ちはっと★ホロポケ   作:たかしクランベリー   

18 / 22
16話・食うか食われるか。

 

 

「タコってそっちの

タコかいィィイイイイイ!!!」

 

卓上の皿に充てられた限界メシ。

その正体は、

タコさんウィンナーが

3本乗ったレンチンパックご飯。

 

地味さ加減を誤魔化すように、

タコ(ウィンナー)の下には

そこそこ彩りのある

ふりかけが敷かれ。

容器の片端には大さじ2程度の

マヨが添えられていた。

 

申し訳程度に振りかけられた

ブラックペッパーが

涙に見えてくるだよ。

 

――そうだ。

分かってはいた。

限界メシは一人暮らしで

限られた仕送り金、

バイト賃金等で資金繰りを

行う学生諸君の大きな味方。

 

低コスト、

低パフォーマンス(省略調理)に

振り切る事で

その分の『余裕』を得られる。

ここで言う余裕というのは、

時間と金銭。どちらも含む。

 

昨今の若者が

好んで止まない概念思想……

『タイムパフォーマンス』

というヤツだ。

 

余剰に得られた『余裕』を

勉学に用いるも物欲に用いる事も

当事者の自由だ。オマケに

精神衛生上の安寧をも保持できる。

 

……ああ、合理的だ。

大人たちは学歴を求めるし、

学徒は現代のありふれた娯楽に

1秒でも長く浸かっていたい。

 

そういう行動に至る理由も

充分に理解できる。

 

でも、そうまでして

食を蔑ろにする姿勢が

正しいとは思えない。

 

〝衣食住〟

〝衣食足りて礼節を知る〟

〝健全な精神は、健全な肉体に宿る〟

などと先人が云い残したように

人は元来、

衣食住を中心として

営みを築いてく生物だった筈だ。

 

だから、たまにでもいい。

ちはとしては、味も手間も含め……

食を本来の意味で

みんなに楽しんで欲しい。

 

液晶から手や目を離して、

五感で食と向き合えばきっと……

〝丁寧な暮らし〟の

第一歩になる。

 

エゴかもしれないけど、

そう切に思って……願っている。

 

まぁ、3番目においては

健やかな身体に

健やかな魂が願われるべきである……

という、どちらかと言えば本来、

願望や訴え的な意味合いが強かった。

 

……のだが、

時を経て解釈が歪みに歪み。

前者の格言が現代に

浸透してしまった……。

ってのは本筋から逸れるので

またまた別の話。

 

……と。ここまで長ったらしく

お気持ちはやしたのは他でもない。

食のプライドをかけて、

――この勝負に勝つ!

 

改めてちはは、そう決意した。

 

丹精込めて育てた己の太ももが、

何物にも

変え難い素晴らしいモノだと

自分自身に再度証明する為にも……!

 

食うか食われるかの大勝負。

捕食者がどっちか、教えてやるだよ。

 

パンッ!!

 

「「「――ご馳走様でした。」」」

 

『おおっとぉ、ありんこ組一同。

見事に限界タコ飯を完食だぁ!

次ポイント増加効果が発動し、

再び手番が続きますッ!』

 

「27番、14番。」

 

ペラッ。ペラッ。

 

『27番ウィンナー・コーヒー(直球)

14番ウィンナー・コーヒー(直球)。

続けてHITぉ!

ありんこ組の快進撃は留まることを

知りませぇえんっ!!』

 

カラカラカラ……ストッ。

 

(ウィンナーって

やっぱりそっちのウィンナー

かいぃィィイイイイイ!!)

 

やはり、

オーストリアの首都・ウィーンに

因んだ方のウィーン風(ウィンナー)

では無かったか。

 

ちはでも飲めそうなクリーム増し増し

コーヒーだったらギリ歓迎。

と、腹を括ってた矢先。

おいたわしや…………

 

絶対別々に飲食した方が

美味いだろうに……。

 

シェフ・りりーかという人は

ウィンナーの悪魔に

でも取り憑かれてるのか?

なんだか、

さらに幸先不安になってきただよ。

 

色味と香り的にも

がっつりブラックコーヒーだな

こりゃあ。

黒い水面に散らばる

ウィンナーの油脂が、ちはを

悲しい気持ちにさせてくる。

 

……しかし。ただ辟易と

するだけなら何の成果も生み出さない。

逆に捉えろ。考えろ。

この状況を利用する一手を……。

打開策を。

 

「…………。」

 

あっ、そうだ。

そもそもちはは

肉類が好物じゃあないか。

 

多少コーヒーに浸ってたとはいえ、

肉は肉だ。内部の味ごと

丸っきり変わる訳がない。

充分我慢できる範囲だ。

 

ならば、取引と行こう。

 

「かなた先輩、ニコたん。

ちょっとした取引をしたいんだけど、

いいかな。」

 

「ほう。何だ?」

「どうしたのさ?」

 

「コーヒーに入ってる肉を

ちはが全部食べるから、

2人はそれぞれ1・5杯分

コーヒーを飲んでくれないかな。」

 

「成る程な千速。

食べ合わせが悪いなら、役割分担で

解決しようって事か。

まぁ、アリだと思うぜ。」

 

「でもそれってルール的に

大丈夫なのかなぁ……」

 

かなた先輩が心配の声を

溢したその時、

はあとサンがニヤリと返答する。

 

「えぇ、構わないわ。

設けられた時間内に完食すれば

得点が得られる。

その際の過程なんて、私には

どうでもいい話よ。」

 

「じゃあ、

お言葉に甘えさせて貰いますね。」

 

ササッと全員分のウィンナーを

回収して口一杯に頬張る。

ほんのりとコーヒーの風味を

纏っているが、ちはの読み通り

芯まではやられてなかったようだ。

 

焼き立て熱々ジューシーとは

いかないものの。

ウィンナーとしては充分

愉しめるクオリティだった。

 

2人も邪魔なウィンナーが

消えたおかげか、

スルスルと例のコーヒーを

喉に通し終えている。

 

「「「――ご馳走様様でした。」」」

 

「ふっ、見事なチームワークね。

さぁ……ちゃまを

もっと愉しませてご覧なさい。」

 

ペラッ、ペラッ……ペラッ、ペラッ、ペラッ。

 

双方、HIT &NO HITのラリーを

繰り広げていく。

シケポイント食材を

盤面から減らしつつも……

やはり、奥の手である

ジョーカー食材は

あちらも温存するように

フェイズを進めている。

 

倍加クローバーと

高得点のハート食材を合わせた

ポイントうめうめコンビ戦法は

終盤まで取っておきたいのだろう。

 

これまでの動きを見るに、

彼女も記憶力と勘を頼りに手番を

進行させてるし、

ちはたちが優勢ポジションなのは

依然変わりない。

 

上手くハマればハバネロ・ポテトを

あちらに押し付けられる……。

しかし、それを完食させると

こちらが得た高ポイント食材を

利用されてしまう。

 

何とかして最後に

ハバネロ・ポテトを押し付けて

〝完食させない〟立ち回りを

組み立てねば……。

 

じゃあどう立ち回るか。

一番扱い易く現実的な手段・手法は……

相手に総得点ポイントが僅差で

ある状態を築いた上で

食材略奪を成功させ……束の間の

〝勝利を錯覚させる〟事だろう。

 

……が。

わざわざ自分が食えない限界メシを

仕込むとは思えない。

当然ながら、

ハバネロ・ポテトに対して

何らかの対策を講じてる筈だ。

 

となると。

その対策を想定して一歩進んだ

手を打つ他ない……。

 

考えろ。

相手が仕組むセーティプランを。

そこに刺さる大胆な妙案を…………。

 

今相手は、どんな食材を獲得済みだ?

これから何を選んで食う?

……ん、食う?

待てよ。彼女は限界メシの食べる

過程について、あまり気にしない

スタンスで居たよな。

 

これ、逆に『過程』を

利用できるんじゃあないか。

なら、食べ合わせや順番。

トッピング諸々を上手く

コントロールすれば………

 

「――ハッ。」

 

可能だ。

相手が乗ってくれるか

どうか次第だが、

充分に試す価値はある。

 

「なんだ千速。忘れ物でもしたのか?」

「……違うよニコたん。

今、秘策を閃いただよ。」

 

「あら、またルールの穴を

突くおつもり? 好きね。」

 

「ダメならダメでいいだよ。

……だけど、色々できた方が

ゲームとしても楽しいと思いますよ。」

 

「へぇ……次はどんな作戦なの。」

 

此方の悪巧みを見透かしたように

彼女は問う。

 

うむ。

釣れたはいいが、言葉の匙加減に

よっては却下も有り得る。

丁寧にいこう。

 

「ちょっとしたルールの確認を

しても良いですか?」

「良いわよ。」

 

「例えばですけど。実食対象の

限界食材に対して、何らかの

トッピングや追加調理を施す事は

可能だったりします?」

 

「可能よ。但し、飽く迄も

限界メシと云う

カテゴリの範疇に収まる

施策の場合のみとするわ。」

「具体的には?」

 

「そうね。追加予算350円以内を

基準とするわ。」

 

「因みに、今から買い物して

くるというのはアリですか?」

 

「10分以内であれば構わないわ。

それ以上の外出は即失格として扱う。

まぁ、350円程度で出来る付け焼き刃

なんて所詮……焼け石に水よ。

あなた達が行おうとしてるのは

無駄に時間と腹のキャパシティを

浪費する愚行に他ならない……!」

 

「ええ。もしかしたらそうかも

しれません。予算も、

時間の猶予もあまりに少ない。

買い物のタイムオーバーで

失格するリスクを

抱えてまでする事でもない。」

 

「そこまで理解しておきながら、

なぜ見えてる地雷に踏み込むの。」

「仲間を信じてるからですよ。」

「ふーん。仲間ねぇ……」

 

彼女はちは達全員を一瞥し、

伏目がちに微笑んだ。

やっぱり内心、無謀だと

思われてるのだろう。

 

実際のところ、無謀な作戦ではないと

ちはは考えてる。

AIこよりのナビ機能は

想定を遥かに上回るレベルで

いい出来だった。

 

そして、はあちゃまタウン内ならば

距離感など気にしなくていい程

とてつもない速さで

移動可能なフィジカルモンスターが

真隣に座っている。

 

2週間の療養期間中、

お節介清掃員から

何枚か頂いたセールのチラシに

目を通した甲斐もあって。

 

より作戦遂行の成功率も高まってる。

はあとサンの指摘する通り、

馬鹿な大博打には変わりないが……

勝てる博打だとちはは信じてる。

 

何……ただの勘。

そしてまじないだ。

 

「許可しましょう。

思う存分お行きなさい。

そうして、後々後悔するといいわ。

自分たちの信じた

『作戦』とやらに。」

 

ポチポチポチ……。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて

実行させて貰います。

かなた先輩、必要なモノは

メールに送りました。

後は頼みます……!」

 

ちろりろりぃん♪

 

かなた先輩のセンスが光る

独特な着信音が鳴った。

ちはがポチポチ打って送信した

購買メモが届いたみたいだ。

 

「おーし、

これを買えばいいんだな!

僕にどんと任せろ、おみゃーらっ!

ぜってー間に合わせっぞォ!!」

 

「「はいっ!」」

 

ビュンッ!!

 

瞬く間にかなた先輩が姿を消した。

空席となった椅子を、

ちはとニコたんは

静かに見守る……。

 

勝利への第一歩を

踏み出したんだと信じながら。

 

 

 

〜SIDE『天音かなた』〜

 

僕は、はあちゃまタウンの

上空を跳び上がっていた。

 

上から街全体を見れば

ショッピングモールを

素早く発見できるという

浅はかな考えだ。

 

しかし、何かが可笑しい。

空がめちゃくちゃ寒い。

なにより……

 

「どうなってる? 何故だ、 

なぜ町中が凍っている……!?」

 

現在6月。

昼も蒸し暑くなるくらいには

夏が近い時期だというのに、

冬季のような情景が広がっていた。

 

ジムに入る前だって

外は太陽が照りついてて

暖かかったのを覚えてる。

 

はっきり言って異常気象だ。

 

ポケモンが起こす

『天候・あられ』でもここまで

広範囲な天候操作はできない。

 

それが可能な人物を

僕は1人知ってるが……

 

「だとしても。

こんな事する意味が……」

 

有り得ないと疑いながらも、

僕は状況をさらに知るために

一度地上へ戻った。

 

辺りを見渡し、凍てついた街を観察する。

 

(住民達も気味悪がって、

全然出歩いていない。)

 

そう感じた時だった。

 

コツンコツンと靴音を鳴らし、

僕に歩み寄る

1人の少女が目に入った。

 

(嘘ぺこでしょ……)

 

「やっほぉ〜かなたーん♪

元気してたぁ〜?」

 

「お、おみゃーは―――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。