結界師が行くヒーローアカデミア   作:無個性な一般人

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襲撃!? USJを襲う悪意!!

 マスゴミによる雄英高校の強行侵入事件からしばらく、俺達A組は授業のためにバスにのってドナドナされていた。

 

「私思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」

 

「あ! ハイ!? 蛙吹さん!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 ヒーローコスチュームに身を包んでバスに揺られていると、自ずと話題に上がるのは個性の話だった。

 

「あなたの個性オールマイトに似てる」

 

 自壊なんて大きな地雷を抱えて入るが、破壊力やパワーの一点で突き抜けている緑谷の個性を蛙吹が評する。

 途端に慌てふためく緑谷はいつも以上に挙動不審だったのが面白い。

 しかし、それに待ったを掛けたのは上裸なんてコスチュームなのか? と思わなくもない出で立ちの切島。

 

「待てよ、オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるものだぜ」

 

 オールマイトはナチュラルボーンヒーローであり、人の枠を超えた力を発揮する肉体はパワーに見合うだけの強靭さも彼の強さだ。

 緑谷も確かに体を鍛えている様子ではあるが、画風すら変わっていないのだから個性に対してまだまだ体が出来上がっていないのだろう。

 

「自滅の欠点はあるけどよ、それがなくなれば2代目オールマイトと言っても過言じゃないよな」

 

 緑谷を見るとなにかを悔いているのか、普段のあたふたとした様子とは違う神妙な顔つきになった。

 

「そう、なんだ。この個性に僕の体がついていけてないんだ……」

 

「ケロ。緑谷ちゃんの個性って単純な超パワーってことでいいのかしら」

 

「え、それはどういう……」

 

 蛙吹の言葉に続いたのは砂藤。

 

「俺の個性”シュガードープ”は糖分を使って筋力を増長させる。単純に力が増えるわけじゃない、飯田ならエンジンがパワーの底上げをしている感じだろ? だから緑谷の個性が単純なパワー増強なのか、なにかしらの過程から結果として超パワーになっているかってこと、でいいんだよな?」

 

「そうよ。砂藤ちゃん、ありがとう」

 

 A組内で緑谷と同じ単純なパワータイプは砂藤だけ。

 だからこそ砂藤も疑問に思っていたということらしい。

 おそらく緑谷の個性から発想を得て、自分の個性を伸ばしたり活かせる方法を求めているのかもしれないな。

 

「え、あ、べべべべ別にそそそそのっ!」

 

 A組で自分の個性を語らない奴はいない。むしろ語りたい奴が多い。

 個性は自分を表す象徴だ。爆発の個性を持つ爆豪があの性格だったり、硬化の個性を持つ切島は豪快で真っ直ぐな性格といったり。

 性格が個性に現れるのか、個性が性格に影響を与えているのかは分からないが、関係がないとはとても思えないのが個性だ。

 ましてやヒーローを目指す子どもにもなれば、自分の個性に大小のプライドを持っている。

 

「ケロ。ごめんなさい、個性についての質問はマナー違反よね」

 

 蛙吹の言う通り、個性の中にはヴィランを想起させるものもある。個性に対して良くも悪くもマナーが存在しているのだ。

 だからこそ、緑谷の反応は異常とも言えた。特に、緑谷は個性に対して人一倍の関心を持っている。

 そんな緑谷が見せる、自分の個性に対しての理解度や今のような反応に疑問が残る。

 

「い、いやその。僕も自分の個性をちゃんと把握しているわけじゃなくて。だからしっかりとした答えが用意できないんだ……」

 

 とは言え、俺も結界の個性については言っていないことも多い。それは本家の結界術が持つ正式な名前が間流結界術であり、俺が個性を結界と評しているところからも分かるだろう。

 間流結界術に結界が技として含まれていることから、俺の個性は結界を作るだけの個性じゃない。

 利点を含めそこら辺の説明がめんどいのもあって、結界が個性だと勝手に言っているだけだ。

 

「だよな。じゃねえと自分の体を壊す個性の使い方なんてしねえよな」

 

 うんうんと頷く切島に上鳴が首を傾げる。

 

「むしろソレなら俺等に話した方が良くね? 三人集まってなんとかって言うだろ?」

 

「三人寄れば文殊の知恵でしょ。てか、それだとウチ等凡人扱いになるんだけど」

 

 耳郎のトゲのあるツッコミに上鳴が喉をつまらせる。

 

「うん。本当はそうさせてくれるなら嬉しいんだけど。もう少し自分でこの個性を知りたいんだ」

 

「なるほどなー」

 

 その後緑谷の個性の話からヒーローへと話題が移っていき、爆豪が茶化されてたりしながら目的地まで話題がなくなることはなかった。

 

 

 USJに到着して、スペースヒーロー『13号』の演説が終わったときだった。

 それは黒い渦の中から現れた。

 

「13号にイレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここに居るはずなのですが……」

 

 黒い霧を纏うソイツは平坦な口調で言った。

 

「どこだよ、せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ……。オールマイト、平和の象徴が居ないなんて……」

 

 顔と体中に手をくっつけた猫背のソイツは、こちらを向き。

 

「子どもを殺せば来るのかなァ?」

 

 身の毛もよだつ不気味な笑みを浮かべた。

 

「先生」

 

 気がつくと相澤先生を見ていた。

 相澤先生はこちらを見ることなく鋭い視線をソイツらから離さない。

 

「動くな、あれはヴィランだ……!」

 

 俺達がヒーローになれば相対する存在。まだ何年も先だと思っていた存在が今、眼の前に悪意とともに俺達を見ていた。

 

「ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ!」

 

「13号先生、侵入者用センサーは!」

 

「もちろんありますが……っ!」

 

 だが、それでもヒーローを目指す者が集うヒーロー科だ。

 冷静とはどう取り繕っても言えない中でも各々が事態の把握に努めていた。

 

「上鳴、外との連絡が取れるか試せ!」

 

 イレイザーの指示で、上鳴が耳のデバイスを使うが連絡が着くことはなかった。

 皆が動揺、混乱、恐怖する中でも一番に冷静を保っていた轟が口を開く。

 

「現れたのはここだけか、学校全体か……。なんにせよセンサーが反応しねえなら向こうにそういうことが出来る"個性"がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割。バカだがアホじゃねぇ。これは、何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」

 

 授業のときも感情の上下を感じにくいと思っていたが、まさかこんな事態でも変わらないのはさすがNo.2ヒーローの実子というところか。

 

「13号、避難開始!」

 

 相澤先生が俺達の前に、まるで盾になるように前に立つ。

 

「先生は1人で戦うんですか!? あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の"個性"を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……!」

 

 普段の様子からこの状況で話せるとは思わなかった緑谷が、皆の考えを代弁する。

 指摘はヒーローオタクの緑谷らしい、個性の特徴を捉えた理論的なものだった。

 それでも相澤先生は動じることなく、首にぶら下げたマスクを装着する。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号! 任せたぞ!」

 

 会話する時間も惜しいこの状況だ。

 相澤先生が勢いよく飛び出した。

 不測の事態、不足の状況。だからヒーローは臆することなく行動する。

 

 そんなヒーローの背中は普段の猫背が嘘のように、大きくて真っ直ぐに見えた。

 

「す、すごい……!」

 

 相澤先生とヴィランの開戦。当初俺達が抱えていた不安の大部分がものの見事に打ち壊される。

 多数を相手にたった一人、集団戦闘に向かないはずの個性を巧みに扱い、迫りくるヴィランを次々に打倒していくヒーローの姿がそこにあった。

 コレが本物のヒーロー。第一線で活躍する、俺達が目指すヒーローの姿。

 

「て、考えてる場合じゃねえ」

 

 相澤先生がどれだけ優位に立ち回っていようと、オールマイトのように圧倒的な力がない個性ではジリ貧。

 個性の性質からして真正面で戦わず、自身の存在を隠して戦うことが合理的なはずの先生が、あれだけ消耗の激しい大立ち回りをしている理由。それを考えれば俺達のやるべきことは言われた通り逃げることだ。

 

「させませんよ」

 

 USJの入口を遮るように現れたのは黒い霧を体にまとったヴィラン。

 

「ワープかテレポート、移動系の個性……厄介だ」

 

「ふむ。私の個性を既に見抜いていますか」

 

 別にアイツに向けて言ったわけじゃない。

 そう見せかけてA組、そして13号に少しでも情報を共有する。

 俺は個性の関係上”空間”に対して特殊な感覚を持っている、だから眼の前のヴィランが空間に干渉する個性であることに気づけた。

 そうでなくても、ヴィランの登場と遠く離れた位置からここまで一瞬で移動できたところからも察せるだろう。

 

「皆さん固まってください! おそらくヴィランがここに襲撃できたのはあの人の個性ですわ!」

 

 伝われば十分。あとは誰かがA組が取るべき行動を決めてくれる。俺にヴィランの注目を集めることなく、ヘイトがそっちに向く。

 

 だが、そう話している間に飛び出す2つの影。

 切島と爆豪だ。

 

 BOOOOM!!!

 

 誰かが止めるまもなく距離を詰めた二人が攻撃を繰り出す。

 A組の中でもトップの火力、トップの硬さを誇る二人が前に出たのは本来であれば正解だった。

 

 相手が並であれば。

 

「危ない危ない…。そう、生徒といえど優秀な金の卵」

 

 爆発で待った土煙が晴れる前に聞こえたヴィランの声。そこにダメージの色は感じられなかった。

 飛び出した二人に動きを見せたのは13号先生だけだった。

 宇宙服の指先を開けてうごめくく黒いモヤに向ける。

 

「駄目だ、どきなさい二人とも!」

 

 13号先生の個性はブラックホール。ぶっちゃけるとオールマイト以上に強い個性だ。

 無差別に全てを飲み込む超強力な個性、しかしそれは守る目的にはどこまでも向いていなかった。

 

「防御だ! 個性使えるやつ! シールドを張るんだ!」

 

 口をめいいっぱいに開いて小学校の合唱以来の大声を出す。

 同時に、A組の皆から困惑の視線が向けられる。

 当然だ。そんなシールドとも呼べる個性を持っている奴がそう言っているのだから。

 

(頼むから余計なことを言うなよ……戦闘訓練のときを思い出せ、情報は武器だ)

 

 そしてずっと集中していた刀印を構え、背の高い障子に隠れて振る。

 

「結……!」

 

 前に飛び出した切島と爆豪を除くA組と13号先生を結界で囲む。

 誰かに相談できる状況じゃあないが、ヴィランの個性が空間に干渉する個性であるなら、俺の個性で対処できるはずだ。

 

「こ、これは!?」

 

「なるほど……」

 

 この場で俺の個性を知らない13号先生が驚き、ヴィランが訝しむ。

 本当なら13号先生以外を結界で保護、13号先生と俺でヴィランの相手ができれば理想だったんだが、仕方がない。

 俺なら結界の中から外に向けて結界を使うことができるし、13号先生の邪魔にはならないはずだ。

 全ては理想。世の中そんな上手くいくはずがないって、前世で散々経験したはずだった。

 

「札折!? 爆豪と切島が外にいんぞ! どうすんだよ!」

 

 上鳴に肩を捕まれ、その言葉を聞いた瞬間。俺に向けられた色々な感情を含んだ視線を見た瞬間。

 ストンと、俺の中でなにかが落ちる音がした。

 

「ふむ。君でしたか、なかなかに厄介。いえ、私の天敵とも言える個性ですね」

 

 ヴィランが俺を捉える。

 ヴィランの中でも特級にやばいヤツ。

 面倒だな。

 

「壁程度で防げる私の個性ではありません。つまり、貴方の個性はシールドを作る単純なものではありませんね?」

 

「上鳴。お前、俺の個性をアイツにバラしたな、わざとやったのか?」

 

「え、な、なにが?」

 

 苛つくとは別の感情だ。上鳴がわざとでないことぐらい分かっている。

 落胆だ。並べたドミノを風で崩されたり、ゲームでやりたかったかっこいいコンボが、見せ場で上手く決まらなかったのと同じ。上手くいかなかった、そんな子供じみた理由だ。

 

「今後のために覚えておけ。俺のようなサポート向けの個性はバレたら狙われる。厄介だから、邪魔だから。俺の個性は今、アイツの移動系の個性からお前等を守っている、この意味。分かるよな?」

 

 あぁ、納得だ。俺の個性がコレである理由は、俺の性格が良く示している。

 

「あ……。す、すまん!」

 

 謝罪よりも次から気をつけてほしい。じゃないと次からお前を勘定から外す必要が出てくる。

 視界が狭まっていく。

 焦っているわけじゃない、むしろ思考がクリアになっていく。

 

「札折さん! 私に作戦がございますの!」

 

 横から八百万がヴィランに聞こえない声量で話しかけてくる。

 クリアになっていった思考が呼び戻されていく。

 模擬戦のときはメタプレイと相性で勝てたが、戦術に置いてはやはり八百万が頼りになるな。

 

「頼む!」

 

「飯田さん、砂藤さん、麗日さん! こちらに!」

 

「敵を前に作戦会議ですか」

 

 ヴィランが嘲笑う。

 しかし、今の状況をアイツ一人で打開することは不可能。

 移動の個性がどこまで汎用的かは分からないが、無傷の切島と爆豪を相手にしながらこっちをどうこうするのは難しいはず。

 

「切島! 爆豪! 出しゃばったんなら最後までやりやがれ!」

 

 時間を稼げ。とは言わない。

 ヤツの意識を引いてくれれば問題ない。

 

「ウッセェ! クソバリア野郎がァ! 指図すんじゃねエ!」

 

「すまねぇ! ちゃっちゃとこんな野郎ぶっ潰してやる!」

 

 直情的な二人はすぐさまヴィランに襲いかかる。

 ヤツの個性は強力だが相澤先生や俺同様に真正面でやり合うタイプではない、A組でも戦闘力の高い二人ならかなり粘れるはずだ。

 後ろでは作戦の伝え終えた八百万が最後の確認をしていた。

 

「全員での脱出は不可能ですわ。唯一移動に直結した個性を持つ飯田さんと連絡手段を持つ上鳴さんを逃がし、応援を呼んでいただきます。私たちは飯田さんが少しでも逃げられるように、あのヴィランの足止めですわ!」

 

「でも相手が外まで追ってきたらどうするんだよ! オイラたちにこんな奇襲をする奴らだぞ!」

 

「もしも飯田さんを追いかけるなのなら、その間に私達が外に出ればいいだけですわ。最優先目標は外との連絡、その次に移動の個性を持つヴィランの行動を強制することですわ」

 

「コレ以上の問答はアイツ等の頑張りを無駄にする。やるならやるぞ!」

 

 作戦が決まったのならあとは実行だ。13号先生が悔しげに言葉を漏らすが、今はそんなことどうでもいい。

 この最悪な状況を少しでも打開しなくちゃ全滅なんだ。

 

「では、行きましょう!」

 

 飯田が上鳴を背負う。

 

「麗日さん。お願いいたします!」

 

「任せてっ!」

 

 麗日が飯田と上鳴を個性で無重力にする。

 

「砂藤さん!」

 

「全力でいくぞぉおお!」

 

 最後にA組で安定した直接的なパワー増強個性を持つ砂藤が二人を抱えると、全力でUSJの出口に向かって放り投げた。

 勢いよく射出された二人が結界に触れる直前。

 

「解っ! からの結っ!」

 

 自分たちを覆っていた結界を解除、同時に二人を包むように入口までの長方形の結界を張る。

 爆豪達を相手にしていたヴィランが、見て分かるほどに苦しげに二人を睨む。

 

「くっ! しかし!」

 

 俺の実力がもっと高ければよかった。

 今の俺じゃ入口までの長距離の結界を張るだけで手一杯。結界の強度だって普段と比べれば紙ッペラが限界だ。

 

「皆。済まない、これ以上結界は張れない……!」

 

 自分たちを守る結界を張る余裕がなかった。

 

「皆さん! ヴィランをお二人に向かわせてはなりません!」

 

「多分相手の個性には発動までのタメが必要なはず。だから皆! やつに個性を満足に使わせないように攻撃を続けるんだ!」

 

 八百万がすぐさま指示を出し、相手の個性を注視していた個性オタクの緑谷が細部を補填する。

 希望の芽は既に走り出している。一つの達成した光明にA組の意識が前向きなものに変わっていた。

 

「障子君! 個性で目を増やして、相手の個性は発動前に渦みたいな兆候があるはず!」

 

「任せろ!」

 

 障子が複製腕で目を全方に向け。

 

「耳郎さん! 音で他のヴィランが来ないか確認をお願い! 障子君と連携して戦況の把握を!」

 

「この人数だと聞き分けるの大変だけど、やってみよる!」

 

 耳郎がイヤホンジャックを地面に刺して音をかき分ける。

 

「攻撃能力がある個性の人はヴィランを! 範囲攻撃はお互いの邪魔になっちゃうから最小限に! ソレ以外は固まって対処するんだ!」

 

 作戦は知識と場数がなければ咄嗟に組むことは不可能。だから最低限に明確な役割を与えれば、後は大雑把な方針だけを決める。

 コレが相澤先生やオールマイトなら、生徒の個性と相手の個性から具体的な詰めを用意できたかも知れない。

 いや、先生ならそもそも生徒を矢面には立たせないか。

 

『おうっ!』

 

 それでも、導く者がいなければ戦えない幼子ではない。

 A組の意識がこの場の窮地を自ら打開するべく動き出した。

 

「作戦を練るには時間を掛けすぎましたね!」

 

 だが、相手は雄英のセキュリティを突破して強襲を仕掛けてきた手練れ。

 たとえ下っ端が烏合の衆だったとしても、眼の前のヴィランがそうであるわけがなかった。

 

「あなた達全員をちらして、後から逃げた子どもを追えばまだ間に合う!」

 

 ヴィランを中心として黒いモヤが吹き出す。

 爆破も氷も酸もありとあらゆる物を飲み込んで広がるモヤが、A組を覆っていく。

 

(まだ、まだ飯田達が出られてない……!)

 

 ヴィランの意識は俺達に向いている。だから少しだけ結界を解いて自分たちに回せば……。

 だめだ、可能性が残る。最優先は二人が外に出ること、ヤツの言動から個性で俺達を殺すことは難しいはず。

 なら……。

 

(最後まで結界を維持する!)

 

 視界が霧に覆われる直前、二人が出入り口まで到着したことを確認した俺は結界を解除した。

 

(俺の、勝ちだ)

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