結界師が行くヒーローアカデミア   作:無個性な一般人

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激戦! 騎馬戦!

 全チームの結成が決まり、いよいよ第二種目の開始が告げられた。

 

「さあ! 第二種目騎馬戦! スタート!」

 

 波乱を見せた第一試合の熱気が冷めていなかった観客の歓声が飛ぶ。

 

「死ねエ! シールド野郎ォ!」

 

 開始と同時に爆発音と、とても高校の体育祭では聞かないであろう一声が飛ぶ。

 爆豪が騎馬から単独で飛び出し、1000万ポイントを持つ札折達を強襲したのだ。

 

「んなことァ読んでんだよ! 結!」

 

「はっ! 捕まっかよ!」

 

 すぐさま爆豪を結界で捉えようとするが、空中で3次元的な機動を見せる爆豪を捉えることはできず、接近を許してしまう。

 

「くたばれエ!」

 

「結! バックブースト!」

 

 捉えきれないならばと壁を作り、サポート科である発目のサポートアイテムのジェット装備で後方に下がる。

 

「逃げんじゃねえゴラア!」

 

「襲われたら逃げるが最善! とくに好戦的なヴィラン相手は刺激せずにが鉄則!」

 

「誰がヴィランだ! ぶっ殺すゾ!」

 

 誰がどう見てもヴィランの言動。

 しかし、緑谷から爆豪の行動パターンを聞いていた札折に油断はなかった。

 

「さっすが緑谷だ。お前の言ったとおりになったな!」

 

 流石にこれ以上の追撃は難しいと判断して撤退した爆豪を見送りながら、前の騎馬を務める緑谷の頭を軽く叩く。

 

「う、うん! かっちゃんなら開始早々に仕掛けてくると思ったんだ。だけど、気を付けて。ただ闇雲に突っ込んでくる相手じゃないから」

 

「うひゃー。爆豪君すごい勢いだったねー」

 

「ワタシのベイビーが素晴らしい活躍をしました!」

 

 開始直後の戦闘は想定通り。

 だが、ここからは他チームの動きも影響してくるため、より一層の注意を払う必要があった。

 

「しゃ、とりあえず上に行くぞ! 麗日!」

 

「任せて!」

 

 麗日が全員に浮遊を付与するのを確認すると、札折達は空中に飛び上がった。

 

『おーっと! ここで札折チーム! ジェットパックを使って天高く舞い上がったー!』

 

『騎馬という機動力が限定される中だ、空中に逃げちまえば追撃できるメンツは限られてる。合理的だな』

 

『そしてそのまま落下、することはなく空中に立ったぞ札折チームゥ! おいおい! こりゃ誰も手が出せねえんじゃねえか!?』

 

「おい! いいのかよ! アレじゃ勝負になんねえぜ!?」

 

 実況のプレゼント・マイクが懸念するとおり、一部の出場者が声を上げた。

 だが、それを判定するのは主審であるミッドナイト。

 

「騎馬は維持してるし、エリア外にも出てないのでセーフ! ただし、それ以上高い場所に行くのはダメよ!」

 

 続行だ。主審が判断したのであれば問題なし。

 札折達は空中という安全地帯を約束されたのだった。

 

「はっ! こんな一方的な勝ち方じゃつまんねえからな! お望み通り降りてやるよ!」

 

 そんな出場者だけではなく、観客すらも不満を募らせかけたとき。札折は自ら結界を解除してグラウンドに降りてくる。

 

『ここでなんと! 札折チーム安全地帯を放棄だああああ! これは余裕なのか!? 安全な場所にいなくてもお前等ぐらいあしらえるって挑発だー!』

 

 札折たちが空中に逃げたのはあくまでデモンストレーション。安全な勝利の手段を見せ、あえて放棄する。

 戦略的なメリットの一切を捨てた無謀な行動。しかしソレを会場が絶賛する。

 

「いいぞー! Aクラス!」

 

「かっこいいぞ!」

 

 明らかな魅せプレイ。

 だからこそ、観客や出場者の視線が集まる。

 その隙を虎視眈々と狙う者にとっては、千載一遇の好機。

 

「んな……っ?」

 

 なにも狙われているのは札折だけではない。

 ステージに立つ全員が標的なのだ。

 

『おーっと! ここで爆豪チーム! まさかのハチマキを奪われたぞー! 爆豪チームのハチマキを取ったのはBクラス! 物間チームだあああ!』

 

 そこから始まる問答。観客に聞こえないそれは、爆豪の激昂によって挑発を受けたのだと理解させられる。

 奇しくも札折がバラ撒いた隙は、試合模様をより一層混沌に包んでいく。

 

「よし、睨んだとおりBクラスが動いたな」

 

「す、すごいよ札折君。最初に聞いたときは半信半疑だったけど」

 

「他のBクラスの人も動いてるねー」

 

 札折が一回戦目で見たのはなにも心操だけではない。むしろ、ライバルたり得るBクラスの動向もつぶさに追っていた。

 だからこそ、Bクラスの組織的にも見える動きを感じ取れていた。

 読んだのだ。札折がこうして分かりやすく注目を引き、札折に注視するAクラスの隙が生まれる瞬間を作れば、Bクラスが動くと。

 

「これでこっちに来る人数は減ったな。んで、次に来るのは。結!」

 

 足元に突如迫った氷を結界で防ぐ。

 

「轟君……!」

 

「緑谷、取らせてもらうぞ」

 

 見ずとも誰が襲ってきたのかはわかった。

 緑谷は額に汗を滲ませ、最も強敵だと思える相手を意識する。

 

「よう、八百万。お前がこっちについてくれりゃ、色々作戦が組めたんだがな」

 

「魅力的なお誘いですが、リベンジマッチよ。札折さん!」

 

 先程の混乱に乗じたのか、すでに自分以外のハチマキを巻いた轟チームがジリジリと近づいて来ていた。

 

「札折君! 相手の左だ、轟君は右から氷結をするから。僕らは常に轟くんの左を維持して!」

 

「お前ってホントによく相手の動きを見てんな。位置取りは任せたぜ!」

 

「チッ……面倒な」

 

「こっちはやりやすいがな! 結!」

 

 標的を絞れない範囲攻撃が常な轟の個性は、攻撃の角度によって前騎手である飯田も攻撃に巻き込んでしまう可能性があった。

 故に緑谷の位置取りは地味ながらも有効的な手段となっていた。

 そして、動きが止まったタイミングを札折が結界を展開。騎手を狙わず、騎馬の足を結界で覆う。

 

「クソッ……やられた!」

 

「甘いですわ札折さん! その手は読んでおりましてよ!」

 

 だが、八百万がすでに創造しておいた武器で結界を何度か攻撃し、結界を破壊する。

 

「ち、咄嗟とはいえあまあ硬かった自信があるんだがな!」

 

「織り込み済みですわ。結界の特性から面ではなく点による一極集中の攻撃、これなら一撃とはいかずとも即座に破壊は可能!」

 

 用意周到な対応に歯噛みをする札折。

 戦闘演習では準備の隙を与えずに完封した八百万だったが、万全ならばこれほど厄介な相手はいない。

 

「やっぱり無理矢理にでも抱き込むべきだったな」

 

「ふ、札折さん。そのだ、抱き込むとは……あの……っ」

 

「ヤメロ八百万! その反応されたら」

 

『おーっとAクラス札折! 今度は言葉巧みに八百万を口説きに掛かる! 手段を選ばないとはこのことだぜ!』

 

「がああ! チクショー!」

 

 一風変わった攻防を繰り広げる札折たちだったが、派手な戦闘が続けば漁夫を狙うものも現れる。

 

「1000万ポイント!」

 

「轟チームとやり合ってる今がチャンスだ!」

 

「くっそぉ! いつの間にか取られたハチマキの仇討ちだ! 札折ィ! オイラの糧になりやがれ!」

 

 同じタイミングを見計らっていた複数のチームが殺到する。

 

「札折君ダメだ! 数が多すぎるよ!」

 

 札折チームの攻撃能力が乏しいことに並ぶ、もう一つの欠点。

 それが集団に対する攻撃手段がないということ。

 緑谷の冷静な状況分析に舌打ちをしつつも、指示を出す。

 

「仕方がねえ! 上にもっかい逃げるぞ!」

 

「浮遊させるよ!」

 

 最初に見せたジェットパックを使った大ジャンプ。

 集団戦からの離脱を試みるが、

 

 プスン——

 

「んな!?」

 

「このベイビーは改良が必要なようですね……!」

 

 まさかのジェットパックが故障。無重力状態がゆえに頭上に移動することはできるが、そんな隙を許してくれる相手ではない。

 

「僕に、任せて!」

 

 緑谷が決心した声を上げる。

 

「で、デク君!?」

 

「任せてもいいが、再起不能とかはやめてくれよな!」

 

 問答している余裕はなかった。

 

(札折君は結界で防御をこなしていた。麗日さんは個性で僕らの重さを消して、発目さんのサポートアイテムで機動力を確保した。僕はまだ、なにもしてない!)

 

 オールマイトに託された個性。そして1000万ポイントを告げられたときに驚き、自分が持っていないと安堵してしまった。

 

(見せるんだ……! 僕が、オールマイトの、平和の象徴を継ぐ存在がいるって!)

 

 イメージするのはUSJを襲ったヴィランに向けた拳。唯一成功した自壊しないワン・フォー・オールの発動。

 

「ちぃ、逃がすか! 上なッ!?」

 

 咄嗟に上鳴に指示を出そうとした轟だったが、緑谷を見て一瞬だが動きが固まる。

 

「いぃ……っけぇえええええ!」

 

 自壊しないギリギリの個性発動。

 果たしてソレは成功し、ジェットパック以上に高速で飛び跳ねた札折達。

 直後に轟チームの騎馬、上鳴の無差別放電が当たり一切を襲う。

 

「結!」

 

 無重力のままでは無限に空に落ちてしまうため、麗日が途中で解除。

 途端に掛かる重力による減速に合わせて、札折が結界で足場を作る。

 

「はー、上に逃げて正解だったな。よくやったぜ緑谷」

 

「凄いよデク君!」

 

「あはは。USJのときに土壇場で成功したから、行けるって思ったんだ」

 

 下を見れば感電した他チームに轟が追撃を行い、周囲の全騎馬の足を凍らせている光景があった。

 

「残り一分。札折君、どう」

 

「死ネやシールド野郎ォ!」

 

 BOOOOM!!

 緑谷の声を遮って、複数のハチマキを巻いた爆豪の爆破が足場の結界を破壊する。

 本来なら、足場を一つ壊されたのなら再び作ればいい。だが今は騎馬であり、足場を即座に作ったところでタイミングが合わなければ騎馬が崩壊するだけ。

 そんな余裕を与える爆豪ではないことを、札折チームの発目を除いた三人は知っているのだ。

 

「麗日! もっかい浮遊! 地上までの道は俺が作る、爆豪の相手もしてやる!」

 

 即座に結界をランダムに配置し、地面までの道を作る。

 緑谷達は無重力状態のまま、地面まで点在する結界を蹴って地上を目指す。

 

「オラアアアアア!」

 

「結!」

 

 立体的な機動力で迫る爆豪を札折が結界で防ぎ、移動のすべてを緑谷達に任せる。

 

「結! 結! 結! ちっくしょう! ハエみてえにブンブンと!」

 

「誰がハエだクソボケェ!」

 

 防御に徹したことで爆豪の猛追を乗り切り地上に戻る。

 

「解除! うぷっ……」

 

「爆豪が突っ込むのは見えてたからな、来ると思ったぜ」

 

 だが、それを狙うのが轟だった。

 図らずして、Aクラスにおけるツートップの戦力が札折達を狙う。

 

「札折君! マズイ!」

 

 迫る二チームに緑谷が声を上げる。

 しかし、札折は腕を組み眼の前の光景をただ見つめた。

 

「いいや。勝ちだ」

 

 ブーーーーーーーー!!!!

 二人の手が目前まで迫ったそのとき、すべての終わりを告げるブザーが鳴った。

 

 

『エビバディ! さあてお待ちかね! 結果発表の時間だぜ!』

 

 試合終了。それを理解した緑谷達の力がすっと抜けて膝から崩れる。

 

『まずは第1位! 1000万ポイントを見事守りきってみせたぜ! 札折チーム!』

 

 第一回戦を1位で突破し、さらに第二回戦でも1位を守りきった札折チームに称賛が飛ぶ。

 

「よくやったぜ皆! お前等がいなかったら負けてたかもしれねえ!」

 

「そんな、僕なんて最後くらいしかなんにもできなかったし。麗日さんと札折君の個性と、発目さんのサポートアイテムがあったからだよ」

 

「そんなことないよデク君!」

 

「そうだぜ緑谷! お前の最後の大ジャンプ。あれがなきゃどうなってたか……」

 

 簡単な手段がある中、真っ向から守りきった事実にお互いを褒め合う札折達。

 唯一発目だけが結果よりも、自分のベイビー達に見つかった改良点をいじくり始めた。

 

『続いて第二位! 一度はハチマキを取られたが、縦横無尽に暴れまわって大量のハチマキを獲得! 言動さえどうにかなれば手放しに褒められたぜ! 爆豪チーム!』

 

「はぁ、悔しー!」

 

「ま、2位なら大健闘じゃね?」

 

「コイツがそう思うわけがねえよな」

 

 戦果で見ればトップのハズだった爆豪チームだが、当の本人は1位になれなかったことがこの上なく悔しいようで、地面を何度も叩いていた。

 だが、それでも競技中一番ド派手な活躍を見せた爆豪チームに、観客から拍手が飛ぶ。

 

『そして第3位! 集団に襲われても冷静に対処してみせたぜ! 広範囲な攻撃で見せつけてくれた轟チーム!』

 

「済まない轟君。俺は、まだやれたはずなんだ」

 

「気にするな、俺もだ。俺も、一瞬だが止まっちまった……」

 

「悔しいですわね……次こそは!」

 

「え、皆もっと喜ばね? 三回戦に進めたんだぜ?」

 

 上鳴を除いた三人が顔をしかめる。誰もが次の一手を持っていた、しかしそれを出すことができずに不完全燃焼だったのだ。

 上鳴だけが無差別放電と満足の行く役割を果たせていた。

 

『そしてラスト! 4位! いつの間にか4位にランクインしてたぜ! この後も波乱を見せてくれよな! 普通科唯一の出場を勝ち取った心操チーム!』

 

「あれ、ここは……」

 

「闇に誘われてしまったのか……」

 

「……」

 

「悪く思うなよ……」

 

 今まで1位から3位までは三者三様の反応を見せたが、誰もが結果に対してのものだった。

 だが、心操チームは誰一人として結果に対して反応を見せず、心操に至っては無傷なはずが苦痛に顔を歪ませていた。

 その後、プレゼント・マイクから第三種目の発表は休憩とレクリエーションを挟んだ午後に行われることが告げられた。

 

 

「よう、第二種目突破おめでとさん」

 

 通路の影になっている場所、そこで札折は心操と向かい合っていた。

 

「なんだよ」

 

「どうだった。楽しかったか?」

 

 数秒、心操は口をつぐんだがニヤリと嗤う。

 

「あぁ、楽しかったな。アイツ等揃いも揃って返事してくれるからな。さすが、ヒーローを目指すだけあるよ」

 

「わかるぜその気持ち。敵を罠にはめる瞬間ってのは満たされるもんだ。その場を支配したってことだからな」

 

「は、アンタは他と違ってヒーローらしくないな」

 

「ヒーローに成りたくてここにいるわけじゃないからな、そう見えるのも当然だろ」

 

 心操は挑発のつもりだった。騎馬戦の開始前にされたことに対する意趣返し。

 だが、当の本人は否定することなくあっさりと受け入れてしまう。

 

「俺はな、この個性で遊べればいいんだよ。そのついでに、俺の守りたいもんを守るためにヒーローを目指してんだ」

 

「まるでヴィランみたいな思考だな」

 

 ここに緑谷がいれば目を見開いてしまうカミングアウト。

 

「せっかくの個性、使いたいって思うのはヴィランの思考か?」

 

 心操はますます眼の前の存在がなぜここに立っているのか不思議に思えたし、なぜこんな奴がヒーロー科で自分が普通科なのかとさえ恨んだ。

 

「ヒーローに憧れるほど、世界と他人に期待してないだけだ」

 

「お前、本当に高校生か?」

 

 まるで社会に揉まれて疲弊した社会人が言いそうなセリフだった。

 

「そういうお前はヒーローに憧れてんのか?」

 

「……悪いかよ」

 

「好きなヒーローはいるのか?」

 

「……オールマイト」

 

 誰もが憧れるナンバーワンヒーロー。ヒーローに憧れるほとんどの子どもが彼の名前を上げるだろう。

 心操だって、その一人だ。

 

「いいじゃねえか。オールマイトの授業楽しいぜ? いつも豪快に笑って、一人だけ違う画風でいっから毎回笑っちまうんだ」

 

「は、自慢かよ」

 

「自慢だな。知ってっか? オールマイトって弁当用意してんだってよ、緑谷に聞いた。可愛らしい弁当箱だったってよ」

 

 あの巨体で可愛らしい弁当箱を持っているオールマイトの姿を想像したのか、しかめっ面だった心操は思わす吹き出してしまう。

 

「おもしれーだろ? オールマイトってテレビで見たとおり茶目っ気があって、なんでも豪快に進めんだけどよたまーにポカしてたりしてよ」

 

「……」

 

「でもよ、ヒーロー基礎学でヒーローとしての立ち回りのときは、あの豪快さに隠れたプロの意識ってのを教えてくれんだ。すげえのなんのって、流石平和の象徴だって何度も思った」

 

「さっきから何なんだよ。普通科の俺に自分の待遇を自慢して、下に見て嘲笑ってんだろ。俺の個性なんて一発ネタでバレれば対策なんて簡単だって、余裕かましてるんだろ……!」

 

 口を開くにつれて口調が強くなっていく。

 自分の個性をヴィランみたいだと言われたときでも、洗脳を茶化されたとしても、愛想笑いで誤魔化してきたはずなのに。

 

「羨ましいよ。お前等みたいに、ヒーローにお誂え向きな個性がさ。俺だって自分の個性がヴィラン向きだって知ってるさ! なあ、教えてくれよ。お前ならどうした! 洗脳なんて個性を持ってたらどうしたんだよ!」

 

 止められなかった。

 感情の炉にくべる燃料は物心がついたときから溜め込んでいた、天井まで積み上がった石炭は減る様子を見せない。

 

「この世の中不公平だ。お前みたいな考えを持ったやつがヒーロー向きな個性で、ヒーロー科に受かってて。試験の内容が人相手だったら良かった! そうすれば俺が1位で合格できてた!」

 

 眼の前の存在が最近知り合っただけの、自己紹介だって今日した相手だったとしても、羨ましいと妬むには十分だった。

 

「教えてくれよ未来のヒーロー様よ! 俺はどうしたら良かったんだよ! どうすればお前等みたいにヒーローを目指せたんだよ! なあ!」

 

「知るかボケ!」

 

「なっ!?」

 

 だが、心操は心根をぶちまける相手を間違えていた。

 コレが緑谷なら、自らの無個性だったときの思いがある。オールマイトですら忘れかけていた、ヒーローの心を持っていた時代の平和の象徴なら、心操の目を前に向かせることができる。

 

「そんな憧れがあんなら、こんなとこで腐ってねえであがきやがれってんだ! お前がヒーローを目指そうが目指すまいが知ったこっちゃねえんだよ!」

 

 逆ギレである。自分から話しかけておいて、自分で煽っておいて、すべてを放り出したのだ。

 

「オールマイトの話を聞いて羨ましいならヒーロー科にこいや! テメエが自分で言ったんだろ! リザルトによっちゃこっちにコレんだろ!? だったらうだうだしてねェで歯食いしばって、動けなくなるまで動いて、血反吐はいてヒーロー目指せや根暗野郎! 俺はテメーみたいなうじうじしたやつが大っ嫌いなんだよ!」

 

 あまりの剣幕にたじろぐ心操に構わず、一気にまくし立てた札折は一度呼吸を挟む。

 

「俺の個性じゃ……」

 

「だあああああああ! もうウザってえな! 誰も言わねえなら俺が言ってやる! お前の個性はヒーロー向きなんだよ! お誂え向きってやつだ! んなことくれェ自分で理解しろってんだ!」

 

「……は?」

 

 あまりに予想していなかった言葉に、心操の頭は真っ白になっていた。

 眼の前で札折が続けて色々とごちゃごちゃと言っていたが、全く耳に入ることはなく、気がつけば場所は会場。

 

「第三種目はトーナメント戦! ワンオンワンのガチンコバトル!」

 

 ミッドナイトの言葉で、ようやく意識を取り戻したのだ。

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