2週間という時間をかけ、
リハビリと安静治癒に努めた結果。
無事ちはは全回復し、
入院以前と同じように
全身を動かせるようになった。
2人にプレゼントされた
本たちも無事読了。
これで後腐れなく冒険を再開できる。
……が。STパスの仕様上、
各所の宿を転々と
しなければならないので
今後も本10冊という重荷を
背負い続ける……
というのは流石にキツイ。
2人の隙を見て古本屋に売り払おう。
それにしても
いい作品たちだったなぁ。
新作ばかりなので、すぐに続編を
買えないのが少々悔やまれる。
いつか……続編も買ってみよう。
と、そうこう
考えながら足を進めてると。
ようやく
お目当ての建造物に到着した。
『はあちゃまポケモンジム』。
真っ昼間なのに
ネオン色のネームプレート看板が煌めき、
両サイドには
ブタのマスコットキャラが
看板を挟むように装飾されている。
およそ最初に出くわす
ポケモンジムとは思えない
外観だが、コレもジムリーダーの
意向によるデザインなのだろう。
……にしても、個性爆発し過ぎだろ。
勘違いを
招いても文句言えんぞコレ。
「おいおいおみゃーら。
これ、ホントにこの町の
ポケモンジムなのか?」
思ったそばから、かなた先輩が
さっそく指摘しだした。
「も、勿論ですよかなた先輩。
ニコたん、既に
5〜6回マップ見返してますもん。」
「マジかよ……。
西部劇でガンマン共が
屯ってるような飯屋にしか見えんぞ。」
「どうだろうなぁ。円卓を囲んで
リボルバー銃片手に
ライアーゲームしてる
可能性もありますよ……
なぁ、千速はどう思う?」
「んー、実態は普通のポケモンジム
なんじゃあないかな。
ただ……ジムリーダーに挑む前に、
何らかのタスクを消化する
必要がありそう……。」
アローラ地方やパルデア地方では、
ジムリーダーに
挑む資格があるか判断する為、
何々の試練やジムテスト……
などと称して
トレーナーの力を測る催しがある。
それらが独自の土地柄や風習と
言われればそれまでだが、
何らかのコンセプトが
薄らと感じ取れるので
ちははそう推測するに至った。
「ほう……例えば射撃ゲームとかか?
もしそうだとしたら
最高に楽しそうじゃねェか。」
「いいね!
僕もワクワクするよっ!」
2人ともジムへの期待度が高まって
ウズウズとし始めた。
この情熱に乗せられ、
ちはも自然と
やる気が沸々と湧き上がってくる。
「それじゃあ、行きましょう。」
「待て千速、いつもの頼む。」
「え。そんなのあったっけ?」
「ほらほらぁ〜、誤魔化さないでよー。
僕知ってるよ。
エンジンなんちゃら……」
「え? アレ言うの。
こんな大通りで? 嫌だよ……」
「何を今更人目の1つや2つ
恥ずかしがってんだよ千速。
目と目があったら
他人だろうと強制ポケモンバトル
おっ始まる世界だぜ。
んなちゃちい事で
ナヨナヨすんなって。」
「えぇっ!?
そんな世界観だったっけ!
でっ、でもぉ…………」
「なんだよぉ千速ぁ、
焦らしプレイか?
……ったくぅ❤︎
イケない子なんだからぁっ❤︎」
自分の恥より、この虎黙らせないと
もっとヤバいな。
頬赤らめてモジモジしてるし……。
またしても
ニコたんの策略に
嵌められたようで癪であるが、
大衆の目も込みで。
これ以上の奇行を
起こされる方が大迷惑だ。
不本意ながら、
恥を忍ぶ他あるまいだよ。
「っしゃあ行くぞッ!
エンジン全開れっつごー!!」
「「――おぉおお!!」」
勢いに任せ
一斉にジム内へ入り込む。
入って早々、
なぜか暗闇の中に居た。
「「「???」」」
今日は偶々閉業してるのか?
などとみんなで
疑問符を頭に浮かべたその時。
カッ。 カッ。 パッ。
上からスポットライトが順々と
ちはたち一行に当てられる。
……一体これから、
何が始まろうというのだろうか。
『はぁちゃまっ★ちゃまぁ〜★
活きの良いトレーナー諸君、
はあちゃまジムへようこそ〜♪』
スピーカー越しに挨拶され、
スポットライトの照射光が消灯する。
するとジム内全体の各照明が
瞬く間に起動し、
闇に隠れた内装が明らかになる。
「「「――!!」」」
その内装は、みんなの
予想斜め上をいくモノだった。
いや、ある意味では
ニコたんの予想が
最も近かったといえよう。
レッドカーペットが
仰々しく敷き詰められた床に、
グリーン一色の壁。
なんといっても特徴的なのは、
中央にある重ダンプカーの
タイヤより一回り大きい円卓だ。
そこの最奥で鎮座するのは、
おそらくジムリーダーであろう
金髪の女性……
彼女は、不適な笑みを浮かべ
こちらを見ている。
一瞬怯むちはを置いて、
ニコたんは歩み寄っていく。
「アンタがここのジムリーダーか?
随分手の凝った歓迎してくれる
じゃねェの。嬉しいぜ。」
「喜んで貰えて何よりだわ。
……如何にも、私が当ジムの
ジムリーダー。『赤井・はあと』よ。」
ゴゴゴゴゴ…………。
スピーカーから、
狙ってたかのように
ゴゴゴという
鈍重な効果音が流される。
演出に度々力を入れるのは
面白いっちゃ面白いんだが、
テンポも大事にして欲しいものだ。
「へー、
やっぱり君がジムリーダーかぁ。
僕ら、君を早いとこ
ポケモンバトルで
ぶちのめしてさ……遅れを
取り戻したいんだよね。
協力してくれる?」
「ちゃ〜まちゃまちゃまっ♪
バカね。そう簡単に攻略できたら
ジムの意味がないでしょ。
卓上をご覧なさい。アナタ達。」
(ナイスだかなた先輩。
単刀直入に飛び込むその潔さ。
まさしく先輩の鑑……!)
ジムリーダーに笑われて
一蹴されたのは悔しいけど、
正論も正論。
ここは無策で挑む新人トレーナーを
篩にかける最初の関門。
故にその責任は、かなり大きい筈……
が、しかし。
何らかのタスクを与えられるのは
想定の範囲内だ。
確か、卓上を見なさいとか
指示をしていたな。
どれどれ…………
「「「――ッ!!」」」
卓上に散らばる裏面のカード達。
それらカードには、それぞれ固有の
番号が刷られていた。
「ちゃ〜まちゃまっ♪
良い反応してくるじゃないの
アナタ達。うふふ、これから始める
〝ジム試練〟が楽しみだわ……!」
「ジム、試練……」
復唱するようにちはが呟くと、
はあとサンがリモコンを操作して
巨大モニターを出現させた。
「その通りッ!
アナタ達に行って貰うのは、
はあちゃまとシェフ・りりーかが
共同開発した新たなジム試練。
その名も――
『限界グルメテイスティング』よッ!」
「何それ。美味しいの?
僕オムライス好きなんだけど、ある?」
「おいおい頼むぜ。ニコたん
こー見えて肉より野菜派なんだぜ。」
違う2人とも。
他にもっと
訊くべき事あるでしょうが。
「逸る気持ちは分からんでも
ないけれど、
取り敢えずモニターを見なさい。
今からルールやゲーム進行などの
詳細スライドが流れるわよ。」
「「はーい。」」
遠足で引率者に従う小学生かよ。
普段破茶滅茶なクセに、
こういう時は
素直に言うこと聞くんだな。
って、内心毒づいてる場合かちはっ!
聞き逃したらその時点で
勝負の優劣が大きく傾くぞ……。
一旦、
モニターに意識を集中するだよ。
【〈-限界グルメテイスティング-〉】
52組26種のカードで行う神経衰弱。
限界食材の役を揃えて完食すると、
限界pt(限界飯ポイント)をGET!
場札が0枚になった時、
より多くの限界ptを有してた
チームが勝利だ!
●ジョーカー食材-♠︎-
(+5pt/相手の食したカードを選んで
食せる。限界ポイントも加算される。)
♠︎-スターゲイジー・ウィンナーパイ
♠︎-ハバネロ・ポテト
●ハート食材-❤︎-
(+7pt/比較的当たり食材。)
●クローバ食材-♣︎-
(次に得る限界ptを×1・5倍に増やす。
この乗算効果は
「2回まで重複」する。)
●ダイヤ食材-♦︎-
(+3pt)
【〈-開示終了-〉】
「さて。
大方確認は済んだかしたら?」
「「「はいっ!」」」
……成る程な。
読んで字の如く、食事を絡ませた
神経衰弱ってワケか。
限界飯っていう文言が
中々に怪しいけれど、
何が何でも
完食せねばポイントは入らない。
ジョーカー食材だけ
名前が知れてるのは僥倖と
捉えるべきか。
いや、でもやだなぁ……
ハバネロ・ポテトって。
名前からしてヤバいじゃん。
適当にカードをヒットさせて、
比較的に食べやすそうな
モノを狙おう。
ポイントの駆け引きは
それからでもなんとかなる筈だ。
「じゃあ今回特別に、
アナタ達3人まとめて
1チーム扱いで相手してあげる。
仮でも良いから、
チーム名を決めなさい。
時間は3分。はいどーぞ。」
テンポよくしろとは思ったが、
急にハイテンポな
対応されても結構困る……。
3分なんて、あっという間に
試合が始まっちまうだよ。
「なぁ、どーする千速。
これ多分……
作戦会議込みの猶予だよな?」
「ああ。大丈夫。
ちは、入院時期に
暇すぎて色々考えてたから。」
「こんな謎のゲームが
始まるのもか?」
「いや、このゲームは予想外だよ。
でも……チーム名は考えてた。」
「ほう……」
天音かなた、
輪堂千速、虎金妃笑虎……
それぞれの名前を英訳したり、
アナグラムしたりと考えたが。
しっくりくるものは
見つけらんなかった。
だから敢えて、シンプルめに
苗字だけを抽出して
組み合わせてたら
ガッチリと文字の歯車が噛み合った。
小さい集団だろうと、
自分よりも大きな貨物を
協力し合い運搬する力強い昆虫群。
彼らの生き様を反映した
素晴らしいネーミングだと
自負している。
「――『ありんこ組』って
いうのはどうかな。」
「「――!!」」