「――きゃぁああああああっ!!」
リゾート敷地内に響く少女の悲鳴。
急ぎ日焼け止めクリームの塗布を
済ませて
声の聞こえた方へ駆け出す。
声と気配を頼りに
広々とした広場に辿り着くが、
見るからに危なそうな
不審者らしき人影はない。
むしろ、同行してるニコたんの
視線の動きの方がずっと不審だ。
でも、事件らしき雰囲気は漂っている。
人数は疎なものの、
周囲の野次馬がヒソヒソしてたり
してるのが何よりの証拠だ。
で。肝心の被害者っぽい子は……
(あの子か?)
広場の中心にぽつんと1人の
少女が、瞼に大粒の涙を蓄え
立ち尽くしていた。
「う……ううっ。
す、すぅの楽しみにしてた
4段アイスがぁ…………。」
そう悲しそうに呟く彼女は、
2段だけ残ったアイスを握ったまま
ポタポタと涙を落としていく。
滴ったソレは
地面で無惨な姿を晒す
2段アイスにのし掛かり……
より状況の悲壮感を強くしている。
流石に見るに耐えず。
ちはが駆け出そうと動いたその時。
ガシッ。
ニコたんが肩を掴み動きを抑制する。
「何のつもりだよ……ニコたん。」
「まぁ待てって千速。
考えなしに行っても悪化するだけだぜ。」
「じゃあニコたんには
算段があるって言うの。」
ニコたんは頷いた。
「あぁ、勿論だ。
そこらの奴よりかは、
キッズの扱いに自信があるぜ。」
「にゃびっ♪」
ニコたんのニャビーも相槌を
打つように鳴き声をあげ、
凛々しい表情を見せる。
猫の手も借りたいだなんて
諺も存在するけど、
猫ポケモンだったら何でも
癒せるとでも思ってるのだろうか。
……が。
ちは自身なんの案も
浮かんでないので
一先ずは彼女の案に乗ってやろう。
「分かっただよ。
で、ちはは何をすればいい?」
「そうだな。ニコたんが
ピースで合図を送るから、
このラジカセを
持ってきて起動してくれ。」
「その後は。」
サザッ。トン。
ニコたんはそう言って
バックから
小型のラジカセを取り出す。
「あぁ、後は簡単だ……そんでさ。
ニコたんがラジカセの音楽に
合わせて踊り始めっから、
千速もそれに
合わせて一緒に踊ってくれねーか。
きっと大ウケ間違いなしだぜ。」
「了解。頼むよニコ。」
「あいよ。ニャビー……
――〝ひのこ〟っ!」
「ニャアンッ!」
火の玉がニャビーの口から放たれ
地面のアイスに命中……
小規模の爆発と白煙を散らす。
間近に居た少女も
ハッと目を見開き
辺りを見回し始める。
そりゃ、何らかの襲撃だと
疑う方が自然だ。
(けどさ、もうちょっと
やり方他に
あったんじゃあないかな。)
ニコたん。
何やってんだお前ぇええええっ!
と、叫びたくなる心をグッと抑え
状況を見守る。
ニコたんはというと、
平然とした態度で泣いてた少女に
歩み寄っていた。
「おーおー嬢ちゃん悪ィな。
あーしのグラサンが
地面に落ちた2段
アイス食っちまった。」
「は? 何言ってんのお姉さん。
サングラスが
アイス食べる訳ないじゃん。」
事態悪化してんじゃねぇか。
ホントに大丈夫なの……か。
「いやいやいや。
世の中なにがあるか
分からねぇぞ、この世には
あーしらがまだまだ知らない
未知の新種ポケモンが
わんさか居るかもしれないじゃん?」
「……そう、かも。」
ん。なんか分からんが効いてるぞ。
「でさぁ、他の
みんなには内緒だけどな。
あーしのグラサンも、
実は意外な特技……
持ってんだよね。」
「グラサンの……特技!?」
サングラスに特技なんかある訳ない。
普通に考えれば見え見えの
ワ●ップと分かるが、
キッズからしてみれば
夢と希望の詰まった魔法のような
モノなのだろう。
プレゼントを配る
サンタクロースの存在だって
本気で信じ込むお年頃だ。
……成る程、その童心を逆手に取った
というワケか。
食いつきは抜群。
さぁ魅せてくれ、ニコたん。
「このグラサンはな、
一度食ったスイーツを
グミに変えられるんだ。」
「グミにぃ!? すごーーいっ!!」
ニヤニヤと頷き、
閉じていた掌をパッと開く。
その手の内を見た少女は、
キラキラと目を輝かせた。
「ホントだぁーーっ!
サン●オのグミになってるぅ!!
2個もあるよぉっ……!」
いや、
マジですげぇ手品じゃんかニコ。
多分ラジカセ見せる時に
仕込んだんだろうけど。
幼い女の子のツボやウケを
ちゃんと理解して攻めてやがる。
……見直しただよ。
「君ぃ、名前は?」
「すう! 水宮・枢っていいます!
あのっ、良かったら
グミくださいっ……!!」
「良いってことよ。
あいよ、すうちゃん。」
「ありがとおねーさん!」
食欲も年相応か。
すぐにグミを2つ口に頬張り
すうちゃんは
甘味と食感を堪能し始める。
モグモグ、ウメウメ……。ゴックン。
「ん〜♪
ぷにぷに甘々でおいし〜。」
「だろだろ。猛暑だからって、
別に氷菓子だけに
拘る必要はねェんだ。
でも、お菓子の食べ過ぎは
程々にしとけよ? な。」
戒めるようにニコたんは言い、
すうちゃんの頭を撫で撫でする。
なんか上下関係に違和感を
感じてしまうが、気のせいだろう。
ん。今こっちにピースサイン
送らなかったか。
(やっべ!
呑気に後方肩組みお姉さん面
してる場合じゃねぇっ!!)
緊急でラジカセを携帯し
ニコたんの方へと駆け込む。
スイッチを起動して音楽を待つ。
「いくぜ、すうちゃん。
あーしらの祝いのダンスで
もっと楽しませてやんよ!」
『あ〜の頃の青を♪
覚えてい〜♪♪』
ようやく来たちはの出番。
イマイチなんでウケるのか
分からないダンスを
ニコたんから
必死に模倣して踊り切る。
程よい疲労感と沈黙が
数秒続き、
すうちゃんが身震いしだした。
「ぷっ……あはははははっ♪
何そのヘンテコなダンス!?
忍者の真似事なの?
あははははっ♪」
いや、マジで何で
めちゃくちゃウケてんの。
やはり……キッズが持つ独特の感性。
今となっては理解し難いモノだな。
落ちてるどんぐり収集して競ったり、
ピカピカの泥団子造りだって、
よく考えたら……そこまで面白いモン
でもないよな。
「よォーおみゃーら!
なんか面白いコトやってんなぁ。
僕も混ぜてくれよ〜。」
「うわぁああ化物ぉおおっ!」
「誰が化け物じゃ、ボケなしゅゥゥッ!
僕は天使だよっ!!」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ
かなた先輩。そんなモン持ってたら
誰だってビビりますって。」
「え〜、そうかなぁ。僕的には、
良いトレーニング器具だと
思うんだけどなぁ……。」
良いというか何というか。
もう指摘するのも馬鹿らしくなる。
当リゾートに
凄いトレーニングジムがある……
というのは耳にしたが、
自販機サイズの
ペルシャミールを置いてるなんて
誰が予想できるだろうか。
※ペルシャミール・・・棍棒の形状をした
木製の重量トレーニング器具。
古代の人々がトレーニングに
用いていたらしい。
屈強なマッチョマン達でも、
コレを扱うのは至難とされている。
明らかに巨人用なのかな?
というサイズ感。
それを右手に2本。左手に2本。
まるで右手にマイク、左手に地図を
持つかのように軽々しく
持ち歩いてんだ。
そりゃ化け物扱いされても
しょうがない。
開拓者一同もこれには
青褪めるだろう。
別の意味でハートがゼロGUESSされる
可能性がある。
「大丈夫だぜ、すうちゃん。
あのネーちゃんをよく見ろ。
あんなに逞しいんだ。
もしかしたらお友達に
なれるかもしれねーぞ。」
「ホントに?」
「ああ、本当だ。」
ニコたんがすうちゃんの説得に入る。
どうやら説得が効いたらしく、
すうちゃんも落ち着いて
かなた先輩を見るようになった。
「…………。」
「ん?」
「あっ、仲間だぁ!
お姉さん、変な扱いしてごめん!」
「今僕のどこ見て仲間扱いしたの!?」
「え、えーとそれは……」
すうちゃんが言葉に詰まり
目を泳がせたその時だった。
『〜〜♫ 〜〜〜♬♬』
「「「――!?!?」」」
突如、
ピアノの旋律がどこかから流れる。
「ピアノの演奏か?」
「へぇ〜ストリートピアノなんか
置いてるんだね。
僕も知らなかったよ。」
「………………。」
何だろう、この演奏。
(この演奏…………
何か……〝変〟。)
演奏経験者だから分かる。
旋律全体の中で
何かが決定的に欠けてるというか……
モヤモヤするなぁ。
「千速、黙り込んでどうしたよ?」
「よくよく聴くと、
ちょっと変だと思ってね。
ニコたんは何か感じない?」
「別に感じねーぞ。
素敵な音色じゃあねぇか。」
「かなた先輩は?」
「右に同じだよ。」
「そっか。でも、ちはは
ちょいと気になるから……
みんなには悪いけど、
演奏者の所に行ってくるね。」
ガシッ。
立ち去ろうと足を進めると、
ニコたんが再び肩を掴み
足を止めさせた。
「なんだよ。」
「なんだよは
こっちのセリフだぜ千速。
何故仲間を置いてく?
一蓮托生。ウチらは今後も
旅を共にする仲間だろーが。」
「…………。」
「音楽のことなんか、
千速に比べりゃあ
全然の無知かもしれねェけどよォ……
仲間として
何かしら力になんねぇと
こっちも気がすまねーんだ。
な、かなた先輩。」
「そうだぞ千速ちゃん。
ニコの言う通りだ。
よく言うだろ?
〝三人寄れば文殊の知恵〟って。」
虎とパワー系天使がなんか言ってらぁ。
でも、仲間同士結託するっても……
悪くない。
2人してちはの事を
想ってくれてるだけでも、
何だか心が温かくなるし……嬉しい。
「そんだけ言われちゃあ
しょうがないね。りょーかいっ♪
行こうか、2人とも。」
「「おう!!」」
「あっ、あのぅ!」
「「「!?」」」
決意も固まり、
3人で進もうと動いたが。
すうちゃんに呼び止められた。
ニコたんが逸早く振り返り、
返事をする。
「オイオイどーしたよすうちゃん。
1人は寂しいか?
ニコたんが親御さんのトコに
案内してやってもいいぞ。」
「ち、違う……」
「?」
首を振って、まっすぐと
ちは達に目を向ける。
「すうが困った時、
お姉さんたちは
一番早く助けに来てくれた!!
……だから、ありがとうっ!
いつかまたっ……会おうね。」
なんて育ちの良い子なんだろう。
生意気なキッズしてた自分を
思い出して、無性に
こそばゆい気持ちになる。
そんなちはの苦悩を置いて。
ポフッ。
ニコたんはすうちゃんの頭に
手を乗せて再度軽く撫でた。
「あぁ、絶対会おうな。
今度は仲間にしてやってもいいぜ。
そんときゃそーだなぁ……
一緒にお歌でも歌おうか!!」
「うん……!!」
(へー。ニコたん、
結構良いトコあるじゃん。)
夏のリゾート、快晴の空の下。
2人は歌の約束をして別れる。
振り返りはしない。
蝉時雨に包まれた猛暑は
全てを掻っ攫い。
熱気の余韻だけを残して、
広場に留まった。
歩くこと7分前後だろうか。
ようやくストリートピアノの
全貌が見えてきた。
ここまで来ると、ピアノを弾く
男の影がはっきり見える。
今は演奏を止めてるようなので、
駆け寄って挨拶してみる。
「暑い中お疲れ様です。
凄い演奏でした!
ちょっとお話良いですか?」
ガッ。
男は、自分の額に片手を
強く当てて嘆いた。
「――ダメだっ!
ダメだダメだダメだァッ!!
あと一歩、あと一歩が足りねェ……!」
「あのー、大丈夫ですか?」
「……っ! ごめんな嬢ちゃんたちィ!
急に騒いじゃって!
俺、暑さで
ヤラれちまったみたいで……。」
彼が一生懸命弁明する。
よっぽど騒ぎ立てた
自覚があるらしい。
「気にしないでくださいよ。
いきなり押し掛けた
私たちも悪いですし……。」
「おう。そうか……。
俺はパームツリー植田。
見ての通り、趣味で
ストリートピアノをする
冴えないパイロット男だ。
で、嬢ちゃんたちは
俺に何の用で?」
「さっき叫んだ通り、
ちはも何か一つ……その演奏は
欠けてるような気がするんですよ。」
バシッ!
植田さんはパァッと顔を明るくし、
ちはの両手を手で挟み込み
上下に振る。
「おーおーおー!
分かってくれるのか嬢ちゃん!
嬉しいねぇ♪
俺も丁度困ってたんだよ。
何が原因かなぁーコレぇ!」
「あ、あはは……」
シュバッ!
「ニコの千速に気安く触んじゃねェ!」
どういう感情か分からないが、
ニコたんが手刀で
植田さんの手を払い除ける。
その痛みもあってか。
彼も正気に戻り、ニコたんや
かなた先輩を見るようになった。
「…………え。
てか待ってくれ。後ろの子、
ヤケにデカいペルシャミール
4本持ってるぞ。俺の気の所為か?」
「「――蜃気楼です!」」
「蜃気楼か。ならしょうがないな。
帽子の嬢ちゃんは、音楽関連で
何か携わってたのかい?」
「えーと、1〜2年前に
管楽器を嗜んでた程度で……」
「ふっ、分かるぞ。
さては嬢ちゃん、吹奏楽部やってたな。」
「なんで分かるの!?」
「首を見りゃあ分かる。
気管のカタチが界隈のソレだ。」
「一々女の首とか見んじゃねぇよ
気持ち悪いなァ。
さっさと音楽の話に戻れや。」
ニコたん、
何でさっきから機嫌悪いんだ。
「……悪い。で、
気になった所とかあるかい?」
「もう一度弾いてくれませんか。
知る為には、まだまだ
情報が足りなくて。」
「了解だ。」
『〜〜♫ 〜〜〜♬♬』
植田さんが再びピアノを奏でる。
「……ふぅ。こんなモンでいいか。
なんかなぁ……不安的なイメージを
掻き立てる旋律パーツが
あった気がするんだけど……
やっぱり俺には…………」
不安的な要素を掻き立てる……?
うむ。
これは音楽を完成させる上で
重要なキーワードになりそうだな。
「ねぇニコたん。
ここのリゾートってタブレットの
貸し出ししてたよね。」
「あ……あぁ。そうだが?」
「借りて来てくれないかな。
必要かもしんない。」
「分かった。手配してみるぜ。」
これで準備は30%くらい進んだ。
あとは……
「かなた先輩って以前、
MIXとかが得意って
言ってませんでしたか?」
「あぁ、出来るっちゃ出来るけど。
それでどーにかなんのか?」
「モノは試しですよ。
取り敢えずその物騒な
ペルシャミールを
ジムに戻して来て、
ニコたんもついでに
回収してくれると助かります。」
「おう、任された!」
ビュンッ!
突風を吹かせかなた先輩は
瞬く間に姿を消す。
おそらく数分もしない内に
2人は戻ってくるだろう。
「頼り甲斐のある友達だね。」
「えぇ……ホント感謝でいっぱいですよ。
さぁて。準備が整うまでの
時間も惜しいですし、
またまた演奏……
お願いしちゃっていいですか。」
「あいよ。」
*
一方その頃。
撮影を粗方済ませた
マンホール佐々木は、
リゾート地の控え室で
カセーグ卿と落ち合っていた。
「成果物の方はどうだ……佐々木。」
「うーん、まぁそれなりにって
感じですね。
象徴オブジェとして置いた
大型ペルシャミールを
平然と持ち上げたのには
度肝を抜かれましたが、
アレはアレで良い画が撮れました。」
「ほう。では残り2人は
どういう画を撮るつもりだ?」
佐々木は頭を抱え渋々返答する。
「……あぁ。それが今
大変困ってまして。
もう台本練って動かした方が
良いかな……
なんて考え始めてますよ。」
「やはり、自然な様子を撮るのは
撮れ高的にも
難しいという事ですな。」
「えぇ……。」
*
場所は戻り。
リゾート地、ストリートピアノ区画。
ありんこ組一同は合流し、
レンタルタブレット端末を
忙しなく使い回す。
各々の意見交換を交えながら、
演奏の分析、再現、調整を
ひたすら繰り返していく。
そうする事、約数十分。
輪堂・千速はガッチリと合う
音源を見つけ……
『答え』に辿り着いた。
バッと立ち上がり、
両手を大きく上に伸ばす。
「ん〜、良い気分〜♪」
「急に伸びなんてして
どうしたんだ千速。
まさかもう――〝分かった〟とでも
言うつもりか?」
ニコたんが信じられないという
感じで問う。
この短時間で解決するなんて、
数分前の自分だったら
思いもしない状況……
であるのは紛れもない事実だ。
音楽演奏には、
基本の構成ベースとなる軸……
『音律』が存在する。
完全5度との親和性が極めて高い
『ピタゴラス律』。
ピタゴラス律とは異なり、
基準音から簡単な整数倍で
音律をつくる『純正律』。
全ての半音の音程が等しい比に
なることが特徴で、
美しく整合性の取れた音律……
『平均律(12平均律)。』
これら3点の軸に各自則って
音を紡いでけば演奏は完成していく。
……だが、意図的にこれらとは
違う〝ズレ〟を演奏に組み込んで
完成させるのも可能だ。
しかし、それをメロディとして
採用して綺麗に作るのは
かなりの高難易度。
よくもまぁ、
再現しようと思ったね。
「分かっただよ。」
「本当か!?」
「うん。植田さん、
単刀直入に言うだよ。」
「………………。」
「そのピアノじゃあ、
あなたの求める演奏は出来ない。」
「「「――!!」」」
3人は驚愕の表情を浮かべた。
「お……おい。どういう事だよ。
俺の親父は……確かにピアノで
奏でてたってのに…………。」
「まず疑うべきは基盤からでしたね。
だからちはは、タブレットを
用意させたんです。
改めて思うけど、
最近の技術の進歩って凄いですよね。」
ちははタブレットの画面を見せる。
「タブレットが……何だってんだ。」
「楽器だけが自分の音を出せる
時代じゃなくなったって事です。
最近のアプリケーションの再現度は
まるで本物のソレみたいですよ。
おかげで、早く見つけられた。」
「楽器シュミレーションアプリか。
ピアノに、ギター、ドラム……。」
「まぁ、それはさて置きです。
植田さん。
『マイクロトーン』はご存知ですか?」
「マイクロ……トーン。」
マイクロトーン。
12平均律より更に細かい音源。
中東圏の地方ではよく用いられる
演奏音源であるが、
他では殆ど演奏に用いられない。
それもそのはず。
12平均律から外れた存在であり、
一般的には調律を乱す
不協和音として扱われるのだ。
まさしく、意図的に
採り入れられる事自体が異例の異例。
普通に模倣して弾いてたんじゃ
出るわけがない。
「えぇ。例えばですけど、
ドと♯ドの間には音が存在するし、
それを鳴らす事も出来るんですよ。
〝通常のピアノ〟じゃあなければね。」
「専用のピアノが必要だったって事か……」
「はい。おそらく、敢えて外れた
音を入れる事で不安感を刺激する
メロディにしたんじゃないかと。
……独自の世界観を表現する為に。」
植田さんは肩の力が抜けたように
微笑んだ。
「そうか。
ありがとうな嬢ちゃんたち。
俺、ちゃんと合うピアノと
音を見つけてくるよ。さーて!
もう一踏ん張り行ってくるか……!!」
そう言って彼は、スッキリとした
面持ちでストリートピアノ区画から
去っていった。
挑戦の夏。
きっと彼自身が新たに課した
夏休みの自由研究は……
とても有意義なモノになるだろう。
パタンッ。
「ふぅっ、疲れた。」
「ほらよ。水分補給、
怠るんじゃねーぞ千速。」
ちは達も場所を変え、日陰のある
休憩所で休むことにした。
手渡された冷たい缶ジュースを
ごくごくと飲み一服する。
未だ日差しは強く、
どこまでも澄んだ快晴だ。
「なぁ千速。
吹奏楽部やってたのは本当か?」
「本当だよ。」
「そりゃ楽しそうだな。
千速が部活仲間とか、後輩達はもう
やる気満々だったんじゃねーの。」
「…………。」
「おいおい、急に黙り込むなって……
今度は放置プレイか?
勘弁してくれよ。」
「ごめんねニコたん。
あの頃の〝あたし〟は、
ニコたんが思うような
良い先輩じゃあ無かっただよ。」
「「――!?」」
暑さでヤラたのだろうか。
以前の自分だったら、絶対に茶化して
有耶無耶にしてた過去。
でも今なら、2人を信じて
話せる気がする。
もしかしてだけど……
ちは自身、2人と日々を過ごす中で
何かが変わったのかもしれない。
「あの頃は、結果だけに執着してた。
覚えの遅い後輩たちを執拗に叱責して
居残りさせて演奏させて……
ちはを見るみんなの顔は…………
尊敬の眼差しでも希望の眼差しでもない。
純粋な畏怖と恐怖。」
「「…………。」」
「でもそれが結果に繋がると信じ。
歪んだ正義や大義を標榜して
正当化してた。
その結果どうなったか……
言うまでもないよね。」
「千速ちゃん………。」
だけど、2人と共に冒険を重ねて
視野が広がり。
自分を見直す大きなキッカケになった。
今は、自分をやり直せるんだと。
これも含めて『成長の過程』なんだと。
「だからさ、チャンピオンになったら……
ちは、音楽を
もう一度やってみたいんだ。
彼ら彼女らにも歌や音楽を届けて、
もう一度音楽を好きになって欲しいから。」
「へぇ……良い目標じゃねぇか。
そんときゃさ、
ニコたんも誘ってくれよ。」
「僕も!」
「うーん。2人とも保留かな。」
「「酷ぇなオイッ!!」」
「でも、音楽チームを
組むのは確定事項みたいな
モンなんだろ千速?
ユニット名とかは決めてんのか。」
「うーん。そうだね。
今んとこ、1つだけ候補名がある。」
「おいおい、教えてくれよ。」
「―――『FLOW GLOW』」
♦︎♦︎♦︎〜ちはっと★ホロポケ〜♦︎♦︎♦︎
season・1 ―――【完】―――
♦︎♦︎♦︎〜〜〜★〜〜〜♦︎♦︎♦︎
【後書き】
どうも、たかしクランベリーです。
またまた大遅刻。
誠に申し訳ございません。
最近時間通りに行動できないくらい
色々ヤバいんです。
元々不定期更新扱いでやってますけど、
やっぱり水曜15:00〜投稿ルーティンを
維持するのはキツイです。
という訳で、改めてお疲れ様でした。
ちはっと★ホロポケの
season・1はここで一旦終了。
諸事情諸々で完結とします。
実は『思い立ったが吉日、
その日以後は凶日』って名言が
大好き果物なので。
また半年後か1年後辺りに
思い立ったら、
何かしら小説(怪文書)つくって
投稿してるかもしれません。
ちはっと★ホロポケが
好評だったらseason・2も
やるかもです。
また何か浮上したら。
あ、この果物懲りずに
書いてんなぁ程度に
思って見てくれれば幸いです。
ではまたいつかお会いしましょう。
お疲れ様でした。
リポップしたらその時はまた……
よろしくお願いします。