ちはっと★ホロポケ   作:たかしクランベリー   

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3話・パワー系天使と怪しいタイガー

 

誰かが言った。

 

綿飴のような淡く甘い香りを放ち、

綿飴とそっくりなふわふわの触感……

白い体毛が特徴のポケモン。

『ペロッパフ』が居ると。

 

微笑みを浮かべるかぼちゃから

おどろおどろしい首を伸ばす

妖の如しポケモン。

『パンプジン』が居ると。

 

世はポケモン時代。

人々はトレーナーの頂きを目指し、

熾烈な戦いを繰り広げるじだぁ〜い。

 

 

 

――ホロサントス東田高校。校門付近。

 

筋骨隆々で雄々しい体育教師が

竹刀の先を地面につき、

遅刻者を捉えるため鋭い眼光を

100m先まで放っていた。

 

残り30秒を切った厳しい遅刻判定。

リミットが毎秒縮まるにつれ

仁王立ちする彼の威圧は

より強大なモノとなっていた。

 

見張り人体育教師のカウントダウンは、

刻一刻と終わりへ向かっている。

 

「……28、27」

 

スドォォオオオン!!

 

「「「――!?!?」」」

 

刹那、地響きと轟音が校内に木霊する。

大きく舞い上がる砂塵。

遅刻を恐れ走る生徒らが驚愕し、

すぐさまその足を止めた。

 

彼らは思わぬ事態にパニックを起こし

各々声を上げた。

 

「何なの!? 地震!?」

「マジか、こんな時に隕石かよ!」

「もー、入学式早々どーなってんの!」

 

パニクる生徒一同を他所に、

体育教師は冷静に佇む姿勢を崩さず

元凶に声をかけた。

 

「――またお前か。『天音かなた』。

今日は新入生もそれなりに居るんだ。

あまり驚かせるな。」

 

「あっ、すいません武田先生。

いつものノリでつい……。」

「ノリで負傷者が出たらどうする?

ダイナミック登校も程々にしろよ。」

「はーい。」

 

はーい。じゃないわ。

 

一瞬マジで死を覚悟したよちは。

こんなにダイナミックな登校は

後にも先にも味わいたくない。

 

てか、着地直前に軽い加速感覚で

空中蹴ってなかったこの人。 

1人だけ生身でポケモンの領域に

片足突っ込んでないか。

 

何はともあれ、

なんだかんだ無事に間に合った。

 

「ほらな。間に合うって言ったろ?」

「ちょー危なかったですけど!」

 

「まぁ良いじゃないか。間に合ったし。」

「その件はありがとうございます

天音先輩!」

 

見張りの人が〝あまねかなた〟と

呼んでいたので、多分

この呼び方で合ってるだろう。

見張りとの関係性からも、

先輩生徒である可能性が高い。

 

「固いなー。かなた先輩でいいよ。

そういや、おみゃえの名前を

聞いてなかったな。

ついでに名前を聞いても?」

 

「今日から新入生になる

『輪堂・千速』って言います!

改めてよろしくお願いします

かなた先輩!!」

 

かなた先輩は満足そうに頷いた。

 

「うんうん。今年も

いい新人ばかりで先が楽しみだ。

そんじゃ、学生生活存分に楽しみなよ。

千速ちゃん。またなー!」

 

ニッと笑い、彼女は踵を返しながら

校舎へ駆けて行った。

自分もこのまま安堵の余韻に浸かって

本末転倒する訳にはいかない。

 

教室に着くまでが登校。

ちはも足早に校舎へと向かう事にした。

 

幸いな事に、高学年ほど上階層の教室へ

学び場が配分されてるので

入室への手間は幾分早く済んだ。

 

(確か、この教室だっ……!)

 

ガララララッ。

 

おし、間に合った。

 

教室に入ると、書類を整える教師と

ガイダンス待ちの生徒一同が目に入った。

残る席は一つしかないので、

消去法であの席がちはのモノだろう。

 

変に焦りを見せれば

今後クラス内で浮くリスクがある。

ここは平静を装い丁寧に着席しよう。

 

トコトコトコ……スッ。

 

よーし、着席完了。

もうここまで来れば安心。

後は浮きすぎない程度に……

ゆっくりと着実に友達を増やしていこう。

 

ガララララッ。

 

ん、次は誰だ。

座席は埋まってるし、教師かな。

 

「……ご苦労、雨見先生。

後は任せてくれ。」

 

遅れてやってきた教師は

労いの言葉をかけ、

先に居た先生と入れ替わった。

 

おや。この先生見覚えあるぞ。

 

さっき、校門で仁王立ちしていた人……

 

「おうお前ら、野暮用で遅れて悪いな!

もう察しがつくだろうが、今日から

当クラスの担当教師になる

『武田・煉三』だ。よろしくなァ!」

 

何てこった。

あのお淑やかそうな

雨見先生じゃなかったのか。

 

いや、熱血漢教師も別に悪かないけど。

 

……ダメだ。これくらいの小さな

ハプニングで狼狽えてるようじゃ

チャンピオンにはなれない。

 

気をしっかりもって

スクールライフに臨もう。

 

「―――とまぁ、基本的なガイダンスは

ざっとこんなモンだ。

本来なら〝はい解散〟で終わりなんだが

お前らは運がいい。」

 

「……え?」

 

手早く帰れると思ったら、

今度はなにごと?

めちゃくちゃスムーズにガイダンスが

済んだから怪しいとは薄々考えてた。

 

でも、こういうヤな予感は

正直当たってほしくない。

 

「何を言おう。あの特別美術講師、

『儒烏風亭らでん』先生が特別授業を

してくれるそうだぞ。

失礼のないように取り組んでくれ。

俺からは以上だ。先生、どうぞー!」

 

まさかの特別授業。

いくら予定合わせが難しいとはいえ、

なんとか別日にして欲しかったなぁ。

 

静かに戸を開け、

例の講師が教壇へ移動する。

 

綺麗な黒髪に所々混ざるグレーのメッシュ。

狂言幕を彷彿させる

特徴的なゴスロリ衣装を着た人物。

 

(特別講師……か。)

 

中々インパクトある風貌なものの、

衣装負けしない彼女の佇まい……

只者ではない雰囲気が確かにあった。

この機会を逃せば滅多に

会えないのは確実だろう。

 

そう確信するほどに、

彼女の存在感は異彩を放っている。

 

「さぁーて皆さん。

本日はお時間頂きまして

誠に有難う御座います。

これよりお相手致しますはぁ〜っ、

わたくし儒烏風亭らでんで御座います!」

 

「はーいっ! しくよろー!

ってアレ、

挨拶してんのニコたんだけ!?

お前ら挨拶はどうしたァァア!!」

「「「…………」」」

 

ヤバい。

後ろの席の奴完全に危ないヤツだ。

みんな直感で沈黙を

選ぶレベルの要注意人物。

 

「ウチのチキン共がシャイですいません!

後でニコたんがキツく言っとくんで

大目に見てやって下さいっ……!!」

 

同じ新入生なのに、何様だよ後ろのやつ。

そんなあからさまなハムボで

大の大人が許してくれるワケ……

 

「いいたいいいたい。

まだ初日やけん

緊張の最高潮真っ只中故、みんな

上手く言葉が紡げない事もあるばい。」

「ううっ、JFT先生っ……。」

 

(普通に許してるぅぅう!?!?)

 

懐広すぎだろ先生。

あのハムボで許して言われても

ちはだったら間違いなくシバくぞ。

 

「「「…………」」」  

 

待て。そんな事より……。

 

(一体なんの茶番を見せられてるんだ、

ちは達クラスメートは。)

 

あと勝手にニックネームつけられてる

事にノーコメントなのは何故だ。

 

「ではでは、緊張をほぐす

とっておきの一芸をここで

一丁披露しちゃいましょうかな。」

「是非お願いします!」

 

「「「…………」」」

 

「ほいっ、余った時間で何つくろ〜?

ほら舞t」

「ニコたんがぁ〜来たーーっ!」

 

「「――!!」」

 

ホントに何やってんだこの2人。

打ち合わせと違うみたいな感じで

見つめ合うな。

こっちも反応に困ってんだよ。

 

「JFT先生……授業を。」

 

そして秒で正気に戻るのも

ある意味怖いわ。

 

「まぁまぁわかっとーばい。

授業ね授業ね。はい、早速本日の本題

『パブリックドメイン』に入るっちゃん。

この機会に美術の面白さを知って貰えば

らでんとしてはそれで充分やけん。

つまり一発芸はまた今度ってヤツですな!

ガハハ!」

 

何わろてんねん。

もう授業とやらの内容がまともなのか

さえ心配になってくるだよ。

 

「さーてはて、では

本日のパブリックドメインは―――」

 

「…………。」

 

(あれ、案外面白いぞ。)

 

心の内で渦巻いてた心配が

スッと消えてくように、気がつけば

らでん先生の授業に引き込まれていた。

 

何て言うんだろう。

言葉の端々に含まれる声音とか抑揚とか。

本当にアートが好きなんだなって

いうのが伝わってくる。

 

説明のうまさもさることながら、

その楽しさっていうのが

こちら側にも移っていくような

不思議なパワーが彼女にはある。

 

……しかし。

夢のような時間というのは

中々に続かないモノで。

 

ツンツン……。

 

運悪くちはは

空気の読めない奴にロックオンされ、

意識をアートの世界から

現実に引き戻された。

 

授業の最中だというのに

真後ろから

堂々と肩をペンで突いてくるとは、

一体どこの馬鹿なんだろう。

 

あ、さっきらでん先生と絶妙に

息が合わなかった要注意人物か。

 

……となると。

無視なんてして

後々トラブルになるのも面倒だ。

パパッと後ろの奴の会話を切って

気を取り直そう。

 

(うむ……我ながら名案。)

 

パッと振り向くと、

クラスカースト一軍臭が漂う

金髪グラサン女が

ニヤニヤしながら此方を覗き込んでいた。

 

「あー、ついに目が

合っちゃったねぇ

帽子のオモレェ嬢ちゃん。」

 

対面するなり、

彼女は小声で軽くちはを煽る。

もう嫌な予感しかしないが

一応説得を試みよう。

とりあえず小声で応対するか。

 

「アンタ誰だよ。それに何用?

ちは授業に集中してたんだけど?」

「あーしかい?

あーしゃ『虎金妃笑虎』ってんだ。

気軽にニコたんって呼んでくれや。」

 

「で、用事は?」

「いやさ、なんか授業お腹いっぱいだし

2人で校内散歩でもしねぇか。」

「お腹いっぱい?

始まってまだ30分も経ってないだよ?」

 

「ま、細けー事ァ別にいいだろ。

それより今朝の〝ホロッター〟見たか。」

 

※ホロッター・・・この世界の大人気SNS

 

「?」

「この街に現れたらしいぜ。

――〝色違いボルケニオン〟」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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