結界師が行くヒーローアカデミア 作:無個性な一般人
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オールマイトの登場、それによって全てが解決すると思われた。
しかし、緑谷達の前で初めてオールマイトが苦戦する光景が広がっていた。
「オールマイトの攻撃が吸収されてる……」
緑谷は信じられない思いだった。
自身のOFAは未成熟で何もかもが憧れには程遠かった、だから脳無に効果がなかった。
それでもオールマイトなら、数々の偉業を成し遂げたナチュラルボーンヒーローなら、と。
「勝って……」
打撃をくらい血を吐きながらも、オールマイトは一歩も引くことはなかった。
両者の拳一つ一つが生み出す強烈な衝撃波に、誰も近づくことが叶わない。
(ち、動きが早すぎる)
距離にほとんど影響をうけない札折でさえ、両者の戦闘に介入することが叶わずにいた。
覚悟を決めた一撃で脳無の超回復を知り、これならと考えていたが高速で戦う両者に割って入るには、地力から足りなかったのだ。
(早いやつは天敵だな、対策を考えねえと)
もしも、万が一にもオールマイトが負けようものなら。そんな考えに突き動かされて焦っていた札折は見逃してしまっていた。
相性的に脅威足りえないそれの注視を怠っていた。
「Plus ultraaaaaaaaa!!!!!!」
周囲が不安に思う中、オールマイトはヒーローがヒーローと呼ばれる本当の姿を見せ、己を殺すための個性を持った脳無を討ち果たした。
「かかってこいよ。ヴィラン」
勝った。日本を代表する平和の象徴が、不利を覆して凶悪なヴィランを打倒した。
当初加勢するつもりだった轟達が、ナンバーワンヒーローの力に圧倒され気付く。
自分達では足手まといだったと。
そしてどこから湧いたのか、もしくは気絶から回復したのか他のヴィランが現れたことで、A組生徒達の意識がそちらに向いてしまう。
そんな中、激昂した死柄木が破れかぶれの特攻を敢行する。
脳無との戦闘を見た直後ということもあり、その動きは酷くゆったりとして見れた。
(この程度、オールマイトなら簡単に制圧できるだろう)
誰もがそう思い、誰もが見逃したソレに、全ての事情を知る緑谷だけが反応してみせた。
「ォオール、マイトォオオ!」
近くにいた轟、爆豪、切島が緑谷を見失う。
両足を自壊させる程に強力な力で射出されたのだ、近くにいた誰もが見逃していた。
ただ一人、遠くにいた札折だけは捉えていた。
(緑谷、そりゃ無鉄砲にも程がある。特に死柄木とかいう奴はお前にとって相性が悪いはずだ)
緑谷らしい行動ではあるが、その判断は彼らしくなく、札折が咄嗟に刀印を構える。
(おーすっげゆっくりに見える。しかもオールマイト一直線とくれば)
個性の特性上、激しく動き回る相手を結界で捕らえるのは難しい。
特に、今の札折の練度ではなおさらだ。
「結」
だが、移動先が分かっていれば囲わずとも対処はできる。
「く、ここに来て……!」
「ぐっ!?」
結界で黒霧の一部を捉え、さらに死柄木の足元に結界を張って足を引っ掛ける。
「え?」
攻撃対象を見失った緑谷は、驚いた声を上げながらオールマイトの眼前を通過し、地面を擦ってようやく止まった。
「ま、まだだっ!」
足を取られて転倒しそうになった死柄木だが、即座に体勢を立て直す。
黒霧を拘束していた結界を崩壊させると、再びオールマイトに向かおうとする。
が、死柄木の伸ばした手を突如飛来した弾丸が撃ち抜く。
激痛に悶える死柄木だったが、事態は更に転がる。
しかも、それは味方にとって好都合な方向だった。
「A組クラス委員長飯田天哉、救援を連れて来ました!」
声の元には、オールマイトが破壊した入口に立つヒーローたちの姿
授業で教鞭をとる姿とは違う、プロのヒーロー達が一様に鋭い表情で現れたのだ。
雄英高校のヒーローが駆けつけてからは怒涛の展開だった。
スナイプ先生が遠距離から死柄木を含むヴィランの手足を狙撃、プレゼントマイクが個性ヴォイスで広範囲にヴィランを蹴散らし、エクトプラズムが無数に増殖し残りのヴィランを制圧、他ゾーンに残っているヴィランと生徒に向かっていく。
現場に現れ、生徒を保護、ヴィランを制圧していくまでの流れはさすがの速度。
生徒たちはその光景に安堵し、思わず力が抜けた。
助かった。もう安心だ。いけ、ヴィランを倒せ。
テレビで見て憧れたヒーローたちの姿が、眩しく輝いて見えた。
「クソッ! クソッ!」
悲鳴にも聞こえる叫び声が聞こえたことで、札折はようやく現実に目を向ける。
手足を撃ち抜かれた死柄木が黒霧に包まれ、撤退を試みていたのだ。
「逃がすかよ。結っ!」
即座に二人を包むように結界を張る。
「これは、札折君の……!」
(だから俺の名前を出すんじゃねえよ緑谷)
ため息が出そうになった。
しかし、結界に集中しなくてはいけなかったので、愚痴は頭の隅に追いやる。
後で文句を言ってやろうと心に決めて。
「先生! 黒霧の個性はワープゲートを作ることです! 結界の中ならワープができません!」
状況を見た緑谷が激痛を押し殺して声を上げる。
「飯田君から話は聞いているのさ! 彼らが今回の騒動を起こした主犯格、ここで逃がすわけにはいかないのさ!」
根津校長が状況を即座に整理し、結界に囚われている死柄木たちを拘束するため、先生達に指示を出そうとし、
パリンッ――どこからか飛んできた何かが、死柄木を拘束していた結界を粉々に砕いた。
突然のことに札折が呆然としている中、死柄木と黒霧はワープゲートの中に吸い込まれていった。
☆
と、これで相澤先生を含む怪我人は入院、俺達生徒は先生に保護されて今回の騒動が終わる、と俺は思っていた。
結界を割られたこともあり、最後まで警戒しようと隠れ続けていたときだった。
(うぁああああああ!? オールマイトがガリガリになったああああああ!)
最初、緑谷とオールマイトに近づこうとした切島の視界を、セメントス先生が壁を作って遮ったことに首を傾げていた、その時。
ボフンという音とともに、2メートルを超える巨漢が一瞬で縮んでしまったのだ。
しかも、緑谷とセメントス先生は、それを当然のことのように受け入れていた。
俺がおかしいのか? いや、そんなことは絶対にない。
遠くで見てるからどんな会話をしているのか知ることはできないが、とても悲哀に満ちた空気だ。
多分だが、オールマイト先生の秘密ってやつなんだろう。緑谷がなぜ輪の中にいるのかは不明だが、遠い親戚とかなのかもな。
(緑谷の個性は超パワー。オールマイトの劣化版とは言え同系統、可能性は十分か)
普段おどおどしている緑谷だが、着替えの時に見た体つきはかなりがっしりしてた。大人になったらオールマイトみたいなナイスガイになるのかもしれん。
ガチムチな緑谷がオドオドしてる姿が思い浮かんでしまったぞ。どうしてくれんだコノヤロー。
「札折さーん! どちらにいらっしゃいますのー!」
予期せぬイメージテロに気分が悪くなっていると、八百万の声が聞こえた。
轟が死柄木に向かって飛び出した直後に隠れてたからな、そりゃ探されるよな。
「悪い、ここだー!」
大声を出したことで耳郎、葉隠、障子からも声を掛けられる。
「あ、札折いた」
「わー! 札折君いつの間に隠れてたの」
「札折、作戦とは言え先に言ってほしかったぞ」
相当心配を掛けてしまったようだ。時間がなかったとはいえ申し訳ない。
「わりい、轟が前に出た直後で説明する余裕がなくてな。皆無事で良かったぜ」
一人隠れて結界結界してた俺が言うのもおこがましいかも知れないが、友人の無事は素直に嬉しいものだ。
「そんなことないよ、ウチ等が危なかったら札折が守ってくれるって信じてたし」
「え、なにこのナチュラルイケメンガール。惚れそう」
耳郎、めっちゃいい子!
確かにそのつもりだったとは言え、簡単に察してくれるじゃん。
絶妙な距離感で接してくれる、絶対いい彼女になるタイプだ。
「ちょ、変なこと言わないでよ」
そんな感じで初めての実践直後ということもあり、一様に謎のテンションで無事を喜び合っていると、切島達も合流してきた。
「札折! お前どこにいたんだよ! 姿が見えねえのにバンバン結界張ってたしよ!」
「ケッ! 大方物陰に隠れて、ヴィランに見つからねえようビクビクしてたんだろ」
「爆豪の言い方はアレだが、札折が狙われずに個性を使える状況は俺達にとっては優位に働いていた。札折がいなかったら俺も危なかった」
「ウッセェ半分野郎! んなことは分かりきってんだよ!」
切島、爆豪、轟から謎の高評価を頂いてしまった。
自分でも結構せこいやり方してたと思うんだが、こいつ等本当に高校生?
「……札折、すまねえ!」
と、いつの間にかフランクにやり取りできる間柄に成れていたことに感動していると、切島が直角に腰を曲げて来た。
なんだなんだ。
「黒霧の時、俺が前に出なけりゃ札折の個性でアイツを閉じ込められたのに、焦っちまった!」
「気にすんなよ。あのときはまだ俺の個性が通用するかも分かってなかったんだ。13号先生の個性は殺傷性が高すぎる、そうなれば接近戦闘に強い切島と爆豪が前に出るのは安牌だったろうしな」
それに、敵の目の前で作戦会議する余裕もなかった。
「ありがとな。お前等がタマ張ってくれたおかげで後衛の俺達は助かったんだ」
最善という点で見れば別かもしれないが、あの状況で最前線に誰よりも早く立つ。これがどれだけ勇気を必要とするのか。
別にフォローのつもりはなかったんだが、顔を上げた切島は嬉しそうに笑っていた。
「お、おまえ……ありがとう!」
「けっ……」
そうこうしているうちに、他のゾーンにいたA組の皆も先生たちに保護され、俺たちはメディカルチェックを受けることになった。
ヴィランに襲われてトラウマになってしまうケースは多いそうだ。特にヒーローはヴィランと真正面から対峙することが多い。
トラウマが原因でヒーローを引退なんてこともあるらしい。
「そういやよ、札折」
「なんだ峰田」
メディカルチェックを終えて、Aクラス全員が問題ない結果になった。
その帰り、なんとなく久方ぶりな気もする峰田との会話。
「お前、どうしてあの場で戦えたんだよ」
「そりゃどういう意味だよ」
峰田は、えらく神妙な顔をしながら、迷った様子で俺を見た。
「相澤先生があんなにされちまって、それを見てたのにどうして戦えるんだよ。怖く……なかったのかよ」
咄嗟に答えることはできなかった。
なぜなら、俺は場の流れに乗っただけだからだ。
体を張って最初に動いたのは轟だ。敵の前に立って戦ったのは緑谷達だ。
俺は物陰に隠れて、安全な場所から個性を使っていただけだ。
「俺は隠れてただろ」
「違う。オイラには分かる。お前はそうするのが作戦だからしたんだろ、必要だったらお前は隠れない。そうだろ?」
言われて考える。
「多分、な。必要なら前に出るかもな」
「黒霧ってやつのときもそうだ。オイラは動けなかったのに、お前は違ったじゃねえか。結界を張って、ブラフまで仕込んだ」
「上鳴にバラされたけどな」
仕方がないとはいえ、アレで俺が結界を張るやつだってバレたわけだし。
思い出したら腹が立ってきた。あとで上鳴殴ろ、そうしよう。
「オイラ、すげえカッコわりいって思っちまったんだ。緑谷が飛び出した時、オイラも一緒に戦うべきだったんだ、皆戦ってた……」
なーにシリアスモードに突入してんだコイツ。面倒くせえな。
「面倒くせえな」
やべ、思わず口に出してた。
「な、なんだよ! オイラがこんな悩んでんのに! お前だってダサいオイラじゃダメだって思ってんだろ! オイラだって分かってんだよ、んなことはよお!」
「違ぇよ馬鹿野郎。お前、もしも凶悪なヴィランに襲われてる超絶美女がいたらどうするよ」
「んなもん助けるに決まってんだろ! ったりめぇだ!」
「なら変わんねえじゃねえか。俺だって美女が襲われてたらそらもうカッコよく助けてやんよ、そんでもってお持ち帰りまでしてやんよ」
人によってはクズ野郎と思われるかもしれないが、俺には分かる。
「ちっくしょう。茶化しやがって……!」
「ガーッハッハッハ! 俺等にシリアスムードなんざ似合わねえんだよ! いっちょまえにカッコつけてんじゃねえ!」
「クソがよお! お前なんかに相談したオイラがバカだったぜ!」
お前なら、たとえ誰が襲われていたって命張って助ける男だ。
俺が保証してやる。しゃらくせえから言わねえけど。
「でもよ、俺はお前が無事で良かったぜ」
「ケッ、オイラもだぜ。次はオイラが助けてやっから、泣いて感謝するんだな」
重症の相澤先生、両足粉砕して指も知らん間に紫に染めた緑谷、脳無とかいうバカやばいヴィランと真正面で戦い、最後はガリガリになったオールマイト。
今回の襲撃で酷い怪我を負った三人のことは、リカバリーガールが問題ないと言っていたから大丈夫なんだろうけど、心配なことに変わりはない。
だからといって俺がどうこうできるわけじゃないが、次に同じことが起きたときのために、自分の個性を磨く必要がある。
実践して掴めた個性の弱点、それと可能性。オールマイトみたいに誰も彼も助けるなんて不可能だが、せめて俺の手の届く範囲。
友達ぐらい守れるようになってやる。
「まだ、なんにも終わってねえんだ……」
頭目の死柄木と黒霧は捕まえられず、結局は野放し。
最後、俺の結界がナニカに破壊された。
解決なんてお世辞にも言えない。
むしろまだ後ろにナニカいやがる。
「なんか言ったか、札折?」
「なんでもねーよ」
かかってこいや。全部まとめて守ってやる。