面白ェ事やってんじゃねぇの。

あーしも混ぜてくれよ。」

 

「ねーちゃん誰?」

 

弟くんが不思議そうに返答する。

 

「あーしかい?

あーしはニコってんだ。

ボーヤたちさぁ、その本の進化版……

欲しくねぇか。」

 

懐から借りパクしていた

例の本を取り出す。

偶然の巡り合わせってヤツだ。

 

コレを活かせる

機会は他にないだろう。

 

「……『乗り物図鑑part5・The-DX』

どうしてお姉さんがそれを。」

「わたし、欲しい……」

 

「おーっととぉ、

タダで渡すなんて柔な真似

ニコたんはやんねーぜ。」

 

「おーいニコちゃーん。

そっちの方は本決まったかー?」

「あっ。かなた先輩、丁度いいとこに。」

 

良いぞ良いぞ。

これは波に乗ってるな。

ジム戦もすぐそばに控えてる訳だし、

この子らとバトル経験値を

積めるやもしれん。

 

上手くいけば、この子らの

蟠りだって解けそうだ。

 

「うわっ!? 天使コスプレした

痛い人がいるわ!」

「うおw まじじゃん!」

 

「誰が痛いコスプレだぁ!

僕は正真正銘の天使だっての!」

 

「かなた先輩、

ちょっと時間ください。」

「お、おう。」

 

いくらかなた先輩と言えど

本屋で騒がれるのは困る。

あとの運びはニコたんに

任せて欲しい。

とびっきりの作戦があるんだ。

 

「ボーヤたち、この本が欲しいか?」

「「……!!」」

 

姉弟らしく息を合わせて

首を縦に振る。

狙った訳ではないだろうが、

血の繋がりってのは

しっかり出るモンだ。

 

「よーし、じゃあミッションだ。

ネーちゃんたちと

ポケモンバトルして勝利したら……

この本をプレゼントしよう。」

 

「「本当にっ!?」」

「ああ、本当だ。

つー訳でかなた先輩。

ちょっぴり力貸してぇん。」

 

「んだよ。おみゃー。

面倒な真似しやがって……」

「まぁ、良いじゃないですか。

ジム戦の予行練習だと思って

取り組みましょうや。」

 

「……いいよ。

このままじゃ腕が鈍ると

思ってたトコだし。」

 

「おし、交渉成立。

それじゃあボーヤたち、

広い所に移動しよっか。」

 

「「うん……!」」

 

場所を変え、

ひと気のない広場へと移動した。

……うむ、悪くない。

ポケモンバトルを行うには

うってつけのロケーションだ。

 

「レギュレーションはダブルバトル。

両者手持ちポケモンの

いずれかが先に

再起不能になったら

その時点で勝敗は決する。

……準備はいいな? ボーヤたち。」

 

「分かった……!」

「わたし、負けない!」

 

2人がモンスターボールを構えた。

やる気は満々って事か。

 

良いね良いね。

その方が

此方としてもやり甲斐がある。

 

PON!!

 

4つのモンスターボールが

空中で開き、

4匹それぞれのポケモンが

ご対面となった。

 

天音かなた 

[ヤレユータン-♂-]

虎金妃笑虎

[ズルッグ-♀-]

 

園児(男)

[マイナン-♂-]

園児(女)

[プラスル-♀-]

 

「マイナン、〝てだすけ〟」

「いけっ、ヤレユータン!

――〝サイコフィールド〟」

 

マジか。あの時

サイコフィールド張ってたの

このポケモンだったのかよ。

 

てかこの対面使っても

大して強くないだろ。何が腕鈍るだ。

鈍るどころかザ・初心者みたいな

立ち回りじゃあないか。

 

ウチのズルッグが

出し得技の猫騙しを

打てなくなったぞ。

 

「ズルッグ……〝ずつき〟」

「ずるぅ!」

 

ドゴォン。

 

よし、マイナンに命中だ。

このままいい感じに畳み掛けて、

ギリギリのところで……

 

「プラスル――〝ほうでん〟」

 

放電だ? 貴様この野郎。

その程度じゃウチらのポケモンは……

 

「「…………。」」

 

あ、普通に同時にやられた。

なんつー火力だ。

キュートな見た目で

多少みくびってたが、

ちゃんと強いポケモンなんだな。

 

「ニコちゃん、

僕らも次のポケモンを――」

 

ああ。やろうと思えば継戦は可能だ。

しかしニコたんの目的とは

乖離している。

 

だから。

2投目を準備するかなた先輩を

抑止するように手を伸ばした。

 

「待ってくださいかなた先輩。

もう充分なんで。」

「え、どゆこと?」

 

疑問符を浮かべる先輩を置いて、

ニコたんは白旗をあげる。

 

「あーあ。ネーちゃん達の負けだ。

2人とも強いねぇ……

〝良い絆〟だったよ。

ニコたん、驚いちゃった。

ほら、プレゼントの本だ。」

 

本を差し出すと、

弟くんの方が謙遜し始めた。

 

「ううん。僕1人じゃ勝てなかった。

お姉ちゃんのおかげだよ。」

「違う。わたしも助けられた……。」

 

おっしゃ。

ニコたんの筋書き通りだぜ。

気持ちがいいな。

 

「そんじゃ、

これは2人へのプレゼントだな。

仲良く分け合って読むんだぞ。

あと、これもな。」

 

いちご味のキャンディを 

キッズ2人に追加でプレゼントする。

こうすりゃ万事解決だ。

 

「「…………キャンディだ。」」

 

「そうだ。一緒に

キャンディパーティしながら

読んだ方がもっと楽しいだろ?

目いっぱい楽しめよ。」

 

「「――うん!!」」

 

満面の笑みを浮かべる2人の子供。

 

そう。

コレが一番見たかった光景だ。

一芝居打つ価値は、

充分にあったと言えよう。

 

仲良く手を繋ぎ去っていく2人を

見守りながら、ニコたんは

広場のベンチへ腰掛ける。

 

「ふぅ、ちょいと疲れたぜ……。

しかし、いい疲労感だ。」

「ニコちゃん、おみゃえ……」

 

「ん、何ですかなた先輩。」

「気ぃ遣えていいヤツだな。

僕、正直見直したよ。

その良心を千速ちゃんにも

注いでやったらどうだ?」

 

あちゃー。

めんどくさい所突いてくるなぁ。

 

「……断る。

下心の見える善行なんか

どーやったってすぐバレんだよ。

浅はかなにんげ……虎判定されて

終わりだろうが。

それにな、ただの良い人は

〝良い人どまりという認識〟の範疇

から容易に出られねぇだろ。」

 

「だから破天荒かつ馬鹿正直に

振舞ってるって訳かい。

難儀な生き方してんねー。

そんなんじゃ振り向いて貰えないよ。」

 

「最悪振り向いて貰えなくていい。

でもよォ……千速が他の人間に

目移りしてんの見ると、

心ん中ざわざわして

しょうがねェんだ。

出来れば1秒でも長くニコたんの

方を見ていて欲しい……

って、キモいよな。流石に。」

 

かなた先輩はニンマリとした。

 

「へぇー、そっかそっかぁ。

青春してんねぇ……。

千速ちゃんの前で

悪目立ちすんのは

そういう意図があったのかぁ………。」

 

「うっ、うっせーよい!

別に良いだろうが。

……千速には内緒にしとけよ。」

「勿論さ。寧ろ応援するよ。

がんばれ〜ニコちゃーん♪」

 

「――バカにしてます!?」

「ううん。心から応援してる。」

 

 

 

病棟。

 

7回目の患者面会。

プレゼント用の本を携え

ニコたんとかなた先輩は

千速に会いに行った。

 

「待たせたねダーリン。

今日もニコたんに会いたくて

震えてたかい?」

 

「捏造やめてねニコたん。」

「うはっ! 今日も辛辣ぅっ❤︎」  

 

ニコたん渾身のリアクションを

スルーして、千速は携えてきた

荷物の方へと目を遣る。

 

「今日は何だか荷物が多いね。

何を持ってきたの。」

 

「ふっふっふ……それを今から

お見せする所なのSA★」

 

ザッ、ザッ、ザッ。

袋から本を出し、積み上げる。

 

「えーと。何これ?」

「千速が退屈しないよう

本を買ってきた。ベストセラーの

悪役令嬢ものラノベ3冊と

書庫らでん推薦図書を2冊だ。」

 

「お、おう……。」

 

「じゃあ次かなた先輩!」

「任せなっ!」

 

ザッ、ザッ、ザッ。

 

「かなた先輩のも

本のようですけど……

どんなやつなの。」

 

「僕オススメの推理小説を

5冊用意したぞ。読み切った時

めっちゃスッキリするから

期待しとけよぉ。」

 

「え、待って。かなた先輩って

そういうの読むんですか。

もし買うとしても、

筋トレ指南書みたいなの

買ってくると

思ってたんですけど……」

 

「ガキがっ……舐めてると潰すぞッ!」

「全然有難いです!

ありがとうございますッ!」

「分かればよろしいっ!」

 

うっわ。かなた先輩こっわ。

つか案の定5冊とも

ジャンル偏ってんじゃねぇか。

 

2冊ズラし入れといて正解だったわ。

 

「ニコたん……」

 

お、千速が呼んでる。

これは告白の前触れか。

 

「何だよ。」

「ニコたんも……今日はあんがと。」

 

(うっひょぉおおお!

デレた、珍しく千速がニコたんに

デレたぞぉおお!!)

 

「いいさ。

困った時はお互い様だろ。

……ダーリン。」

「捏造やめてねニコたん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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