仮面ライダーになれたら   作:赤椿

4 / 6
その4

 大剣を二刀で捌く。一撃のパワーでは負けてしまうが、小手先の技術で負ける気はしない。

 

 相手の斬撃に合わせて剣の腹をで受けつつ、滑らせるように大剣を地面に落とす。

 

 大剣を受けたときの力を利用して手首を切り返して逆にフェニックスの脳天へと目掛けて刃を振り下ろせば、フェニックスの体から吹き出す獄炎が防御に回ろうとしこちらへ襲い掛かる。ノーガードで受けるには危険な攻撃ゆえにこちらも深追いせずに身体をそらし避ける。

 

 こうして戦っていると、段々と焦りが出てくる。決定打をお互いに与えられないのだ。

 

 不思議なことに初めての戦闘にも関わらず自分の体はいつもよりも冴えて動いてくれている。お陰でフェニックスという強敵に対して、致命打を受けずに立っていられる。

 

 逆に言えば、致命打を受けずにいられるだけだ。小手先の技術でしかない自分の攻撃はフェニックスの強大な能力を思う存分振るい続ける力押しに対して押しきれないのだ。

 

 

『どうしたどうしたぁ! 啖呵切っておいて、この程度かよォ!』

 

 

 大剣に獄炎を纏わせたフェニックスは、再び斬撃を飛ばしてくる。

 

 

 テレビの中でウィザードが行っていたように、空中で体を捻りながら避ける。

 

 

「まだまだ楽しめるってことだろ? そこは素直に喜べよ戦闘狂」

 

『時間ばかりかかってちゃ飽きが来るんでなぁ。生憎と俺はグルメなんだ……そのスカした顔をぶち割って、次にいかせてもらうぜ!』

 

 先ほどとは比べ物にならないフェニックスの熱量に思わず、後退る。

 

 ドラゴンの力をフルに使っても、あの火力には届かせられない。直感で悟ってしまったことにより、この場を切り抜けるためにあたりを見回す。

 

 

 爆発した車。壊れたアスファルト。割れた街路樹。焼け落ちた屋根。

 

 溶けたポスト。焦げた消火栓。ひしゃげたガードレール。砕かれたブロック塀。

 

 

 すかさずウィザーソードガンを変形させて撃ち抜く。

 

 

 弾道を操作し、消火栓に2つ穴を開ける。

 

 

【コネクト】【プリーズ】

 

 

 吹き出す消火栓の水を魔法陣で繋げて、フェニックスへと放水する。

 

 しかし、当然のように水は蒸発し、蒸発した水が煙のように視界を遮った。既にフェニックスの足元のアスファルトが、足跡が残るほど溶けている。

 

『そんなチンケな水で俺の炎は止められねェ! 全部……全部燃え尽きろォ!』

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】【ハリケーン!】【ドラゴン!】

 

 

「そんなもん効かないことくらいわかってるんだよ!」

 

 

【ルパッチマジックタッチゴー!】【スペシャル!】【サイコー!】

 

 

 風の魔宝石の力により体が緑に染まる。スペシャルの力により、背中から雄々しい翼を生やしたことで、大空へと飛び出した。

 

 そして、トップスピードのままフェニックスの周囲を飛び回り、竜巻を起こす。

 

「言ったろ、俺はマジシャンだって!」

 

 ハリケーンの風の魔力とウィザードラゴンの翼の羽撃きにより、竜巻はどんどん分厚く強大になる。

 

『グ、ウォォ……!』

 

 中心にいるフェニックスは勢いを増していく竜巻の中で体勢を崩し、大剣を構えていられない。

 

 だが、その炎を衰えちゃいない。むしろ苛立ちにより火力は上がっている。

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】【ウォーター!】【ドラゴン!】

 

 だからこそ、これ以上火力が上る前に変身する。

 

 地面へ滑るように着地したときに、すかさず魔法を切り替える。

 

 

【コピー!】【コピー!】【コピー!】

 

 自身の横に同じように並ぶウィザード達。

 

 オリジナルのウィザードと全く同じ動きのまま、更に魔法を発動する。

 

【ブリザード!】

 

 無数の魔法陣が、ハリケーンドラゴンの作った竜巻を取り囲むように出現し強力な冷気を放つ。

 

『こ、の、野郎っ! こんな風ごときで……俺の炎が……!』

 

 コネクトの魔法でつなげた消火栓の放水は今もなおフェニックスのいる竜巻へと向けられている。

 

 竜巻の中心にいるフェニックスは、襲い来る冷気により身に纏う炎が小さくなるのを感じて焦りを見せる。

 

 感情の爆発により生み出す炎ですら、段々と鎮火している。

 

 竜巻の中に交じる水が蒸発せずに段々と水量を増していくのを感じ、それと同時に体の末端に霜がつき始めた。

 

『そんな……! ありえない……! このフェニックス様が、たかが素人魔法使いの浅知恵で……ッ!』

 

 既に手指は白く凍りつき、動かすこともままならない。関節が段々と軋みを上げて凍りつく。

 

 

「知らないのか」

 

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】【ランド!】【ドラゴン!】

 

 首も動かせない中、聴覚が、忌々しい魔法使いの声を捉えた。

 

 

「ありえないことするのが魔法使いなんだよ、よく覚えとけ」

 

 

【ルパッチマジックタッチゴー!】【スペシャル!】【サイコー!】

 

【ドリル!】【プリーズ!】

 

 

『グ、ガああァァァ!』

 

 

 最後の力を振り絞り、風の隙間に見えたウィザードへと手を伸ばす。その顔の宝石を握り割りたい。心臓をえぐり、喉を引き裂いてやりたい。

 

 

『ウィザードォォォォ!』

 

 

 フェニックスは最後の断末魔を上げて、完全に凍りつき動きが止まる。

 

 

「……フィナーレだ」

 

 

 そして竜巻に向かって、ドラゴンの鋭く大きな爪を身に着けたウィザード ランドドラゴンが助走をつけて飛び込む。

 ドリルの魔法でその身を回転させながら氷像となったフェニックスを貫き、粉々に粉砕した。

 

 

 竜巻は弾け、その際の強風に混じった水により周囲の火災は吹き消える。

 

 

 

 その中でウィザードは一人立っていた。

 

 

 ランドドラゴンからの変身が解け、フレイムスタイルに戻った彼は周囲を見渡す。

 

 もはや、炎で生きているものは全て燃え尽きてしまったのだろうか。

 

 

 誰も、何も視界に動いているものが見えない。

 

 体がとたんに重くなる。アドレナリンが切れたせいかもしれない。

 

 あの2人は逃げ切れただろうか。ふとそれが頭を過ったウィザードはふらつく脚で地面を踏みしめ、振り返った。

 

 

 

『テメェ……舐めたことしてくれるじゃねえか……』

「なに、お前なんで生きて……!?」

 

 

 胸に大きく斬撃を受ける。大きく一文字に切り裂かれたウィザードは胸を抑えて蹲る。

 

 

『フェニックスだって言っただろうが。俺は不死なんだよ。さっきはまさかあれでやられるとは思わなかった』

 

 

 蹲ったところを蹴り飛ばされ、仰向けに転がされる。ダメージが大きかったせいか変身が解除された。

 

 大剣を首元に添えて、フェニックスは晴の胸を強く踏みつけた。

 

 

「ッはぁ! ぐぅ……!」

 

 晴は胸を押され呼吸が苦しくなり、そこで思い出した。戦いに必死になるばかりで、フェニックスの特性が抜けていたのだ。

 

『もう、手加減なんてしねぇ。見下しもしねぇ。お前は、俺を殺せる実力がある、もしくは殺せる可能性を秘めた抹殺対象だ』

 

 

 大剣を振りかぶり、フェニックスは宣告する。

 

 

『ウィザード、お前はここで殺す』

 

 

 大剣が勢いよく振り下ろされる。魔法はもはや間に合わない。

 

 

「く、ちくしょう!」

 

 

 必死にもがくが、胸を踏みつけているフェニックスの脚はびくともしない。

 

 

 万事休す、その言葉が頭をよぎり、必死に頭を回転させる。

 

 

 

 コネクトで武器を引き寄せる。間に合わない。

 

 ビッグで殴り飛ばす。魔法発動より早くこの首に刃が落ちる。

 

 スモールで脱出する。脱出したところで、炎からの逃げ場がない。

 

 ドラゴンを呼び出す。ここは現実で召喚が不可能。

 

 

 

 

 

 本当に、何もできない……? 

 

 

 

 

 

「こんなところで……!」

 

『死ね、魔法使い』

 

「死ねない……ッ! 負けたくない……! 死んでたまるかァァァ!」

 

 

 

 

 シャン、と鈴の音が鳴る。

 

 

 

 

『なに!? 何だテメ、ガぁ!?』

 

 

 視界を走る蒼い軌跡は、大剣をギリギリのところで防ぎ、そのままフェニックスの顎を砕く。

 

 

 

 胸の痛みを耐えながらゆっくりと起き上がると、眼の前に誰かが立っていた。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

 逆光になりその姿が影のように黒くなっており、シルエットしかよく見えない。しかし、その顔がこちらを向いたときに大きな2本角と青い眼が見えた。

 

 こちらに手を差し伸べてきた。その手を握ると、力強く引っ張り上げられ、視線が合う。

 

 

 

 その姿は、見覚えがあった。

 

 

 だってそれは、自身のもう一つの原点。ウィザードに夢をもらった後に、人を笑顔にしたい、背中を押したいと願うことになったもう一つの憧れだ。

 

 

「あ、あなたは……」

 

 

 自然と出た声は震えてしまった。

 

 

「確か、あの赤い奴が言っていたのは、ウィザード。でしたっけ」

 

 

 青い戦士は、その手に握る武器、ドラゴンロッドをくるりと回した。

 

 

「俺、仮面ライダークウガ、になっちゃった人って言えばいいのかな。あなたもそうなんでしょ?」

 

 

「……は、はい! 俺も仮面ライダーウィザードに、なっちゃって……」

 

 クウガの体が赤くなり、その手に持った木の棒を捨て、こちらの体についた煤を手で払っていく。

 

「そっか、やっぱり。さっき足を怪我した学生とサラリーマンがこっちに逃げてきたんだ。男の人に助けられたってその二人が言ってて、それで置いてきてしまった彼を助けに行ってほしいってお願いされたんだ」

 

「え、あ、そっか…あの二人…無事に逃げられたんだ…」

 

「小学生の子からも、魔法使いの兄ちゃんが逃げ遅れてるって言ってて、ウィザードって呼ばれてたからもしかしてと思ったけど、君のことで間違いなかったみたいだね。良かった」

 

 

 その言葉に、不思議と涙が溢れた。そうか、あの2人だけじゃない、あの子達もみんな無事に逃げられたんだ。

 

 

『オイ!てめえら2人で仲良しこよししてんじゃねえぞッ!舐めやがって!』

 

フェニックスの苛立つ声を聞き、2人揃って前を向く。

 

「ちょっと怪我してて大変そうだけど、助けてくれる? マッハの子が言ってたけど、あいつ、君じゃないと倒せないみたいだからさ」

 

 

 体の痛みは不思議と消えていた。傷はまだあるのに。胸の一文字の裂傷は服を切り裂き赤い軌跡となっていたが、それすらも気にならない。

 

 

 今の自分には、夢と憧れが共に在る。

 

 

【ドライバーオン!】【プリーズ!】

 

 

 

 クウガはベルトに手をかざす。霊石が紫に染まり、ベルトから唸るような音が響き始める。

 

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン!】【シャバドゥビタッチヘンシーン!】

 

 アークルの重低音に合わさるように、ウィザードライバーからは軽快な呪文が流れる。

 

 

 そして、2人は同時に叫ぶ。

 

 

「超変身ッ!」「変身!」

 

 

 クウガの装甲が大きく盛り上がり、体色が銀と紫に染まる。

 

 晴の指先から、出現した魔法陣が体を通り抜けて、炎を散らしながらその体を赤と黒の魔法使いへと変える。

 

 

【コピー!】【プリーズ!】

 

 ウィザーソードガンをコピーしてクウガに差し出すと、その意図を理解したクウガはタイタンソードへと変化させた。

 

 同じく、ウィザーソードガンを構える。

 

 

「第二幕、ショータイムだ!」

 

 

 

 

 




あとは野となれ山となれ作戦で書いてます。
なんだか魔法使いと戦士の組み合わせでドラクエみたいだなってなってます。

評価色ついちゃって嬉しくなりました。読んでくれてありがとうございます。

2025/08/28追記

なんかランキング載ってる…なんでぇ…?と思ったのが昨夜。休憩中に確認したら順位がぐんと上がってる。何が起きたのでしょうか…?
ほんとうにびっくりしてます。感想や評価ありがとうございます。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。