最強と最凶の生き残りたちに鍛えられた白兎がオラリオに来るのは間違っているだろうか   作:有頂天皇帝

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まえがき
この後のショートストーリーで語られてますがアンタレスくんは最強と最凶たちによってとっくに殺されてます。アルテミス様、これで念願のオリオンといちゃラブ生活出来る可能性が生まれたよ!その兎くんはモテモテな上に怖い義母やお姉さんたちがいるけどね!


第六話 蠢く闇

ベル修行編その3 アンタレス3分クッキング(サポーターベルくん(9歳)を添えて)

 

クラウス「ブレングリード流血闘術111式 十字型殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)!!」

 

スティーブン「エスメラルダ式血凍道絶対零度の剣(エスパーダデルセロアブソルート)!!」

 

サンラク「致命の三日月(クレセント・ヴォーパル)!!」

 

ザルド「レーア・アムブロシア!!」

 

シュウ「汚物は消毒クマ~」

 

ウィズ「カースド・クリスタルプリズン!!」

 

アリアン「業火よ、全てを呑み込み、全てを焼き屠れ!!」

 

アルフィア「ジェノス・アンジェラス」

 

ベル「す、スゴい・・・!!(キラキラ)」

 

アルテミス・アルテミスファミリア((((((((私たち、いらなくないかコレ?))))))))

 

ゼウス・ヘラファミリアによる経験値稼ぎとして一方的に蹂躙されるアンタレスとその配下のモンスターたち。義母たちの戦う姿を見て目を輝かせるベルに対してドン引きするアルテミスとアルテミスファミリアの団員たちの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

ベルがドレイクホースと戦う数時間前、アトラスファミリアのホーム・『鬼神の館』にて。そこは無骨なつくりをしたありふれた西洋風の館であるが隣接する巨大な訓練場では日夜レベルを問わずアトラスファミリアの団員や傘下のファミリアの団員たちによる実戦形式の模擬戦が行われており、かなりの団員たちが経験値を稼ぎステータスを伸ばすことに成功していた。フレイヤファミリアの《洗礼》と多少似ているが、あちらがひとつのファミリアで全て行っているのに対しアトラスファミリアでは複数のファミリアの協力によって成り立っていることで治癒師たちが比較的ホワイトな環境で働けているという利点がある。これにはフレイヤファミリアのヘイズ・ベルベットたち治癒士も嫉妬するし団長であるオッタルへの愚痴も増えるのだった。

 

そんなアトラスファミリアの大広間にて主神であるアトラスとアトラスファミリアの団長、レベル7のヒューマン《戦狂公子》タルタリヤを始めとしたアトラスファミリアの幹部と来客であるヘスティアファミリアの団長フィルヴィスと副団長である銀時が揃っていた。

 

「よく来てくれたなヘスティアの眷属()たちよ」

 

「いえ、滅相もありません。その、本日は如何様なご用で・・・?」

 

フィルヴィスは恐る恐るアトラスに今回自分と銀時を読んだ理由を尋ねる。アトラスにとってヘスティアは数少ない頭の上がらない女神であり、ゼウスとヘラのファミリアが健在だった頃は2週間に1度のペースでどちらかのファミリアに戦争遊戯(ウォーゲーム)をしかけてはヘスティアファミリアとその同盟ファミリアであるミアハファミリアを始めとした医療系ファミリアの世話になったり、団員たちの救助や訓練の手助け、また零細ファミリアだった頃に働き口の紹介やゼウスとヘラに対しての口利きなどいろんな面で世話になっていた。

 

故に7年前の闇派閥との大抗争で起こってしまったヘスティアファミリアの団員たちが大量に死亡したことによってヘスティアの精神が壊れかけた際はヘスティアの精神の安定をヘファイストスやアストレア、アルテミスたちに任せてアトラスファミリアは生き残りの闇派閥の殲滅及び生き残ったヘスティアファミリアメンバー及び関係者たちの護衛に全力を注いだ。この件をきっかけにアトラスファミリアの冒険者たちの多くがランクアップを果たし、それらの行動の結果が暗黒期終焉のきっかけのひとつとなったのだ。この一件からヘスティアファミリアに手を出せばアトラスファミリアが割り込んでくると言う事実が広まったことで大幅に戦力を失ったヘスティアファミリアに対して何かしでかそうとする連中はいなくなったのだった。

 

「────お前たちはこのような魔石を持つモンスターと出会ったことはあるか?」

 

語るか少し悩む素振りを見せていたが、話した方がいいと判断したアトラスはフィルヴィスと銀時に対してタルタリヤに事前に運ばせていたとある代物を用意させ、ふたりの見える位置にそれを置いた。

 

「これは・・・」

 

フィルヴィスが目にしたのは魔石であった。しかしそれは普通の魔石の色である紫紺色とは異なり禍々しさを感じさせる中心が極彩色のものであった。サポーターとしてだが過去に下層や深層に行った時にも見たことの無い色をした魔石を目にしたフィルヴィスと銀時は目を見開いてしまい、その様子からこの魔石について何も知らないことがわかったアトラスはタルタリヤに視線を向けるとタルタリヤがこの極彩色の魔石についての説明をはじめた。

 

「これはつい最近ダンジョンの深層で発見した新種のモンスターから取れた魔石なんだが、そのモンスターは黄緑色の巨大な芋虫型で腐食液を吐き出す攻撃を行う。厄介なところが武器による攻撃は体内の腐食液によって武器破壊を起すし、たとえ撃破しても力尽きる瞬間、その体躯を破裂させ腐食液を撒き散らす非常に厄介なモンスターだ」

 

タルタリヤの説明を聞いてもゼウス・ヘラファミリアと遠征を同行した際にも見たことも聞いたこともないモンスターの特徴であるためにフィルヴィスと銀時は眉を顰めるが、それを気にせずタルタリヤは話を続ける。

 

「今のところこのモンスターを知っているのはわかる限りだと俺たちだけだ。他のファミリアやギルドとはまだ情報を共有していない」

 

「何故だ?この情報は共有しておいた方がいざという時に────」

 

「───この一件に神やギルドが関わっていないと断言できないからだ」

 

フィルヴィスはこの極彩色の魔石を含めた情報を他の勢力と共有しないことに疑問を抱くが、アトラスとしては信頼できない連中に少しでも情報を流すのは危険だと判断していると理由を告げる。地上にいる神の殆どが娯楽を求めて降りてきたためにこの不可思議なモンスターも神々の娯楽のために生み出された可能性は微量ながらもある。そしてギルド──正確にはその管理をする神ウラノス───はダンジョンや世界救世のために動いてはいるものの以前から隠し事をしていることを知っているために今回の件も何らかの形で関わっている可能性も十分ある。それらのことも含めて色々と考えた結果、アトラスは絶対に信じられるものにのみこの情報を共有することを決めそういったことと関わりがあるはずがないヘスティアファミリアに話すことを決めた。

 

「んで?アンタらはそんな厄介事を俺たちに教えて何がしたいんだ」

 

銀時はアトラスたちの話がかなりの厄介事だと分かりはしたが、それを話して自分たちに何をさせたいのかが見えてこなかった。アトラスはそれに対して語るべきか少し悩む素振りを見せたが、ヘスティアに対する多すに彼女が悲しむ姿を見たくないなどの理由から話すことにした。

 

「今日オラリオではガネーシャファミリアとギルドによる催しである《怪物祭》が行われている。神も人間も含めたこのオラリオに滞在する誰もが注目する今日この日に何らかの騒動が起きるのではないかと俺は考えている。お前たちには俺の眷属たちとともに何が起こっても対処できるように見回りをして欲しい。無論何が起こっても起こらなくても報酬は払おう」

 

アトラスはそうフィルヴィスと銀時の2人に依頼を出した。オラリオ2位の強豪ファミリアであるアトラスファミリアには団長であるタルタリヤ含めレベル7が3人、レベル6が7人、レベル5が10人と多くの第一級冒険者を抱えレベル4以下もかなりの数揃っている。(それでもかつての最強であるゼウスとヘラには為す術もなく蹂躙されたのだから彼らの強さがよくわかるものだ)

 

「承知致しました神アトラス。我が女神ヘスティアの名に誓いその依頼を受けさせていただきます」

 

フィルヴィスは片膝をつきアトラスに頭を下げるとその依頼を受けることを告げた。銀時もフィルヴィスと同意なのかコクリと頷いた。

 

 

─────楽しい祭りが行われている中、この平和なオラリオに潜む悪意に気づいたものは誰にも気づかれないように行動を始めようとした。しかし神が考えるよりもオラリオに潜む悪意たちは行動を起こすことを彼らは思い知ることとなるのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ベルはガネーシャファミリア主催のイベントにてドレイクホース────ベルによってコクヨウと名付けたら個体───をテイムした後、ベルは治療室にて待機していたアミッドに治療及び軽い説教をされてからコクヨウの様子を見に行こうとしたのだが、アーディからテイムしたコクヨウをこの先ベルが世話をする場合色々と手続きを行わせればならないのとコクヨウを購入しようとしたとある他国のお偉いさんとの交渉など色々とやらなければならない事があるためしばらくコクヨウの扱いはガネーシャファミリア預かりになるため今日のところは会えないと申し訳なさそうに言われてしまった。

 

本来ならこの後はゆんゆんとデートの続きが予定されていたのだが、ヘスティアの友神であるタケミカヅチのバイト先のジャガ丸くんの屋台で火災事故が発生したらしくその応援にカズマたちと一緒に向かったために闘技場から居なくなっていた。これによりベルは1人になってしまったのでどうするか悩んでいると後ろから声をかけられた。

 

「久しいのベル坊。先程は見事な戦いであったぞ」

 

「椿さん」

 

ベルに声をかけてきたのはヘファイストスファミリアの団長であるレベル5の最上級鍛冶師(マスター・スミス)、椿・コルブランド。互いの主神であるヘスティアとヘファイストスが神友同士なのとヘスティアファミリアの団員たちの武器は基本ヘファイストスファミリアの鍛冶師に打ってもらっているのもあり交流が深い。ベルが入団した翌日、フィルヴィスと共に新人冒険者用の装備を整える際にベルと椿は出会い、ベルは椿がオラリオ一の鍛冶師だとフィルヴィスから聞くとオラリオに来る前までの間に義母たちとの修行で入手したモンスターの素材や特殊な鉱石、そして義母や叔父を始めとしたゼウス・ヘラファミリアの生き残りたちのサポーターとして同行した際に入手した特殊な素材などを提供して武器を作れないかと願い出た。

 

椿とヘファイストスはベルがゼウス・ヘラファミリアのサポーターとして同行した際に入手したという希少な素材の山を前にしてそれはもう激しく興奮したのは彼女らだけの秘密である。今のベルに古代のモンスターの素材を用いたその武器は相応しくないと思いいつかそれを扱うに値する実力を手にしたら受け取る約束をとってはいるが、ヘファイストスと椿はヘスティアからベルの事情など色々と聞いているためにレベル1だろうが問題なく使えるだろという言葉を無理やり飲み込んでベルの願いを受けることにした。

 

「お主に頼まれた武器だがまだ時間がかかる。しかし代わりに使わなかった素材で作った武器を渡そうと思ってな。先程の戦いで壊れた代わりにでも使うがいい」

 

椿はそう言いながら背中に背負っていた武器をベルに手渡した。それはベルが修行中に討伐したドラゴン種のモンスターである火竜《リオレウス》の素材をメインに椿が打った大剣であるそれは地上の素材を用いたものであるために下層にいる個体の素材を用いた武器に比べればその性能は劣るがそれでもその性能は地上のモンスターの素材で作ったとは思えないほど高性能であると椿は自信を持って答えられる。

 

「銘は《赤竜翼剣(レッドウイング)》。かつてゼウスファミリアの鍛冶師が打った《煌竜剣》には素材や手前自身の腕など含めて届かぬがかなりの出来だと自負しておる」

 

椿は少し悔しそうに赤竜翼剣を見ながらそう呟いてからベルに渡す。かつてのオラリオ最強であったゼウスファミリアには椿の主神であるヘファイストスですら認めた最上級鍛冶師がいた。ヒューマンであるその男は鍛冶師としてだけでなく戦闘面でもかなりの実力を持っておりそのレベルはゼウスファミリアの中でも上澄みであるレベル7に到達していたらしい。

 

今の椿の目標としてはそんな彼の鍛え上げた武器たちを超えるものをいつか自身の手で造りあげることであった。

 

「つ、椿さん・・・こんな凄いもの貰っても僕お金が・・・」

 

「ん?気にするな!手前が勝手に打っただけだからな!!」

 

ベルは今の自分の実力には不釣り合いすぎる強力な武器を前に気後れしたのと単純に新人冒険者である自分では絶対に払えない高価な代物であると理解してしまい顔を青ざめるが、椿としてはベルから貰った素材や鉱石たちで十分採算は取れてるから金銭は問題なかったりする。

 

「そんなに気にするなら前みたいに抱かせてくれ」

 

『『『ブッフゥ!?』』』

 

椿が何の気なしに放った言葉を聞いたベルと椿の会話を盗み聞いていた周囲の人間は思わず吹き出してしまった。男の影が微塵もないあの単眼の巨師(キュクプロス)が年端もいかない少年を抱いているという事実に男性はあの椿の豊満な褐色ボディを味わった経験があるであろう兎の少年に嫉妬し、女性はいくら払えばあの可愛らしい兎を抱けるのだろうかと真剣に考え、神々はこれは面白い展開になるゾウ!!と娯楽に飢えた目でベルと椿を遠くから見守っていると地面がカタカタと揺れ始めた。

 

「ん?」

 

「これは────」

 

誰もが地面が揺れたことに気づいていない中、第一級冒険者である椿と第一級冒険者の中でも上澄み中の中であるアルフィアやザルドたちに鍛えられたベルはソレの(・・・)気配に気が付き2人はそれぞれの獲物である武器に手を伸ばす。

 

『オオオオオオオオオオ!!』

 

─────そしてオラリオの各地にて見たこともないような異様な姿をしたモンスターたちの咆哮が響いた。これにより7年前にオラリオを絶望で満たした厄災たちが再びオラリオにはびころうとしていることを彼らは知ることになった。

 

 

 

「あぁ゛?誰だぁ、この調子に乗ってるやつぁ・・・」

 

隻眼の獅子人(ライカンスロープ)が苛らついた表情を浮かべながら壁に立てかけていた愛用の無骨な大剣を手に取って歩き出し

 

「────せっかく祭りを楽しんでたってのにっ!!どこのどいつよ!!」

 

とあるヒューマンの受付嬢が怒りを顕にしながらかつて冒険者として使用していた愛用の装備と深層のモンスターの素材で鍛え上げた戦鎚を片手で掴みあげ、祭りを台無しにしようとする諸悪の根源たちの元へと向かい、

 

「キヒッ!」

 

鮮血を思わせる深紅の長い髪から除く金の双眸で暴れ回るモンスターを睨みながらエルフの女性は同じような深紅の双剣を両手に持ちながら戦場を求めるかのように歩み、

 

「・・・・・・」

 

寡黙な小人族の老人は身の丈以上あるハルバードを杖の代わりにしながらもその鋭い眼光は暴れ回る未知のモンスターを睨み、

 

「ゴミ共がァっ・・・!!せっかく人が気持ちよく酒を飲んでいたってのによォ・・・!!」

 

重鎧にタワーシールドとバトルアックスを壊さんばかりに強く握るドワーフは久しぶりの休日で浴びるように酒を飲んで楽しんでいたところを邪魔されたことに怒り鬱憤を晴らすべく近くの騒動が起こっている場所へと向かう。

 

 

─────かつての英雄が、今も尚成長している英雄が、そして新たな芽吹きを見せようとする英雄が、このオラリオにいる強者たちがオラリオに闇を撒き散らそうとする連中の思惑を砕くかのように暴れるのだった。その中でとある白兎が飛躍するかのごとく活躍することを、この時全知全能である神々ですら予見することができなかったのだった。

 

 

 

 

「ギシャアアアア!!」

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

市民や神達が逃げられる時間を稼ぐべく正体不明の怪物の前に飛び出たベルと椿はレベル5の椿ですら見たことの無いモンスターであるが2人は全く臆せず果敢に攻めていた。

 

地面を砕きながら現れた恐ろしいほどの硬度を持つ蛇にも似た怪物が鞭のようにしならせた蔦で周囲の人へ襲いかかろうとしたところをベルは椿から受け取った赤竜翼剣で防ぎ、返す刃で迫る蔦を焼き切る。リオレウスの素材を中心に打たれた赤竜翼剣には炎の属性が宿っており斬った相手に炎属性のダメージを与えることが可能であり、怪物を相手にベルの技量もあって有利に戦えていた。

 

「むぅ・・・手前も初めて見るモンスターだがこれもガネーシャファミリアがテイムしたモンスターか?」

 

椿は始めて見る怪物を前にしながらも余裕の表情を浮かべながら腰にさしていた刀で迫る続る蔦を切り裂きながらもその目は決して油断せず怪物の行動を一瞬たりとも見逃すまいとしていた。

 

「キシャアァァァァァァ!!」

 

「なっ!?」

 

「蛇ではなく花であったか・・・!」

 

ベルと椿の妨害によって思うように戦えない怪物は苛立ったかのように蛇の頭部を開かせ、巨大な花を咲かせた。毒々しい巨大な花弁の中心には大きな口がありその鋭い歯は獲物に飢えているのか涎を垂らしてベルと椿を睨む。────後にこのモンスターの名が食人花(ヴィオラス)と呼ばれる存在だと知ることになる。

 

「椿さん。一撃で倒しますので時間を稼いでもらってもいいですか?」

 

「うむ承った」

 

ベルは目の前の食人花を早々に倒すべくスキルと魔法を使用するための時間を稼ぐことを椿に頼むと椿は快く了承し食人花に向かって走り出す。

 

「─────『夜空を覆う星々よ、我が剣に宿り、その輝きを示せ。静寂なる銀河に瞬く灯火よ、希望の導となりて我が敵を穿て』」

 

ベルが詠唱を唱えるのに合わせて赤竜翼剣の刀身は白く輝き始め、ゴォーン!ゴォーン!と大鐘楼の鐘の音が鳴り響く。

 

────ベルが唱えている魔法はかつての最強・ゼウスファミリアの団員の1人、レベル8ハイエルフ《星王》の長文詠唱魔法。本来ならば大量の魔力を用いて剣を生み出してから放たれる一撃であるが、ベル自身の魔力量の少なさからその手に握る赤竜翼剣を媒介にしてようやく発動ができた。

 

そしてもうひとつベルが発動させたのはベル自身のスキルである《大英雄願望(ヘラクレイノス)》。その効果の一つを発動させ、畜力時間(チャージ)に比例して攻撃行動(アタックアクション)の一撃を増大させる。発動条件(トリガー)は英雄を想い浮かべること。

 

ベルが想い浮かべる英雄は《星王》と呼ばれるベルを鍛えてくれた1人である緑髪のハイエルフの男性。本人は魔法の才は他のエルフたちに劣ると自虐していたが剣の腕はオラリオでも五指に入るほど素晴らしいものだった。エルフらしからぬがゼウスの眷属らしい三大欲求に忠実なことからエルフ以外の女性から容赦なく折檻された姿をベルは何度も見た。

 

でもそれ以上にベルが彼に心奪われたのはその戦う姿だった。神速とも呼べる圧倒的な速度で振るわれる剣は上級冒険者ですら見切れぬほどのものであり、そのあまりの速さに敵は斬られたことすら気づかないこともあった。その上敵と斬り結びながら同時に魔法を行使でき、その姿は夜空にまう星のように美しくそして天に散らばる星々のように輝いていたと幼い頃のベルはよく本人に語った。

 

「── 遥かなる古(いにしえ)の記憶より継がれし、天の理を剣に宿し、この身、この魂、この一閃にて、運命を切り開く」

 

そしてベルの長文詠唱があと少しで完了するのに合わせて《大英雄願望》の一分のチャージも終えようとしていた。途中から食人花が魔力を溜めているベルに狙いを定めようとしたが椿の妨害によってその蔦がベルに届くことはなかった。

 

「我が刃は星を裂く閃光、絶望を払う彗星の一撃!」

 

椿はベルの魔法が完成したのとほぼ同時に食人花から距離をとる。椿が離れると食人花は魔力を溜めているベルに襲いかかろうとするがそれよりも先にベルの魔法が放たれる。

 

 

「《星閃剣・創輝ノ断光(アステリア・エテルネア)》!!」

 

ベルが白く光り輝く赤竜翼剣を勢いよく振り下ろすと星の如く煌めく飛龍の形をした光の衝撃波が放たれる。食人花は関係ないと言わんばかりに衝撃波を真正面から突き破ろうとしたが、食人花は体内の魔石ごと飛龍に容易く食い破られその身体を灰へと変えた。

 

「うむ。中々強力な一撃であったな」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

椿はスキルの効果も合わせてとはいえあれほどの巨体を誇る食人花を一撃で消し去ったベルの使用した魔法に素直に驚きベルを褒めるが、ベルは大量の魔力消費とスキル使用による反動で疲労困憊となってしまったために荒い息を吐きながらそう返すことしかできなかった。

 

「しかしあのモンスターはなんだったんだ?明らかに化物祭に出すモンスターとしてはレベルが高すぎたが・・・」

 

椿は一級冒険者である自分でも相手取るのに苦戦を強いられたモンスターの死骸の灰に目を向けながらそう呟く。椿は冒険者の勘としてなにかあると読むがそれがなんなのかは分からず首を傾げるが、そんな暇は無いと言わんばかりに市民の悲鳴が聞こえてきた。

 

「ぬぅ・・・ここ以外にもあのモンスターが暴れているのか?ベル坊よお主は────」

 

椿は武器を構え直して別の場所で暴れているモンスターを倒しに行く前に今の戦いで疲れ果てたであろうベルに安全な場所に行くよう伝えようとしたが、椿が振り向いた先にはベルは居なくなっていた。

 

「はぁ・・・やはりこうなったか」

 

椿は頭をかきながら思わずそう言ってしまう。ベルという少年とは短い付き合いではあるが英雄という存在になるために日々努力している彼が今この事態を見過ごせるわけが無い。回復薬(ポーション)を使って無理やり回復して体を動かして悲鳴の聞こえた方へと向かったのだろうと簡単に想像がついた。

 

「仕方ない・・・ベル坊を探しつつ手前もモンスター討伐に勤しむとするか」

 

椿はベルの身に何か起こるのを防ぐためと冒険者としての責務を果たすために武器を持って近くの悲鳴が聞こえた方へと走るのだった。

 

 

「─────忌々しい光がっ!!彼女(・・)のためにも1人でも多くの冒険者を殺さねばならぬというのにっ・・・!!」

 

────ベルの一撃を少し離れた建物の屋根の上でベルの一撃を見た白ローブの集団を従えている骨の仮面で顔を隠している男が殺意を隠さずに怨嗟の声をあげていたことに気づかずに・・・・・・




あとがき

はい久しぶりすぎる更新になります。アトラスファミリアの団長は原神に登場するファデュイの公子ことタルタリヤにしました。最初はデンドロのレイ・スターリングを団長にしようか考えましたが一旦保留にしました。団員や団長など色々考えなきゃなー。化物祭は2、3話以内に終わらせてソードオラトリアのリヴィラ騒動をやりたいなって思ってます。ちなみに今回登場したキャラノ所属ファミリアですが、

獅子人→オーディンファミリア
ヒューマンの受付嬢→元ヘラファミリア・現ギルド職員
赤髪エルフ→〇〇ボスファミリア
老人小人族→元ゼウスファミリア・現オーディンファミリア
重武装ドワーフ→〇ーマファミリア

〇字が全く隠れていないという意見は受け付けません。ベルくんと同じ声をしたイケメンお兄さんな神様はこの世界ではファミリアの人数に変化があるだけでなく暗躍の仕方も色々と変わっております。そのきっかけは7年前にとあるヒューマンの少年が義母に誓った言葉をたまたま聞いたのが原因だが一体何ネルくんの影響なのか・・・今後も不定期更新ですがどうかよろしくお願いします。最後に今回登場したベルくんの使用した魔法の設定を下にまとめますね。


魔法
星閃剣・創輝ノ断光《アステリア・エテルネア》

詠唱式:夜空を覆う星々よ、我が剣に宿り、その輝きを示せ。静寂なる銀河に瞬く灯火よ、希望の導となりて我が敵を穿て。遥かなる古(いにしえ)の記憶より継がれし、天の理を剣に宿し、この身、この魂、この一閃にて、運命を切り開く。我が刃は星を裂く閃光、絶望を払う彗星の一撃!
――星閃剣・創輝ノ断光(アステリア・エテルネア)

大量の魔力を圧縮し衝撃波として放つ魔法。モンスター特攻の性質を持っているためにどんな固いモンスターでも高ダメージを与えることが可能。夜間、または星空の見える状況下で使用した場合、威力が倍加する。本来は武器を介さずとも魔力で形成した刃でも放つことが可能であるが、武器を媒介にすることによって魔力の消費を抑えることも可能。

緑髪の男性ハイエルフ:ゼウスファミリアのレベル8冒険者であり、とある道化ファミリアに所属する副団長の兄。ゼウスの影響で三大欲求が強くなってしまい他の団員たちと共に他ファミリアも利用している公営入浴場に覗きをしようとした際には実妹から勘当されかけて慌てていたのは懐かしい話である。

獣やドラゴンよりの亜人などを登場させてもいいか?

  • あり
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