仮面ライダーになれたら   作:赤椿

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クウガのお兄さんたちの隣町、小さな遊園地がある隣町。

時同じくして、もう一人、変身しちゃった人


その3

 

 ピカピカの新米マジシャン後藤 晴(ごとう はる)、芸名と本名を同じくする俺には3つのルールがある。

 

 俯く子どもには手を差し伸べ、悲しむ隣人にはハンカチを、そしてみんなの日常にほんの少しのサプライズを。

 

 誰かに笑顔になって欲しい。悲しむときに、一歩を踏み出す背中を押せるように、驚きと喜びを与えたい。

 

 マジシャンを目指していく中で、憧れの人がいる。それは、テレビの中のヒーロー。仮面ライダーウィザード=操真晴人だ。

 

 彼はいつだって誰かの希望を、笑顔を守るために魔法を使って戦っていた。本当はそれも、自分の希望を守るためではあったけど、それでも彼は最後の希望を張り続けてホープウィザードリングを守り抜いた。

 

 子どものときに見たテレビのヒーローを追いかけるために立ちはだかった障害は2つ。

 

 まず1つ目、声が出せないこと。話すことが好きで誰とでも仲良くなれると小学生の頃の自己紹介シートに書いた彼にとっての一番の武器である声を失い、大人になった今ではどんな声かも忘れてしまった。

 

 2つ目、魔法なんてこの世界にはないこと。残念ながら、箒で空は飛べないし魔法の杖でカボチャの馬車も出せない。

 この世に存在するのは、子供だましの視線誘導と小道具を駆使する手品の数々だ。

 

 魔法があれば隣には今も両親がいたかもしれない。と何度考え、希望を持ち、そして絶望することを繰り返してきたろうか。

 

 でも、それでもいい。彼は魔法がなくたって希望の魔法使いであろうとし、無限の力を得たのだ。あの日ショーで手を差し伸べてくれたウィザードの仮面はカッコよくてキラキラで、本当に希望の光だった。

 声のアドバンテージがない程度、そんなピンチは希少性の高いチャンスに変えられる。

 

 

 

『本日、ご用意いたしましたのは〜』

 

『こちらの果物、そう、リンゴ』

 

『真っ赤ですねぇ〜』

 

 

 タブレットから流れる動画は、誰かが撮ってくれたショッピングセンターでのマジックショーだ。

 

 打ち込みの機械音声を使い、自らの声のかわりにスピーカーから流してそれに合わせて身体を動かす。文字通り一人芝居をする。一見すると新手のピエロのように見えるその姿こそが、マジシャンとして活動するのは俺の姿。

 声が出せないなら、出せないなりにそれを活かす。

 平坦な機械音声というのは、使い方次第で武器にもなるのだ。

 

 

『それでは、懐をご覧ください〜』

 

『お財布の中身は〜』

 

『空っぽですね〜』

 

 

 が、台本を書いてる人間にセンスがなきゃ小笑い未満にしかならない。親子連れが座ってくれているが、子どもはあらぬ方向を見ているし、どちらかと言えばショーというより休憩所だ。

 興味を持ってもらうには、どうすればいいかなと、色々心理学の資料や流行について研究しているノートに改善点をまとめる。

 こうやって自分のショーを第三者の視線であるカメラを通して見ることで、少しずつ改善をしていく。カメラの持ち主はどこを注目して撮影しているかは、とてもわかり易い視線移動だ。

 最初のこれは全体を映されるだけだったものも、今では身振り手振りでカメラのレンズが右に左に振られていたり、しっかりズームもされるようになった。

 

 少しずつだが、間違いなく変わってきている。指の振りと顔の向きで誘導する方法がようやく様になってきたのか、結構いい線来てるんじゃないだろうか。

 

 テレビから時報が流れた。

 そういえば何か会見があるらしいが、流石に生活習慣を崩す訳にはいかない。

 

 明日はフリーだから、一度道具の整備と衣装の手入れをしようかと思いベッドに横になり、スマートフォンを操作して、音声ファイルを再生する。

 

 

『電気を消して』

 

 

 流暢な機械音声が返事をして電気を消した。

 

 

 目を瞑れば、習慣通りに深呼吸をして体を整えて眠りに就く。

 

 

『ようこそ、新世界へ!』

 

 へんな声が聞こえた気がしたが、睡魔に襲われそのまま意識が沈む。

 

『本当に心の底から願ったものだけに叶う、理想の世界を楽しんでね!』

 

 

 

 

 

 

 消しゴムが背中に当たった。

 

「おい晴! いつになったら喋れるんだよ!」

 

 声が出なくて、いじめられていた子どもが眼の前にいる。

 

「家に帰っても一人なんだからおれたちが遊んでやってんだぞ晴」

 

 お盆の上のおかずがまた一つ減る。机の中の教科書がなくなっている。

 

「ありがとうくらい言えよ、なぁ声なし」

 

 ビニール袋に入れた鉛筆がまた鋭い芯先で穴を開けている。

 

 窓の外に銀色の光が瞬いた。

 

『これがお前の過去か』

 

 そうか、そういえばこんなこともあったかな。

 

 声なし。あの頃流行った映画をもじってつけられたあだ名は、確かに覚えてる。忘れたふりをしていただけ。

 

『これが、お前にとっての絶望か!』

 

 いつだってずっと泣いていた。

 

【友達からでも、どうですか……?】

 

 差し出したノートは、すぐに目を逸らされる。

 

「ごめんね。手紙くれたのは嬉しかったけど……やっぱり私は……」

 

 

 

「声なし、お前本当にお人好しで面白いよ」

 

 

 

「喋れない奴にわざわざ優しくするわけ無いじゃん。遊びだよ遊び。な?」

 

「いや……えっと……」

 

「遊びだよ、な? カンニングの話いつでもチクっていいんだぞ」

 

「……はい」

 

 もうどうでもいっかな。こんなことになるんなら、生きなきゃよかった。

 

『いいぞ、お前の中にある絶望を、お前を形作った絶望を全て吐き出せ!』

 

【ごめんね、勘違いしちゃって】

 

 誰かに助けてほしくて、それでも言えなくて。

 

『全て吐き出した後に、残るもの。それこそが、お前の……』

 

 そこで目の前が

 

 

 真っ暗。

 

 

 なにもみえない。

 

 聞こえない。ききたくない。

 

 

 

 

 

「俺が、最後の希望だ」

 

 

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

 

 

 

 確かな、希望の光はそこにあった。見つけた。

 

 

 手を差し伸べてくれた人がいなかった。だから、差し伸べてあげられる、大きな手がほしいと願う。

 

 魔法使いなら、この手を大きくして、みんなに手を伸ばせる。

 

 そう思ったから、彼に近づきたくて、でも世界に魔法はないから手品を勉強した。

 

 高校の友人が、どこまでも伸びる手じゃないんだと可笑しそうに言った。たしかにそうかも、と自分も笑いながら書いた。

 

 でも、ちゃんと理由がある。

 

 悲しくて辛くて、どうしても俯いてしまうことは世の中にはある。何も見たくなくて下を向いて、頑張って顔を上げたときに、もし悪意が襲いかかってきたら多分人は壊れてしまう。

 そんな悲しいことは駄目だ。俯いてしまうことは悪くない。だから、頑張ってそこから立ち上がろうとしたときにその目が最初に見えるのは……。

 

 

 立ち上がろうとした人が最初に見るものが、差し伸べられた手のひらのほうが希望みたいじゃんって。

 

 

『そうだ、絶望の中で最後に残ったものこそ、それこそがお前の最後の希望なのだ』

 

 

 唸り声が聞こえた。恐ろしい獣のように聞こえるが、何故か不思議と怖くはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は午前七時。仕事や朝練など、早い人はもう活動を開始している。

 なにか嫌な夢を見た気がする。眠ったはずなのに、体に纏わりつく疲労感と汗を感じながらシャワーを浴びた。

 何か変な夢見た気がするなぁと。頭を抱えるが何も思い出せない。寝間着から着替えた。黒と赤のお気に入りのジャケットに合わせて私服を選ぶ。こうして見ると、憧れの人に近い服だなと鏡を見て今更に思った。

 

 目覚ましの通知を切りながら、財布を持って家の近くの自販機に向かう。

 

 物価高騰だなぁと、値段を見て音のない呟きをして、財布にあった小銭を5枚入れてボタンを押した。

 

 

 ガコン、と音を立てた自販機。

 

 登校途中の小学生からの挨拶に、いつものように懐に入れていたトランプを使ってあさイチからのカードマジック。

 

「おい! 今日こそ俺がやってもらうから早く!」

 

「いや今日は俺だって!」

 

 今日は誰がトランプを引くかで言い合いが始まる中、俺はトランプをじっと見ている少し伏し目がちな子へと自分の手を差し伸べた。

 

 ジェスチャーで引いて。と示すと、おずおずとトランプを引く。

 

「今日の絵はなに! 見せて!」

 

「よし、覚えたから晴兄ちゃん早く続き!」

 

 言い合いをしながらも、結局引いた子の近くで集まってはしゃぐのだから最初のじゃんけんってあんまり意味なくないかなぁと思いながら、シャッフルし、束を広げ、一枚を差し出す。

 

 子どもが受け取り裏返すと、そこにある絵柄はハートのA。

 その結果を見て小学生が興奮して走り去っていくのを見届け、朝のルーティーンが終わる。トランプをポケットにしまって帰ろうとした。

 

 

 

 

 空に火柱が立つ。

 

 

 

 そして、爆発音。

 

 

 

 耳が爆発音でキーンと突き刺される感覚がある。思わず耳をふさいで目をキツく閉じてしまったが、すぐに薄く目を開けてみると、そこにはもう、日常はなかった。

 

 真っ赤に燃える自動車が飛んできて思わず飛び退く。

 

 自販機が並べられたブロック塀ごと燃えた鉄塊に潰されて火花が舞う。

 

 

 

 ランドセルを背負った子どもと主婦、サラリーマンが逃げてきたその奥から現れたの怪人。

 

 

『ゲートはいねえみてえだが、折角だしウォーミングアップに暴れてやるかぁ!』

 

 赤い大剣を振るうことで、街路樹は燃え落ち、アスファルトごと道路が壊される。自動車をまるで玩具のミニカーを扱うように放り投げて面白半分に街を壊していった。

 

 

 逃げる。逃げよう。逃げろ。

 

 頭ではそう思っても、体が動かなかった。

 

 

 視界の端で足を引きずったサラリーマンが見える。

 いや、足を引きずっているのではない。

 

「早く! 無理でも足を動かすんだ!」

 

「無理だおっさん……俺置いてけ!」

 

「駄目だッ!」

 

 足を血だらけにした学生に肩を貸して、必死に逃げていた。

 

 それを見たときに、頭は水を被ったかのよう冷静になり、そして、心が激しく燃え上がる。

 

 足取りは軽く風のように、二人のもとに走り出した。土を踏みしめ、深く足跡を刻みつけるように力強く駆け出す。

 

 気づけば学生の体を自分も支えて走っていた。

 

『おぉ、いいね、感動する。あぁ、本当にいいぜぇ、そういうのは!』

 

 後ろから声が聞こえた。10メートルもしない距離に奴が立っていた。

 

『適当に壊すのもおもしれえが、やっぱり、偶にはまとめてポイント稼がなきゃなァ!』

 

 大剣が横一文字に振るわれる。炎が半月状になり、空気を切り裂き、迫ってくる。

 

 咄嗟に学生の背中を押し、3人一緒に前に倒れ込むように避ける。

 

 背中に熱波が浴びせられ、火傷までは行かずとも、その熱で思わず横からうめき声が聞こえる。

 

「もう、もういいから……あんたたち先に行ってくれよ……」

 

 泣きながら彼はそう言って体を起こし、叫ぶ。

 

 

「早くいけよ!」

 

 

 サラリーマンがもう一度助け起こそうとしているが、学生はその手を逆に掴んで振り払い、その間にも奴が迫ってくる。

 

 

「もう、行ってくれよォ……! おっさんたちみたいな人がいたってだけで、俺はもう死ぬんだって、"希望"が見えたんだよぉ……だから、頼む……逃げてくれよ!」

 

 その顔を見て、その言葉を聞いたときに、晴の中で何かが揺らめいた。

 

 

 

 人々から笑顔を奪った悪魔に。

 

 日常が壊れる理不尽に。

 

 死ぬことを許容して、誰かに生きてくれと願わなきゃいけない現実に。

 

 

『よく避けたな、褒めてやる』

 

 

 気づけば、もう目と鼻の先に奴が立っていた。

 

 

『雑魚だからって舐めてたが、あれで死ななかった褒美に、俺の名前を教えてやる』

 

 

 心のなかで、炎が燃え上がるのを感じる。

 

 

『俺の名は──』

 

 

 俺は今、負けたくない。

 

 

『──フェニックスだ』

 

 俺の前に立ちはだかる絶望(フェニックス)に、負けたくない! 

 

 振り上げられた大剣は、真っ直ぐこちらへ振り下ろされる直前に、2人を庇うようにして立つ。負けたくないから。ここで膝を付き、ただ死を待つばかりなんて、絶対に認められないから。

 

 

 

【絶望に負けたくない、か。面白い願いだ】

 

 

 

 不意に声が響く。いや、声が轟いた。眼の前に真っ赤な模様が浮かび、そこから光の塊が飛び出しフェニックスにぶつかる。光はそのままの勢いで大空を翔けている。

 

 

 

『……テメェ、俺に傷をつけるなんて何者だ』

 

 フェニックスは今ほど自身の胸に傷をつけた光を睨みながら、段々と怒りを募らせていった。このフェニックス様に、傷をつけたものはただじゃおかない、と。

 

 空を飛び回っていた光は徐々に輪郭をはっきりさせて、その体を形成していく。

 

 

 何が起きているのか誰にも分かっていないが、声には出ないものの後藤晴の人生にとって大きな影響を与えたその姿を目にしたとき、今自分が何をするべきかを悟った。

 

 

【お前は絶望に負けない意志を示し、俺を生み出した】

 

【好きに使うといい。俺の、ドラゴンの力を】

 

 

 空を飛び回っていたドラゴンは、そう言って晴の胸に飛び込んできた。

 腰と両手にほのかに熱が灯り、ドライバーと指輪が出現する。

 

 

「これって……え?」

 

 

 ハッとして喉を手で抑える。

 

 声が、出てる。

 

 

『オイ! テメェ、何者だって聞いてんだ、答えろ!』

 

 癇癪を起こした子どものように炎をまき散らしたフェニックスが無造作に大剣を振るった。

 

 

「うわぁ!」

 

「こ、こんどこそ死ぬぅ!?」

 

 後ろで二人が悲鳴を上げる。

 

 もう恐怖はない。

 

 

「大丈夫だ」

 

 

 久々に聞く自分の声は、想像していたものより普通の声で、少し低い。喉の振動が心地良い。

 

 指輪をドライバーにかざす。

 

「もう絶望なんかさせない」

 

 

 

【ドライバーオン!】【プリーズ!】

 

 

「……本当にできた」

 

 

 思わず感嘆の声が出たが、すぐにそんな場合じゃないと両サイドのレバーを操作する。

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】

 

 ベルトが呪文の代理詠唱を開始、程なくして体から魔力が湧き上がる。

 

 指輪のバイザーを下げて、高らかに宣言する。これから使う、希望の魔法の名前を。

 

 

 

「変身!」

 

 

 ドライバーに指輪を翳すと魔法陣が出現し、この体を魔法使いの姿へと変える。

 

【フレイム!】【プリーズ!】

【ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!】

 

 晴の姿が一瞬にして黒いローブの宝石の仮面に変わる。

 

「えっ!? 変わった!」

 

「もしかして、仮面……」

 

 二人が驚きの声を上げるが、正解を言いそうになった学生の声を、すぐに遮る。

 

「その名前を言うのはストップだ。悪いがネタバレってのは、マジシャン本人がやってこそ意味があるんだ。それから早く逃げてくれ。悪いが、今から始まるショーは刺激的でね、一般客には見せられない」

 

 学生の体を抱き起こしてやり、サラリーマンも腕を引っ張り起こしてやる。そうすると、二人は顔を見合わせ、そのままその場を離れてくれた。

 フェニックスの方に向き直ると、大剣をこちらに構えてこちらを睨んでいる。

 

 

『……テメェ、魔法使いだったのか?』

 

 魔法使い。終ぞなれるはずがなかった想像の産物。

 

 あぁ、そうだ。

 

「俺の名はウィザード」

 

【コネクト!】【プリーズ!】

 

 

 ウィザーソードガンを魔法陣から取り出し構える。

 

 

「絶望を希望に変える、しがない魔法使いさ。名前だけでも覚えてくれ」

 

『あぁ、いいぜ……覚えてやるよ。消し炭になって死ななきゃなぁ!』

 

 フェニックスが業火を放ってくる。だが、もはやそんなことでは動じる俺じゃない。

 

 マジシャンってのは、いつだってクールにいなきゃならない。動揺しているマジシャンの作るステージほど詰まらないものはない。

 

【キャモナスラッシュシェイクハーンズ!】【フレイム!】

【スラッシュストライク!】【ヒー! ヒー! ヒー!】

 

 フェニックスと同じようにこちらもウィザーソードガンから斬撃を飛ばし相殺、業火と獄炎がお互いに食い合い、爆発を起こす。

 

 

『テメェ……舐めたことしてくれる。燃え尽きやがれ!』

 

 

「本当ならもっときれいな絵にしたかったが、花火じゃなくて悪いね。さぁ、ショータイムだ!」

 

 

 剣を携え、駆け出す。

 

 フェニックスの振るうのは大剣だけではない。空いた手で炎を固め二撃目の準備まで終えている。

 

『燃え尽きやがれ! 真っ黒に!』

 

 大剣を振り上げて斬りかかろうとするフェニックス。

 

 ウィザードはそれに対して、変わらず突っ込む。このまま行けば、肩の付け根から斬り落とされる。

 

 フェニックスは確信した。

 

 こいつは素人だ。戦いなんか知らない、ただ力を持っただけの人間だと。

 

 だが、その一方でフェニックスの勘が自身へと危機を告げている。何かはわからないが、返されると。

 

「ハァァァァッ!」

 

 だからこそ彼は威力が下がるのも承知の上で拳に炎を纏わせた。

 

『テメェの小細工なんか、俺に通用するかァ!』

 

 力の限り地面を踏みしめてウィザードへ向けて振るう。

 

 

「ショータイムだって言ったろ」

 

 

 気付けば眼の前には剣先が迫っており、思わず体を翻した。

 

 既に大剣をふるい始めたせいで無理な避け方になり、そのまま右手に握った大剣ごと体が傾く。

 

 

【チョーイイネ!】

【キックストライク!】

 

 右に傾いた体が、ウィザードの下から振り上げた脚に捉えられる。

 フェニックスの体が僅かに空中へ浮き上がるほどに、ウィザードのキックは力強くフェニックスの胴体を蹴り飛ばしていた。

 

 サッカー選手がロングシュートを決めるように、真芯を捉える。

 

 慣性のままフェニックスはそのまま吹き飛ばされる。

 

 

『ギっ……がぁ……今……何がどうなって……!』

 

 脚を振り抜いた状態から腰布をバサリと翻しながら、地面に落ちていたウィザーソードガンを拾って、構える。

 

「さぁ、ネタバラシの時間だ。答えは簡単。走りながら剣を投げて、その勢いのまましゃがむ」

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】

 

 ベルトを操作して指輪を入れ替える。

 

「眼の前に武器が飛び込んできたら注意はそちらに向く。その時に視界から外れてお前の横に並んで、無防備になった体へ一発かましてやったのさ」

 

 ウィザードリングをドラゴンの意匠が追加されたフレイムに酷似したリングに付け替える。

 

「俺に言わせりゃ、隠し玉ってのは隠すだけじゃ駄目なんだよ」

 

 

 

『クソが……ふざけやがって……!』

 

 腹の傷を治したフェニックスは、怒りに獄炎を滾らせる。

 周囲に陽炎が揺らめき、アスファルトから湯気が立つ。

 触れるもの全て焼き尽くす地獄の炎が再現されようとしていた。

 

 

 だが、ウィザードも負けてはいない。

 

 魔法陣から飛び出したドラゴンがウィザードの体に重なり合い、さらなる力を授ける。

 

 

【フレイム!】【ドラゴン!】

 

【ボー! ボー! ボーボーボー!】

 

 

 

 真紅の宝石に宿るは爆炎。太陽の如く、人々を照らす希望の光。

 

 

「俺が……、そう、今は俺が!」

 

【キャモナスラッシュシェイクハーンズ!】【コピー!】

 

 二振りのウィザーソードガンを掲げて、宣言する。

 

 

「俺が、最後の希望だ!」

 




ボンヤスミ
サイコー

ここまで読んでくれてありがとうございます。感想何度も見て元気もらってます。
クウガの人だけじゃなくてウィザードの人もこれからよろしく。
頻度上げられるよう頑張りたい。
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