苦悩との対話   作:リーレス

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いろんなごたごたがあり、あまり続きを書く余裕がありませんでした……。
本当に数少ない読者の皆様、お待たせいたしました。
これから9月末まで夏休みなので、投稿頻度爆上がり間違いなしですね(!?)


第十一話『私とは』①

「おはよう。久しぶり」

「ういー」

「挨拶、適当すぎないか?」

「あ~、いや、なんか、友達に挨拶返すのって気恥ずかしくない? 悪気はないんだけど、毎回悩んだ挙句に結局適当に返しちゃうんだよね」

「そうか……?挨拶に恥ずかしさとか考えたことないが」

「俺が一番なんでか知りたいよ。本当に。そろそろ直したい」

「まぁ、適当に話でもしようか。最近どうだ?」

「そうだな~。なんか、自分で勉強するのって基本的に孤独だから、時々やる気なくなって萎えちゃうんだよね……。本当は毎日ゴリゴリ勉強したいんだけど」

「でも続けられているだけ偉いじゃないか」

「まぁ、1日何もできなかったときは『そういう日もある!』って割り切ってはいるけど……。なんか、『本当にこれでいいのか』って気がしちゃんだよね」

「なにか、ストレス発散する方法があったほうがいいかもしれないな」

「その点で言うと今のこの時間はかなり俺のストレスを減らしてるよ」

「そうか。それならよかった。——私も久々に話せて嬉しいよ」

「もうすこしいい場所にできたらよかったんだけど……。ごめんよ。適当な公園で」

「別にいいさ。そんなに込み入った話をするわけじゃないし」

「ありがとう」

 

 ……そういえば、「ありがとう」ってちゃんと人に対して言ったことがほとんとないな。いつも、「あす~」とか、「あざます」とかで済ませちゃうから……。挨拶に対する謎の羞恥心は未だに根強く残っているけど、今は不思議と「ありがとう」の言葉が自然に口から出てきた。なんでだろう。

 

「そう!それでさ、あれ、俺の友達が最近さ、何故か勉強のことで俺とよく話してくれるんだよね。何でか分からんけどちょっと嬉しい」

「それは良かったな」

「まぁ良いんだけど、その、『本当に俺でいいのか?もっと周りに優秀な奴いるだろ』って思っちゃうんだよね」

「相手も同じことを考えているかもしれないよ」

「そ、そうか……。そういうもんかなぁ」

「そこに他意が入ることは流石にないんじゃないか? さっきも言っていたけど、相手も相手で孤独感を覚えていて、京平と話すのを楽しみにしているかもしれない」

「まぁ、少なくとも俺が思ってるなら、もしかすると相手もそう考えてるかもな~確かに。そういうことにしておくわ一回」

 

 

 

 話がいきなりぶつ切りになってしまったが、相手が相手なので、別に気にならない。こういう関係の人がいるだけで、本当に心が救われる。

 

「私も少し話していいか?」

「もちろん。どうした?」

 

 その時、座っているベンチの目の前にサッカーボールが転がってきた。前を見ると、公園の少し奥の方で小学生達がボールを蹴って遊んでいた。

 俺はそのボールを拾い、かけよってきた子に手渡しする。

 

「うい」

「ありがとうございます」

 

 ――俺も小学生の時はまともに感謝を言えたのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は休みの日。寺子屋はやっていない。最近、段々とこっちでの生活に慣れてきたようで、休みの日にちゃんと休めるようになってきた。かといって、ずっと家に居ても寂しくて悲しくなってくるだけだから、毎回どこかに出かけている。それで果たして休めているのかはよく分からないが、今のところ身体的に問題はない。

 そう、最近永琳さんが「胡蝶夢丸」なる薬を作ったらしく、俺が実験台にさせられている。なにやら、「楽しい夢を見られる」らしい。もともとこの薬自体は昔から存在していたらしいが、俺が永遠亭に居た時にずっと昔の記憶に魘されていたことから存在を思い出したのかもしれない。直接俺を名指しで言及したわけではないが、タイミングからして多分そうなのだろう。時系列的にも、永夜異変が終わって永遠亭が里に開かれて暫く経ったいいタイミングだ。ここらで新薬を売り出すのも悪くないだろう。

 最近の精神的な体調は割とマシになってきて、夢に毎回魘されているわけではないが、稀に幻覚(?)のようなものが起こって、その時はかなり辛い。寺子屋があるときはある程度忙しいからそんなことは起こらないんだけど、あまりにも暇だったり、ちょっとブルーな気持ちになったりすると起こってしまう。そういう時のためにも、実験台になってみたというわけだ。

 それで、胡蝶夢丸を飲み始めて5日目とかそのくらいだと思うんだけど、やっぱり俺は夢なんて起きたら忘れているタイプの人間だからか、あまり効果を感じなかった。俺が寝言を言っていて、俺の隣で誰か寝ていたらもしかしたら違いが分かったのかもしれないが、生憎そんな人はいないので分からない。ただ、幻覚のようなものの内容はかなり前よりマシになっていて、過去を思い出して辛くなることが少なくなっている。少し具体的に言うと、「幻想郷と前の世界の境界が曖昧になり、記憶が混ざっている」感じだろうか。ただ、それについてちょっと思うところがあるから、それは永琳さんに伝えないといけない。

 

 迷いの竹林は未だに自力で入り込むと道に迷いかけてしまい、毎回後悔ばかりしていたので、入るときは妹紅さんなり鈴仙さんなりに頼んで案内してもらっている。どうして彼女らは迷わないのだろう。住んでいる年数は全然違うが、俺も慣れていないわけではないと思うんだけどな……。阿求さんが執筆中の幻想郷縁起によると「竹林は目印になる様なものが少なく、さらに竹の成長が早いおかげで景色がすぐに変わり、確実に迷う。」らしい。そうかもしれないけど、そんなに迷子になるほどなのかな?

 今回は永遠亭からの頼みを俺が引き受けた形になっているので、竹林の入口に鈴仙さんが待っているはずだ。彼女が里と永遠亭を往復するようになったのも割と最近だったと記憶しているが、やはり何故迷わないのかが分からない。どうも、地形以外の問題がありそうな気がしてならない。

 

 約束の時間より少し前に到着したが、鈴仙さんはもうそこにいた。変わった服装をしている人が多い幻想郷において、前の世界でいう女子高生みたいな格好をしている彼女は却って目立って見える。それが災いし、ほんの少し前の世界を思い出しそうになるが、あまり大した事はなかった。 これも薬の効果かもしれない。まぁ、また気分が悪くなってしまうよりはマシだろう。

 

「鈴仙さん、おはようございます~」

「じゃぁ、すぐ行くわよ」

「あ、はい」

 

 この後何か予定でもあるのだろうか。挨拶返してもらえないのはほんの少しだけ悲しい……。いや、でもよく考えたら彼女が挨拶している場面があまり考えられないな。永琳さんとか輝夜さんには丁寧に「おはようございます」って言っていると思うけど、他の人に言っているイメージがない。俺なんか特に数週間永遠亭で世話になった身で、迷惑をたくさんかけただろうから、こんな風に雑に扱われるのも頷ける。

 

 竹林の中の道なき道を歩いていくが、やはり特別変な感じはしない。普通の竹林に感じる。自分の家の近所にあったものもこんな感じの雰囲気だったと思う。

というより、竹林の様子が普通じゃなかったらまず里の人間が中に入り込むことはないか。ならば迷子になるなんてことはそれほど起きていないのだろう。

 

 

 

 いつもより注意深く周囲を観察しながら竹林の中を通ってきたが、特に何も収穫は得られなかった。強いて言うなら、あまり見慣れない生物を発見したことぐらいか。(赤いカミキリムシみたいなやつとか)

 あとは、謎の打楽器のような音もした。箸とかの長い棒を、先端部を持って机にたたきつけてバウンドさせたときみたいなリズムの音だった。なんなんだあれは。

 ……それで鈴仙さんと一言も話さなかったわけだが、まぁ彼女は大して気にしていないだろうし、いいや。

 

 相変わらず立派な永遠亭だが、永遠の魔法が解かれた以上、地上の“穢れ”の影響でこの姿も徐々に変化してきているのだろうか。初めて永遠亭に来てから1か月も立っていないから、起こっているはずの変化にはまだ気づけなかった。

 鈴仙さんが昔ながらの引戸の扉を開いたとき、奥の方から人影が見えてきた。

 

「お久しぶりね。わざわざ来てもらって感謝するわ」

「お久しぶりです。まぁ、私自身の生活にも強く関わることなので……」

「とりあえず、中で話を聞くわ」

「分かりました」

 

 当たり前だが、今日の永遠亭の廊下はずっと奥の方にちゃんと突き当りが見えた。ここで療養していたとき、永遠亭から逃げ出そうと廊下に出たら延々と歩かされ、終いに鈴仙さんに捕まったことは記憶に新しい。

 こっちに進んだ時の壁や襖の障壁画は、白と黒を基調にしていて、少しだけ質素な感じ……と思うが、場所によっては黄金に輝く豪華な装飾がなされているので、なんともいえない。一体何をモチーフにしているのだろうか。

 

 もともと病院として作られたわけではないため、永遠亭は別に診察室があるわけではない。だから、畳にベッドが置いてある、前の世界の旅館(ホテル?)のような雰囲気の部屋に通された。こういうところもあるし、もっと昔っぽい雰囲気が漂う部屋もある。

 永遠亭は割と先進的な医療もできたと記憶しているんだけど、やっぱり変だ。この見た目の部屋からは全く想像できない。まぁ「天才」だからその辺はなんとかやってるんだろうな。

 

「最近の夢はどう?」

「それなんですが……、自分、あまり夢を覚えていないタイプの人間なので、夜に見る夢が特別変わった気はしていませんね。ただ、いつもよりも目覚めが良いような気はします」

「『昼の夢』はどうなのかしら?言い方が引っ掛かるけれど」

「そうですね。私が稀に、昼間に幻覚なのか夢なのかよく分からないものを見るのはご存じだと思うのですが、それです」

「『昼の夢』だと効果を感じているということかしら」

「そうですね。前よりも気分が沈むことが少なくなりました。前の世界の思い出が少しこっち に寄ってきているというか……」

「なるほどね。最近の体調はどうかしら? 一応、副作用が起こりにくくしてあるのだけれど」

「それについては、全然平気です」

「なら大丈夫そうね……」

「あの、単に気になっただけなんですが、私以外でも試したんですか?」

「人間に試したのはこれが初めてよ」

「他にやる予定は」

「ないわね」

「大丈夫なんですか、それ」

「貴方みたいな弱々しい人間が大丈夫なら平気よ」

「は、はぁ……。否定はしませんけど」

「それに、まだ永遠亭は里に開かれたばかり。実験だ……被験者になりたい人なんてそうそういないでしょう?」

 

 く、口に少し出ているその態度をもう少し隠さないと……。俺は永琳さんに恩があるし全く気にしていないけどさ。まだ里の人間と対面で話すのはやめておいた方がよさそうな気がする。

 

「そういえば、うまくいったのなら追加で薬出すわね」

「あ、それなんですが、大丈夫です」

「?」

「その、確かに効果はあったし、それによって気分が多少良くなったのは事実なんですが」

「えぇ」

「私が『私』でなくなってしまう気がするんです」

「……なるほどね」

「胡蝶夢丸を飲めば、確かに気分はよくなります。過去を思い出して辛くなることはなくなります。でも、それって昔の自分を完全に否定してしまっている気がするんです」

「いかにも人間らしい悩みね……」

「そうですよね。自分もそう思います。めんどくさいですね人間って」

「一応、これから私達は人里とうまくやっていかなければならないから、もう少し詳しく教えてもらってもいいかしら?」

「大丈夫です。ええっと、ちょっと整理させてください」

「えぇ」

 

 そうだな……。俺は、過去の自分を決して忘れてはいけない。今俺がここに囚われている原因は、過去の自分にある。薬を飲み続ければ、いずれ過去の記憶は加速度的に薄れていくだろう。ただでさえ人間の記憶力なんて大してあてにならないのだから、できるだけ過去の過ちを忘れないようにしておくべきだ。確かに、思い出すのは辛いし、泣きたくなるし、誰かに縋りつきたくなる。でもこの苦悩との対話を重ねることは、確実にこの世界で生き抜いていくためには必要なことだろう。前の世界に帰ってからも、人として成長するためには必要なことだと思う。

 

「私は、自分の苦悩と向き合っていかなければならないと思っています。自分がこの世界で生きるには、自分が前の世界に帰るには、自分と向き合って自分に素直になった方がいいと思うんです。あと、過去の自分を忘れた時、今の私は果たして『私』といえるのか疑問にも思っています。それって、ただただこっちの世界に新たに生を授かった、前の世界と何の脈略もない人間じゃないですか。そんなの、嫌です。俺は、俺で在り続けたいです」

「よく考えているわね」

「まぁ、確かに考えすぎかもしれません。ただ、もちろん胡蝶夢丸で救われる人は相当数いるはずです。あくまで、『私一人の考え』に過ぎませんから」

「よく分かったわ」

「変なこといってすみません」

「いえ、問題ないわ。あまり人間の価値観には慣れていないものだから……。まぁ、気が変わったらまた来て欲しいわ」

「分かりました」

 

 聡明で何でも知っていそうな永琳さんでも、人間と本格的に関わり始めたのは最近だろうし、人が来る頻度もそう多くないだろうから、まだ慣れていないのだろうな。

 

「あと、何かお伝えすべきことはありますか?」

「ないわ。私からもないから、もう帰ってもらって結構よ」

「分かりました。では帰りますね。ありがとうございました~」

「ウドンゲ、あとはお願いするわね」

「判りました」

 

 

 

 永遠亭を出て、来た道のりをこれまた静かに歩いて戻っていく。 このままでは竹林を出るまでまたずっと無言になってしまう気がするな。いや、別に良いんだけど、ちょっとぐらい話したいな。何話そうかな。

 

「鈴仙さん?」

「ん?」

「そういえば、最近輝夜さんって忙しいんですか?」

「輝夜様に限ってそんなことは無いと思うけど」

「そうですか」

 

 初めて会ってから1か月以上顔を合わせていないことをふと思い出し訊いてみたけど、よく分からないな。まぁ、タイミングが嚙み合ってないだけなのかな。そういうこともあるだろうしね。竹取物語の頃はそう簡単に顔を合わせられなかっただろうから、1回お目にかかれただけで幸せ者だ。そういうことにしておこう。

 近くからカサカサと足音が聞こえてきた。迷いの竹林なのに他の人間がいるとは思えない。獣か妖怪か知らないが、思わず身構えてしまう。

 

「鈴仙さん、なんか、聞こえませんか」

「まぁ、言われてみればなんかいるわね」

「ちょっと怖いんですけど」

「何ビビってるのよ」

「いやその、自分そんな強くないので勘弁してください……」

「んーっと?妹紅じゃないの?あれ」

「え、あ、まじですか」

 

 自分の視力じゃよく分からなかったが、その陰が徐々に近づいていくにつれ、それが紅白の見慣れた人物だと確認できた。

 

 

 

「あぁ京平か、丁度良かったな。今から家に戻るところなんだけど、来るかい?」

「行きます」

「ちょっと、急にどっかいかないでよ」

「あ、鈴仙さん、ごめんなさい……」

「鈴仙ちゃんは京平を出口まで連れて行っていたのかな?」

「まぁ、そうね。この感じだと私はもう必要ないかしら」

「なんかごめんなさい」

「別に謝らなくていいわよ」

「とりあえず、ありがとな」

「はいは~い」

 

 鈴仙さんは別に面倒そうな顔はせず、そのまま無表情できた道を戻っていっていた。まぁ、俺に向ける感情なんてそんなもんだろう。

 竹林の真っただ中といっても、竹の葉の密度はそれほど高いわけではないから、普通に足元は見える。だから妹紅さんの姿も発見することが出来た。まだ行った事は無いけど、魔法の森とかいったら本当に辺りは何も見えなさそうだな。

 

「そういえば、妹紅さんはさっきまで何してたんですか」

「ああ、ちょっと慧音に用があってね」

「なるほどなるほど」

「京平はこの後予定はあるか?」

「特に無いです」

「なら、ちょっと家に寄っていかないか?」

「本当ですか。行きます行きます!」

「なら一緒に行こう。いつも私の方ばっかり君の家にいって悪いからな。たまにはね」

「いえいえ、あれ本当に助かってますからね? 妹紅さんが生活を教えてくれなかったら今頃生きていたかどうか分かりません」

「そう言ってくれて嬉しいよ。まぁ、もうそろそろ慣れてきたころだろうから、もう私からあまり教えることはなさそうだけどね」

「そうですね……」

 

 よく考えたら、今の自分は妹紅さんにほぼ毎日会えていることによって保っているといっても過言ではないから、それがいきなり無くなってしまうと少々、いや、かなりまずい気がする。対策を考えておかないといけない。

 

「そういえば、妹紅さんは私の生活を割と知っていると思うんですが、逆に私は妹紅さんの生活を知りませんね。普段何してるんですか? そういえば」

「あぁ……そうだな。この辺で採集して里に売りに行ったり、それこそ永遠亭へ里の人間を案内していたりかな。大体は」

「焼鳥屋はやっていないんですか」

「……何故それを知っている」

「いや、その。『私』ですから」

「そういえばそうだったな」

「私は、あの言葉は適当な嘘だと思っているんですが、実際どうなんですか?」

「これから関わっていく中で勝手に知るだろうから、言わないでおく」

「えぇ……。なんですかそれ」

「まぁいいさ。ほら、もうそろそろ着くよ」

「あれ、意外と近いんですね」

「妖精が悪さしていなければ、誰でも通れるんだけど」

「よ、妖精?」

「あれ、知らなかったのか。迷いの竹林は、ここに棲む妖精が悪さして人を迷わせるんだ」

「一般的に、里では『目印になる様なものが少なく、さらに竹の成長が早いお陰で景色がすぐに変わって』しまうから迷うと理解されているんですが」

「そうなのか……。道理で危険を顧みずに入り込む人間が後を絶たないわけだ。『自分でなんとかできる』と思ってしまうのも無理はない」

「里に事実を広めておきましょうか? 妹紅さんの仕事も減るでしょうし」

「いや、止しておいてほしい」

「なんでですか?」

「この現状を、何も考えずにいきなり変えてしまっては何が起こるか予測がつかないからな。一応、もう少し考えさせてほしい」

「わかりました。決まったらまた教えてください」

「もちろん。……あ、あれが私の家だよ」

「久しぶりだなぁ」

「『たまには』ってさっき言ったけど、もしかしたらまだ2回目か?」

「そうですね。そういえばそうでした」

 

 奈良? 飛鳥? 時代生まれの妹紅さんの家は、別にそれっぽくはない。強いて言うなら江戸時代っぽいかな? 里の家の雰囲気にかなり似てはいるな。妹紅さん、数々の時代を生きていく中で、少しずつ生活様式を変えていったのかな。でも、一時期は全く人間と関わっていなかっただろうから、こっちに来てから刷新したのだろうか。こんどまた訊いてみよう。

 ガラガラッと戸を引き、妹紅さんが扉を開けた。途端に、まだ何も知らなかった当時のことを思い出し、懐かしい気持ちがこみ上げてきた。あの時の自分は愚かだったが、この記憶にマイナスな気持ちは全くない。あるはずがない。誰にも邪魔されない、最高のひとときだったから。

 

「すみません。いきなりついてきちゃって。お邪魔します」

「いいっていいって。お茶でも出すから、ゆっくりしていきな」

 

 実は俺、あまりお茶は得意ではないんだけど、まぁこの機会だし飲んでみようかな。妹紅さんと飲めば美味しいかもしれない。いや、美味しいに決まっている。

 

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