大学祭で出会った美人が官能小説家だった   作:古野ジョン

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第2話 野外○○○○の取材

「青〇の取材に行くわよ!!」

「……はっ!?」

 

 誰かこの女の言っていることを説明してくれないか。青○の取材? どこに? どうやって? というか、なんで?

 

「青○って……」

「青◯は青◯よ! 野外で青く交わるあの青◯! さっきも説明したじゃない!」

「分かってるけどその呼び名はやめてくれ! お前の顔でそれを言うな!」

「私の顔がどうかしたのよ?」

「少しは自覚しろ! というか取材って何なんだよ!?」

 

 水島を必死に問い詰める。取材って言ったって、サラリーマンだの学生だのを取材するのとはわけが違うんだぞ。まさか盛っているカップルに突撃して「How are you?」とでも聞くつもりなんだろうか?

 

「取材は取材よ! いい、外で交わってるカップルを探し出して観察するのよ! ナイスアイディアだと思わない?」

「夏休みの自由研究じゃねえんだぞ! カブトムシの観察でもする気かお前は!?」

「あら、どっちも夜行性だから同じじゃない」

「そうだけどそうじゃねえよ!」

 

 妙に気が回った返答をするあたり、仮にもコイツは文字書きなんだなと納得してしまう。だがこの状況はどう考えてもおかしいだろう。

 

「だいたいだな、あお……野外○○○○をしているカップルなんて見つかるわけないだろ」

「そうかしら? 何事も探せば出てくるものよ」

「そんなこと言ったって――」

「馬鹿ね。この時代、インターネットは万能ツールなんだから!」

 

 水島はポケットからスマホを取り出し、地図アプリの表示された画面を突き付けてきた。既に街のいくつかのポイントにピンが打ってある。……なんだこれ。

 

「このピンは?」

「察しが悪いわねえ。ここが『有名スポット』なんだから」

「ゆ、有名スポット?」

「近くに家がない、監視カメラに死角あり、深夜に人通りが少ない。条件が揃えばどこだってラブホテルだわ!」

「ぶふぉっ!?」

 

 再びパワーワードが炸裂して、思わず吹き出してしまう。どこだってラブホテルなんて嫌すぎるにもほどがある。そんなものが宇宙に遍く存在していてはたまらん。

 

「そもそもさあ、リストアップしている時点でもともと取材する気はあったんじゃないか。なんで今更なんだよ?」

「律って馬鹿なの? こんなとこ、私一人で行くわけないじゃない」

「はあ?」

「私みたいに可憐な女子大生が真夜中の青○スポットなんて行ったらどうなると思うのよ? きっと服なんて全部剥ぎ取られて、穴という穴を――」

「わー! 分かった分かった分かったから!」

「せっかくあんたという新人を手に入れたんだから、この機を逃す理由はないわ!」

 

 とんでもないことを考える割に、変なところは常識的なんだよな。詳しくは分からないけど、育ちが良さそうな雰囲気もあるし。いったい何者なんだろうか。

 

 水島は再びキラキラと目を輝かせ、楽し気にスマホの画面を操作していた。やっぱり小説のことになるとこれだ。自分の思いついたことは試さないと気が済まない性分なんだろう。そのアグレッシブな性格が羨ましい、と思うことも――ないわけではない。

 

「ここがいいかしら? ちょっと遠いわね。でもこっちは……」

 

 またぶつぶつと一人で呟いている。ふと窓の外を見ると、すっかり暗くなっていた。だんだん日が沈むのが早くなってきたな。今日も遅くまで講義だったし、早く帰って――

 

「ねえ律、今日の予定は?」

「え? 特にないけど……」

 

 と、答えたところで「しまった」と思った。どうして気が付かなかったのだろう。この女は何でもすぐに試さないと気が済まない。……嫌な予感がする。

 

「じゃあ――決まりね! ほらほら、さっさと出発するわよ!」

「今から行くのか!?」

「当たり前じゃないの! どうせ夜なんだし、今日もいるに決まっているわ!」

「おいおい、勘弁してくれよ……」

「何言ってんのよ! こんな時間に帰るサークルがどこにあるのよ!? 自分を変えたいんなら少しはしゃんとしなさい!」

「うっ……」

 

 その言葉を言われると弱い。水島が俺をサークルに招き入れたときの誘い文句。「無為に時間を過ごすなら、私とエロ小説を書きなさい」という言葉だけで、俺はこのサークルに加入してしまったのだ。

 

「ほら、行くわよ! 寒いんだからちゃんと上着も着なさいよね!」

「ちょっ、荷物は持って行かないのか?」

「当ったり前でしょ! 取材が終わったら帰って執筆するんだから!」

「えぇ……」

 

 今日はまともな時間に帰れそうにないな、とため息をつく。まあ、ルンルンの会長様が凌辱されても困るからな。自分を納得させつつ、俺は部室を出て水島の代わりに鍵をかけたのだった。

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