苦悩との対話   作:リーレス

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第一章『純粋な好奇心』
第一話『誘われて』


「え?27-13=13??まじで何やってんの???クソしょうもないなまじで死ね!!」

 

 うざい。本当にうざい。でも問題のせいではない。いくらゆっくり計算しても謎のクソみたいなミスを量産する俺が悪い。分かってる。分かってるが、やっぱりうざい。もう一回計算すんの面倒なんだよ。あーーーまじでクソ。しょうがないな。はーーゴミ。カス。

 求める面積は解答のグラフが囲む面積と同じだし、絶対計算ミスなんだよな。クソ、こんな積分やらせるからミスるんだよ……。

 

 

 

 ほらみろ、やっぱり計算合わないだろ。

 

「なんなんだよ。死ねよ!クソがっ!あーもうゴミ!死ね!死ねクソが!」

 

 だるい。本当にだるい。一回こうなると終わりなんだよ。解答は解答で、それでいいから、頼むから一体どこが間違っているのか教えてくれよ。なぁ?俺はそれが知りたいんだよ。

 

「関数を操れても 計算間違えたら意味ないでっ……しょうがッッ……! はぁ……。とりあえず、一回、落ち着こうか」

 

 こういうときに、手の甲の、親指と人差し指の間の隙間の皮しかない部分を噛んで歯形を付けてしまうのが最近の悪い癖。あとなんかイライラしすぎると口角がピクピクしてくる。もしかしたら意図的やっているような気もするけどね。どちらにせよ、自習室で発狂しないだけマシ。ここ、家だから関係ないけど。

 

 

 

「『3分の1ひく1』が3分の2??負だろ!!死ね!!!!!!!」

 

 やっぱり2か所間違えてた。こういうときは大抵1問で2か所クソみたいなミスをする。

 

「あーもう。だから家で勉強できないっつってんだろうがよ。なんなんだよ!」

 

 喋っちゃうんだよ。家だと。独り言多い人間だから。

 いいや、もう知らん。知らん知らん。未来の私がなんとかしてくれるから、いいや。こういう状態で勉強しても全て計算ミスに帰すだけだから、休まないとだめ。

 勉強以外でこんなにイライラすることないんだけどな。というか、普通にミスしなければ数学も物理も化学も英語も、なんなら受験に使わない歴史とか国語も大好きなんだけど、こういう時だけはどうしてもイライラしてしまう。

 東方の二次創作でも読むか……。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 うわっ、もう23時か、二次創作読み過ぎた……窓の外真っ暗じゃねぇか。くっそ。最近こんなんばっかりだなぁ。どうしたものだろうか。でもとりあえずもう寝ないとな。明日こそ頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 ベッドの中でいろいろ考えるのも、あまり代わり映えの無い受験勉強生活の心の支えになるよな。俺は、受験勉強において、ストレスはため込んではいないと思う。そうでないとやっていけない。ただ、一時的に自分の愚かさ(主にゴミみたいなミス)にキレるだけで、普段はストレスフリーな生活をしていると思う。日常生活でほとんどストレスを溜めない分、俺はここでたまっちゃうんだろうな。

 実際、自分では、ストレスの桶は溜まってもすぐに抜けていると思っているんだけど、最近目に見えて腹の調子が悪いから、自分が把握していない桶が溢れてるのかな。

 

 にしても、今日も1日無駄にしちゃったな。いやしょうがない。必要経費だって割り切る。俺はこういう人間なの。こういう無駄がない奴らが東京一工(一科?)とかに受かるの。受かるために受験勉強してるんだから、今後なんとかするさ。

 自習室さえ空いてれば毎日10時間絶対勉強できてるんだから、問題ない。東方に出逢っていなかった頃はもっと酷い生活をしていたんだから、それよりはマシだろう。

 

 それにしても、

 

「あの世界で暮らしてみたいなぁ」

 

 東方ファンでこう思った人は多いだろうなぁ。はぁ~あ。ちょっとぐらい体験してみたいもんだなぁ。あの世界を想像すると安眠できるよねぇ。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 ピピッ

 

 旅行に行くときとかのワクワクする日には毎回、目覚ましが鳴る1分前ぐらいに何故か体が勝手に起きる。目覚ましが鳴った瞬間に止めるのは、旅行に出発する日にしか味わえない、ささやかなイベントだ。今回は2音目で止められた。上出来かな。

 

 最近は自習室が空いてない。いくら東方で精神を持ち直したとはいえ、人に会わなさすぎて萎えてきた。共通テストも割と近いんだけど、もう学校に登校する機会はほとんどないしなぁ……。

 今日もどうせ勉強しないんだろうな。なら、せめて多少有意義に時間を使うべきか。夢の中の俺はそう思っていた。だから、今日は思いっきり勉強を無視することにする。

 普段、あまり夢覚えてないんだけどな。起きた瞬間に夢覚えている確率が多分0.15ぐらい。

 

 あ、あれ、スマホ、妹紅のイラストを待ち受けにしていたような気がするんだけど、いつの間に変えたんだっけ?これ多分デフォルトのやつだよな……。まぁ、そういうこともあるか。どうせ寝ぼけて知らないうちに変えたとかだろう。

 

 ベッドから起き上がりリビングに行くと、どうやら親に自習室がやっていない期間を伝え間違えたらしい。食卓の上には弁当が2つ置いてある。毎日毎日、俺のためにめっちゃ朝早く起きて弁当2つも作ってくれるのは本当に感謝してもしきれない。受験が終わったらちゃんと言わなきゃ。親、すごいよな。自分の弁当と、妹の弁当と、俺の弁当2つ作ってるの、意味が分からないな。親孝行しないとな。

 今年に入ってから、家族が皆忙しくなって、起きたら父も母も妹も出かけている日が多い。すこしだけ寂しい。家族で食卓を囲む時間、結構好きなんだけどな。

 

 さて、そろそろ行くか。〇〇〇〇駅にでも。こういう、心が落ち着いていない時には精神の癒しが必要だ。あの駅の景色をもう一度体験したい。いや、それ以上に、あの駅から行ける神社、少し気になってるんだよな。

 前に地図で見た感じ、ただの「神社」としか載ってなかったと思う。検索しても特に画像は境内の様子はヒットしなかったが、地図を見る感じは森の中にあるっぽい。なんだか、博麗神社みたいじゃない?そんな駅から行けるような場所にあるはずがない気はするが、多分自分の願望と重ね合わせてしまっているんだとは思うけど。あそこにいけば何か起こったりしないかな。

 電車賃はまぁ……どうせ受験勉強してるし使わないからいいや。普通列車でいけば足りる。のんびり行くか。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 2両の気動車が出発していく。音が遠くなる。風の音にだんだんディーゼルの音が消えていく。

 やはり、この駅は素晴らしい。眼下を流れる川と、駅の両側を挟む山。□山と△△山って名前だったっけ。あれ、よく考えたら幻想郷にも似たような名前の山があったよな。運命を感じるような気がする。

 

 住んでいる地域と違って、改札すらない細いホームを出ると、自然と足が動いていく。前に来た時は友達と2人で夕方に来たけど、1人でくるのもいい。「心が洗われている感じがする」って、こういうことなんだろうな。

 

 車が通る気配すらない道路をわたり、河岸段丘を登っていく。平地で歩くより(りき)んで 歩く。確か、前に来たのは真冬で、雪が積もっていたな。今日は雪が積もるほどではないけど 、少し肌寒いな。

 

 半分獣道のような、舗装されていなくて、狭くて、ひっつき虫がおぞましい量くっついてくるような道を進む。いつもなら、「あれ?この道あってるよな?」と思いながらグーグルマップを開いただろうに、なんか今日はいける気がする。

 

 

 

 

 

 いくら経ったんだろう。ちょっとやりすぎたか。なんか暗くなってきた。何も考えずなんとなく来てしまったけど、全然辿り着く気がしない。ぜんぜんいけてないじゃん。やばい。今から戻って帰れるのか?今何時だ?17:01??いやもう日落ちてるじゃん!!まじでやばい!!流石に帰らないと何も見えなくなるぞ……。

 

 

「食べれる人類?」

「うわッッ! ルーミアか?いや、俺初心者だから!!普通に死ぬって!」

 

 走る。走る。止まると死ぬ。いきなりビビらせんなよ、なんなんだよ。いくら1面でも俺まだ初心者だから!あれ、なんで猛ダッシュしながらこんなに冷静でいられるのか?俺は死ぬのか?俺はまだ元の世界でやりたいことが……。ん?元の世界?……ってうわぁうわああああああああああああ

 あっぶねぇな!絵に描いたような崖だな!!どうしろってんだよ!なぁ!

 

「食べれる人類は珍しいなー」

「うるせぇーー!!」

 

 普通なら余裕で追いつかれるだろうに、なんですぐに食われないんだろう。遊ばれてるよな……くそったれ。あとで覚えてろよ。にしても、いや、どうするべきか。殴り合いできるほど俺は体格がよくない。多分此処の住民を舐めると命がいくつあっても足りない。うーん。崖を飛び降りれば生きられるか……?少なくとも修学旅行で行った清水の舞台よりは高いな。あそこから飛び降りた人の中には生存した人も少なからずいるらしいが……

 

 ええい知らん知らん!!!多分なんとかなる!!

 

 跳ぶ。怖いから目を閉じる。

 

 此処は幻想郷だ。俺は飛べる。それが当たり前。物理法則は打ち破る。はっはっはっはっは!!!飛べる!!飛べるぞ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 目を開いたら、目の前、いや、360°上下左右前後全体が、青と緑で溢れていた ―

 

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