ちはっと★ホロポケ   作:たかしクランベリー   

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8話・新時代の図鑑!? AIこより図鑑!

 

合格証を入手した当日、夕暮れ。

 

合格祝いにとニコたんが主催で

ホームパーティを開いてくれる事になった。

見た目だけじゃなく、やる事なす事まで

しっかりクラスカースト一軍らしい

行動じゃあないか。

 

ちはとはいい意味で大違いだ。

いつかちはも、誘う側になってみたいな。

 

……と、そんなかんや思いつつ。

 

今現在は待ちの時間。

ニコたんがパーティの準備を

色々と行っている間、

各々が自由行動に

打ち込めるタイミングだった。

 

そんな中、

ひと気のない公園へ訪れ

木製ベンチで独り座り込み黄昏れる。

 

最初の山場を越えて、

何もかもが万々歳……とは行かず。

高く険しい山に登攀すれば、

どこかしら必ず疲れが残る。

 

肉体的なモノだったら、

お兄仕込みの軽いストレッチで

大半はどーにか取れるが……

精神的な疲労となれば話は別。

どうやら、自分が思っている以上に

夢の残存ダメージが大きかったようだ。

 

太ももの上に沙花叉先輩ぬいぐるみを

乗せて抱きかかえて……

人っ子1人いない砂場をぼーっと眺める。

 

道ゆく人が見たら

アナタ何をされている方なの?

と思われるに違いない。

正直言って自分も薄々そう思ってる。

 

「大変だ。千速ちゃんが黄昏れてるぞ!

もしもし天界で学生をしている

天音かなたと申します。

あなたを助けたいという意志がありますので

これから励ましていきます。

それでは肩のほうに

触れさせていただきます。」

 

「何故にツ●フェミ式救命処置構文っ!?

もっとマシな声かけ無かったんですか

かなた先輩……!!」

 

「どうだ? 少しは気が楽になったろ。」

 

スッ。

 

かなた先輩が朗らかな顔で

ちはの真隣に座り込んだ。

可笑しいな。体感、さっきまで

背後2メートルくらいの距離で

構文詠唱してた筈なんだけど…………

 

「……なりましたよ。44・5%くらい。」

「絶妙な数字だな。何をしても

不器用で、何かとミスして

ばっかだったりしないか。」

 

「それでも私のことを

見ててくれるんでしょ?」

「へっ、生意気な後輩だぜ全くよォ……」

 

嫌味なくそう呟くかなた先輩は、

懐から沙花叉先輩のぬいぐるみを

出してちはと同じように

抱きかかえた。

 

きっと、かなた先輩にとっても

大切な存在だったのだろう。

 

「かなた先輩……」

「おみゃーが気に病む必要はないよ。

僕がやりたくて勝手にやってる事だ。」

 

「あのぉ、1つ訊いていいですか?」

「何だ?」

「かなた先輩にとって沙花叉先輩は

どんな人(シャチ?)だったんですか。」

 

「あー、アイツか。」

 

かなた先輩は夕空を仰ぎ、

懐かしむように答えた。

 

「そうだな。アイツは僕自慢のでっけぇ

胸を妬んでか、隙あらば俎板だの何だの

言って自尊心を満たしてた……

悲しいヤツだよ。」

 

でっけぇ……胸?

一体何を話しているんだこの先輩は。

もし本当なのだとしたら

着痩せってレベル超えてるぞ。

 

「しかもさ。建設会社立ち上げて

いざ就業! って矢先……

寝てばっかだし、起きて働いてると

思いやあっちこっち

行ってスロ打ってたり……

とにかく面倒で生意気、

手のかかる子って印象だ。」

 

「…………。」

 

「けれど、僕やあずちゃんには

思いつかないような良案を次々と

出してくれるんだ。

まァ、なんだかんだで

やるときゃやる奴…………

ざっくり言うとそんな感じかな。」

 

「……そうなんですね。

また機会が

あったら色々聞かせてください。」

「おいおい、千速おみゃえさぁ……

それじゃフェアじゃあねェだろ。」

「――!!」

 

「僕にも色々話してくれよ。

千速ちゃんの他愛無い思い出話をさ。」

 

さりげなく

ちはに向けるその笑顔は

天使と形容するに相応しい

優しく暖かな笑みだった。

 

不思議と心がその温もりを

浴びて晴れやかになっていく、

そんなタイミングで。

 

ピリリリリィ……!!

 

携帯が震えだし着信音を鳴らす。

 

(ちょっと待たせ過ぎたか。)

 

急ぎ携帯を出し応答する。

 

「もしもしニコたん、大丈夫だよ。

すぐ行k……」

 

『おまえの苦労をずっと見てたぞ

本当によく頑張ったな?

遂に我慢が報われ莫大な富を得る。

この電話を飛ばしてしまえば

これまでの苦労は全て水の泡だ。』

 

「…………」

 

何やってんのニコたん。

 

『世界中がおまえを否定しても

ニコだけはおまえを認めてやる。

散々苦しんだのだもう楽になれ……

富を望んでいるならやることがある。

今伝えた言葉を今日中に伝え返すのだ。

やり方は簡単だ、誰にでもできる

これがダメならもう人生を諦めろ。

虎金妃笑虎に出会ったら、

〝好きだ。結婚しよう〟と伝えるだけ。』

 

「…………。」

 

『これで幸福の清算がはじまる。

決して無理強いはしない、

やるもやらぬもおまえ次第だ。

だがやらないと

我慢の人生に逆戻りしてしまう。

必ずしておくのだ。さすれば

富の普及により神からご褒美を得るだろう。

では締め括りに虎の金運を贈る。

今すぐ虎金妃笑虎に 

愛の言葉を2回伝えるのだ。

3……2……1、今だ! 伝えろ……!!』

 

ブチっ。

 

まさか、かなた先輩を越える茶番が

やってくるとは思わなかった。

こういうのは勇気の切断に限る。

 

「どったの千速ちゃん。

電話聞いてる間ずっとポカンとしてたよ?」

「んー、ただの虎違いでした。」

 

「へー、虎が電話かけてくるなんて

物騒な世の中になったモンだなー。」

「そんじゃあ行きますか、かなた先輩!」

「おうよ……!」

 

おそらく、ニコたんも虎らしく

ちはから暗い雰囲気を

嗅ぎ取っていたのだろう。

 

そうだ。暗い気を紛らわすために

一芝居打ってくれたに違いない。

 

けれど案外、心の鎮静剤として

作用してることに

自分自身驚きを隠せない。

 

(凄いだよ……2人とも。)

 

もう、

エンジン冷めちゃった。

なんていう弱音はどこかへ飛んだ。

 

冷え切った千速の

心のエンジンタンクに、

2人の温かいガソリンが

トクトクと給油されていく。

 

そうして再び、ちはの

エンジンは熱を灯した。

……案の定、その後ニコたんの家で

開いたパーティは大盛り上がり。

 

炭酸ジュースを飲んでは

歌って、踊って叫んで舞って……

身体は疲れ切ったのに

心はとっても軽くなっていた。

 

 

―――翌日。『KONKOYO-Labo』

 

合格証の筒に入っていた別紙に、

ここへ合格証持参の元

足を運ぶ旨が伝えられていた。

 

第二フロア合格者の

指定時刻は14:00〜14:30の間。

昼過ぎという事で

大分時間の猶予があった。

 

そんな事もあってか。

偶然暇潰しがてら寄った

近場のファミレスで

いつもの2人と顔合わせした。

 

変に距離を取るのも不自然だと思い、

一緒にランチタイムを交わし

例のラボへと向かった。

 

デカデカと

分かりやすい看板があるので

目的地へは迷うことなく

あっという間に辿り着いた。

 

外観は白を基調とした色合いで、

ピンクの蛍光灯が横縞模様を

描くように埋め込まれてる。

はたから見ると、かなり独特で面白い

デザインの建物だ。

 

内心、どんな研究者が

居るのか期待が高まる。

ドキドキとしながらも、

ちはが率先して進み

インターホンを押し込んだ。

 

ピンポーン!!

 

インターホンに付いたカメラがギョロリと

動き出し一行を画角に捉える。

数秒して、インターホンマイクから

返事が返ってきた。

 

『うんうん。

あの時と同じ3人で間違いないね。

ほいよー、おいでーおいでー♪』

 

ピピッ。 ガガー。

 

頑丈そうな鉄扉が右にスライドし、

中に入れるようになる。

許可はもらっているので

躊躇う必要はない。

 

みんなで一緒に足を進め、ラボ内へと入る。

数歩歩いた辺りで何処かの部屋の

扉が開き、白衣の研究者が現れた。

 

そして

ちはたちの方へと歩み寄っていき、

挨拶してくる。

 

「こんこよー!

僕がこのラボの研究所長を務めてる

『博衣こより』だよー♪

3人とも、改めて合格おめでとー!」

 

博衣こより……

いや、博衣博士というべきか。

研究所長自らがこちらへ出向くとは、

中々のサプライズじゃあないか。

 

下手な態度を取れば

即刻合格証の効力を失うだろう。

 

(油断ならないだよ……!)

 

「もぉーみんなぁ、

そこまで緊張しないでいいよぉ。

ここで立ち話もなんだしさ、

こよの第二研究室で

ゆっくりしてってよ。」

 

言って踵を返し、博士は進み始めた。

ちはたちも大人しくついて行き、

誘われた場所へ移動する。

 

研究室というだけあって、

理科室そっくりの作りだった。

蛇口とシンクを挟んだ黒いテーブルが

四方に設置されている。

 

お馴染みの間取りには

どこか親近感も湧いていた。

 

「こよは前の方で話すからぁ〜、

みんなはテキトーな席に座ってね♪」

 

適当な席と言っても離れ過ぎると

失礼なので

前側の座席にそれぞれ座った。

 

「いいねいいねぇ。

これでようやく話せるよ。」

 

満足そうに頷き、博士は

黒板にチョークを走らせた。

 

「さぁみんなぁ!

これからポケモントレーナーとして

旅するにあたってぇ、

とーっても必要なモノはなーんだ?」

 

「はいはいはいはーいっ!」

 

かなた先輩が意気揚々と挙手した。

 

「かなたちゃん、回答どーぞ!」

「体力!」

「ぶっぷー! はい次、

そこのトゲトゲ帽子ちゃん!」

 

ニコたんが次かと思いきや

まさかのちはか。

こればかりは仕方がない。

 

「……ポケモン図鑑、でしょうか。」

「正解正解正かーーいっ♪」

 

「おっ、じゃああーしら

今から〝スマホロトム〟が貰えるのか!?」

 

ニコたんが目をキラキラさせ

問いかける。

しかし、博士は

その質問が気に入らなかったようだ。

 

「っ……!!」

 

突如、緊張が走る。

 

「トレーナーさんって

いつもそうですよね……!

ロトムたちのこと

何だと思ってるんですか!?」

 

「ち、違うんだ博士ェ!

ガラル地方やパルデア地方では

一般的に出回ってるから、

ニコたん的に推測しただけで……

――悪気はねェんだ。信じてくれ!!」

 

「そっか。じゃあ許そっかな。

ほらほら、みんなスマホ開いてごらん?」

 

言われた通りスマホを開く。

すると。

 

『こんこよ〜♪』

 

「「「どわーw」」」

 

ちはたちはあまりの不意打ちに

思わず声を上げ

一斉に椅子から転げ落ちた。

 

なんとスマホの画面に現れたのは

憑依したロトムなどではなく、

『博衣こより』そのものだったのだ。

 

「おい説明しろ博士ェ!

何でニコたんのスマホに博士が

入り込んでんだよォ……!!」

 

ご尤もな言い分だ。

正直意味がわからない。

 

「ふっふっふ……

それこそがロトムに代わる新時代の

ポケモン図鑑システム。

――『AIこより図鑑』だぁ!!」

 

 

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