結界師が行くヒーローアカデミア   作:無個性な一般人

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開催! 雄英高校体育祭、第一種目!

 とまあ、学園物の体育祭あるあるネタをかました俺だが、あれだけ威勢のいいことを言った手前もある。

 すんげえかっこいいこと言ってたやつが瞬殺されたら、笑いを超えて寒いまであるからな。

 そんなわけで新技。というか、結界術の応用を練習する日々だ。

 

「結」

 

 掌に乗せた茶の入った湯呑みを結界で囲む。

 ゆっくりと手を下げていく。

 手の上に乗った湯呑みは結界の中にとどまることはなく、するすると重力に従って落ちていく。

 

(集中、集中……)

 

 湯呑みが結界の外に出ていくにあわせて、結界の中に湯飲みに入っていたお茶だけがふわふわと留まる。

 そのまま湯呑みが完全に結界の外に出ると、湯呑みは空。

 結界の中にはお茶だけが残っているという状態になった。

 

「ふぅ……解」

 

 結界を解いて落ちてきたお茶を湯呑みで受け取る。

 

「結」

 

 今度は空中に板状の結界を作る。

 板と垂直になるように湯呑みを上から落とす。

 湯呑みが結界に触れると、湯呑みは結界をすり抜けて地面に落ち、中にあったお茶が板に弾かれる。

 

「うわちゃ、あっちゃ!」

 

 結界の中で留めたわけではなく、単純にお茶だけを弾いたためにお茶が足に掛かる。

 めっちゃ熱かったけど、とりあえずの目標が達成できたことの喜びがふつふつと湧いてくる。

 

「しゃああああああ! できたぞゴラアアアア!」

 

「界支! アンタうるさい! ご近所迷惑でしょうが!」

 

「ご、ごめん! かーちゃん!」

 

 と、とりあえず。コレで爆豪とか轟対策にはなるだろ。

 本当のところは結界師でも地味に使い勝手のいい技である、念糸を使えるようになりたかったのだが、今の俺だと耐久性の低い念糸を一本出せる程度。

 

「結! そんでもって念糸!」

 

 細い棒状の結界を作り、そこに念糸を飛ばす。

 本来はここから、自分で念糸を操作して結界に結びつけ、俺がぶら下がってもびくともしない程度がほしい。

 そうすれば結界師の弱点でもある、本体の脆弱性をカバーできる。

 だが、念糸の操作が難しくて上手く結びつけられず、両手でもって力を込めれば結構簡単に千切れちまう。

 

「なんつうか、なんかに引っかかってるって感じがすんだよなー」

 

 結界、というか俺の本当の個性に対しての理解度が足りていないのかもしれない。

 焦るつもりはないが、なにかしらのブレイクスルーがあればって感じだな。

 結界術に関しても強度がUSJの一件から向上しているのも感じるし、俺が優先するべきは結界術の精度と強度だ。

 

「結、結、結、結、結、結!」

 

 こぶし大の結界を積み木になるよう積み上げていく。

 結界術の単純な原理、大きい結界は脆く多量のエネルギーが必要になる。

 逆に、小さい結界は固く少量のエネルギーで張ることができる。

 強度だけで言えばこの小さい結界を壁のように展開すれば問題ないけど、USJの一件を思い出すとこれじゃあダメなんだ。

 

「ある程度大きくても、ガッチガチに固くねえとな」

 

 守りたいのは自分じゃない。

 俺は自分の周りの大切な人を守りたい。落ちてくる瓦礫、押し寄せる津波、ヴィランの狂気から。

 空間を支配して、万事を俺の手の上に乗せる。俺が目指す姿は果てなく遠いが届かないとは微塵も思ってない。

 

「結!」

 

 積み上げた結界を覆うように大きな結界を張ろうとする。

 

「んぎぎぎぎぎぃ~!」

 

 だけど、結界は展開途中でピタリと止まってしまう。

 原作ではどうだったのかは覚えていないが、俺は結界の中に結界を展開することができなかった。

 コレができれば多重層結界となって、より守りが固くなるんだが、コレでも入学当初と比べれば大きく進歩しているのだ。

 

「はぁ……学校行くか」

 

 この個性に目覚めてから個性の訓練はこうして続けているが、雄英高校に入ってからは個性の成長具合が目に見えて違う。

 意識的なものと、個性を使うことを知ったからかもな。

 

 

 そんな個性という非日常楽しい訓練の日々が続いて、待ちに待った体育祭当日。

 日本に置いて名を轟かせ、直近の襲撃事件の影響もあり色々な意味でも注目集めていた。

 警備を例年の5倍に増やした雄英だったが、観客には現役ヒーローの姿も散見していた。

 

「緑谷、少しいいか」

 

 万雷の歓声が響く会場で、各学年各クラスの紹介と入場が行われる中、待機場所に集まった轟が緊張感なく口を開いた。

 轟から話しかけられたことがほとんどなかった緑谷は、場の空気も合わさって大いに驚いた。

 

「と、轟くん、なに?」

 

「客観的に見ても、実力は俺のほうが上だと思う」

 

 唐突なマウントである。

 

「へ!? う、うん……」

 

「お前、オールマイトに目を掛けられてるよな。別にそこを詮索するつもりもねえが」

 

 実力差を言われた時以上に挙動不審となった緑谷だったが、続く発言の衝撃は周囲にも伝わる。

 

「俺は、お前に勝つぞ」

 

 推薦入学、明らかな強固生、No2のヒーローを父に持つ。誰が見てもサラブレッド。

 そんな男の宣戦布告に湧いたのは緑谷ではなく周囲。

 

「クラス最強が宣戦布告!?」

 

「峰田、俺はお前に勝つぞ」

 

「札折てめえ! 今日こそ決着を付けてやるぜ!」

 

「今度はこっちで宣戦布告だ!」

 

「マウントレディ!」

 

「ミルコ!」

 

「違った! こっちはただ癖の勝負だった!」

 

 空気を読んだ耳郎が二人を強制退場させる光景を見ていた緑谷だったが、轟に向き直った姿は不安な顔つきをしていた。

 

「轟くんがなにを思って僕に勝つって言っているのか、分かんないけど」

 

 だが、徐々に不安の色は消えていく。

 

「そりゃ、君のほうが上だよ。実力だって、大半の人は敵わないと思う。客観的に見ても……」

 

「緑谷も、そーゆーネガティブなことは言わねえ方が」

 

 切島が思わず口を挟んでしまうが、緑谷が「でも!」と強く言い放った。

 多少の不安や戸惑いを内包しながらも、そこには強い意志が宿っていた。

 

「皆、他の人も本気でトップを狙っているんだ。僕だって遅れを取るわけには、いかないんだ」

 

 強く轟に向けられた言葉は、自身にすら言い聞かせているようだった。

 

「札折君も言ってた、僕達は強いって。君だけじゃないんだ」

 

 受験で不安や恐怖に萎縮していた姿は、誰かのために全力を掛ける金の卵へと変わり、極小さくではあるが徐々に羽化の片鱗を見せていた。

 

「僕も、本気で取りに行く!」

 

 平和の象徴を継ぐ存在が、拳を握った。

 

「一年ステージ! 生徒の入場だああああ!」

 

 プレゼント・マイクの声が響く。

 今日、様々な生徒の思いが集う雄英体育祭が始まった。

 

 

 

「雄英体育祭! ヒーローの卵どもが、我こそはとしのぎを削る年に一度の大バトル! どうせテメー等アレだろ、コイツ等だろォ!? ヴィランの襲撃を受けたのにもかかわらず、鋼の精神で乗り越えた軌跡の新星!」

 

 プレゼント・マイクのによる過剰なプレゼンによって、名前を呼ばれる前から会場の視線は一極に集中してた。

 

「ヒーロー科1年! A組だろォオ!!」

 

 集まるのは好奇、羨望、そして嫉妬。

 とても一つのクラスが受け取るには重すぎる歓声が、A組に殺到する。

 

「かぁー! 俺等も人気になったもんだなあ!」

 

「札折って緊張することあるの? ウチなんか足が震えてきちゃったよ」

 

「つかテメーがあの時あんな挑発したせいだろ札折!」

 

 呆れを含む笑みを浮かべた耳郎、そして向けられた敵意に怯えた峰田が札折に食って掛かる。

 

「んだよ、オメーらもしかしてビビってんのか?」

 

 やれやれと肩を竦めた札折に、耳郎たちの眉が上がる。

 

「命の危険がねえんだぞ、あのときとは違う。たとえ失敗したって死にゃあしねえんだ、どこにビビる必要があんだよ」

 

 ハッとした表情を浮かべたのは二人だけではない、なんとはなしに会話聞いていた緑谷達もだった。

 

「あん時のヴィランより、ここにいる奴らが怖えのか? 俺は怖くねえ」

 

 だからビビらねえ。いっそ晴れやかな笑みを浮かべた札折に、聞いていた皆の緊張が全てではないが解けていく。

 

「そっか、そうだよな! 俺等ってあのヴィランを倒したんだぜ!?」

 

 上鳴が調子に乗る。

 

「考えてみればそうだよな。緊張は確かにするけどよ、あのときと比べればそりゃそうだよな」

 

 瀬呂が一様の納得を見せる。

 

「しゃあ! やってやるぜ!」

 

 意外にも緊張していた切島が吹っ切れた。

 

「……チッ」

 

 皆の緊張が闘志に変換されるなか、爆豪だけが気に食わないと背を曲げた。

 そして、選手宣誓を”あの”爆豪が行うことになり、多少爆豪の性格を知るA組は別の意味で緊張した。

 

「宣誓、俺が勝つ」

 

 案の定凍りつく会場。しかし、言葉の意味を理解した選手達は途端に加熱された。

 吹き上がるブーイングの嵐。

 それには先日A組に押しかけた生徒以外からも無条件に親指を下に向けた。

 

「爆豪のやつ、やりやがったな!」

 

 切島が。いや、挑戦的な笑みを浮かべる。

 もう少し言葉を選べばと思わなくもなかったが、それ以上に称賛が強かった。

 

「せいぜい俺の踏み台になれや」

 

「かっちゃん……」

 

 ブーイングをものともせず、爆豪が戻って来る。

 入れ替わるようにミッドナイトが前に出ると、ムチを鋭く一閃。

 空気を叩く音が響き、野次が止む。

 

「さーて、それじゃ早速最初の種目を始めましょう!」

 

 熱い視線を集めるミッドナイトから告げられた最初の種目。

 

「運命の第一種目! 今年はコレ!!」

 

 巨大なモニターに映されたルーレットが回り、ミッドナイトの言葉と同時に止まる。

 

『障害物競争』

 

 ヒーロー科、サポート科、普通科、経営科。全員が参加し、スタジアムの外周約4kmを駆け抜ける。

 

「我が校は自由さが売り文句、コースを守れば……なにをしたって構わないわ!」

 

 つまり、個性を使用した妨害が前提の競技。

 障害物の程度は不明だったが、それでもアノ雄英高校が簡単に突破できる障害物を用意するわけがない。

 観客は期待と興奮から歓声を送り、出場者は雄英高校がなにを用意したのか戦々恐々とする。

 

「さあさあ! 位置につきまくりなさい!」

 

 スタート位置はスタジアムの入り口。

 いったいどれだけの巨体が通ることを想定したのか、見上げる首が痛くなるほどに巨大な入り口に出場者が集結する。

 

「さて、頑張りますか」

 

 競技開始が近づくにつれ歓声は止み、静寂を破りスタートのタイマーがカウントを開始する。

 

「スタート!」

 

 そうして、日本でいま最も注目を集める雄英高校の第一種目が始まった。

 大注目の一戦にプレゼントマイクと相澤の実況が入る。

 

『さーて実況していくぜ! 解説アーユーレディ!? ミイラマン!』

 

『無理矢理呼んだんだろうが』

 

『さっそくだがミイラマン、序盤の見所は?』

 

『今だよ』

 

「って、スタートゲート狭すぎだろ!?」

 

 スタート開始と同時にゲートに選手が殺到し、ゲートで詰まった。

 それが意味するのは、

 

「最初のふるい」

 

 ゲートに人がごった返す中、轟が冷静に前に出る。

 

「ってぇー!? なんだ凍った!? 動けん!」

 

「寒みー!!」

 

「んのヤロォオオ!」

 

 個性で地面と他選手の足を凍らせて。

 

「人が……っ!?」

 

 緑谷達も人に揉まれながらもどうにか前に出ようとしていたそのとき、頭上から知った声が聞こえた。

 

「おー、みんな大変そうだなー。ごくろーごくろー」

 

「ふ、札折君!?」

 

「よ、緑谷。大変そうだな、俺的には女の子に揉みくちゃにされる分には嬉しいんだけどな」

 

 頭上には結界の上に立ち、ゲートで揉みくちゃになっている選手を見下ろす札折がいた。

 

(そうか、結界なら自由自在に足場が用意できる……っ)

 

「ま、野郎共と押しくらまんじゅうはごめんなんでな。そいじゃ」

 

 そうしてゲートから悠々と飛び出していく札折だったが、この程度を突破できないライバルではなかった。

 

「甘いわ轟さん!」

 

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

 

 爆轟が爆速ターボで、八百万が創造した道具で、切島が強引に、それ以外にも轟の個性を知り、個性の戦闘を経験した同級生が妨害を前に難なく前に出る。

 開始1分と経たず始まった攻防は、明らかなふるいとなり選手を選別した。

 

「使い慣れてんなあ、個性……」

 

 そして、そんな攻防を眺め分析する者も敵の情報を集める。

 

「クラス連中は当然として、思ったより避けられたな」

 

 轟は半ば確信していたライバルの対応力に驚くことなく、状況を確認する。

 しかし、そんな轟の背後に迫る影。峰田だ。

 

「轟のウラのウラをかいてやったぜ、ざまあねえってんだ! くらえ、オイラの必殺」

 

WHAM!!

 

 強襲を仕掛けようとした峰田が何者かに吹き飛ばされる。

 

「ターゲット……大量!」

 

「入試の仮想ヴィラン!?」

 

 そう、峰田を襲ったのは雄英高校入試試験で猛威をふるった仮想ヴィラン。

 

『第一関門! ロボ・インフェルノ!!』

 

 緑谷が両足と腕を粉砕してまで倒したあの超大型ゼロポイントヴィラン。しかもその数は10近く、最初にして最大の障害が現れた。

 

「せっかくなんだから、もっとすげえの用意してもらいてぇもんだな」

 

 巨大な障害を前に出場者の足が止まる中、轟は怯まない。

 白煙を吐き、個性を発動させた。

 

「クソ親父が見てるんだから」

 

 人一人ではどう足掻いても倒せるとは思えない仮想ヴィラン。

 しかし、その巨体が一瞬にして氷結する。

 

「ふぅ……」

 

 あれほどの巨体を征したはずの轟だったがその表情に変化はなく、凍らせた仮想ヴィランの足元を走りに抜けていく。

 

「あいつが止めたぞ! あの隙間だ! 通れる!」

 

 当然、一挙に注目を集めた轟を見逃す者はいなく、轟の後に続こうとする。

 

「やめとけ、不安定な体勢ん時に凍らしたから。倒れるぞ」

 

 凍った巨体が揺れ、爆音と共に倒れる。

 

『1年A組、轟!! 攻略と妨害を一度に、こいつぁシヴィー!』

 

「半分野郎に先いかれてたまるかよ!!!」

 

「おめーこういうの正面突破しそうな性格してんのに、避けんのね!」

 

「便乗させてもらうぞ」

 

 だが、そんな妨害すらをはねのけて達が追走する爆豪達。

 もはや障害物競走の注目は最初からA組が掻っ攫っていくありさまだった。B組もヒーロー科として一定の活躍はすれど、他出場者や観客からはしてみればA組しか映っていなかった。

 

「はー、こいつらほんとにまー目立ってんなー」

 

 そんな光景を見ていた札折の言葉を聞けば誰もが頷く、出場者が競技中に発しているとは思えない発言を、札折は誰に聞かれることなく続ける。

 

「がんばれーA組、ここで落ちたらまーじで恥ずかしいぞー」

 

 

 

 

 オールマイトから貰った強力な個性が使えない故に、状況を冷静に収集して活路を見いだしていた緑谷だけが、とある考えにたどり着く。

 

(おかしい……札折君の姿が無い)

 

 第二関門の綱渡りを終え、第三関門の地雷原にさしかかった緑谷は地雷をかき集めながら状況の整理を行っていた。

 

(先頭は轟君とかっちゃん。でも、今までの第一と第二、そして第三の全てで札折君の個性は相性がよかった)

 

 ゲートでは空中を、第一関門では瓦礫をはねのけても、爆豪達同様上からいける。

 第二関門も結界を使えばあってないようなもの。

 第三関門も同じ。

 

(札折君にとって、これはただの4kmマラソンと変わらない。つまり、個性を上手く使えていない僕がここまで来られているってことは、札折君はもっと前。轟君達と同じ場所にいなくちゃおかしいんだ)

 

 だが、札折の姿は見つからない。

 轟達よりも前に行っている可能性もあるが、それなら先頭集団の二人が互いの妨害をするなんて余裕はない。

 

(もしかして、他の人に捕まって……)

 

 先日のA組の教室前で騒動を思い出す。

 A組を勇気づけ、他生徒に爆豪とは別の方面で啖呵を吐いた彼だ、爆豪の宣誓のインパクトも合わさり出場選手に絡まれた可能性もある。

 

(だめだ、他の人の心配をしている余裕なんて、僕にはない!)

 

 良くない方向に流れた思考を無理矢理絶つ。

 

(できた……)

 

 皆が地雷を避けて走る中、緑谷だけが地雷をわざわざ集めていた。

 数にして10数個、これが一度に起爆すれば人一人を空に打ち上げることぐらい簡単な量だ。

 

(借りるぞ、かっちゃん……!)

 

 発想ならずっと近くで見ていた個性からすぐに閃いた。後はやる勇気だけ。

 歯を食いしばり、第一関門で拝借した仮想ヴィランの装甲を握りしめる。

 

(爆速、ターボッ!!)

 

 かき集めた地雷に栓をするように装甲を押し付ける。

 まるで雪山でソリにうつ伏せで乗る体勢で地雷に飛び込んだ緑谷を、初めて味わう衝撃が襲う。

 

(ぐっ……!? なんて威力だ……!)

 

 爆風と衝撃、そして急速な加速で掛かるGに耐えつつ、空中に吹き飛ばされた緑谷は前を見据える。

 そこには未だ妨害をしあう二人のライバルの姿。

 

「デク……てんめェ……ッ!?」

 

「緑谷……!」

 

 後方で起きた超爆発に気がついた二人が、自分達に向けて飛来する緑谷の姿を見る。

 いや、爆発の勢いのまま抜き去る姿を見送る。

 

(やっぱ……勢いすごい!)

 

 放物線を描いた着地地点、そこに来て緑谷は気付く。

 

(コレ、着地! 考えてなかったー!!)

 

「デクぁ!! 俺の前を、行くんじゃねえ!」

 

 爆豪が、

 

「後続に道作っちまうが、後ろ気にしてる場合じゃねえ……!」

 

 轟が緑谷の後ろをすぐさま追いかける。

 

(やばい!)

 

 一度は二人を抜いた緑谷だったが、着地に近づくにつれ失速してしまう。

 体勢も崩れ、失速し、空中から落ちるタイムロスを考えれば、ここで抜かれれば再び追い越すチャンスはない。

 

(くっそ、ダメだ、放すな! この二人の前に出られた一瞬のチャンス、掴んで放すな!)

 

 無理矢理体勢を整える。

 装甲のひもを放さず、両手に握り。

 

(追い越し無理なら……抜かれちゃダメだ!)

 

 自身を抜いた二人の背中から、二人の間めがけて装甲を地面に叩きつける。

 

 カチ、カチカチカチ――!!

 

 地面に触れた装甲を通してスイッチの入る音が連打する。

 ボオオオオオオン!

 炸裂する地雷の爆風に轟と爆豪が横に吹き飛ばされる。

 

『緑谷! 間髪入れずに後続妨害!! なんと地雷原即クリア!』

 

 もはや振り返らない、振り返る余裕なんてない。

 緑谷はただ前を見て走り続ける。

 

『イレイザーヘッド、お前のクラス凄えな! どういう教育してんだ!』

 

 緑谷の猛追、そして逆転劇にプレゼントマイクが唾を飛ばす。

 だが、それすら相澤は想定しているのか、はたまた期待していたのか、落ち着いたトーンで事実を述べる。

 

『俺はなにもしてねえよ、奴らが勝手に火ィ付けあってんだろう。だが』

 

『さァさァ! 序盤の展開から誰が予測できた!?』

 

 地雷原を抜け、ゲート前に辿り着いた緑谷。前方に誰かの背は見えず、足音は後ろからしか聞こえてこない。

 

『今一番にスタジアムに帰ってきたその男!』

 

 会場の熱が沸騰する。まさかの大逆転、まさかの大番狂わせ。

 誰もが予測していなかったのに、誰もがその結果に湧き、最後の一瞬を見届けようとした。

 誰もが、緑谷の姿を夢想した。

 

「悪いな、俺が一番だ」

 

 だが、ゲートから一番に現れたのは見たことのない男子生徒だった。

 

『ええええええええええええええ!!??』

 

 会場が、実況のプレゼントマイクが驚嘆し。

 

「え……札、折……くん? ど、どうして……」

 

 呆然と緑谷がいつの間にか目の前に立っていた同級生を見る。

 

『前ばっか見てると、足元をすくわれる。今回は上からだったがな』

 

 相澤だけが、平然とその事実を受け入れていた。

 

「がっはっは! 俺がナンバーワンだぜ!」

 




ちなみに、目次にも書きました
私が書きたかった所は二つありまして、一つが今回の体育祭です
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