結界師が行くヒーローアカデミア   作:無個性な一般人

15 / 16
メタだよ皆!

 緑谷と心操の戦いが終わり、矢継ぎ早に試合が進んでいく。

 

 轟VS瀬呂。

 皆が轟の勝利を確信していた。

 事実そうなった。開始早々の瀬呂による速攻でもしやと思われたが、その後スタジアムを超えるほどの巨大な結晶によって、圧倒的な実力を見せた轟が勝利した。

 

 塩崎VS上鳴

 電気という強個性による開幕放電攻撃を上鳴が実行、しかし絶縁のバラによって防がれ、ショートしたウェーイ上鳴がバラに捕まりそのまま場外に。

 

「なあ峰田。あれって美女の髪に全身を包まれたってことだよな?」

 

「ハッ……!?」

 

「二人共、キモいから止めなって」

 

 

 飯田VS発目

 これは試合とは到底思えない展開となり、商品の試験役として飯田が使い倒されて終わった。

 満足した発目が棄権し、勝者となった飯田が膝から崩れる結果となった。

 

「つまり二人で共同発表を行ったようなもんだよな。しかも発目の手作りベイビー」

 

「ハッ……!?」

 

「ウチ、もうツッコミしない」

 

 

 常闇VS芦戸

 芦戸の強力な酸攻撃だが、常闇のダークシャドウによるアウトレンジ攻撃に場外となった。

 

「手から出る酸、つまり手汗だよな」

 

「ハッ……!?」

 

「峰田ちゃん、札折ちゃん。皆の視線に気づいて頂戴。本当に気持ち悪いわ」

 

 

 鉄哲と切島

 同じ硬化系の能力ということあり、決着つかずのドローとなった。

 

「つまんねえー」

 

「なー」

 

「君達! クラスメイトが獅子奮迅の頑張りをしているというに!」

 

「止めとけ飯田。お前が損するだけだぞー」

 

 

 麗日VS爆豪

 轟のとき同様、爆豪が一方的に勝利を収めるものだと思った。

 観客もそう思っていたみたいで、試合を決めにいかない爆豪に非難が飛んだ。

 だが、相澤先生の一喝。直後に見せた麗日の超必に口をつぐんだ。

 結果はソレ以上の超火力で爆豪が勝ったが、決してチャンスのない試合ではなかった。

 

「あれ、今回は余計なキモいこと言わないんだ」

 

「言葉にせずとも俺等には通ずるものがあるのさ。な、峰田」

 

「あぁ、汗を流して全力で頑張る女の姿は筆舌に尽くせないもんなんだぜ」

 

「ケロッ、さっきまでの下劣な顔がウソのように晴れ晴れしてるわ」

 

「コレはコレでキモいから止めてくんない?」

 

 

 大変有意義な試合を見た俺は、ついに自分の番が来たのだと気合を入れた。

 

 

☆

 

 

「この時を待っておりました」

 

「は、今回も勝たせてもらうぜ」

 

 舞台に上がった札折と八百万は互いに好戦的な姿勢を見せる。

 戦闘演習の時、八百万は自分の持ち味を活かすことなく大敗した。

 そしてUSJ襲撃事件のとき、ヴィランに囲まれている状況を助けられた。

 

(百、証明するのよ。札折さんを倒して、同じ場所にいるのだと)

 

『スタアアアアアト!』

 

 試合が始まる。

 

「結!」

 

 先手は札折、創造する必要がある八百万よりも、声のみで発動できる結界のほうが先手を取れるのは必定。

 

「あまいわ!」

 

 だからこそ読んでいた。

 背後から迫る結界を回避し、1メートルほどの巨大なウォーピック*1を作り出す。

 

(結界の弱点は一点集中の攻撃。そして直接的な攻撃力をほとんど有していないこと!)

 

 それを証明するように、後方で完成した結界をウォーピックで破壊する。

 

「ち、面倒な対策取りやがって!」

 

「お褒めに預かり光栄ですわ!」

 

(ですが、これはあくまで結界への対策)

 

 結界の破壊はできるが、こんなにも大ぶりする必要のある武器。

 たとえ振り回したところで結界に防がれて隙をさらすだけ。

 

「遠距離武器があるのはこちらも同じよ!」

 

 ウォーピックの次に創造するのはゴム弾を使用したランチャー。

 USJで一度創造し、その有用性を知ってから密かに練習していた武器だ。

 

「効くかよんなもん! 結!」

 

 当たれば悶絶する程度には強烈な攻撃。

 しかし、壁として形成された結界に弾かれてしまう。

 

(そう、その選択しか取りえません。計画通りですわ!)

 

「ち、今度は側面か。結!」

 

 すぐさま横に回り込みランチャーを撃つ。

 結界で防御されたらもう一度、横に回り込んで撃つ。

 ランチャーの弾数は4発。これにより札折は自身を中心に四方向を結界で覆うことになる。

 

「お次はこちら!」

 

 大きな物を創造するには相応の時間が掛かる。

 だからこそ作り出した。装弾数を増やしたランチャーによる攻撃によって、札折が防御に徹し、八百万が次の創造をするための準備時間。

 

『初っ端から怒涛の攻撃を見せる八百万! 次はなにを作り出すかと思えば! 大砲だ! 巨大な大砲が札折を狙っている! コイツァ大ピンチだぜ!?」

 

「そちらの結界で、私の一撃。耐えられまして?」

 

「やってみろよ。耐えきってやるぜ」

 

 札折は四方に張っていた結界を解除すると、自身と大砲の間に3つの結界を壁にして展開。

 

『真っ向勝負だ! なんでも防ぐ結界vs(バーサス)大火力な大砲の矛楯勝負だぜ! イレイザーヘッド、どっちが勝つと思う!?』

 

『知らねぇよ』

 

 札折は真正面から受ける構えを見せる。

 対する八百万。

 

(誰もがそう思いますわよね)

 

「いきますわよ!」

 

「掛かってこいやー!」

 

 BOOOM!

 麗日戦で見せた爆豪の大爆発には及ばないが、それでも相応の爆発音が響き、発射された砲弾が結界と衝突。

 と同時に起爆。視界埋め尽くす閃光が会場を満たす。

 

「ぐあああああ!? 目がああああ!」

 

「砲弾型閃光弾ですわ! 物理は防げても光は透過いたしますわよね!」

 

 もちろん、目に対するダメージを考慮した威力にはなっているが、それでも不意をついた強烈な光に札折の視界は一時的な機能不全を起こす。

 

「ちくしょう! 方囲! 定礎! 結!」

 

 視界を失い、それでも札折は自身を覆う結界を展開。

 だが、予測した攻撃は飛んでこない。

 疑問に思う札折だったが、それでも視界を制限され動くことはできなかった。

 

「な、なんだとっ!?」

 

 1分とは経っていないが、それでも視界が回復するまでの時間が果てしなく遠く感じた。

 そうしてようやく回復した視界が捉えたもの、それは自身を囲む無数の銃口。

 

『ななな、なんだこれは!? 閃光に目をやられたと思ったら、お次は大量の砲弾による包囲網だ! こりゃ絶体絶命だぜ!』

 

「今回は閃光弾、ではなく。ちゃんとした、砲弾……ですわ……!」

 

 いつか札折と戦うときに備えた、八百万の対札折戦術。

 十を有に超える砲門が今か今かと札折を包囲していた。

 

「降参を。動きましたら撃ちます」

 

(結界に結界を重ねることはできない。いくら強度があろうともこの数の火力を一度に防ぐ方法は、ございません!)

 

 しかし、八百万も余裕があるわけではなかった。

 創造に消費する多量のエネルギー。コレほどの砲門を短時間で揃えたとなれば立っているのもやっと。

 ギリギリの瀬戸際。

 

「八百万。最初から最後までこのために……!」

 

「ご明察。戦闘演習では勉強させていただきましたから」

 

 言葉と行動による選択の強制。

 圧倒的な火力を用意するために緻密に用意された、札折の性格さえ織り込んだハメ技。

 

「降参、してください」

 

 札折にとって詰みの状態。

 いまから対処するには遅すぎる。

 

「しかたねえ」

 

 勝った。八百万にとって待ち望んでいた光景。

 

「俺も切り札を出すしかねえな!」

 

 だが、札折の瞳に諦めの色は一切ない。

 なにかをされる前にと全砲門を機動させる。

 

「結っ!」

 BOOOOM!!

 

 発射音と札折の言葉が重なる。

 砲弾の発射直後、多量に消費さた火力による黒煙が札折を中心に広がる。

 その黒煙もすぐさま風が吹き飛ばしていく中、札折の姿が現れる。

 

「ふぅ……勝てたと思いましたのに」

 

 周囲にこぶし大の結界を自分を中心として大量に展開し、全ての砲弾を防御。

 無傷の状態で立っていた。

 

『札折! まさかの無傷! 周囲に小さく無数の結果を展開して、全砲弾を防ぎきった!? コイツの防御は絶対なのか!?』

 

『結界は大きさによって強度が変化。小さければその分固くなる。それを無数に配置した防御陣。こいつは厄介だぞ』

 

「さて八百万。見たところふらふらだな、膝が笑ってるぜ。まだやるか?」

 

「残念ですが、降参いたしますわ」

 

 ここに、唯一互いの攻撃が有効打になることなく試合が決着した。

 

『決着ゥ! 勝者、札折界支ィ!』

 

 こうして、最終種目第二回戦の出場者が決まった。

 

☆

 

 

「ヤオモモお疲れ」

 

「負けてしまいましたわ」

 

 リカバリーガールに念の為と検査を受けた八百万がAクラスの集まる席に戻って来る。

 悔しさ半分、スッキリ半分とやりきった姿で耳郎の隣に座る。

 

「でもすごいよ。あれだけの火力を一気に作れるんだから」

 

「あの2つだけ集中的に練習しましたから。でも、用意した作戦を最後まで防がれてしまいました」

 

「それで降参したの?」

 

「それもありますが、あのとき既に私は次の創造ができないほど疲弊しておりました。実のところかなりギリギリでしたの」

 

 個性の過度な使用は使用者に大きな負担を掛ける。

 八百万の場合、創造という万能が故に多大なエネルギーと、創造するための頭に対して大きな負担が掛かっていた。

 

「今後の課題ですわね。今回ので判明しましたが単純な火力では押しきれません。ですが光といった結果をある程度無視した攻撃の有効性も確認できましたので、改善点が見えてきましたわ」

 

「おーヤオモモ燃えてるね」

 

「次こそは必ず勝ちますわ!」

 

 こうして着々(ちゃくちゃく)と札折特攻の作戦が、万能個性によって組み上げられていくのだった。

 

☆

 

 第二試合。

 と続く前に、ドローとなっていた切島と鉄哲の最終決戦が組まれることになり、個性の同質性から腕相撲対決を行い、切島が見事勝利を収める。

 

 

 轟VS緑谷の戦いは今回の体育祭でも類を見ないほどの激戦となった。

 指を弾くだけで自壊するほどの超パワーを持つ緑谷、一試合目で超広範囲の氷結を見せた轟の戦いは、誰もが期待する。ソレ以上の激しい、それこそセメントスが仲裁に入ってもなお止まらないほどだった。

 しかし、結果は轟の辛勝。ダメージの差で見れば歴然だったが、観戦していた立場から見ればどちらが勝ってもおかしくない試合模様となった。

 

 飯田VS塩崎

 一試合目で発目のおもちゃにされた飯田だったが、今回はエンジンを十全に活かし塩崎を場外へと押し出して勝利。

 前試合のような派手な戦いではなかったが、ヒーロー達からの評価は比較的高い結果となった。

 

 常闇VS爆豪

 アウトレンジからの攻撃が得意な常闇が有利かと思われたが、ここで個性の相性が浮き彫りとなった。

 光によって弱体化するダークシャドウの弱点を突いた爆豪の勝利。

 接戦かと思われた試合は、意外にもあっけなく終了した。

 

 そうして第二試合最後の戦いが始まる。

『一試合目で強烈な矛楯勝負を制したのはコイツだ! 札折界支ィ! 対戦相手は個性だけじゃなく心意気まで熱く硬い男! 切島鋭児郎!』

 

「しゃあ! やってやるぜ!」

 

 ガチン! と硬化した腕をぶつけ合い切島が構える。

 

『矛楯の次は最強の盾同士の頂上決戦だぜ! 試合開始だぜ!』

 

「先手必勝! うらああああ!」

 

 開始と同時に全身を硬化して突撃する切島。

 遠距離攻撃を持たない切島にとって、札折と距離が離れること事態が最悪の状況。途中で結界に妨害されようが関係ないと突っ込んでいく。

 

「結!」

 

 対する札折が取ったのは、八百万戦で見せたこぶし大の結界を無数に配置した、いわば結界の結界。

 しかし、今回は八百万戦のときとは違い、切島を中心として展開する。

 

「あだっ!?」

 

 砲弾すら受け止めた結界の檻に囚われた切島、結界を避けつつ移動することはできるが、とても走って抜けられる状況ではなかった。

 

「こんなもん! 粉砕すりゃあいいだけだ!」

 

 ならば真正面から破壊する。

 至ってシンプルな選択を取った切島だったが、すぐに驚愕することになる。

 

「んだこれ! めちゃくちゃ硬(かて)え!?」

 

 一つ破壊するのに数十発。これでは札折にたどり着くまで日が暮れてしまう。

 

「動きが止まったぜ?」

 

「しまっ……!」

 

「結!」

 

 結界の檻の中で動きを止めてしまった切島に、3つの結界が襲う。

 足、腰、肩。それぞれを板状の結界に拘束、腰と肩に関しては手まで結界に捕まってしまったため、できの悪い石像のようにピクリとも動けなくなってしまう。

 

「動けねえだろ。降参するんだな」

 

「んな簡単に諦めるわけねえだろ! こんんくそおおおおお!」

 

 しかし諦めない。切島は血管が浮き出るほどに体を動かそうとするが、悲しいかな唯一自由な首から上だけが動くだけだった。

 

「切島、諦めろ。降参って言ってくれねえと、お前が気絶するまで一方的に攻撃することになる」

 

「んぐぐぐぐ……くそ。俺の負けだ……!」

 

『まさかまさかの一試合目同様! どちらもダメージを受けることなく決着が着いちまったぜ! おいおいイレイザーヘッド! 結界は無敵か!? あまりに一方的だぜ!』

 

『相性と言ってしまえばそこまでだが、わざわざ切島を結界の群れで機動力を奪い、その上で拘束をしている。つまりあの結界に囲まれなければ、まだどうにかなったかもな』

 

 しかし、と相澤は口を閉ざす。

 

(あれだけの数の結界を一度に指向性を持って作れるのなら、相手の移動先すら誘導できるのかもな。攻撃力という欠点はあるが、防御と拘束においては飛び抜けている個性だ。問題は経験と練度が足りていないってことか)

 

 抹消を使えば無力化は簡単だが、それは抹消が例外的としか言いようのない代物だからだ。

 

(だが、次の相手は爆豪。火力、戦闘センス共にAクラストップ。現役のプロヒーローと比べても高水準な個性を相手に、どう対処する?)

 

 

☆

 

 

『やってきたぜ準決勝! 圧倒的な戦闘センスと超強力な個性でここまで登ってきたぜ! 爆豪勝己ィ!』

 

「ぶっ殺す!」

 

『対戦相手は矛楯勝負、そして盾盾勝負を勝ち抜いた防御拘束はまさしく鉄壁! 札折界支ィ!』

 

「いっちょやったるぜ!」

 

『試合、開始だぜ!』

 

 準決勝。直前の轟と飯田による戦いで熱くなった会場の歓声を受けて、決勝に進むための決戦が始まった。

 

「結!」

 

 開幕早々札折が仕掛ける。

 八百万、切島戦で勝利の決め手となった十八番の技。小結界の群体が爆豪を中心に展開。

 

『来たぜ来たぜ! 開幕早々結界の檻! 前、前々回を決めた最強の技! 爆豪はどう対処すんだ!?』

 

「馬鹿の一つ覚えが! んなもん全部ぶっ壊しゃいいだけだ!」

 

 BOOOOON!!

 火花を散らして爆豪が周囲の結界を破壊していく。

 流石に一撃は難しいようだが、それでも数回の攻撃で破壊されていく結界に、会場がどよめく。

 

『八百万の大砲、そして切島の連打を受けきってきた鉄壁の結界が! 今、爆豪に次々と破壊されていくぅ!』

 

「どんどん壊してくれていいぜ! おかわりはいくらでも用意してやっからよ! 結!」

 

 しかし、札折も黙ってみているわけではない。

 破壊された直後から即座に小さな結界を展開していく。

 破壊する爆豪、結界を展開し続ける札折。千日手と思われる攻防だが、着実に爆豪と札折の距離は狭まっていた。

 

「オラオラオラオラオラオラア!」

 

「結! 結! 結!」

 

 このまま爆豪の消耗を狙う札折だったが、ある変化に気付く。

 

(結界の破壊速度が速まっている……!?)

 

 最初は数発だった攻撃が、4発、3発と少なくなっている。

 当然、結界の破壊されるのが早まれば札折との距離もどんどん縮まっていくわけで。

 

(ち、一旦距離を離すか)

 

「結!」

 

 幸いにもステージはかなり広い。

 早くなったとはいえ歩く程度の速度で近づく爆豪に対して、走って距離を取ることができる。だが、

 

「ハッハァ! クソ結界が柔らかくなったぜ? どうやら集中しねえとそこまで強度が出ねえようだな!」

 

(ち、バレたか)

 

 結界は正しく展開できれば銃弾すら弾く。

 しかし、札折にはまだ自身の個性に対する理解度、そして練度が圧倒的に足りていなかった。

 もはや一撃と次々と破壊されていく結界に、札折は舌打ちを押し殺す。

 

『ここにきて爆豪! 結界の檻を破ったああああ! 札折絶対絶命のピンチかあ!?』

 

『結界は確かに強力だが、集中が必要な程度には技術を求められる技ということだ。練度が上がれば別かもしれないが、今においては爆豪のセンスが上を行っているな』

 

「テメエのクソ結界は攻略したぜ! さっさと死ねや!」

 

 結界の檻を抜けた爆豪が札折に迫る。

 

「あぁ? 爆豪、てめーいつ俺の結界を攻略したつもりでいやがる。結」

 

 札折は自身を囲むように2メートル幅の結界を展開。

 しかし、それだけをすると逃げから一転。微動だにせず爆豪を睨む。

 

「はっ! オメエの結界はでけえとザコになんだろ、万策尽きたってやつか、ああ!?」

 

(コイツ、言動はともかくよく分析してんじゃねえか)

 

 BOOOOOM!

 勢いをそのままに爆豪の攻撃が結界を襲う。

 この試合で最大の威力を見せた爆発が、展開を破壊……できなかった。

 

「んなっ!?」

 

『これはどういうことだー!? 爆豪の爆発で結界が破壊できていないぃい!?』

 

「コイツは今日がお初だぜ。馬鹿の一つ覚えに爆破してみやがれよ」

 

「グッゾガアアアア!」

 

 再度、爆発が結界を襲う。

 しかし、健在。

 今までとの違いに真っ先に気づいたのは爆豪だった。

 

「俺の爆破が、すり抜けてやがる……」

 

 爆豪の目には見えていた、結界に向けて放った爆発が結界の中にすり抜け、結界に当たったのは自分の手だけだったのだ。

 

「正解だぜ。できるようになったのも最近だから数は出せねえが。爆豪、テメーの爆破は全部すり抜ける」

 

『これはどういうことだー!? 爆豪の爆発が、結界をすり抜けていやがるぞ!』

 

「さっきまでほど固くはねえが、爆発がなけりゃお前の拳は人並みだ。そのぐれぇなら何百発だって無傷だぜ?」

 

 爆豪の個性爆破、その最たる力が爆破の衝撃。

 グレネードがいい例だが、あれは起爆時の衝撃でグレネード自身が粉々に拡散することでダメージを与える。

 つまり、爆破単体での攻撃範囲は極めて小規模になる。

 爆豪の攻撃は手の形で四方に散ってしまう爆破の力に指向性を持たせている。だからこその火力であり、手で爆破のエネルギーを受け止めるからこその機動力を確保している。

 

「結!」

 

「ぐっ!?」

 

 新たに展開された長方形の結界が、呆然としている爆豪を突く。

 

「足が止まってんぞ爆豪! 結!」

 

 今の札折は結界同士を干渉させることはできない。

 だが、ソレ以外なら結界の中からでも外に結界を出せる。

 拘束するためではなく、打撃を与えるための結界が爆豪を襲う。

 

「くっそがア!」

 

 不意を突かれた一撃は受けてしまったが、即座に空中に回避する。

 

「ほれほれ、動き続けねえと落ちんぜ爆豪!」

 

 逃げた先、回避した先に結界が次々と展開されていく。

 今の爆豪に取れる手段は回避の一択だった。

 

『ここにきて攻防が反転したぜ! 攻撃する札折、回避する爆豪! こりゃ試合が決まっちまうのかァ!?』

 

(クソが! 爆破が効かねえんじゃ火力が出ねえ!)

 

 空中で3次元に回避を続ける爆豪だったが、心中は焦りを生み、

 

「なら、爆破以外で攻撃すりゃあいいだけだろ!」

 

 終わるほどの戦闘センスではない。

 結界を回避しつつ地面に降りた爆豪は床を爆破、崩れた瓦礫の一つを掴むと大きく振りかぶる。

 

「爆殺メテオ!」

 

「あ! あれ私の超必!」

 

 その光景を見ていた客席で、麗日が声を上げる。

 奇しくもソレは、爆豪を追い込んだ技と酷く酷似していた。

 投げる瞬間に掌を爆破、通常では考えられない速度を盛って瓦礫が結界にぶつかる。

 

「気付くの早えんだよ、この戦闘センスお化けが!」

 

 それでも受け止めきった結界の中、札折が悪態をつく。

 確かに札折の結界は爆豪の爆破をすり抜ける。だが、ソレ以外はすり抜けない。

 一撃ならまだ耐えられる。

 だが、それがあと何発も続けばこの結界は崩れるのだ。

 

「オラオラオラオラア!」

 

 迫る結界を回避しつつも爆豪の攻撃は止まらない。

 そして、

 

『割れたア! 爆豪を完封したはずの結界が! 今! 破壊されたぜェエエエエエ!』

 

「そしたら結」

 

 破壊された直後に再度結界を展開。

 

「がーっはっはっは! 結界なんざ何度でも張りゃいいんだよ!」

 

「よぉ。なに笑ってんだァ?」

 

「へ?」

 

 なぜか背後から聞こえる声。そしてぽんと掴まれる肩。

 ギギギと寂れたブリキ人形のように振り返った札折が見たのは、

 

「楽しそうじゃねえか。俺も混ぜろや」

 

 同じ結界の中にいる悪魔の笑みを浮かべた爆豪だった。

 心なしか悪人面が普段の3割増しだ。

 

「あのー、どうして結界の中に?」

 

「んなもん、割って張り直す前に入っただけだ」

 

「あー、そっかー。まじかー、そう、かぁ……」

 

 BOOOOOOOOM!!

 

 準決勝勝者、爆豪勝己

 

*1:
戦闘用の「つるはし」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。