日本国召喚if パーパルディア本土上陸作戦 作:だうんふぉーる
「な、なんだ!? ありゃ!」
デュロ郊外の森の中に天幕を並べた臨時駐屯地があった。その森の脇に建てられた物見櫓にて、警戒に当たっていたパーパルディア皇国皇軍の若い兵士は思わず叫んだ。
二ホン軍が上陸したとされる海岸の方角から砂煙が立ち昇っているのが見えたかと思えば、地平線の奥から濃緑色の塊が無数に現れ、馬以上の速さで突っ走っていくのである。
数は100や200なんてものじゃない、もっと多い。
正体が何か分からないが、ここ数日国内を襲った大空襲や敵上陸といった前代未聞の出来事を考えれば、答えは自ずと出てくる。敵だ。
「敵襲、敵襲ーッ!」
見張りは叫びながら魔導式の警報装置を押す。
皇軍兵たちが大慌てでマスケット銃を手に飛び出してきた。とはいえ、この臨時駐屯地は空爆を生き延びた敗残兵の集まりでしかなく、彼らが森に駐屯しているのも身を潜めるためだ。まともな戦力になるかと言われると相当に怪しかった。
仮に敗残兵でなくとも、あの強大な敵相手に立ち向かうのは相当困難だろうが。
「……あれ?」
幸いなことに、敵は彼らを見向きもせず、南へと突っ走っていった。
飛び出してきた皇軍兵らも不思議に思ったが、やがて敵が向かっていった方向に何があるか思い至り、急速に顔が青ざめていく。
そして急いで魔導通信機のマイクにかじりついた。
「こちらデュロ臨時駐屯地! 正体不明の敵地上戦力が皇都方向へと進撃中!」
皇都エストシラント郊外、臨時皇都防衛隊の司令室は大混乱と化していた。
「デュロ近郊に上陸したニホン陸軍が、こっちに向かっているそうだ」
「どうする? 我らの戦力ではニホン軍に手も足も出ないぞ」
「もはや皇都を放棄するべきでは……」
「早計だ! ここは皇国の中枢だぞ、そんな簡単に放棄できるか!」
「しかし現実にニホン軍に対抗できないではないか!」
臨時皇都防衛隊は、撤退した属領統治軍と、先のエストシラント空爆を乗り切った残存戦力を取り纏めて作られた臨時集成部隊だ。
属領統治軍が主体だったので装備は旧式であり、人員の練度も士気も高いとは言えない。
不幸中の幸いと言えば、部隊がエストシラント市内の各所に部隊を分散したことで、誤爆を避けた日米の航空戦力があえて空爆を見送っており、未だに大部隊であることくらいだ。
エストシラントに迫る敵軍への対応に、参謀たちは知恵を絞っていた。
「どちらにせよ、我々の稼働戦力は5万人を超えるんだ。この数を一度に撤退させるのは現実的じゃない」
「それもそうだが……長持ちはしないぞ」
「分かってる。せめてルディアス陛下と首脳部には脱出していただこう。我々は陛下が脱出するまでの時間稼ぎをするしかない」
「つまり捨て駒、か」
臨時皇都防衛隊が、皇帝ルディアスほか皇国首脳陣がエストシラントから脱出するまでの時間を稼ぐことで意見をまとめかけた時。
中年の士官が司令室に駆け込んできた。
「皇都周辺に敵兵が出現しました!」
「バカな!? ここからデュロまで何百キロと離れてるんだぞ!?」
「違います、デュロの敵部隊ではありません! 別の部隊が空から傘で降りてきたんです!」
「空から……!?」
「敵は皇都を包囲しつつあります!」
彼らの計画はご破算となった。
陸自第7師団からなる機甲戦力がエストシラントを目指している頃、皇都エストシラント郊外の上空にいくつもの大型機の影が現れた。
空自の輸送機――C-2とC-130Hの編隊が、F-15J戦闘機にエアカバーされつつ日本本土から遠路はるばる飛来してきたのだ。
「リリースポイント到着」
「降下!降下!降下!」
輸送機のハッチが開き、陸上自衛隊第1空挺団の隊員が飛び出す。
空挺隊員らは落下傘に揺られ、迅速に地上に降り立つと、89式小銃を構えて周囲の警戒に移る。
「11小隊、集合急げーッ!」
「全周警戒!」
彼らは第7師団の到着に先んじて皇都周辺に展開し、道路や橋梁などを占領し、第7師団の進撃路を確保するのが任務だ。
そのために第1空挺団のほぼ全ての戦力が投入されることとなり、空自輸送機だけは輸送力が足りず、アメリカ空軍横田基地所属のC-130輸送機も輸送に協力している。
これによって1,000人を超える空挺隊員が地上へ降り立ったが、それ故に敵兵――臨時皇都防衛隊の皇軍兵らも迎撃に集まってくる。
やがて第1空挺団と皇軍兵の間で激しい銃撃戦が始まった。
第1空挺団には自動小銃や機関銃だけでなく、軽装甲機動車や120mm迫撃砲といった戦力もあったが、5万人を超える皇都防衛隊が相手であり覆しがたい数的劣勢である。
「見ろ! 米軍機だ!」
銃撃戦が激しくなる中、上空にアメリカ海軍のF/A-18F戦闘攻撃機の編隊が現れる。
近海に展開した空母『ジョージ・ワシントン』の所属機だ。第1空挺団が数的劣勢を抑えるために米空母艦載機のエアカバーを受けて対抗する魂胆だ。
F/A-18Fがレーザー誘導爆弾ペイブウェイを投下し、皇軍兵らの立て籠もる住居が丸々一つ消し飛んだ。
「っしゃあ! 空爆万歳!」
「アメさんの好意を無駄にするなよ! 第7師団の到着まで持ち堪えるぞ!」
米海軍機の援護のもと、第1空挺団はエストシラント近郊で激しい抵抗を続けた。
そして数時間後、地平線の彼方から無数の車列が現れた。