結界師が行くヒーローアカデミア   作:無個性な一般人

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模擬戦闘の感想戦!

「では、総評と行こうか!」

 

「イッエーイ! オイラ達の完全勝利!」

 

 試合終了後、モニター室に集まったA組で感想戦が行われた。

 

「まずは今回のMVPはだーれだ!」

 

 オールマイトの質問に誰もが分かりきったことをといった表情を浮かべる。

 そんな中、峰田が手を上げた。

 

「そりゃもちろん圧倒的な拘束力を見せたモギモギのオイラ」

 

「札折さん、ですわね」

 

「ウチも、札折だと思います」

 

「んだよチクショー! まーたオメェばかりいい思いしてんじゃねえぞ! オイラより目立ってんじゃねえ!」

 

 峰田のみが不満を爆発させる中、感想戦は粛々と進められた。

 

「理由を教えてくれるかね?」

 

 詳細を求める声に手を上げたのは八百万だった。

 

「おそらく今回の作戦立案は札折さんで合っておりますでしょうか?」

 

「作戦ってほどじゃないけどな」

 

「であればお話は簡単ですわ。戦闘シチュエーションの選定から、言葉による私達の思考誘導。そして峰田さんの個性を使って私達の行動誘導。今から冷静に思い返せば最初から最後まで札折さんの掌の上でしたわ」

 

 八百万のコンパクトにまとめた評価に理解を示すのはオールマイトただ一人。

 A組全体としてMVPは理解できるが、掌の上という表現が理解できていなかったのだ。

 

「チョット待ってくれ八百万。確かに札折の結界と峰田のモギモギのあわせ技は凄かったがよ、その思考誘導とか、行動誘導ってどういうことだよ?」

 

「疑問を疑問のままにしない。ナイスだ! 切島少年!」

 

 わからないことをわからないと言えることがどれほどすごいことか。オールマイトの賛美に切島が顔を赤くしながら「うっす!」と答える。

 皆が頷く中、後ろで飯田が「不覚!」となぜか悔しがっていた。

 

「自惚れるわけではございませんが、私の個性”創造”はヴィランからしてみれば不確定要素が大きく、どのような盤面にも対応が可能となる強力な個性です。私が十二分に扱えればではありますけど」

 

「自惚れていいんじゃない。あの大きな布とか、ウチが同じ個性を持ってても同じようにできる自信がないよ」

 

 共に戦った耳郎ならではの横槍に八百万は笑みをこぼす。

 

「耳郎さんにそう言ってもらえて嬉しいですわ。次は負けないよう精進いたします!」

 

 二人の微笑ましいやり取りに場の空気が温まるのを感じた二人は照れて頬を赤くし、コホンと取り繕うと八百万が話を進める。

 

「初手に結界を用いて音を出さず耳郎さんの索敵を封じることで、位置情報からの作戦行動を阻止。コレにより相対するまで私の創造が無為になりました。次に出会い頭の結界により耳郎さんの遠距離攻撃を封じ、そして私の創造物を破壊の一択に絞らされました。戦闘開始直後までの期間で私達の選択肢は一つとしてありませんでした」

 

 見ているだけでは理解しきれなかった戦う前の戦い。対戦者となり、盤上の目に見えない戦いに辛酸を味わった八百万と耳郎だけが理解させられた戦い。

 気がつけばA組の視線は札折に向けられていた。

 

「八百万が持つ万能個性、耳郎の索敵能力。先手を取られたらまず勝てないのは分かっていたってだけだ」

 

「ご謙遜を」

 

「いや、まじで。ホントホント」

 

 あっけらかんと答える札折だが、彼に向けられる視線が緩むことはなかった。

 個性把握テストと試合で刷り込まれた、特殊な個性を持った峰田に次ぐバカという認識がひっくり返されたのだ。

 本人が認めずとも結果によってくだされた評価が覆ることはなかったのだ。

 

「私達を結界に封じ込めたあと……えっと。その時点でタイムアップまでの持久戦を取られた場合、私達の敗北は必至。そのため、私は言葉で札折さん達をタイムアップ以外の勝利条件に変えようとしました。コレも誘導されたことだと今なら分かりますわ」

 

「へー。声が聞こえなかったからわけ分かんなかったけど、そんなことが起きてたんだな」

 

「ケロ。でも、それって耳郎ちゃん達にとってはよかったことじゃなにのかしら」

 

 納得を見せた切島に続いたのは蛙吹だった。これに八百万は首を振る。

 

「あのときは私もそう思いました。ですが、そうなれば私の取る行動は結界の破壊。私の個性はありとあらゆる状況に対応できますが、大きな物や複雑なものを創造する場合は集中と時間が必要になります」

 

「なるほど。戦闘中は難しいけど、結界の中なら札折達は手が出せない、集中も時間もできちまうってことか」

 

 深い理解を示した切島を八百万が肯定する。

 

「あの場において時間は私のみに与えられたアドバンテージ。私がそのことに気づいていればもう少し展開は優位なものになったかと」

 

 確かめるように八百万が視線を向けると、札折はまいったとばかりに肩をすくめた。

 

「まいったな。次は同じ手が通じないじゃねえか」

 

「私の誘導に従ったフリをし、峰田さんの個性を分かりやすく見せることで。結界の破壊とその先の展開までを含めた攻撃のための創造から、結界を解除したときの防御のための創造を強要されていたのです。耳郎さんもあの場では私が防御をすると思い、攻撃という手段を捨てさせました」

 

「ウチが天井に向けて個性を使ったら天井が崩れるかもしれないし、核が二人の後ろにあるからそれも無理。完全に行動を封じられたってわけ」

 

 この場で八百万以上に行動の機会を潰された耳郎が悔しげに答える。

 自身の長所である音による索敵、音波による遠距離攻撃。対戦表で唯一攻撃の手段を持っていたはずなのに、見えない鎖で縛り付けられたようだと。

 

「なんかその表現エ」

 

 峰田がなにかを言いかけたが蛙吹が舌による高速のビンタで黙らせた。

 

「頭上にあるモギモギを防ぐことはできましたが、代わりに体力を消耗し次の創造まで時間を確保。回避したつもりの攻撃を最後当てることで冷静な判断を潰し、防御のために近くにいた耳郎さん共々、おそらく結界の攻撃によって締め。コレが最初から最後まで札折さんの掌の上だと評しました理由ですわ」

 

 しばしの沈黙が続き、ついで視線が再び札折に集まる。

 

「緑谷が爆豪の攻撃を読んでいたときもすげえと思ったけどよ……まじかよ」

 

「はー。爆豪の戦闘センス、轟の強個性ときて、今度は戦術センスってか? 才能マンあつまりすぎじゃね?」

 

「けっ……」

 

「……」

 

 全てを理解したA組が札折に抱いた評価の大体が「なにこいつ」ではあったが、当の本人はその評価を過大だと思っていた。

 

「今回は相手の個性と性格が分かっていたからできたことだ。要は個性の相性と条件設定が俺達に有利だった。俺の個性は攻撃能力がないし、爆豪とかの攻撃力を相手にしたら負け確だぜ。今のところは」

 

「今のところって札折お前、それじゃ勝てる見込みがあるって言ってるようなもんだぜ?」

 

「じゃあ轟はどうなんだ?」

 

 上鳴の疑問に無言を貫いていた轟が静かに反応するが、オールマイト以外に気づく生徒はいなかった。

 

「氷だけどうにか程度。氷が物理的に飛んでくるなら別だが、尾白戦みたいに凍らせるってことなら結界で防ぐことはできれば御の字ってところか。結局は試してだがな」

 

「ん~イマイチわっかんねー。俺の電気とかは?」

 

「んなもん分かるか。電気を防いだことなんざねえよ」

 

「まーそうだよなー。え、どうしよう。防がれたら俺のやれることなくね?」

 

 耳郎が少し考えて援護射撃をする。

 

「でもさ、上鳴のも使い方次第じゃない? 札折のは防げるだけで勝てるわけじゃないはずだし」

 

「確かに。結界って攻撃には向いてないし、俺の電気は当たれば勝てるわけだよな。なら先手必勝か、結界を解く瞬間を狙うとか——」

 

「ケロ。ワタシならどうかしら」

 

 初めて個性を使用した実践訓練。内容はともかく実践を想定した個性の使用にA組の思考がヒーローのソレに変わっていく。

 

 個性の強み、特性、危険性、個性同士の相性。ヒーロー科に入り、個性を扱う経験を得たヒーローの卵達は目を輝かせる。

 

「個性の理解を深め、互いに切磋琢磨する! たいっへん素晴らしィ! だが諸君! 今は授業で戦闘の評価を行う時間だぜ!」

 

『ごめんなさーい!』

 

「んん~! 素直でよろしいィ!」

 

 しかし今は授業。微笑ましげに生徒たちを見ていたオールマイトが軌道を戻す。

 

「札折少年の戦術センスは確かに素晴らしかった。設定されたシチュエーション、課せられた役割と個性を巧みに実践に落とし込んでみせた。だが忘れちゃあいけない! ヒーロー側にも戦術センスを光らせた卵がいることを!」

 

 ズビシィ! とオールマイトは八百万を指差し、たりはせず掌を上に指はきっちりと揃えて丁寧に視線を誘導する。

 一瞬きょとんとした八百万だが、耳郎が確かにと頷いた。

 

「八百万も凄かった。ヴィラン側の個性で知ってる範囲から不確定要素とか上げてくれたし。不確定な要素を絞ってカバーできるように作戦を組んでくれたよね。ウチも見習わないとって思った」

 

「え、あ、あの……」

 

 耳郎の言葉に意を得たりと瀬呂が顎に手をやる。

 

「なるほどな。色々会話してる風だったけどそういうことだったのか。攻めと守り、もしかしたら八百万達が守りだったら違った展開になったのかもな」

 

 芦戸、そして飯田が続く。

 

「アタシもそう思う! 八百万の創造で陣地をガッチリ固められたらまさに難攻不落って感じじゃない?」

 

「札折君の戦い方も八百万君の個性を十全に使わせないことを主軸としていた。八百万君は札折君と同様に限られた情報から作戦立案まで行えていた。今回は逆手に取られてしまったが、それはつまり、個性と同じだけ八百万君自身を警戒していたということだ。個性だけに頼らない戦術、俺としたことが盲点だった!」

 

 三人だけではなく周りからも思った以上の評価を受けた八百万の顔がみるみる赤くなっていく。

 手をわたわたとさせ、言葉にならない声が口をつくばかりだった。

 

 授業の時間を気にしたオールマイトが大きく頷き、締めるために口を開く。

 

「そのとおり! 今回は作戦通りにいかなかったが、そんなものは当然! 君たちはまだ実践も経験もない、いわばヒーローの卵の状態。これから学び経験を得ることで殻を破るため、自分の個性を使い人の個性を相手取る模擬戦を経験した、あとはそこから学んでいけばいいんだぜ!」

 

『はい!』

 

「では! 授業はここまでとしよう、お疲れ様でしたァ!」

 

『ありがとうございました!』

 

 こうして、A組生徒が初めて”個性を使う”経験を得たのだった。

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